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日経平均株価が大暴落したら遺産相続にどう影響するか

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投稿者:中尾 哲也
遺産相続と株価大暴落の関係

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

平成28年1月20日14時51分の日経

同年1月21日02時28分のNYダウ

ごらんのとおり大変荒れています。オーソドックスに株式で資産運用をしていらっしゃる皆様の心中をお察し申し上げます。私はポジションを持っていないので高みの見物をしていると言いたいところですが,実のところ株式に回す資金自体がありません。よってむしろ低いところ(草葉の陰)にいて,騒がしいマーケットニュースが耳に入るのをBGMに聞き流すほかない今日この頃です。

そんなことはどうでもいいんですが,,

今日は株式相場が大きく動くと遺産相続にどういう影響を及ぼすかを考えてみたいと思います。

 

前提として確認しておくこと

株式は「遺産相続」の対象

株式には財産的な価値があり,被相続人(亡くなった人)しか扱えない財産でもないので,当然に遺産相続の対象になります。つまり相続財産になります。

民法896条 相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし,被相続人の一身に専属したものは,この限りではない。

※株式とは株式会社のオーナーとしての地位を分割した持分のことです。会社が儲かったら利益配当を受けたり,解散したら財産分配を受けたりする権利(このような権利を自益権と呼びます)と,株主総会で議決権を行使するなど経営に参加する権利(このような権利を共益権と呼びます)の合わさったものです。
※上場会社の株式は自由に譲渡できるので,証券取引所で売買取引されます。取引所で株式を買うと新しく株主になるので,以降会社に対して自益権や共益権を行使できます。

株式は「遺産分割」の対象

株式は会社に対するいろんな権利が合わさった権利なので,相続人が何人かいる場合,遺産分けを相続人で話し合って(又は調停審判によって),誰がどれだけの株式を相続するか決めないといけません。このことを,「遺産分割の対象になる」と表現します。株式は相続開始と同時に当然に分割されて共同相続人に相続されるのではなく,遺産分割が終わってはじめて誰が相続するか確定するというのが最新の判例です。話合いがつくまでは,相続した株式はすべて準共有になります。どいういうことかというと,例えば50株の株式を相続したら,その1株1株について,それぞれ複数の相続人で分け合っているという形になるんです。ややこしい。その状態では何もできないので,誰か1人が代表者になって会社とやり取りします。

会社法106条
株式が2以上の者の共有に属するときは,共有者は,当該株式についての権利を行使する者1人を定め,株式会社に対し,その者の氏名又は名称を通知しなければ,当該株式についての権利を行使することができない。以下略

で,誰が代表者になるかについて揉めたら,

民法252条
共有物の管理に関する事項は,前条の場合を除き,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する。ただし,保存行為は,各共有者がすることができる。

によって決定します。相続分の割合が多い人が権利行使者になったり,それを決めたりできます。

株式は「相続税」の対象

以上のとおり株式はれっきとした相続財産なので相続税の対象になります。つまり株式は相続税の課税財産になる(基礎控除等あるので,じっさいに相続税を支払うかどうかは別です)。

相続税法2条
第1条の3第1号又は第2号の規定に該当する者については,その者が相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し,相続税を課する。
2項略

っと,ここまで前提知識を押さえたところで,,

 

株価が暴落すると遺産評価が変わる!

株式の値段,つまり株価が暴落すると,遺産評価が変わります。遺産評価というのは,相続した株式の価値をどう計算するかという意味です。

「いやいや上場株式なんやから値段出とるやろ」

そのとおりです。取引所で値段は出てるんですけど,取引価格は刻一刻変わっていきますよね。1日の間でも,取引が始まった値段と終値ではぜんぜん違います。じゃあどの価格を採用したらいいんですか?どうなんですか?え?(偉そうww)分からないですよね。この辺がいい加減だと困るので,いつの時点の価格を採用するのか,一応決まっているんです。これを,遺産評価の基準時の問題と呼びます。

「決まっとるんか,ほなそれ教えてくれや」

ちょ,ちょっと待ってください。遺産評価の基準時は一つじゃないんです。相続税の計算をする場合の基準時はいつ,遺産分けの決着(遺産分割)をつける場合の基準時はいつ,という具合に分けて考えないといけません。法律は相対的なんです。ほかにも基準時があるんですが今日は二つだけ見ます。

※非上場株式はややこしいのでここでは省略

 

相続税を計算するための遺産評価

相続税を計算するための遺産評価は,基本以下のとおり計算します。

(上場株式の評価)
169 上場株式の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(昭47直資3-16・平2直評12外・平15課評2-15外・平20課評2-5外改正)
(1) (2)に該当しない上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所(国内の2以上の金融商品取引所に上場されている株式については、納税義務者が選択した金融商品取引所とする。(2)において同じ。)の公表する課税時期の最終価格によって評価する。ただし、その最終価格が課税時期の属する月以前3か月間の毎日の最終価格の各月ごとの平均額(以下「最終価格の月平均額」という。)のうち最も低い価額を超える場合には、その最も低い価額によって評価する。
(2) 負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得した上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格によって評価する。

財産評価基本通達より

相続税は国税なので,財務省が財産の評価方法を決めています。課税時期っていうのは被相続人が亡くなった日です。まだややこしいのでうえのものをもうちょっと簡単にいうと,

以下のうちの1番安い金額で評価していいよってこと。安いほうがいいんですよ相続税の話なので。
①死んだ日の取引所の終値
②死んだ月の終値の平均
③死んだ前月の終値の平均
④死んだ前の前の月の終値の平均

ここから分かるように,株価が暴落したときにお亡くなりになったほうが,株式の遺産評価はかなり低く抑えられるってこと。いくら老衰でも,株価の谷に併せて亡くなるのは難しいですけどねw1番いいのは,株価が暴落したときに亡くなって,相続した後上がっていくパターンですね。

冗談さておき,株価が下がれば(下がったとき亡くなれば),相続税の財産評価も下がるわけです。

 

遺産分割をするための遺産評価

こんどはちょっと違う話です。相続人が何人かいて,相続財産がいろいろあると,みんなで遺産分けをします。これを遺産分割といいます。相続人の間で,具体的な遺産の割り振りをすることです。

父が亡くなった。母はいない。住宅がある。預貯金がある。株式がある。兄弟が3人いる。法定相続分はそれぞれ3分の1。こういう相続を考えてください。長男は親の住宅に同居していて今後もそこに住みたい。よって家が欲しい。次男は預貯金。そして三男のあたなは株式を相続する予定。財産の値段は父の最後ほとんど同じだったので,それでいいという暗黙の了解がある。兄弟仲良し,相続分なんてどうでもいい,いいようにすればいい,という場合は置いておきましょう。想定するのは,やっぱり法定相続分どおりの遺産分割をしたいよね,という場合。

さて。この遺産分割をする場合の,遺産評価の基準時はどう考えたらいいか。相続は忙しいので,半年1年はすぐ過ぎます。そうすると,亡くなってから遺産分割の決着がつくまでに,財産の価格が変動することがあります。っというか,株価なんかは普通変動するでしょう。この場合,遺産の評価をどうしたらいいか。

結論からいうと,遺産分割をするときの遺産評価の基準時は,遺産分割時説が採用されています。つまり父が亡くなった時ではなくて,遺産分割の決着をつける時の評価で遺産評価をするんです。

来週兄弟が集まって最終的に書面を交わす予定だったとする。株価は暴落している。そうすると,あなたの取り分は,事実上かなり少なくなる。さてどうするか。

①法定相続分より相当取り分は少なくなるけど我慢して判を押す
②ちゃんと株式を評価して,足りない部分は兄達にお金を支払ってくれと要求をする
③不動産,預貯金含めて,最初から割り振りを見直す

などの選択肢がありそうです。

とにかく,遺産分割の決着がついていない間に株価が下がると,株式の遺産評価もそれに応じて下がるのです。遺産分割の話合いに影響しますね。

 

株式相場と遺産相続に関するアドバイス

以上を踏まえると,株価が下がる局面では,こんなことが考えられます。

◎下がりそうな株式に変えて評価を下げる

基礎控除などを引いてもどうにも相続税がかかりそうだといううらやましい方は,なるべく遺産評価を下げましょう。老衰,病気などで,もう長くはないなという方であって,現金預貯金を持っている方は,株式に変えてみては?3000万円で株式を買って,3か月後に亡くなり,その時の株価が2000万円なら,1000万円の評価減です。

いつまで命があるのか,株式相場がどうなっていくのか,これは誰にも分からないので自己責任になりますが,株価が一時的に下落し長期的に回復すると考えるのであれば,それも一つの方法です。支払った相続税は決して取り戻せませんが,下がった株価は上昇する可能性があります。

◎遺産分割協議や調停・審判の時期を調整する

株式を絶対相続したい,株式にこだわりがある,又は株式を継ぐことだけは決まっている場合,株価が下がった時期に遺産分割をしましょう。しばらく相続処理を放ってあるのであれば,暴落した時期に,遺産分けの話合いを始めます。そうすると理論上法定相続分の計算で有利になります。

もっとも,他の相続人に,「それなら俺に株寄こせ」と言われると困りますw
それにもっと大事なことがありますよね。できれば相続人で仲良くしてください。自分だけ得しようとかしないでね(それなら言うなよw)

相続や遺産分割の紛争

では今日はこのへんで!

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