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家具屋姫!大塚久美子(娘)社長が親不孝かどうかを会社法の原理原則から考える

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投稿者:中尾 哲也
かぐや姫大塚久美子の株主総会

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

大塚家具、22年ぶりロゴ刷新 久美子社長「大きくイメチェンしたい」

早速久美子社長がロゴデザインの刷新をやってきたようです。こんな感じ。

大塚家具新ロゴ

会社のWEBサイトをチェックしてみると,同時に「新ブランドヴィジョン」なるページが開設されていて,相当気合が入っているようです。

 

久美子社長写真

新生 大塚家具の新ブランドビジョン

なかでもこの動画!

「一方的に語るのではなく」からの,「父がすみません」の流れが強引で素敵すぎますw

動画のセリフは,みなさんご存知のとおり,この前の株主総会をめぐる親子バトルをもじったものです。結果は娘の久美子社長が勝ちました。久美子社長の得票が61%,お父さんの得票が36%。株主総会の得票数としては,久美子社長の圧勝といっていいと思います。

結論は報道されているとおりなのですが,株主総会前後にマスコミやインターネットには,この問題をめぐって,いろんな意見が出されました。

例えばこんな意見の対立。

「創業者っちゅうのはすごい苦労してはるで。あの親父は一代で上場企業を育て上げた天才や。間違いない。親父の言うこと聞いて,任しとったらええんや(なぜか大阪弁)」

VS

「久美子社長は学歴職歴一流ですよね。出してくる資料もコンサルタントがちゃんと分析したものに見えますし。今の時代にあった経営を期待できるんじゃないですかね。それに美人でしょ(おいおい)」

こういうのはいいですね。経営の素人がプロ経営者の経営方針をいろいろいうのも,酒の肴のようなものでなかなか乙です。ほらアル中のおっさんが,プロ野球選手のプレーに口を挟んでいるような,,あれと一緒です。少年野球のレギュラーにも漏れたくせにw

ところで,いまのとは少し趣がちがって,こんな批判もありました。

「なんだよみっともない。家庭の問題は家の中でやってほしいね」
「家の中のもめごとに世間を巻き込んで,恥ずかしい話だ」
「家でちゃんと話したらいいでないの?話合いもできないのかい?」

うんなるほどまあそうか,,

いやいや!これに関しては,ちょーーーーっと違うと思うのです。それはやっぱりおかしいんじゃないかと思うわけです。

もし大塚家具が個人事業の八百屋とか魚屋だとする。
まだまだ現役の大将から,娘が一時的に店番を任されているとする。
様子を見ていた大将が,やっぱりいかんと思い直して,「もうチョイわしがやるわ」とかいう話なら分かるんです。

しかし大塚家具は株式会社です。証券市場に株式を上場している大きな会社なんです。それだとやっぱりおかしい。

では,なぜ結構な割合で,世間がそういう論調にになっていくのかを考えたとき,これは「株式会社」という法律上の制度がどういうものか,よく理解されてないからじゃないのかと思いました。株式会社という法的な仕組みがはっきり分からないと,親父と娘がなぜあんなことをしているのか分からないのじゃないかと思ったのです。

そこで,「そもそも株式会社って何なんだ」というのを簡単に説明してみたいと思います。
そのうえで,もう一度今回の,「大塚家具株主総会事件(仮称)」,「大塚家具平成のお家騒動(仮称)」,「大塚家具親子プロレス事件(仮称)」「大塚家具炎上商法疑惑w」について整理してみたいと思います。

 

株式会社の制度ってどんな仕組みなの?

株式会社制度のはじまり

16,7世紀の大航海時代に,イギリスやオランダが植民地経営や大規模な輸出入をするのに,おっきな資本,つまりお金が必要になった。いろんな資本家からお金を出してもらうのに,「出したるけど,誰が経営するんや,ちゃんとおいらの利益は守られるんやろうな。儲かった分配当してくれるんやろうな」ということが問題になった。そこで,お金を出した人の権利とか,経営する人のこととか,配当のこととかをきっちり決めた組織が考えられた。これが歴史の教科書に出てくるイギリスやオランダの東インド会社です。それと似たような制度がヨーロッパやアメリカに広がって,現在の,世界の先進国の株式会社制度になっています。

株式会社制度のポイントをまとめると

要するに事業をするのにお金がいる。自分のお金だけでは足りない。だからいろんな人からお金を集める。その代わりにお金を出した人の権利をしっかり守る。お金を出した人が会社のオーナーになる。当然利益も配当する。そして細かい日々の経営は他人に任せる。お金を出した人がみんなでやるわけにいかないからだ。誰にやらせるかは,お金を出した人のオーナー会議(株主総会)で決める。

株式会社の登場人物は?

  • お金を出したオーナーを「株主」といいます。お金を出した単位ごとに「株式」がもらえ,株式の証文が「株券」です。
  • オーナー会議のことを「株主総会」といいます。超重要なことは全部株主総会で決めます。
  • オーナーから日々の経営を任された人を「取締役」といいます。
  • 取締役は「取締役会」という経営会議をして,そこそこ重要なことまで決められます。
  • 経営会議で決まったことを実行するのが「代表取締役」です。代表取締役を誰にするかは取締役会で決めます。決まったことを実行するだけだからです。

株式会社の四つの特徴

  • 法人格
    会社というのは法人です。法人とは「法律によって認められた人」のことです。会社を作ると,会社の名義で取引したり,財産を所有したりできます。
  • 有限責任
    株主は出資した分の責任しか負いません。会社が倒産してもそれっきりです。最初に出した金額以上の支払いの責任はありません。
  • 株式の自由譲渡制
    株主は会社を解散しなくても,自分の株式を他人に譲渡すれば,出したお金を引き上げることができます。株式を譲渡したら,オーナーとしての地位を失います。買主が新しいオーナーになります。証券取引所でやっているのは,こういうオーナー権の売買です。
  • 所有と経営の分離
    会社の所有者は株主です。経営は,株主に選ばれた取締役がします。この仕組みがあるので,お金はあるけど経営ができない人も会社を起こしたりオーナーになったりできます。会社がたくさんできると取引が活発になって経済が発展します。

「会社は誰のものか」というお話

会社は株主のものです。会社関係の事件が起きると,すぐに会社は誰のものかという議論になるのですが,会社は株主のものに違いありません。

従業員も大切です。会社は大きな社会的存在なので,そういう公的な責任も果たしていかないといけません。ただ,そのことと,会社の所有者が誰かということは,直接関係がありません。

会社というのは,会社法という法律によって作られる組織です。会社のことは,会社法に書いてあります。会社法には,株主だけが,会社の所有者として,会社に対していろんな法的な権利を持っていると書いてあるのです。会社のオーナーは株主です。いくら高尚な議論をしても,オーナーの権利を制限することはできません。そういう仕組みです。

まとめ

このくらいのことを理解しておけば十分だと思います。細かいことはいっぱいありますが,法律家でも理解して覚えるのに難儀するボリュームなので,あえて考えなくていいです(会社法はすぐに改正されますしね)。

お金を出したオーナーが,経営者を選んで経営させ,儲かったら利益の配当を受ける。これが株式会社の仕組みです。

 

大塚家具の株主総会で親父と娘が奪い合ったもの

最終的に奪い合ったのは経営権

奪い合ったのは「創業者としてのプライドである」「自尊心である」「文化である」「権力である」,,
こういうことを言い出すとまた話がおかしな方向にいくので,法的な問題にしぼって説明します。

奪い合ったのは,大塚家具の経営権です。そして経営のことをじっさいに実行していくのは代表取締役です。じゃあ代表取締役になって経営権を握るにはどうするか。次のとおりです。

大塚家具の経営を実行する(ゴーゴー!!)

代表取締役に選ばれる

取締役会で過半数の賛成をもらう

取締役に選ばれる

株主総会で過半数の賛成をもらう(スタート)

その経営権を取るために,前提として奪い合ったのは株主の議決権

会社法では,経営者である取締役を選ぶのは,株主総会の仕事です。取締役を選ぶために必要な賛成数は,簡単にいうと,過半数です。過半数といっても,「株主」の数ではなくて,「株式」の過半数です。なお,株主が自分の持っている株式の数によって,株主総会で票を投じる権利を,「議決権」といいます。つまり,株主の議決権の過半数の賛成が得られれば,お互いが出した取締役のリストが株主総会で通るんです。お互い取締役の全員をリストとして出しているので,株主総会で勝てれば,取締役会の過半数も取れる仕組みです。

大塚家具株主

Wikipediaより

さてこれが株主総会前の大株主の名簿です。基本的に,一つの株式に,一つの議決権があるので,株式をたくさん持っている株主を味方につければ票がたくさん取れます。

表を良く見てください。筆頭株主であるお父さんの勝久会長の持株割合は18%です。筆頭株主といってもこれだけしか株式を持っていません。あれ?上位に久美子社長が出てきませんね。二番目には,ききょう企画という会社が出てきます。ききょう企画は,大塚家の持っている株式を子孫に承継するための持株会社,つまり資産管理会社だということです。実は,この会社の株式と経営権を,事実上久美子社長が支配しているのではといわれています。ききょう企画は上場会社じゃないので,資料が非公開で,詳しいことが分からないのです。

ただ何にしても,お互い自分の株式だけでは到底過半数に届きません。そこで,久美子社長とお父さんは,それぞれ大株主に対して,自分の考えに賛成してくれ,味方になってくれと必死で呼びかけを行ったわけです。今度の株主総会では,自分の議案に賛成してね,という具合に。

多くの株主(議決権)に賛成してもらうために必要なこと

それは,ずばり「儲かる」ことです。

株主総会の前,久美子社長は,綺麗なプレゼンテーション資料を用意して,株主に自分の経営がいかに正しいかを説明していました。なぜそうするかというと,私に経営を任せてもらえれば,こんなふうに経営をするのできっと儲かる。儲かれば,オーナーである株主の皆様にも配当ができるし,市場で株価もあがる。つまりオーナー様もきっと儲かる。そのことを説明するためです。

お父さんの勝久会長が,外で久美子社長を批判して,自分を再登板させるように主張しているのも,そのほうが経営が上手くいって儲かるので,結局株主の皆様は得をしますよ,というアピールです。

決して自分が我が物顔で経営をしたいから,純粋に権力を握りたいから,ということではありません。

 

大塚家具の親父と娘の喧嘩は家庭内の問題か

答えを出すための前提条件

  • 勝久会長と久美子社長は,おそらく両方とも,自分自身が大塚家具の大株主である
  • それでも持株の割合は少なく,大方の株式は銀行や個人株主が所有している
  • もし会社が儲からないと,自分自身が株主として大損をする(大株主なのでマジで大損!)
  • のみならず,もし会社が儲からないと,経営者として,自分以外の大方の株主に対して責任を果たすことができない
  • 勝久会長と久美子社長の経営方針がまったく違う,双方とも自分のほうが正しいと心から信じている(本気で信じているところがポイント)

結論

どうでしょう?ここまでくると,次のことについて,もう答えがでているんじゃないでしょうか。

  • 家庭内で話し合って結論を出していいのかどうか。多くの株主の考えを聞かなくていいか。
  • 親子だからといって譲歩できる問題か。自分が信じている方針で経営しなくていいか。

えーーっと,どうやら会社の法律の原理原則から考えていくと,「みっともないから家でやっとけ」とは到底いえないようですよ。私はそう思うんですが,いかがでしょうか。

 

PS 以下が新企業スローガンですって。久美子社長が親不孝じゃないことをだいぶ説明しておきましたので,うちの事務所の幸せのレイアウトも是非宜しくお願いします。

新スローガン

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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