投稿者「中尾 哲也」のアーカイブ

相続時精算課税で親子や祖父母から孫に住宅を生前贈与する

贈与税非課税で土地や建物を子供や孫に贈与し登記名義を変更する方法(相続時精算課税)

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

 

住宅(土地・建物)の名義を子や孫に移したい

住宅その他の土地建物を,生前に,親や祖父母から,子や孫に変えておきたいと希望されるケースがあります。どんなケースでしょうか。以下のような場合です。

  • 高齢になってきたので生前に遺産分けをしておきたい。
  • 死んでから揉めないように,いまのうちに,同居の長男に住宅と土地の名義を変えたい。
  • 親の土地に子供が家を建てているのでこの際土地の名義も子供にしてあげたい。名義を揃えたい。
  • 先祖の土地の名義を家を継ぐことが決まった次男に変更したい。
  • 相続税の節税対策として財産を減らしたい。
  • 使ってない土地建物を売却したいが,高齢者が売主では契約等に動きにくいので,子供等に名義変更してから進めたい。
    などなど

さて,こんなときにする不動産の名義変更ですが,きっと不動産をもらう方から,渡す方に,お金を支払ったりしないので,法律的には「生前贈与」「贈与契約」を理由として行うことになります。

ちなみに,不動産の名義変更つまり所有権移転登記をするには理由(登記原因)が必要です。ただ名義変更だけする,ということはできなくて,必ず名義変更の所有権移転登記を申請する理由となる,所有権移転という権利変動が生じた事実関係を法務局に報告しなければいけません。具体的には,登記申請書に,「登記原因とその年月日」を記載せねばならず,また登記申請書には,その登記原因が生じた事実関係を証する「登記原因証明情報」なる添付書類を添付せねばなりません。今回のように,生前贈与によって名義変更の所有権移転登記をする際の登記原因は,「年月日贈与」であり,「登記原因証明情報」としては,民法上の贈与契約があったと評価できる事実関係が記載された文書を準備します。

 

何も考えずに子や孫に贈与して名義変更したら多額の贈与税がかかる!

さて,以上説明したとおり,住宅その他の不動産の名義を子や孫に移す行為は,法律的には民法上の贈与契約によります。そして,贈与による財産の取得には,相続税法にもとづいて贈与税が課税されることになっています。贈与税を課税され支払うことになるのは財産をもらう人です。つまり,無償で財産をもらったら,もらった人に,もらった財産の額に応じて定まる税率による贈与税が課税されるので,一般的に高額財産である不動産もらった人は,贈与税の申告をして,多額の贈与税を納税しなければならなくなるのです。

贈与税の税率や金額は以下国税庁のWEBサイトをご覧ください。親や祖父母から,子や孫への贈与については,【特例贈与財産用】(特例税率) のところに書いてあります。贈与税が非常に高いことがお分かりいただけるかと思います。

ホーム>税について調べる>タックスアンサー>贈与税>贈与と税金>No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

 

子や孫に生前贈与しても贈与税がかからない仕組みがある!

「そんなにお金がかかるなら生前贈与なんてしないよ」

「せっかく贈与してやったのに何百万も税金が来るんじゃかなわないので止めとく」

普通はそのように考えられますよね,,,

相続時精算課税制度という仕組み

しかし!この非常に高税率で多額の贈与税を支払わないで生前贈与できる仕組みがあるんです。この仕組み,制度の適用をしつつ(要件を満たして)生前贈与をすれば,子供さんやお孫さんに対する贈与にについて,いま贈与税を支払う必要はありません。その仕組み,制度のことを,「相続時精算課税制度」といいます。

相続時精算課税制度とは何か

相続時精算課税制度をごく簡単にいうと,「いま贈与税を支払わず,贈与者が死亡したときの相続税として精算する制度」と表現できます。つまり,贈与税の課税を将来にペンディングして,贈与者が死亡した際,いま贈与した財産を,あくまで相続税の計算上贈与がなかったものとみなして遺産に戻し計算し,その遺産をもとに相続税の課税を考える制度です(相続時まで名義変更できないとか,相続時に名義を戻すとか,そいうことではありません。あくまで相続税の計算上,相続時に戻し計算するという話です)。

この相続時精算課税制度を使わずに普通に生前贈与し,いま贈与税を支払った場合(暦年課税),当然,将来,その財産に相続税はかかりません。もう名義変更済みであって贈与者故人の遺産ではないからです(戻し計算もしません)。ここに大きな違いがあります。

相続時精算課税制度を使っても使わなくても同じ?

?いま贈与税を支払わないけど,相続時に相続税として支払うなら,結局支払うから同じじゃないの?支払い時期だけの問題?

そうではありません。相続税には基礎控除額という課税フリーの大枠があります。ある程度資産がある人にしか相続税がかからないようになっています。現在の相続税法では,3000万円に,法定相続人の数*600万円を加算した額です。法定相続人が子供二人の場合,4200万円が基礎控除額となり,遺産がこれにおさまるなら相続税はかかりません。

例えばこの事例で,1000万円の不動産と2000万円の預貯金等金融資産を持っている父親から,相続時精算課税制度を使って不動産の生前贈与を受けたとします。不動産は名義変更を済ましました。その後父が亡くなったら,相続税の課税対象になる遺産は3000万円です。不動産も遺産に戻して計算するからです。しかし,3000万円は4200万円に満たないので,遺産は基礎控除額におさまります。なので相続税はかかりません。つまり,贈与時に贈与税を支払わずに贈与でき,相続時に相続税も支払わないで済んだ。贈与税も相続税も課税されずに不動産の生前贈与ができるわけです。これが,相続時精算課税制度を使って贈与税非課税で不動産を生前贈与できますよ,という理屈のすべてです。

確認しておきます。この相続時精算課税制度を使わないで生前贈与したらどうなるか。相続税の基礎控除額に対して,贈与税の基礎控除額は,年間110万円です。1000万円の不動産を贈与するんですから,基礎控除額を引くと,贈与税の課税対象は,890万円です。親子間の生前贈与なら特例贈与財産の税率が適用されます。890万円の贈与なら税率30%,税額控除が90万円なので,以下のとおり贈与税が課税されます。

贈与税額=(890万円*0.3)-90万円=177万円

なんと贈与税を177万円も支払わないといけません。相続時精算課税制度を使った場合と使わない場合をまとめると次のとおりです。不動産の財産評価を1000万円で計算しているので,これが1500万円,2000万円と増えると,贈与税ももっと跳ね上がります。

相続時精算課税制度を使って生前贈与

  • 贈与税=0円
  • 相続税=0円

普通に贈与(暦年課税)

  • 贈与税=177万円
  • 相続税=0円

ちなみにどうしてこんな制度があるのか

説明すると非常にややこしくなりますが,要するに,本来,相続税と贈与税が同じものだからです。というか,相続税が本体で,贈与税はおまけです。法律の体裁も,相続税法だけがあって,贈与税法はない。相続税法の中に贈与税の規定(条文)があるだけです。

  1. 死んだら相続した遺産から税金をとる。ただし,普通の人が困らないように,一定の基礎控除を設ける。
  2. しかし生前贈与されたら遺産から相続税がとれない。対策した人としなかった人の課税の不平等も生じる。なので贈与税という税金を作った。
  3. そうであれば,本来資産が相続税の基礎控除におさまるような人の贈与には,相続税の補完税としての贈与税も課税すべきじゃない。死ぬまで持っていればどのみち相続税がかからないんだから。
  4. ということで,ちゃんと贈与時に申告して,相続時に計算しなおすと表明した人には,一定金額まで,贈与税を課税しない取扱いをしてもよかろう。

相続時精算課税制度を使った生前贈与に贈与税が課税されないのはこんな感じの理由からだとお考えください。

 

相続時精算課税制度を使うための要件

生前贈与について相続時精算課税制度を選択するには要件があります。

財産をあげる人(贈与者)の要件

満60歳以上(贈与する年の1月1日現在)の父母又は祖父母でないといけません。

財産をもらう人(受贈者)の要件

満20歳以上(贈与する年の1月1日現在)の子又は孫でないといけません。

贈与財産の種類の要件

財産の種類は何でもよいです。不動産でも金銭でも株式でも可能です。この記事の想定は不動産です。

贈与財産の金額の要件

  • 2500万円を上限とします。この範囲内なら非課税です。もしこれを超える贈与をしたら超過分に一律20%の贈与税がかかります。
  • 金銭以外の財産は,国税庁の定める財産評価基本通達によって財産評価して金額を定めます。不動産なら,原則として,土地は路線価,建物は固定資産税評価額で計算します。取引事例など,当事者が勝手に評価した金額を使えるわけではありません。

贈与税申告の要件

相続時精算課税制度を使うには,必ずその旨の贈与税の申告をしておかなければいけません。何もしなかったら普通の贈与(暦年贈与)になるので,もし申告せずに放置していたら大変なことになります。

なので,財産をもらった受贈者は,必ず,贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に,管轄の税務署に贈与税の申告書を提出してください。贈与税の申告書には,「相続時精算課税選択届出書」ほかの書類を添付します。

参考)

 

贈与税の相続時精算課税制度を使って名義変更する方法

では,具体的に,相続時精算課税制度を使って子や孫に不動産を生前贈与する手順を考えてみます。

親族で話合いをして最終決定する

今一度生前贈与する趣旨というか動機というか,何のためにそれをするのかを考えてみてください。贈与が完了すると不動産は受贈者たる子供や孫のものになります。完全に所有権が移ります。そうすると,不動産の管理処分は所有者の子や孫の権利となるので,今後不都合が生じることがないかおさらいしてください。

子供や孫の意向もよく聞いてください。生前贈与は契約なので,相手が嫌がったら無理やり押し付けることはできません。逆に,もしあなたが子供や孫の立場だとして,親や祖父母が嫌がっているのに無理やり生前贈与を矯正することはできません。

そもそも手続きする必要があるのか,メリットはあるのか等分からなくなったら,司法書士に相談をしてみてください。疑問が解けるかもしれません。

贈与契約をして贈与契約書を作る

繰り返しますが贈与は契約です。財産をあげる方ともらう方の意見が合致してはじめて生前贈与が成立します。不動産の贈与というのは財産が財産だけに重要な法律行為です。後のトラブルをさけるために,合意ができたら契約書を作ります。生前贈与の贈与契約書の作り方等をまとめておきましたのでご覧ください。

贈与契約書の作り方・書き方・作成方法を説明します

贈与契約書の書式見本(ひな形)

夫婦間で奈良県の住宅を生前贈与する贈与契約書

法務局に所有権移転の登記申請(名義変更)をする

贈与契約書を作って契約が成立し,効力が生じたら,法務局で登記名義の変更をします。具体的には,「年月日贈与」を登記原因とする「所有権移転登記」等を法務局に申請して登記簿の名義を書き換えます。登記が完了したら,新しい権利書(正確には,現行法上,「登記識別情報」といいます。)がもらえるので,これを大切に保管します。

名義変更の登記申請をして権利書(登記識別情報)をもらうまでの手続きはだいたい以下のとおりです。

申請書等の作成

登記申請書と登記原因証明情報を作って夫婦双方が押印し,登録免許税を計算して税額分の収入印紙を申請書に貼る。

登記申請書の書式見本(ひな形)

奈良県王寺町の司法書士の夫婦間贈与の登記申請書

登記原因証明情報の書式見本(ひな形)

奈良県で居住用不動産(住宅)を夫婦間贈与する登記の登記原因証明情報

添付書類の準備

登記申請書の添付書類を準備する。

贈与者(あげる方)
  • 権利書
  • 印鑑証明書
受贈者(もらう方)
  • 住民票

法務局に登記申請

登記申請書と添付書類をセットして管轄の法務局に提出する。つまり登記申請する。

登記完了と権利書の受取り

一定期間経過後登記が完了するので,法務局で権利書登記識別情報を受け取る。同時に登記簿謄本(登記事項証明書)を請求して受取り,登記がちゃんとされているか確認する。

登記申請書についてごく簡単なまとめ記事が法務省のWEBサイトにあります。以下のリンクをご覧ください。なお,やり方が分からない人は司法書士に登記手続きを一式依頼してください。全部司法書士がやってくれます。

法務局トップページ>不動産登記申請手続>不動産登記の申請書様式について

税務署に贈与税の申告(「相続時精算課税選択届出書」付)をする

先ほど要件のところで述べたとおりです。必ずしてください。これをしないと相続時精算課税制度を選択して贈与したことが税務署(国)に伝わらず,普通の暦年贈与になってしまいます。つまり多額の贈与税が課税されます。

出し忘れた場合,後から書類を出しても,相続時精算課税制度を選択することはできませんからご注意ください(司法書士に名義変更の登記を依頼したら記録を管理するので出し忘れはありませんが)。

参考)

 

以上で,「相続時精算課税制度を使って,親子間や祖父母から孫に対し,贈与税非課税で,不動産を生前贈与し,名義変更する方法」の説明を終わります。

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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夫婦間で生前贈与・名義変更したい方はこちら

夫婦間贈与の特例を使って贈与税非課税で居住用不動産を配偶者の登記名義にする方法

 

奈良王寺の明徳司法書士に夫婦間の居住用不動産の生前贈与を相談依頼

夫婦間贈与の特例を使って贈与税非課税で居住用不動産を配偶者の登記名義にする方法

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

 

家の名義を夫や妻に移したい

いま住んでいる住宅(土地や建物)の名義を夫や妻,つまり相手方配偶者に移し替えたい,名義変更したいとお考えですか?それはどういう理由からですか?

  • 相続税の節税対策になるかと思って
  • 資産が自分に偏ってるので家くらい妻名義にしてあげたい
  • 長年連れ添った感謝の気持ちから
  • 相手方からお願い(要求)されて
  • 税金がかからずに生前贈与や名義変更ができると聞いたので
    など

理由はどうであれ,自宅の所有者であるあなたや配偶者が希望すれば,名義を相手方配偶者に変更することができます。すなわち,無償でするなら,夫婦間で贈与契約を締結して,その後法務局に名義変更の所有権移転登記を申請すればよいのです。

 

普通に贈与して登記すると多額の贈与税が課税される!

もっとも,何も考えないで,ただ住宅の贈与契約をし,所有権移転登記をしてしまったら,住宅をもらったほうの配偶者に多額の贈与税がかかってしまいます。日本には贈与税という税があって,贈与による財産の取得には効率の贈与税が課税される決まりです(贈与税のことは相続税法という法律の中に書いてあります)。

せっかく住宅の名義変更をしても,相手方に多額の贈与税が課税されては支払うのに難儀します。そもそも,そんなに多額の贈与税を支払うくらいなら,夫婦間で贈与なんてしなかったよ,とお考えになることでしょう。

 

夫や妻に名義変更しても贈与税がかからない制度・仕組みがある!

しかし,夫婦間における居住用不動産の贈与には,この贈与税の課税を免れる方法があります。それは,贈与税の特例である,「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」の特例の適用を受けることです。この特例の適用を受ければ(特例を使えば),居住用の不動産の贈与について,2000万円まで非課税になります。贈与税には年間110万円の基礎控除がありますから,併用すれば,2110万円までの居住用不動産の贈与が贈与税非課税にて行えます。なお,贈与する不動産の価値がこれを超える場合,超えた部分についてだけ,通常どおり贈与税がかかります。

この夫婦間贈与の特例は,あくまで特例なので,適用を受けるのに要件があります。この要件を満たした場合だけ,2000万円の夫婦間贈与の特例を使えます。要件は次のとおりです。

婚姻期間の要件

結婚して20年経過後に贈与すること(20年間婚姻期間が必要)

贈与財産の要件

贈与財産は次のいずれかであること。

  • 居住用の不動産
  • 居住用の不動産を取得するための金銭

居住の要件

贈与の翌年の3月15日までに贈与された不動産に住み,今後も住む予定であること。つまり,,,

  • 居住用不動産に住民票を移す
  • 贈与された金銭で購入した不動産に住民票を移す

回数の要件

過去に同じ配偶者から贈与を受けてこの特例を利用していないこと(この特例は,同じ配偶者からは,1回のみ利用可)。

贈与税申告の要件

贈与の翌年の申告時期に必ず贈与税の税務申告をして,この夫婦間特例を利用する旨,国に届出をしなければいけません。これをしないと,通常の贈与として扱われます。

 

夫婦間贈与の特例を使って名義変更する方法

夫婦間で居住用の不動産を贈与して名義変更するのは自由だ。そして,一定の要件を満たせば,一定の範囲で贈与税が非課税になる。というところまで説明しました。では次に,じっさいにこの特例を使って夫婦間で住宅の名義を贈与するステップを見ておきます。

本当にそれでいいか夫婦で話合いをする

まずもって,「本当にそれでいいか」確認してください。住宅の名義を変更し,所有者が変わるのですから,住宅に関する権利や義務も全部相手方に移ります。売却をしたり,不動産を担保に入れてお金を借りたりするのも,原則として所有者の一存でできることになります(当然夫婦で相談すべき事柄ですが,,)。

あと,名義変更をする理由や動機が妥当かどうか,効果の期待できる適切なものかどうか,というところも今一度確認ください。法的なことや税金のことが分からなければ,「夫婦間で贈与したいと思っているが,問題ないか相談したい」として,決める前に司法書士に相談してください。

よく考えて,やると決めたら次のステップに進みます。

贈与契約をして贈与契約書を作る

後のトラブルを避けるために贈与契約書を作ります。この贈与契約書を,不動産の名義変更に使うことができます。贈与契約書の作り方や書き方については,以下の記事に詳しく書いておきましたから参考にしてください。ご自分でするのが難しければ司法書士に書類作成を依頼してください。

贈与契約書の作り方・書き方・作成方法を説明します

贈与契約書の書式見本(ひな形)

夫婦間で奈良県の住宅を生前贈与する贈与契約書

法務局に所有権移転の登記申請(名義変更)をする

贈与契約書を作って契約が成立し,効力が生じたら,法務局で登記名義の変更をします。具体的には,「年月日贈与」を登記原因とする「所有権移転登記」等を法務局に申請して登記簿の名義を書き換えます。登記が完了したら,新しい権利書(正確には,現行法上,「登記識別情報」といいます。)がもらえるので,これを大切に保管します。

名義変更の登記申請をして権利書(登記識別情報)をもらうまでの手続きはだいたい以下のとおりです。

申請書等の作成

登記申請書と登記原因証明情報を作って夫婦双方が押印し,登録免許税を計算して税額分の収入印紙を申請書に貼る。

登記申請書の書式見本(ひな形)

奈良県王寺町の司法書士の夫婦間贈与の登記申請書

登記原因証明情報の書式見本(ひな形)

奈良県で居住用不動産(住宅)を夫婦間贈与する登記の登記原因証明情報

添付書類の準備

登記申請書の添付書類を準備する。

贈与者(あげる方)
  • 権利書
  • 印鑑証明書
受贈者(もらう方)
  • 住民票

法務局に登記申請

登記申請書と添付書類をセットして管轄の法務局に提出する。つまり登記申請する。

登記完了と権利書の受取り

一定期間経過後登記が完了するので,法務局で権利書登記識別情報を受け取る。同時に登記簿謄本(登記事項証明書)を請求して受取り,登記がちゃんとされているか確認する。

登記申請書についてごく簡単なまとめ記事が法務省のWEBサイトにあります。以下のリンクをご覧ください。なお,やり方が分からない人は司法書士に登記手続きを一式依頼してください。全部司法書士がやってくれます。

法務局トップページ>不動産登記申請手続>不動産登記の申請書様式について

税務署に贈与税の申告(夫婦間贈与の特例を使う)をする

最後に,贈与の翌年の2月1日から3月15日までの間に,必ず贈与税の申告をして,夫婦間贈与の特例の適用を税務署に届け出ます。これはぜったいに忘れてはいけません。これをしないと先にも述べたとおり普通の贈与になってしまいます。普通の贈与になると基礎控除を超えた部分が贈与税の対象になり,大変な負担です。

申告するのは翌年の2/1から3/15なので,うっかり忘れないように準備しておかないといけません。専門家に依頼すると記録を残して管理してくれるので忘れる心配はありません。

ホーム>申告・納税手続>税務手続の案内>相続・贈与税関係>[手続名]贈与税の申告手続

 

簡単ではありますが,以上でもって,「夫婦間贈与の特例を使って贈与税の課税なく居住用不動産(住宅)の生前贈与とこれによる名義変更をする方法」の説明を終わります。

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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子供や孫に贈与税非課税で生前贈与・名義変更するとき

贈与税非課税で土地や建物を子供や孫に贈与し登記名義を変更する方法(相続時精算課税)

 

奈良王寺の明徳司法書士事務所に贈与契約書の作成を相談依頼

贈与契約書の作り方・書き方・作成方法を説明します

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

 

生前贈与(生前相続)しようかな,,,

この記事をご覧になったあなたは,何等かの理由で,ある財産を,ある関係の人に生前贈与(生前相続)しようと考えているはずです。

何らかの理由とは?

相続税の基礎控除額が引き下げになって相続税が課税されないか心配なので,相続税の節税対策として生前贈与をしようと思い立ったのでしょうか?それとも,

相続税がかかるかかからないか知らないけど,自分が元気なうちに財産を贈与して,有意義に使ってほしいと思っておられるのでしょうか。

ある財産とは?

預貯金や現金でしょうか,それとも土地や建物,収益アパートやマンションといった不動産でしょうか。それともその他の財産?

ある関係の人とは?

おそらくは,贈与の相手方は,子供さんやお孫さんででしょう。

ところで,生前贈与を思い立ったら,次にお考えになるのは,「どうやったらいいのか」ということでしょう。贈与するとはいうものの,ただ財産を渡してしまっていいものか。また,財産の種類によっては,名義変更の手続きをしなければいけないが,誰に相談や依頼をしたらいいのか。このようなことが分からない。贈与することは決めているのみやり方が分からないから進められない。時間ばかりが過ぎる。

ちょっと待ってください。そうだとしても,よく分からないまま贈与してはいけません。つまりは,生前贈与をするとして,次のようなことをしっかり理解して正しく決断し,間違いのない手続きをすべきです。

  • 生前贈与をするのはいいが,贈与税はかからないのか?
  • 贈与税の申告が必要かどうか,また必要だとして手続きはどうするのか
  • 贈与契約書は作ったほうがいいのか,作成方法はどうしたらいい?
  • 贈与した財産の名義変更の手続きはどうやったらいいのか

ということで,今日は,このうち3.の,「贈与契約書の作り方等」について説明します。

そもそも贈与税がかかるのかどうか,またその申告の仕方,そして贈与財産の名義変更等については,別記事をご覧になるか,直接事務所にご相談ください。

 

贈与契約とは何か

まず,契約書を作る前提として,贈与契約の意味内容を押さえておきます。どういう契約をしようとしているのか理解しておくのは大事です。

贈与契約とは,大方お分かりのとおり,「一方が財産を他人に無償で与えると希望し,他の一方がこれを受け取ることを承諾する」ことによって成立する契約です。一方が「財産をあげるよ」と言い,一方が「うん分かったもらう」と言えば贈与契約成立です。これ以上に何も必要ありません。贈与契約は,法律上,

  • 典型契約(民法に契約のことが書いてある典型的な契約という意味)
  • 無償契約(もらう方に対価の支払い義務がない契約のこと)
  • 片務契約(原則としてもらう方に何ら義務がなく,あげる方にあげる義務だけ生じるという意味)
  • 諾成契約(契約書作成等しなくても,意思表示の合致だけで契約が有効に成立する契約)

のように分類整理できます。

(贈与)
民法549条 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

 

贈与契約書は作らなければいけないのか,書面化は必要なのか

ん?諾成契約とは契約書を作らなくても契約は有効に成立するのだよね?ならば契約書作成は必要ないのでは?と思われるかもしれません。しかしそれはあくまで実体法的(理論的)な話であって,やはり契約書は作るべきです。

なぜか。

言った言わないのトラブルを避けるため

まず第一にトラブルを避けるためです。この記事の冒頭では「財産をあげる方」の目線でお話をしてきましたが,もしかするとこの記事を読んでいる人は「財産をもらう方」であるかもしれません。贈与すると言っていた財産を贈与してくれないとか,贈与すると言っていた金額を贈与してくれないとか,そういったトラブルを避けるため,両親や祖父母との間で贈与の合意ができたら,必ず契約書を作成しておきましょう。

ついこの間まで生前贈与するよと言っていた祖父母の認知症が進んで判断能力がなくなり,贈与契約という法律行為が不可能になるかもしれません。また,高齢者であれば,いつ何時急死して,贈与契約の形が残らないままになってしまうかもしれません。契約書がないと他の相続人がその贈与を認めてくれるとは限らず,遺産分割が揉める可能性があります。

紛争になったときの証拠として

紛争になったら最後は贈与契約の事実を証明できるかどうかの問題になります。贈与の当事者であって,財産をもらった人の言い分だけでは証拠として弱いです。細かい話は割愛しますが,ちゃんとした贈与契約書があれば,証拠として非常に強力です。よほどのことがない限り,贈与契約があった事実を認めてもらうことができるでしょう。

税務署に「名義預金」と認定されないため

相続税の節税のために子や孫の名義の預貯金口座に生前贈与をするなら,後々税務署にいわゆる「名義預金」とみなされないよう手続きすべきです。預貯金口座が形式上子や孫の名義になっていても,これは未だ,実質上,祖父母や親の所有する財産であって,生前贈与はなかったとみなされる(贈与を否認される)場合があります。名義預金と認定されないようにする対策はいろいろありますが,受贈者が署名押印した贈与契約書を作成しておくのも一つのファクターとして重要です。

贈与財産の名義変更手続に使用するため

贈与者と受贈者との間で,確かに贈与契約があったことを証する贈与契約書は,不動産の名義変更(所有権移転登記)等財産の移転に関する法律手続きをするのに使用できます。例えば贈与財産が不動産の場合,契約後に法務局に登記申請をして登記の名義書換をします。不動産の登記をするには,その登記をする原因となった事実関係を書面にして法務局に提出する必要があります。理由なく名義変更はできないのです。贈与契約があったことによって所有権が移転し,よって登記申請をするときは,贈与契約書をその書類として使えます。もし贈与契約書を作成していないなら,司法書士が特別に登記原因証明情報という書類を作成して,贈与契約書の代わりにします。

契約書を作らない贈与契約は贈与者において一方的に取り消すことができるので,契約を取り消されないようにするため(重要)

必ず契約書を作らなければいけない贈与契約に特有の理由があります。それは,契約書を作っていない贈与契約,すなわち「書面によらない贈与」は,贈与者の気が変われば,その未履行の部分について,法律上自由に取り消すことができる仕組みになっているからです(財産をもらう受贈者からも取消しできます。)。売買契約などほかの契約はこういう仕組みになっていません。書面がなかったとしても,一旦契約した以上,一方的に取り消すことは許されません。しかし贈与は別です。贈与というのは財産を無償で与えるという特殊な契約なので,契約の拘束力が少し弱く設定されています。今度財産をあげるあげないなんていうやりとりは,親族間でよく言い交される内容です。契約書を作らず,実際に行動に移していないそんなやりとりに,契約が成立したものとして,法律上強い拘束力を認める必要はないという考え方です。

すなわち,贈与は書面にしておかないと,実際にもらうまで安心できません。「やめた」と言われればそれまでです。なので,贈与契約をしたら必ず書面化しておくことが,とりわけもらう側にとっては重要です。繰り返します。契約書を作らない贈与契約は法律上一方的に取り消すことができるため,取消しを防ぎたければ書面化は必須です。

(書面によらない贈与の撤回)
民法550条 書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

 

贈与契約の種類

書面によらない贈与は履行が完了するまで取消しできると言いました。贈与契約には,書面による贈与と,書面によらない贈与がありそうです。その他,贈与契約には,いくつかの種類がありますので,この際まとめて贈与契約の種類と,それぞれの契約の効力等を一覧しておきます。

一般的な贈与

書面による贈与

贈与契約は諾成契約なので口頭で成立します。契約書を作らなくても贈与は成立しますが,書面によらない贈与は取消しできるので,書面による贈与をおすすめします。贈与契約書を作成して行う贈与契約が書面による贈与です。

書面によらない贈与

契約書を作成せずに行う贈与,つまり口頭等のやりとりによって成立した贈与です。履行が完了していない部分について,当事者が一方的に取消しできることは,前述のとおりです。

特殊な贈与

定期贈与

毎月月末とか,毎年年末とかいう具体に,一定の時期を決めて贈与をすることができます。そういう贈与を定期贈与といいます。定期贈与は,期間や期限を切ってすることもできますが,期間や期限内に贈与者が死亡したときは,その時点で効力を失います。

(定期贈与)
民法552条 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。

負担付贈与

負担付贈与とは,負担が付いた贈与のことです。誰の負担かと言えば財産をもらう人,つまり受贈者の負担です。負担とは何かというと,何かしら一定の給付を為す債務を負わせることです。こういう契約も贈与です。贈与の対象と負担との間に対価関係がないので,負担付贈与も無償契約です。ただし,受贈者も債務を負うので,片務契約ではなく双務契約になります。双務契約になったらどうなるか等,契約の効力は難しいので,ここでは詳細を述べません。

(負担付贈与)
民法553条 負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。

死因贈与

財産をあげる人,贈与者の死亡によって契約の効力が生じるようにする贈与契約を,死因贈与と呼びます。こういう贈与契約もできます。つまり,いま贈与契約をするけれども,契約後すぐに財産を受贈者に移転させず,贈与者が死んだ際に渡すような契約です。贈与者の死亡を原因として,その際に契約の効力が生じる贈与契約なので死因贈与というのです。死亡によって財産移転の効力が生じる法律行為には,ほかに,「遺贈(いぞう)」があります。遺贈とは遺言により遺言者の財産を譲渡することです。死因贈与は契約であり,遺贈は単独行為ですが,人の意思表示によって死亡時に財産を移転させる行為である点において極めて似ているので,死因贈与には遺贈に関する民法の規定が準用されます。

(死因贈与)
民法554条 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

 

贈与契約書の作り方

では本題に入ります。贈与契約書の作り方,贈与契約書の書き方等についてです。

贈与契約書に絶対かかなければいけない要件事実

贈与契約書であろうがどんな契約書であろうが,契約書は,当事者間で成立した契約の内容を書面化して記録し,証拠とするものです。贈与契約書である限りは,ちゃんと贈与契約が成立したと解釈できる記載をしなければいけません。また,契約とは,2当事者の,人と人との法律上の合意ですから,その当事者を必ず書面上登場させ,また何処の誰か分かるように記載します。そして,贈与契約は,ある財産に関する権利を相手方に無償譲渡する契約なので,譲渡の対象となる財産権の内容を正しく特定しておく必要があります。日付も必要です。

まとめると,最低限以下の内容を,一定の精度で,必ず契約書に記載しておかなければいけません。そうでないと,贈与契約があったことを記録し証明することができないからです。

  • 贈与契約をした日付
  • 贈与契約の当事者二名
  • 贈与契約が成立した旨(財産の無償譲渡の合意(申込みと承諾の合致))
  • 特殊贈与(定期贈与・負担付贈与・死因贈与)をするときはその旨
  • 贈与財産の表示

契約書の作り方と見本

ここまでで基本的なことが分かったところで,本題である契約書の作り方を説明します。いくつかの契約書の見本を示して,それぞれ注意点を書いておきます。あくまで見本ですので,文章表現は極めて簡略化していますからご注意ください。このとおり書かなければいけない訳ではありません。

不動産を贈与する一般的な贈与契約書

贈与契約書

●を甲とし,●を乙として,本日以下のとおり契約(以下,「本契約」という。)を締結した。

第1条 甲は乙に対し,下記の不動産(以下,「本物件」という。)を贈与することを約し,乙はこれを承諾した。

第2条 甲は乙に対し,平成●年●月●日を期限として,本物件を引き渡し,かつ所有権移転登記手続をする。

第3条 本物件に課される公租公課の清算は行わない。

第4条 本物件の所有権移転登記費用は乙の負担とする。

第5条 本契約の契約書作成費用は甲乙が各2分の1の割合で負担する。

記(不動産の表示)

所在 ●
地番 ●番
地目 ●
地積 ●㎡

所在 ●
家屋番号 ●番
種類 ●
構造 ●
床面積 1階 ●㎡
    2階 ●㎡

以上

本契約の成立を証するため,契約書2通を作成し,各自1通を保有する。

平成●年●月●日

住所 奈良県北葛城郡王寺町王寺二丁目7番14号
氏名(甲) ● 印

住所奈良県北葛城郡王寺町二丁目7番14号
氏名(乙) ● 印

  1. タイトルは別になくてもかまいません。契約書,贈与契約書,不動産贈与契約書などとするのが無難です。
  2. 本文の条項は最低限第1条のみでOKです。
  3. 第2条がなければ契約後ただちに引渡請求や移転登記請求ができます。
  4. 第3条は固定資産税等の清算条項です。不動産を売買するときは,必ず税負担の清算について契約します。固定資産税等は毎年1月1日現在の登記簿上の所有者に請求がくるからです。
  5. 第4条は,登記費用を誰が持つかの合意内容です。財産をもらう人が出すのが普通ですが,誰が負担してもよいです。契約自由です。
  6. 第5状は,契約書作成費用の負担者についての合意です。印紙代や,契約書作成を司法書士等に依頼した場合の報酬を誰が支払うのか決めます。
  7. 贈与する財産はしっかり特定して書いてください。不動産なら,登記簿謄本(登記事項証明書)を取得して,登記されている内容のとおりに記載します。
  8. 契約書作成日付は必ず書いてください。
  9. 当事者の記載は,住所と氏名を必ず書きます。可能な限り自署してください。
  10. 印鑑は実印の押印をおすすめします。印鑑証明書も各1通取得しておいてください。登記にも使用します。
  11. あと,契約書には収入印紙200円分を貼ります。贈与契約書は,不動産等の譲渡に関する契約書であって,契約金額の記載のないものに該当するので,印紙税法の決まりによって,印紙貼付により200円を納付します。契約書に印紙を貼ったら必ず消印をしてください。

金銭を贈与する一般的な贈与契約書

今度は金銭を贈与する場合です。上記契約書と異なる部分(本文の条項)のみ書きます。

第1条 甲は乙に対し,金110万円を贈与することを約し,乙はこれを承諾した。

第2条 甲は,平成●年●月●日までに,前条の金員を,乙の指定する以下金融機関口座に送金する。
●銀行 ●支店 ●口座 口座番号●
●名義

  1. 第1条のように,贈与する金額を,「金●円」とはっきり書いてください。
  2. 第2条は,履行期限と履行方法の規定です。これがなくても贈与契約は有効です。もっとも
  3. 記録を残すため,贈与の履行すなわち金員の支払いは銀行送金にすることをおすすめします。送金先口座を明確に指定しておくとよいです。
  4. なお,金銭贈与には印紙税の課税はありませんから,印紙は貼らなくてよいです。

不動産の負担付贈与契約書

次は,特殊な贈与である負担付贈与契約書の書き方です。同じく不動産を贈与する一般的な贈与契約書と相違する本文の部分のみ紹介します。

第1条 甲は,下記の不動産(以下,「本物件」という。)を,次条の負担付で,乙に贈与することを約し,乙はこれを承諾した。

第2条 乙は,贈与を受けた負担として,甲の配偶者かつ乙の母である●を,その生存中扶養しなければならない。

第●条 乙が次の一に該当したときは,甲は一定期間を定めて負担の履行を催告し,本契約を解除することができる。
① 乙が第2条による負担を履行しないとき
② 乙にギャンブルや過度の飲酒その他生計の維持に差し支えるような非行があり,第2条による負担の履行が滞るおそれが明白なとき

第●条 前条の規定によって本契約が解除されたときは,乙は,直ちに本物件を甲に返還して引渡し,かつ所有権移転登記手続をしなければならない。

  1. 第1条で,負担付贈与であることを明確に示しています。
  2. 第2条は負担の内容です。今回は,母の扶養を負担としたケースです。ここまで必須の記載内容です。
  3. 第●状として,契約解除条項をつけています。負担付贈与は双務契約に関する規定に従うので,負担を履行しないときは法律的に契約を解除(法定解除)できますが,念のため特約として契約書に記載したものです。
  4. なお,契約が解除された場合の清算,現状回復を別条として記載しました。

不動産の死因贈与契約書

死因贈与契約書の例も示しておきます。贈与者の死亡によって財産譲渡の効力が生じる贈与契約です。

第1条 甲は乙に対し,下記の不動産(以下,「本物件」という。)を贈与します。ただし,契約の効力は,甲が死亡したときに生じるものとする。

第2条 本契約の執行者(死因贈与執行者)として,以下の者を指定する。
住所 ●
氏名 ●

第3条 甲が死亡したときは,前条の執行者は,乙に対し,速やかに本物件を引き渡し,かつ所有権移転登記手続をする。

  1. 第1条で死因贈与契約であることを明示します。「贈与者の死亡によって効力が生じる」とか,「贈与者が死んだときに」とか,死亡時に財産譲渡の効力が生じる旨適宜明記します。
  2. 第2条で死因贈与契約の執行者を定めています。遺贈の場合の遺言執行者に相当します。贈与者が死んで契約の効力が生じたら,不動産の引渡しや登記の移転をしなければいけませんが,執行者が指定されていなければ,これらの履行義務は相続人が行います。しかも,贈与者の相続人の全員の協力が必要です。贈与をよく思わない相続人が手続きに協力しないと非常にやっかいなので,死因贈与契約の執行者を契約書で指定しておくとその者が単独で履行義務を行ってくれます。
  3. 第3条は執行者の義務を確認したものです。これがなくても当然そうします。

 

贈与契約書の作成を司法書士に相談・依頼する

いかがでしたでしょうか。贈与契約自体は,無償で財産を与える,という非常に明白で単純な契約です。でも,いざ契約書を作成するとなると,よく分からないことも出てきます。

  • 贈与税や相続税のこと
  • 契約書の作り方や書き方
  • 印紙税
  • その後の名義変更の手続き(所有権移転登記)のこと
    などなど

これでいいのかな。案外難しいな。不安だな。そのように思われる方は,贈与契約書の作成について司法書士に相談してみてください。司法書士は,不動産に関する法律続きや税務に詳しいので,きっと満足のいくアドバイスが受けられるはずです。

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相続税が払えないケースの対策と手続き

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

相続又は遺贈によって相続税がかかる財産を相続した相続人は,申告期限内に相続税の申告と納税をしなければいけません。

相続税申告の準備(ステップ)と,期限(いつまでに)について説明します

しかし,相続税の納税(支払い)をしようにも,どうにも払えないケースがあります。相続税がかかるくらいの財産を相続しておいて変な話ですが,そういうことがあるのです。

 

相続税が払えないケース

例えば次のようなケースが考えられます。

相続財産が不動産ばっかりで,預貯金等の金融資産が少ない又はほとんどない

故人が商業地や一等地の不動産ばかり持っていて,納税資金対策を十分にしてくれていない場合,遺産に現預金や金融商品が少ないかほとんどない場合があります。

確かに莫大な相続税評価の不動産を相続したが,その分相続税の税額も大きくなる。不動産はたくさんあるが,相続税は現金で支払わないといけない。少なくともすぐに市場で換金できる金融商品等がないと,とても相続税を支払えそうにない。バカみたいな話ですが,1番多いのはこのパターンです。

共同相続人の遺産分割協議がまとまらない

遺産分割協議が決着しないと銀行口座が凍結されたまま出金できない

共同相続人の遺産分割ができないと銀行口座の凍結が解けません。したがって口座の解約払戻しができず,現金が準備できません。現金が出せないと相続税が支払えない,とそういうわけです。

金融機関によっては法定相続分のみの引出しを認めるところもありましたが,最近最高裁の判決が出て,「銀行預金が遺産分割の対象になる」ことがはっきりしましたので,今後は法定相続分の引出しは不可となるはずです。

遺産分割協議のやり方と遺産分割協議書の作り方

預貯金の相続手続きをして解約払戻しする(遺産整理業務)

遺産分割協議が決着しないと相続登記できないから不動産が売れない

とりあえず売れそうな不動産を売ってしまって納税資金を確保しようにも,遺産分割が終わってないと相続登記ができません。相続登記ができないと買主名義に売買登記ができないので,売買契約を進められません。登記できない物件を買う人はいないからです。なお,相続人は,各自法定相続による所有権移転登記をすることができますが,共有で登記すると今度売却するときに売主が共有となり,結局全員の判子がないと売れません。それができるくらいなら遺産分割が決着しているでしょう。持分のみでは不動産売却はできません。

 

ではどうしたらいいのか

以上のようなケースで取り得る手段をいくつかお知らせします。なお,何も対策をしないで相続税の申告期限を過ぎたら,延滞税や無申告加算税がかかり経済的に大損です。場合によっては重加算税を課されます。

とにかく不動産を売る

別に共同相続人で揉めているわけではないが,とにかく遺産が不動産ばかりで現金等がないなら,不動産を売ればいいだけです。遺産の中に評価の高い不動産があれば,市場性があるからきっと売れます。ただし,そういう不動産は売りたくないものですが,,,

不動産を売却するためには,とにかく以下のことをしてください。

相続登記をする

前述のとおり,相続登記(相続による所有権移転登記)を済ましていないと不動産は売れません。なので,直ちに司法書士に依頼して相続登記の準備をしてください。登記の状態や戸籍収集状況により,相続登記に時間がかかる場合もあります。速やかに着手してください。

自分でする場合はこちら。

相続登記(名義変更・名義書換)の手続きを自分で法務局に申請する方法

同時に不動産仲介業者と媒介契約をする

素早く動いてくれそうな不動産仲介業者に依頼して買主を探してください。最悪,不動産業者に買い取ってもらうことも検討してください。買い取ってもらうと相場より安くなりますが,この選択をしたなら仕方ありません。

納税資金を銀行から借りる

不動産を売りたくない場合は銀行から納税資金を借りる方法もあります。物件の価値や収益性などにより,借り方や金利等条件が変わるでしょう。銀行等金融機関に相談して,どういうやり方があるか提案をしてもらいます。

不動産をぜったいに売りたくない場合のほか,不動産を好条件で売るために時間がかかる場合にもこの方法が使えます。

弁護士に遺産分割交渉を委任する

遺産分割ができないと相続税の申告ができないので困ります。そういうときは,弁護士に分割交渉を依頼するのも一つの方法です。弁護士が法的(客観的)な見通しを示し,「このまま揉めていても結局このようになりますよ」と伝えて交渉すれば,もしかすると共同相続人の合意が得られるかもしれません。法的な理解が不足していたり,遺産分割について勘違いしているケースならば,案外すんなり遺産分割協議が成立するかもしれません。協議が成立したら預貯金口座の凍結を解いて,納税資金を出金できます。

家裁に遺産分割審判を申し立てる

まだ少し時間がある場合は,家庭裁判所「遺産分割審判」を申し立てることができます。通常,審判の前に,遺産分割「調停」を申し立てて,調停が不調になってはじめて審判に移行するのですが(法律上最初から審判申立てできるものの,同じ法律上裁判所が調停に付する権限があるから),事情を裁判所に伝えて最初から審判の手続きをお願いしてはいかがでしょうか。それができるかどうかは,家庭裁判所の実務,つまり管轄裁判所の判断になります。

相続税の「延納制度」を利用する

以上が駄目なら国にすがるしかありません。要するに,相続税法に定められた,正規の手段によって,国に救済をお願いするほかありません。

一つ目は延納です。延納とは,要するに納税の先延ばしです(具体的には分割払い)。先延ばしした部分について国からお金を借りているような形になるので,この部分について利子税がかかります。つまり,最初に一括で納税するのと比べ,総額で割増金額を納めないといけません。

なお,延納制度は,希望すれば必ず適用を受けられるような届出制ではなく許可制です。つまり,要件を揃えて国に申請し,さらに許可を得られるかどうかは国次第のそんな制度です。

延納の適用を受ける要件はこうです。

次のすべてを満たすこと。

(1)相続税額が10万円を超えること。
(2)金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。
(3)延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること。
ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。
(4)延納申請に係る相続税の納期限又は納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。

(2)の要件の意味は,相続財産以外の自分の財産を加えても納付が困難だという意味です。相続財産には現金がないが,自分はたくさん現金を持っているという場合,この要件を満たさずに延納はできません。国からすれば,「自分の金でとりあえず払えよ」ということです。

担保に出せるのは次の財産限定です。ただし,担保は相続財産じゃなくてもOKです。

(1)国債及び地方債
(2)社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
(3)土地
(4)建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの
(5)鉄道財団、工場財団など
(6)税務署長が確実と認める保証人の保証

※税務署長が延納の許可をする場合において、延納申請者の提供する担保が適当でないと認めるときには、その変更を求めることとなります。

ほか,詳しくはこちらをご覧ください。

ホーム>税について調べる>タックスアンサー>相続税>相続税の申告と納税>No.4211 相続税の延納

相続税の「物納制度」を利用する

最後に物納の制度について少し説明します。読んで字のごとく,物納制度とは,相続税を現金ではなく「物」で納める制度です。

こちらも許可制であって,何でも間でも代物で支払えるものではありません。厳格な要件を満たした一定の財産しか国は取ってくれません。また,査定は相続税評価額となるので時価より不利ですし,相続税の特例を利用して評価した宅地はその特例による評価でしかとってくれません。質屋に取られるようなもので,かなり買い叩かれる?というわけです。

物納の要件は,以下をすべて満たすこと。

(1)延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること。
(2)物納申請財産は、納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、次に掲げる財産及び順位で、その所在が日本国内にあること。
第1順位 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等※1
第2順位 非上場株式等※2
第3順位 動産
※1 特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含み、短期社債等を除きます。
※2 特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含み、短期社債等を除きます。
(注)
1 後順位の財産は、税務署長が特別の事情があると認める場合及び先順位の財産に適当な価額のものがない場合に限って物納に充てることができます。
2 特定登録美術品(美術品の美術館における公開の促進に関する法律第2条第3号に規定する登録美術品で相続開始の時において既に登録を受けているものをいいます。)については、上記の順序にかかわらず一定の書類を提出することにより物納に充てることができます。
(3)物納に充てることができる財産は、管理処分不適格財産に該当しないものであること及び物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと。
(注)
自然公園法の国立公園特別保護地区等内の土地(平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に環境大臣と風景地保護協定を締結していることその他一定の要件を満たすものに限ります。)は、物納劣後財産に該当する場合であっても、これを物納劣後財産に該当しないものとみなします。
(4)物納しようとする相続税の納期限又は納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること。

(1)を見ると分かるように,延納ができない場合にはじめて物納ができます。つまり物納は最後の手段だということです。

物納についての詳しい情報は以下をご覧ください。

ホーム>税について調べる>タックスアンサー>相続税>相続税の申告と納税>No.4214 相続税の物納

延納や物納の具体的な手続きについてはこちらに書いてあります。もっとも,手続きは相当複雑ですから,相続税専門の税理士に依頼して行います。

ホーム>申告・納税手続>延納・物納申請等

遺産相続が専門で得意分野とのことですが、どんな相談や依頼ができますか?

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相続税の延納や物納の相談や依頼をする税理士の選び方

相続税の申告を依頼する専門の税理士の選び方

 

奈良王寺の明徳司法書士に相続税の税理士の紹介を依頼

相続税の申告を依頼する専門の税理士の選び方

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

当事務所(明徳司法書士事務所)は遺産相続関連の法律実務を専門にしているので,よく相続税の申告を任せる税理士の先生の紹介を頼まれます。基礎控除の引き下げ等,相続税の課税対象が拡大するなかで,今後も相続税の申告をしなければいけない相続人の方が増えていくでしょう。

そこで,今後あなたが遺産相続をして,相続税の申告をしなければいけないときに,その申告業務を依頼する税理士をどうやって選んだらいいかをお教えします。

本音でいきますから,一般に言われていることと少し違うかもしれませんがご了承ください。

 

税理士の探し方

相続税の申告を依頼する税理士の探し方に「絶対こうしなければならない」というルールはありません。インターネットでも,タウンページでも,誰かの紹介でもよいです。ネットだからいいとか,紹介だからいいとかいうことは,一概には言えません。

「探し方は大した問題ではない」と言っておきましょう。

 

税理士の選び方

最優先ポイント

結論から行きます。

相続税の申告をする税理士を選ぶ際にもっとも重要なのは,

「コミュニケーションがとりやすいかどうか」

です。

なんだそんなことか,と思われては困ります。これはとても重要なことです。なぜなら,

  1. 業務を行ううえで,税理士に対し,「相続人の過去の預貯金通帳」など,プライベートに踏み込んだ部分まで情報の開示をする必要があるからです。相続税の申告業務においては,「相続財産がどれだけあるか」というところが1番大事な部分になります。それにより税額等が変わるからです。それを正確に判断するには,死亡時の通帳残高を見るだけでは不十分であり,相続人の通帳も確認して,生前贈与等がないかをチェックする必要があります。場合によってはそれも相続財産として計算しなければいけないからです。税理士を信頼し,円滑にコミュニケーションをとれなければ,あなたのプライバシーを開示するのが不安になるでしょう。
  2. また,コミュニケーションが十分とれず,業務上の情報のやり取りが不十分になると,言った言わないなど,思わぬトラブルになることがあるからです。せっかく税理士報酬を支払って長い時間をかけて申告までこぎつけたのに,その結果について納得がいかないとなると,依頼人も仕事をした税理士も不幸です。納税額に争いがあるなんてことになると,現実に支出するお金の問題なので大変です。

その意味で,冒頭の探し方の記載にかかわらず,じっさいに相続税の申告をしたことがある方から紹介された税理士に頼むというのは一考に値します。コミュニケーションがとりにくく,気に入らない税理士をわざわざ紹介する人はいないはずですから。

次点ポイント

次に重視すべきポイントは,

「相続税の申告の経験が豊富か否か」

です。

税理士にも専門分野や得意分野がある

税理士にも開業医と同じように実は得意分野・不得意分野があります。開業医のように看板を出していないだけです。

大きくは,企業会計・法人税申告を得意とする税理士と,資産税(相続・贈与等)の申告を得意とする税理士とにわかれます。なので,まずもって基本的に,依頼をするのは資産税の申告を得意とする税理士にしましょう。

税理士
「法人税」が得意 「相続税」が得意

次にもう少し分け入ってお話しします。

相続税の申告案件のうち,小規模な案件の場合(金融資産が中心であったり、資産総額が1億円前後の案件の場合),税理士にそこそこの経験があれば結果に大差はないはずです。

この場合,上記のコミュニケーション要素を重視して判断しましょう。

しかし,資産規模が大きい場合や,遺産に農地や広大地など評価の複雑な不動産が含まれる場合は、税理士の判断一つで税額に大きな差が出てきます。よって,相続税の申告を依頼する税理士を慎重に選ぶ必要があります。

この場合逆に,コミュニケーション要素を少し譲って判断しましょう。つまり,相続税専門を大々的にうたっている(かつ実績のある)税理士の中から,コミュニケーションのとれる税理士を選んで依頼するとよいです。

 

相続税の申告を税理士に依頼するまでのステップ

通常は以下のステップを踏んで契約に至ります。もっとも,進め方は税理士によって様々ですから,直接相談してください。

面談

まず最初に税理士と直接会って相談します。面談は税理士の事務所でしたり,税理士がお客様のもとに出張したりして行います。

概略の聞き取り

  • 相続人の確認
  • 相続財産の概略
  • 生前贈与の有無等
    など

報酬等見積もり

ただし,相続財産の評価額で報酬を決定するケースが多いのでこの時点で具体的な金額を出すのは困難です。

  1. 「概略の聞き取り」を前提に概算を提示するか
  2. 報酬規程の提示のみ

になるはずです。しかしおよそのことは分かります(それほど大きい誤差は出ないでしょう)。

契約

業務に関する契約を締結します。業務内容と報酬について合意します。

業務遂行

契約ができたら本格的に業務に着手します。以降,必要に応じてやりとりをしながら進めていきます。

 

判断できなかったら司法書士に聞く

以上,どうでもいい要素,一概に言えない要素は排して可能な限り簡単に説明しましたが,それでも誰に頼んだらいいのか分からないことがあるはずです。税理士にしろ,弁護士にしろ,司法書士にしろ,資格業者の専門分野や能力を正確に判断するのは,一般の方には難しいです。

そういうときは司法書士に聞いてください。

大きくは業界の中にいる司法書士は,税理士や弁護士のことをよく知っていると言えます。とりわけ当事務所は遺産相続の仕事をメインとしているので,ある程度のことは理解しているつもりです。

なお,当事務所が遺産相続の手続きを担当したお客様には,必要性とご要望に応じ,信頼できる税理士の先生をご紹介することができます。

遺産相続の手続きは「どこの」「誰に」相談や依頼をしたらいいのか(司法書士?弁護士?税理士?)

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相続税ではなく所得税???

相続税ではなく所得税の申告をするのが義務になるケース

 

相続税ではなく所得税の申告をするのが義務になるケース

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

父親などの被相続人が死亡したときに,相続税のほかに,所得税のことを考えないといけないケースがあります。すなわち,相続税とは別に,所得税の準確定申告をしなければならない場合があるのです。今日は,少しだけ,これに関するお話をします。

 

相続時(人が死んだとき)に考えなければいけない税金

相続が開始していろんな書類を整理していると,何やら税金の申告をしなければいけない気がしてきます。もしかしたら私って,やらないといけない税金の申告や支払いを忘れているんじゃないか?と心配になるものです。そこで,相続のときに考えなければいけない税金のうち,重要なものを押さえておきます。

 

その前に税金の分類を確認しておく

少し回りくどくなりますが,基本知識として,先に税金の分類を確認しておきます。

納める相手による分類

  • 国に納める税金を「国税」といいます。
  • 地方公共団体に納める税金を「地方税」といいます。
  • 地方税はさらに,「都道府県民税」「市町村民税」に分かれます。

納め方?払い方?取られ方?による分類

  • 直接に国等に納めるのを「直接税」といいます。
  • 民間人等に支払い,その民間人等が代わりに国等に納めるのを「間接税」といいます。

課税される対象による分類

  • 所得(収入・実入り,フロー)に課税されるのを「所得税」といいます。
  • 資産(持ってるもの,ストック)に課税されるのを「資産税」といいます。
  • 消費(物の購入やサービスを受けること)に課税されるのを「消費税」といいます。

どの税金が関係ありそうか

納める相手や取られ方ははっきりいってどうでもいい。課税されるのかされないのかが知りたい。

そうですね。なので,上記分類のうち,「課税される対象による分類」を確認します。

このうち,相続に関係ありそうなのは,「所得税」「資産税」だと分かります。繰り返しますが,所得税は所得に課税される税金。資産税は資産に課税される税金。相続でお金が動いたから,どっちも課税されそうで怖いですよね。

では,相続の当事者である,被相続人(亡くなった人)と,相続人に分けて考えてみます。

「被相続人(亡くなった人)」に課税される税金

所得税

故人が亡くなったのはいつですか?通常人は年の途中で亡くなります。例えば,10月5日に亡くなったとします。そうすると,その年の1月1日から死亡日までの所得について所得税が課税されます。

亡くなった人が生前所得税の確定申告をしていない場合(一定額の所得がないとか,源泉徴収されているとか),死後に,故人の所得税について心配することはありません。しかし,故人に相応の所得があって,毎年春に確定申告をしていた場合,死後に故人の確定申告をせねばならない可能性があります。

この場合に行うのが所得税の準確定申告です。故人はもう亡くなっているので,翌年自分で確定申告をすることができません。よって所得税の準確定申告は,故人に代わって,相続人がします。

早速本題の準確定申告が登場しました。年初から死亡日までの所得を確定して被相続人の代わりに相続人が行う所得税の確定申告のことを準確定申告といいます。あとでもう少し説明します。

資産税

生前に,すでに課税されている固定資産税等は,予定どおり支払ってください。支払い義務が残っているだけですから,そのまま支払えばよいです。死後に故人に資産税が課税される余地はありません。死んだ人に所有資産は観念できないからです。

「相続人」に課税される税金

所得税

相続で取得した財産には,所得税はかかりません。まずこの点を押さえてください。相続や遺贈で相続人が得た財産には,すべて,後述の相続税がかかります。相続税は,相続人が所有する資産に課税される資産税です。

ただし例外というか,間違わないよう注意すべき事柄が2点ほどあります。

遺産を売却したり賃貸したりして収入があった場合

遺産相続で相続人に所有が確定した財産を売却したり賃貸したりして収入を得たら,これは「相続人」に対して「所得税」が課税されます。相続人が遺産を相続で取得するところまでは「相続税」でいきますが,所有が確定した遺産はもはや相続人の固有の財産ですから,これを売却して所得があったら当然相続人に「所得税」がかかります。なので,相続人が,自分の所得税の確定申告について考えていかねばなりません。

相続してすぐ売ったような場合,時間的に相続に近いので混同しがちですが,例えば数年後に売却したときと比較すれば理解できる話です。自分の所有資産を譲渡して所得があったら,当然所得税が課税されるからです。

特定の生命保険金を受け取った場合

相続人が,故人を被保険者としてかけていた死亡保険金を受け取った場合,「相続人」に「所得税」が課税されます。次のような内容の保険だった場合です。

契約者 相続人
被保険者 被相続人(死んだ人)
受取人 相続人

生命保険(死亡保険)と遺産相続の権利,生命保険(死亡保険)と相続税の関係についてはこちらをご覧になってください。

生命保険金(死亡保険金)は相続財産になる?相続税がかかる?非課税枠は?この関係を説明します

資産税

相続人が,相続又は遺贈よって取得した財産には,「相続税」が課税されます。前述のとおり所得税ではなく,相続税一本の課税となります。こちらは本題ではありませんので以下の記事に譲ります。

相続税申告の準備(ステップ)と,期限(いつまでに)について説明します

小まとめ

相続時に対応を考えなければいけない税金は,およそ次のとおりです。

  • 被相続人については,所得税(ただし代わりに相続人が準確定申告をする)
  • 相続人については,相続税

では,今日の本題である所得税の準確定申告について説明を続けます。

 

所得税の準確定申告について

年初から死亡日までの被相続人の所得について相続人が代わりに確定申告をする「所得税の準確定申告」について,そのポイントをまとめておきます。

所得税の準確定申告をしなければいけないケース(義務のある場合)

被相続人が以下のような人なら,所得税の準確定申告が必要です。被相続人が毎年確定申告をしていた場合は,今回準確定申告をしなければならない可能性が高いですので注意してください。

自営業者

  • 自営業者(個人事業主)で,所得税を納めなければならない人

給与所得者

  • 給与収入が年2000万円を超える人
  • 2社以上の会社から一定額を超える給与をもらっている人
  • 給与所得以外の所得の合計が年20万円を超える人
  • 同族会社の役員やその親族などで,会社の給与の他に貸付金の利子や不動産の賃料収入などの所得がある人
  • 給与から所得税を源泉徴収されていない人

年金受給者(年金所得者・年金生活者)

  • 公的年金の受給額が年400万円を超える人
  • 公的年金以外の所得の合計が年20万円を超える人
    など

※申告義務の有無については正確にご判断ください。上記は目安です。国税庁関係のWEBサイトを調べるか,税務署又は税理士に確認いただくことをおすすめします。

所得税の準確定申告は誰がするのか

相続人が1名の場合はその相続人がしてください。相続人が2名以上いる場合は,原則として,共同で行います。つまり,申告書を連名で作成して税務署に提出します。

もっとも,別々にすることができないわけではありません。特別な処理をすれば別々にできますが,ややこしいので一緒にしてください。

所得税の準確定申告はどこにするのか

被相続人の死亡時の納税地の税務署にしてください。

所得税の準確定申告はいつまでにするのか(期限)

相続人が,相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月内に,申告書の提出と納税を済ませます。これは義務です。

このとおり期限は「4か月」です。

この記事は3か月内にすべきことのカテゴリーに入っていますが,期限は4か月ですので注意ください。もっとも,なるべく早くしたほうがよいですが。

所得税の準確定申告はどうやってするのか

上記の管轄税務署に対し,申告期限内に,書類を提出して行います。書類は次のとおりです。

  • 所得税の確定申告書
  • 同付表
  • その他の添付書類(源泉徴収票,医療費控除を受けるための領収書,保険料の控除証明書など)

なお,詳しいことは以下のページ等に書いてあります。

国税庁ホーム>申告・納税手続>所得税(確定申告書等作成コーナー)

 

所得税の準確定申告は誰に依頼するか

所得税の準確定申告は税務申告です。なので,これを依頼するのは税理士になります。

故人がずっと依頼している税理士等がいる場合は,そちらに聞いてみてもよいです。

もっとも,所得税の準確定申告をしなければならない被相続人の相続については,一定の相続財産があることが考えられ,相続税の申告も重ねて行わねばならないことがあるはずです。その場合,相続税の申告を依頼する税理士にまとめて所得税の準確定申告もお願いすることができます。

相続税の申告を依頼する専門の税理士の選び方

もし所得税の準確定申告をする税理士をお探しなら司法書士にご相談ください。必要に応じ,税理士の先生をご紹介します。

遺産相続が専門で得意分野とのことですが、どんな相談や依頼ができますか?

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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奈良王寺の明徳司法書士事務所に株の相続や遺産整理業務を依頼

証券会社の株の相続手続きをして売却する(遺産整理業務)

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

父親が亡くなりました。父親が生前株式投資が趣味だったようで,よく証券会社の人と電話でやりとりしていました。死後,家を片づけていると,その明細らしきものが出てきました。大手企業の株式をいくらか所有していらしいです。株主総会の通知書や株主優待券などよく分からない資料もたくさんあります。さて,私は株式のことはよく分かりません。これは相続したらどうなるんでしょうか。またどのように手続きをしていったらいいんでしょうか。

はい。では今日は,会社の株式の相続手続き等について説明します。

ところで,株式にはいろんな種類があります。また,その株式の発行元の会社にもいわゆる大企業から個人事業に近い零細会社まで様々あります。今日は,証券取引所市場に株式を上場している大手企業の株式を相続した場合の話に限定してお話をします。

では早速前に進めます。

 

株式を相続するとはどういうことか?

細かい相続手続きの話に入る前に,基本的なところを押さえておきます。よくご存じの方は飛ばしてお読みください。

株式とは?

「株式」とは,端的に言うと,「会社のオーナーとしての地位」です。株式(オーナーそれぞれが株を持って経営に参加する方式の会社形態のことなんですが)という言葉が通常使われる日本語ではないので分かりにくいですね。もう株式という言葉は忘れてもらってかまいません。「株を持っている」などと表現しますね。株を持っているということは,その会社のオーナーとしての地位を一部所有しているということです。

オーナーなのでその会社をどうするか決められます。株主の集まりである株主総会で会社の経営方針を決められるし(共益権),儲かったら利益の配当を受けることができます(自益権)。通常会社は株式を複数発行していて,株主が多数いるので,株主が共同で会社を所有している状態になります。そうやって,経営の仕方をみんなで決めて,利益を分け合う方式で運営されるのが株式会社であり,そのオーナーの地位や権利をそのもののことを株式といいます。また株式を所有している人が「株主」になります。

イメージ図)

会社
↑所有 ↑所有 ↑所有
株式 株式 株式
↑所有 ↑所有 ↑所有
株主 株主 株主

(株主の権利)
会社法105条 株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。
一 剰余金の配当を受ける権利
二 残余財産の分配を受ける権利
三 株主総会における議決権
2 株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。

株式は相続財産になります

さて,会社のオーナー権である株式も財産的な権利なので,遺産相続の対象になります。よって,たの財産と同じように,相続人が複数いれば共同で遺産相続をする共同相続の状態になりますし,その後共同相続人の全員で遺産分割をして,その分け方を決めることができます。

ここから少し込み入りますが,次のような問題があるのにお気づきになりますか?

  • 故人が所有していた株式は1株とは限らない。例えば3株だったらどうなるか。相続人が3人いたら1株ずつになるのか。
  • 相続が開始してから遺産分割が終わるまで時間がかかるが,その間,会社との関係はどうなるか。

この点大事なことなので少し整理しておきます。時系列にしたがって考えてみます。

相続開始後,遺産分割(協議)をする前の状態

会社の株式を3株持っていた故人が死んで3名の法定相続人がいる場合どうなるか。3人がそれぞれ1株を当然に相続するのではありません。1株1株の株式について,それぞれ3名で所有権を分け合う準共有状態になります(判例)。株式は1株1株独立した権利です。1株1株を1台1台の自動車に見立てて考えてください。自動車を相続したら,自動的に1台1台相続するんじゃないですよね?一旦は(遺産分割までは),自動車1台1台それぞれについて,3人が抽象的な所有持分を持つ形になるはずです。株式も同じです。

イメージ図)

株式1 株式2 株式3
↑(準)共有 ↑(準)共有 ↑(準)共有
相続人 相続人 相続人 相続人 相続人 相続人 相続人 相続人 相続人

※相続人=株主です。

なお,こういう時期にあるとき(株式が準共有状態にあるとき)は,会社との関係が複雑になるので,会社法に特別の規定が置かれています。すなわち,株式が共有状態にあるときは,株主としての「権利を行使する者」を1名決めて,会社に連絡しなければいけません。遺産分割協議等が長引いたら,時と場合によっては,会社に対してこのような届出をする必要も出てきます。

(共有者による権利の行使)
会社法106条 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

遺産分割協議が終わったときの状態

株式の遺産分割には次ようなやり方が考えられます。仮にA会社の株式3株を3人で相続した場合の遺産分割です。

  1. A会社の株式は,長男がその全部を相続する。
  2. A会社の株式は,うち2株を長男が相続し,ほか1株を次男が相続する。
  3. A会社の株式は,そのすべてを,共同相続人が,各3分の1(など)の割合で相続する。
  4. その他,以上の組み合わせ

最初のパターンが1番多いでしょうか。少なくとも,会社ごとに,その株式の全部を,相続人のうちの誰からが単独相続するケースです。これが分かりやすくてよいです。

2番目のパターンもよくあります。3株だと分かりにくいですが,1500株なら,1000株と500株に分けて2名がそれぞれ単独で相続する形です。

3番目と4番目も理論上ないではありませんが,今後も株式の共有状態が解消されず,ややこしいので,これは避けるべきでしょう。将来に渡り,いろんなトラブルやリスクが考えられるからです。

遺産分割で所有が確定したら,会社に対して,株主名簿(オーナー名簿)の書き換えを請求します。具体的な作業は証券会社に連絡して行います。これをしておかないと,会社からの連絡も来ませんし,株主としての権利を行使することができないからです。

(株主名簿)
会社法121条 株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。
一 株主の氏名又は名称及び住所
二 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
三 第一号の株主が株式を取得した日
四 株式会社が株券発行会社である場合には、第二号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号

同126条1項 株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。

いかがでしょうか。株式についてごく単純化してお話しました。単純ですが,株式や金融商品の話はおよそこの発展形ですから,株式の意味や所有形態の基本をしっかり押さえてください。

 

証券会社で株式の相続手続きをする大きな流れ

では,手続きの話をします。まずは大きな流れを考えます。

相手に連絡し,書類を準備して,これを提出し,完了を待つ,というイメージは,株式以外の相続財産の相続手続きとそう変わるところがありません。証券会社(や保管振替機構)が介在したり,証券口座という概念があったり,投資信託等他の金融商品も一緒に手続きしたり,,と複雑に見えますが,やっていることはそれほど変わりません。

ただし,1点だけ注意してください。

株式の相続手続,つまり証券口座の相続手続きにおいては,銀行預金のように,相続手続きと同時に口座を解約して,株式を売却処分して決済する,という仕組みはありません。証券口座の相続手続きは次のようにして行います。

亡くなった故人の証券口座にある株式を

相続人の証券口座へ移す

つまり,故人の証券口座にあった株式を,相続により,相続人の持っている証券口座の箱の中に移し替える手続きになります。これ以外に相続処理の方法はありません。売却して現金化する等の作業は,相続人が,相続手続きとは別個にすべきことです。つまり,時系列的(理屈的)には,相続申請が完了して,株式が相続人の証券口座に移り,株式が名実ともに相続人の所有になるところまでで相続手続きは終わりです。その後,その株式を,相続人が売却する等の作業は,相続手続きとは別個の,相続人独自の証券取引になります。

ではいよいよ具体的な株式(証券口座)の相続手続きを説明します。大手証券会社である野村證券を例にとって説明します。会社によって少々手続きに違いがあること,法改正や会社の方針により手続きが変わっていく可能性があることをご承知のうえ参考になさってください。

奈良王寺の司法書士に株の相続手続きの相談

 

例えば野村證券で株式の相続手続きをするには

事例の想定

相続にはいろんなパターンがあるので,代表的なケースを設定して話を進めます。次のようなモデルでいかがでしょうか。

  • 父が亡くなった。
  • 法定相続人は,母とあなた,弟の3名。
  • 父は野村證券奈良支店に証券口座(株式)を持っており,野村證券から送られてきた取引残報告書によると,約500万円の残高があるようだ。
  • 協議の結果,これを全て売却し,売却代金につき,母が3分の2,あなたと弟が6分の1ずつ,それぞれ相続することになった。
  • 野村證券とのやりとり,遺産の受領,売却手続は,あなたが代表して行いたいと考えている。

「野村證券奈良支店」に電話をし,相続手続きの関係書類を送ってもらう

まずは「口座のある支店に」父が亡くなったことを伝えてください

故人を特定するため,手元に「取引残高報告書」等口座番号の分かる書類があれば準備し,そこに書いてある口座番号を電話口で伝えます。

口座番号が不明であれば,住所氏名,生年月日等を伝えて故人や口座を特定してもらいます。相続開始日(亡くなった日)や,いま連絡しているあなたとの関係性(続柄)なども確認されるはずです。聞かれたことに答えます。

相続手続きに必要な書類一式を送ってもらう

以下のような書類をあなた宛てに送ってもらうよう伝達してください。

  1. 野村證券所定の相続手続依頼書
  2. その他必要書類一覧表

先ほども述べましたが,手続きをする内容によって送ってもらう書類が変わってきますから,正しく今回の方針を伝えます。つまり,

  • 相続人で遺産分割協議をして(遺産分割協議書を作って)相続すること
  • 相続財産は代表であなたが受け取ること
  • 今後全て売却して各相続人に分配する予定であること
    など

今回想定のケースとは違いますが,ほかに,遺言書がある場合や,遺産分割調停審判によって相続する場合など,異なる事例の場合はその旨伝えてください。送られてくる書類や準備すべき必要書類が変わるので,くれぐれも最初にきっちり伝えることです。

「残高証明書」が必要ならそれも言うこと!

残高証明書が必要なら,別にその旨伝えておかないと,そのために必要な請求書等を送ってくれません。なので,最後に,残高証明書が必要ですとちゃんと伝えてください。

残高証明書の必要性

残高証明書は,どんな場合でも,必ず取得すべき書類ではありません。残高証明書を取った方がいいのは次のような場合です。

  • 残高が全然分からないので,相続人で遺産分割の話合いができない。遺産をある程度把握したうえで話合いをしたいと他の相続人に言われている
  • 直ちに必要はないが,相続税の試算等をしたいので,死亡時現在の残高証明書でどの財産的価値があるか知りたい
残高証明書がすぐに欲しい場合

証券会社から送られたきた「残高証明請求書」に,あなたの実印を押し,その他必要書類を含めた以下申請書類一式を同封の返信用封筒に入れて送り返します。送付先は,相続事務センターです。その後,1週間から十日程度で残高証明書が送られてきます。

  • 残高証明請求書
  • 父の死亡事実の記載のある戸籍謄本,除籍謄本,改製原戸籍の謄本
  • 請求者(相続人であるあなた)の戸籍謄本
  • 請求者の印鑑証明書
  • 請求者の本人確認書類(運転免許証の写し(表裏))

※なお,戸籍謄本や印鑑登録証明書はその他の手続きにも使いますから返してもらいます。「原本は返してください」と付記して送るようにしましょう。

残高証明書はゆっくりでいい場合

後から提出することになる相続申請の本体の書類と一緒に請求すればよいです。本体の申請の必要書類と,残高証明書の請求書に添付する必要書類は重複しますから,これを兼用できます。なので,本体の口座の相続申請と同時に残高証明書の請求をするときは,証券会社に送る書類は,以下のものだけでよいです。

  • 残高証明請求書

書類を整えて,「野村證券の相続事務センター」に送る

先方から送られて来た書類に必要事項を書き込み,その他添付書類を収集して取り寄せ,遺産分割協議書を作成して相続人の全員に実印をもらい,それら一式をまとめて相続事務センターに送ります。

準備すべき書類を順番に説明していきます。

◎相続関係を証する戸籍謄本等

  • 父の死亡事実の記載のある戸籍謄本,除籍謄本,改製原戸籍の謄本(発行日から6か月以内もの)
  • 相続人全員分の戸籍謄本(同上)

戸籍の取り方等についてはこちらに詳しいです。

戸籍謄本や除籍や原戸籍を取り寄せて相続人の全員を確定し相続関係説明図を作成する

◎相続人全員分の印鑑証明書(発行日から6か月以内のもの)

◎遺産分割協議書

遺産分割協議書は手続きの必須書類ではない

野村證券の遺産分割協議書提出に関するスタンスは次のようなものです(記事作成日現在)。

  • すでに作成しているなら提出してほしい
  • いまだ作成していないなら提出しなくても手続きは可能
野村證券に提出する遺産分割協議書に記載する内容

野村證券に相続書類を提出する前に遺産分割協議をする場合,せっかくですから遺産分割協議書を早く作成して,野村證券に提出しましょう。その場合書いておくべきは以下のような内容です。

  • あなたが相続人代表として証券口座内の相続財産を全部受領すること
  • 受領後は,これをすみやかに売却し,遺産分割協議どおり分配すること
  • 売却して譲渡所得税がかかる場合はこれを誰が負担するか
    など
遺産分割協議書の作り方

証券会社に提出するかどうかはともかく,遺産分割協議書の作成は必須です。その他の財産の相続手続きにも使用することでしょう。そこで,遺産分割協議書の作成方法を以下にまとめておきましたのでこちらも宜しければご一読ください。

なお,先述のとおり,株式の相続,預貯金の相続,不動産の相続と,財産の種類や提出先によって,記載しなければならない内容がありますから,分からなないことが出てきたら司法書士に相談してください。

遺産分割協議のやり方と遺産分割協議書の作り方

◎相続手続依頼書

証券口座の相続申請をする本体の主要な申請書になります。この申請書は,要するに,「父が亡くなったので,父の相続財産を相続人代表であるあなたの証券口座に移管してください」という,相続人から証券会社に対する意思表示となります。

「故人の口座内の株式等を,相続人名義の証券口座に移す」

これが証券口座や株式の相続手続きの処理でした。なので,この依頼書には,株式等を移管して移していく移管先の口座の情報を記載しなければいけません。つまり,相続人であるあなた名義の証券口座の情報を記載して,そちらへの口座移管を依頼します。

あなたが野村證券に証券口座を持っている場合

あなたが野村證券に口座を持っている場合は,相続手続依頼書の該当欄に,その口座の情報(取引店コードや口座番号)を記入します。

あなたが野村證券に証券口座を持っていない場合

対して,あなたが野村證券に口座を持っていない場合,この野村證券で,あなた名義の証券口座を,新しく作る(開設する)必要があります。そうしないと,相続した株式を移し替える箱がないからです。

次に記載する「証券総合サービス申込書」に必要事項を記入して,他の書類と同時に証券会社に提出します。そうすると,野村證券は,相続手続きの中で,まずもってあなた名義の証券口座を開設し,そこに相続処理が完了した個人名義の株式を移し入れてくれます。

◎証券総合サービス申込書

繰り返しますが,あなたが野村證券に口座を持っていない場合に必要になる書類です。これにより相続人であるあなた名義の証券口座が開設されます。この手続きに関し野村證券に送らないといけないのは次の書類です。

  • 証券総合サービス申込書
  • 個人番号カードの写し(表裏)又はマイナンバー通知カードの写し(表面のみ)
  • 本人確認書類の写し(表裏)
    公的な証明書であって,あなたの住所,氏名,生年月日が記載されているものが必要です。なお,顔写真付のもの(運転免許証やパスポート)なら1点を,顔写真が付いていないものなら2点必要になります。通常は,免許証かパスポートを提出します。

※その他の注意点

戸籍謄本等や,印鑑証明書,それから遺産分割協議書については,手続きが終わったらその原本を返してもらえるよう,その旨依頼書に付箋などを貼り付けて付記伝達しておきます。何も言わないと,そのまま証券会社がそのまま証券会社に書類を取られてしまうので,また市町村役場に請求したり書類作成をしなければならない羽目になります。

後日,あなたの証券口座に株式等の相続財産が移管される

もとからあなた名義の証券口座を持っていた場合の処理

書類を提出して不備がなければ,証券会社で処理をして,株式等の商品があなた名義の口座に移ります。手続きが終了したら,野村證券より,手続き終了の旨の案内書が送られてきます。

同時にあなた名義の証券口座を作った場合の処理

この場合,新規口座の開設のために必要なワンステップが入ります。すなわち,後日野村證券の担当者より電話連絡が入り,電話又は面談により,金融商品の取引に関する詳しい説明を受けていただきます。それが終わると口座が出きるので,うえと同じく,負って口座に商品が入って,手続き終了の案内書が別途届きます。

書類提出後,手続き終了までにかかる時間

証券会社の混み具合等によって変わります。書類提出後,1週間から1か月程度と,相当幅があるようです。なので,なるべく早く相続手続きの準備と申請して,余裕をもって口座移管を待つと良いです。

相続財産である株式を売却決済(処分)し,お金を相続人で分ける

相続の処理が終わったら,あとは通常の証券取引をしてください。売却等の手続きも,もとから自分が持っている株式等と同じです。相続とは関係ありません。

支店窓口や担当者への電話又はインターネット上の手続きで,口座内の株式等を全部売ってしまいます。そうすると,売却代金が,あなたが届出した決済用の銀行預金口座に送金されます。その後は,このお金を,相続人代表であるあなたが,遺産分割協議の内容にしたがって,相続人に分配するだけです。

以上にて,株式の相続手続きは終わりです。

奈良王寺で司法書士が株式の相続手続きをする

 

他の証券会社等の手続きもだいたい同じです

野村證券について説明してきましたが,他の証券会社の手続きもだいたい同じです。証券会社には従来からの規模のカテゴリーとして,大手,準大手,中堅,地場の区分に多数の会社が存在し,最近ではインターネット専業など,たくさんの種類の事業者が営業しています。さらには,企業買収や合併等によって証券会社の会社名がよく変わったりしますのでややこしいです。

被相続人である故人はそのうちどんな証券会社とどんな取引をしていたでしょうか,,,

もっとも,故人がどんな証券会社と契約して株式取引をしていても,遺産相続の手続きはそれほど変わらないので,ここまで述べた野村證券の手続きは,現状普遍的に参考になるはずです。

なお,最初にも言いましたが,上記はちゃんと証券会社で管理されている上場株式の話です。株式には非上場の株式もあります。というより,中小企業の株式は大方それでしょう。また,株式の電子化の際の処理がきちんとされている株式とそうでない株式があります。イレギュラーなケースにおいては,手続きが大幅に変わりりますから,不明点は司法書士や税理士等に相談してください。

 

株式や証券会社の手続きを司法書士に任せる(遺産整理業務の相談や依頼)

以上お話した内容はイメージできましたか?もし面倒だったり時間がなかったりする方は,手続きを司法書士に任せていただくこともできます。

王寺の司法書士に遺産整理業務を相談・依頼

証券口座を持っていた方の相続なら,おそらく預貯金口座も複数お持ちのはず。また,不動産も所有しておられる可能性が高いです。これら手続きを,それぞれ順番に進め,必要書類の作成や調整をするのは案外大変です。なので,これら一式を司法書士事務所に丸投げして任せていただくことができます。

司法書士法施行規則31条 法第二十九条第一項第一号の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。
一 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務
二 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務
三 司法書士又は司法書士法人の業務に関連する講演会の開催、出版物の刊行その他の教育及び普及の業務
四 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(平成十八年法律第五十一号)第三十三条の二第一項に規定する特定業務
五 法第三条第一項第一号から第五号まで及び前各号に掲げる業務に附帯し、又は密接に関連する業務

遺産相続手続きを一括して任せること,司法書士からすれば請け負うことを内容とする業務のことを,「遺産整理業務(いさんせいりぎょうむ)」と呼びます。信託銀行がよく宣伝している業務ですが,司法書士事務所等もこれを取り扱うことができ,信託銀行に比べリーズナブルにご利用いただけるケースが多いです。

当事務所は,遺産相続関連の業務を専門としており,遺産整理業務を日常的に取り扱っていますから,株式の相続だけではなく,相続処理のいっさいを依頼いただけます。当事務所に遺産整理業務を依頼すると,相続人の皆様の負担は激減します。相続手続きに関するいっさいの不安と負担から解放されるはずです。

司法書士の行う遺産整理業務について少しまとめて,この記事を終わりとします。

遺産整理業務の対象となる相続人の方

遺産をもらう相続人の方、特に以下のような方におすすめします。

  • 相続手続に不慣れで大変だと感じる
  • そもそも何をしていいかまったく分からない
  • 仕事が忙しいのでいろんな相続手続をしている時間がない
  • 都会に出ているのでなかなか帰れない
  • 相続人がたくさんいる
  • 相続人も高齢で相続手続をするのは負担
  • 遺産がたくさんあって把握できない
  • 遺産の分け方についてアドバイスしてほしい
  • 遺産を処分してお金でわけたいと思う
  • 相続税の申告が必要
  • きっちり漏れなく手続できるか自信がない
    など

遺産整理業務の概要(遺産整理業務って何のこと?)

遺産相続の手続は大変ですね。特にある程度財産がある方が亡くなると、遺産を調査するだけでもひと苦労です。相続手続をするためにたくさん昔の戸籍謄本を揃えたり、不動産や金融機関ごとに出向いて手続したりと、多忙な方や、法律知識のない方には、相当な負担であることは事実です。「遺産整理業務は、このような相続人であるお客様に代わって、すべての財産の相続手続を代行するサービスです。 明徳司法書士事務所は、お客様に代わって、遺産を調査し、戸籍謄本等を収集して相続人を確定し、相続関係図や財産目録を作成します。相続税がかかりそうなら税理士を手配します。つづいて遺産分けについてアドバイスをし、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書ができたら、順番に、すべての金融機関や法務局で相続手続をしていきます。遺産売却のご希望があれば、それも手配します。 このように、遺産整理業務をご依頼いただくと、お客様は複雑な相続手続の負担から開放され、適正確実に、かつ迅速に、相続手続を完了することができます。

遺産整理業務をご相談・ご依頼いただく時期

「相続開始後できるだけ速やかに」

四十九日が済んだら等,ひと段落ついて落ち着いたらなるべく早く相談いただくのがベストです。財産調査に時間がかかります。手続きにも時間がかかります。期限のある手続きがあります。

遺産整理業務の内容(遺産整理業務に含まれる法的サービス)

  • 自筆証書遺言の検認申立(自筆の遺言書がある場合)
  • 戸籍調査と相続関係説明図(家計図・系譜)の作成
  • 相続財産目録(遺産目録)の作成
  • 家庭裁判所への相続放棄の申述
  • 遺産分割協議書(遺産分け)の作成
  • 不動産の相続登記(名義変更)
  • 預貯金の相続手続一式(全銀行支店分)
  • 株式や投資信託、公社債の相続手続(全証券会社等支店分)
  • 遺産分割調停や審判の申立て(紛争が生じたら。弁護士の紹介も可能)
  • 不在者財産管理人選任の申立て(相続人中に行方不明者がいる場合)
  • 特別代理人選任の申立て(相続人中に未成年者がいる場合)
  • 遺言の執行(遺言書がある場合)
  • 所得税の準確定申告をする税理士の紹介(申告義務がある場合)
  • 相続税申告をする税理士の紹介(同上)
  • 税理士との協働(資料の共通化等によるお客様の負担軽減)
  • 遺産を売却する場合はその手配と法律手続きのいっさい(仲介業者の手配,売却に関する登記等)

その他こんなこともご相談いただけます。可能な範囲でアドバイスします。

  • 健康保険証を返して葬祭費等を請求したいがどうしたらいいか?
  • 年金支給をとめて未支給年金等を請求するにはどうするのか?
  • 会社に死亡退職届を出す(現役の場合)のはどうやるのか?
  • 生命保険金(死亡保険金)の請求をするにはどうするか?
  • ライフライン(電気,ガス,水道,携帯電話,固定電話,ネット回線)をとめたり名義変更をする方法や時期は?
  • クレジットカード,会員カードやサービスの退会処理をするやり方が分からない
  • 保険の切り替えをする(火災保険,自動車保険,生命保険等)のはどうするのか?

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銀行の預貯金の相続はこちら

預貯金の相続手続きをして解約払戻しする(遺産整理業務)

 

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相続登記(名義変更・名義書換)の手続きを自分で法務局に申請する方法

 

奈良王寺の明徳司法書士事務所で預貯金の相続手続き,遺産整理業務

預貯金の相続手続きをして解約払戻しする(遺産整理業務)

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

親が亡くなりました。いくつかの銀行に,預貯金の口座があり,いくらかのお金がそこにあります。四十九日の法要も済んだので,この預貯金口座を解約して相続人で分けたいと思います。銀行に聞いたら,預金口座の相続手続きをしないと解約や払戻しはできないと言われました。そして,手続きするにはたくさん書類がいるし,時間もかかるとのこと。これって本当でしょうか。預金を集めるときだけ向こうから何度もやってきて頭を下げていたのに,今度解約して引き出しそうとしたら,「そちら様で相続手続きしてください。それまで出せません」とはあんまりです。とはいえ,不平不満を言っていても始まりませんから,やるべきことをやっていきたいと思います。どうしたらいいのでしょうか。

はい。お疲れ様でした。かしこまりました。では今日は,故人が持っていた銀行の預貯金の相続手続きをして,解約払戻しをする方法を説明します。最初にちょっと理屈の話をして,現状を理解していただいたうえで,具体的な手続きの話をすることにします。

では,宜しくお願いします。

 

銀行の預貯金を相続するとはどういう意味か

銀行預金の法的な性質

皆さんが銀行にお金を預けたり引き出したりしている行為のもとになる銀行との約束事(預金契約)の法的な性質は,厳密には,「消費寄託契約」だと考えられています。消費というのは,預かった人が,預かった物品を使っちゃっていいということ。寄託とは,預けて託すこと。要は物品を保管してもらって後に返してもらうこと。なので,消費寄託契約とは,ある人がある人に金銭など代わりのきく物品を預け,預かった人はそれを自由に使ってしまうことができるけれども,返還時期には同じものを調達して預けた人に返さねばならない,このようなことを内容とする契約です。

(寄託)
民法657条 寄託は、当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

(消費寄託)
同666条 第五節(消費貸借)の規定は、受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合について準用する。
2 前項において準用する第五百九十一条第一項の規定にかかわらず、前項の契約に返還の時期を定めなかったときは、寄託者は、いつでも返還を請求することができる。

(消費貸借)
同587条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

預金者は銀行にお金を預けます。銀行はそのお金を他の人や会社に貸し出して利息をとって儲けます。預金者がお金を引き出したいといえば,他のお金を準備して返します。お金は色がついていないし代替ができるので,そのような契約が成り立ちます。つまり預金契約は消費寄託契約として成立しているのです。

さて,預金を引出す行為は,預金者が銀行に対して,預けたお金を返してほしいと請求する行為です。請求権の行使です。つまり,預金者は,銀行に対して,約束したとおりの時期に(普通預金ならいつでも,定期預金なら満期時に)お金を返せと請求する金銭債権を持っていることになります。

銀行預金を相続したらどうなるか

従来の裁判所の考え方(理屈では)

銀行預金の法的性質が消費寄託契約であり,預金の払い戻しを受ける権利が,消費寄託契約にもとづく返還請求権,つまり金銭債権であると分かったところで相続の問題に話を進めます。この金銭債権を,例えば複数の共同相続人で相続したら,それぞれの権利はどうなるでしょうか。

この点従来の判例は分割債権説を採用して,「相続開始とともに右債権は法律上当然分割され,各相続人はその相続分に応じて権利を承継する」としてきました。要は,金銭債権は数字で簡単に分けることができる可分債権なので,相続開始と同時に共同相続人に法定相続分に応じて当然に分割帰属するというわけです。

ということは,各法定相続人は,自分の法定相続分に相当する預金を,それぞれ銀行に請求して,個別に引出しができるという理屈になるはずです。

従来の銀行実務(預金の相続手続)

しかしじっさいの銀行実務はなかなかそうはなっていませんでした。トラブルを防止するために,銀行は,預金の相続手続きに法定相続人全員の協力を求めました。銀行が準備する書類等に相続人全員が署名と実印の押印をして,印鑑証明書を提出しないと,預金の引き継ぎと解約引出しができませんでした(銀行により例外あり)。なので,共同相続人の仲が悪い等により全員の協力が得られないと,銀行預金の相続手続きが進みませんでした。

従来の家庭裁判所実務(遺産分割審判)

ではそういうときに家庭裁判所遺産分割審判をすればいいかというと簡単にはいきません。遺産分割審判は文字どおり遺産分割審判なので,判例のいうように,相続開始と同時に当然に法定相続分で相続人に帰属が確定してしまった銀行預金については「遺産分割の余地がない」からです。つまり銀行預金は遺産分割審判の対象にならないというわけです。もっとも,家庭裁判所は,銀行預金を遺産分割の対象にすることにつき「相続人全員の合意がある場合」には,銀行預金も審判対象としてくれました。しかし,先の事例のように,相続人の合意が得られないときは否です。銀行預金について遺産分割審判をしてもらい,その審判書をもって銀行に預金引出し請求をすることもできないのです。

したがって,そういうケースでは,相続人自ら積極的に,預金の引出しを求めて地方裁判所等に通常訴訟を提起せざるを得ない,なんていう不都合も起こり得ました。

新しい裁判所の考え方

しかし最近裁判所は従来の考え方を変更しました。

すなわち,平成28年12月19日最高裁大法廷判決は以下ように述べて,銀行預金は遺産分割の対象となるとしました。

「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」

また,平成29年4月6日最高裁判所第一小法廷判決は,信用金庫における定期預金、定期積み金についても、「共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである」と判示しました。

つまり,銀行預金債権は,共同相続人の遺産分割が終わるまでは,不動産や動産などと同じように,一つの金融商品として,「共同相続人全員の準共有」となるわけです。

この二つの判例により,銀行等の以下の商品(消費寄託契約による金銭債権)は,全部遺産分割の対象になることがはっきりしました。

  • 普通預金
  • 定期預金
  • 通常貯金
  • 定期貯金
  • 定期積み金

これから(現在)の銀行実務

従来判例が分割債権説をとっていた当時すら相続手続きに相続人全員の関与を求めていたんですから,今後は当然に銀行預金の相続手続きに相続人全員の関与を要求するはずです。つまり,今後は,必ず,共同相続人の全員の手続きへの協力,関係書類への署名と実印の押印及び印鑑証明書の提出が必要になります。

これから(現在)の家庭裁判所実務

最高裁が銀行預金が遺産分割の対象となると示したのですから,今後,家庭裁判所における遺産分割審判は,「相続人全員の同意を不要として」当然に,銀行預金を審判対象としていくはずです。

 

大まかな手続きの流れ

さて,銀行預金の法的性質が分かったところで,預金の相続手続きをしていきましょう。まずは大まかな流れやイメージを押さえてください。大きな流れは次のとおりです。

  1. 銀行に相続の届出をして書類を請求する
  2. 送られてきた書類に必要事項を書き込む
  3. 戸籍や印鑑証明書等の必要書類を取得する
  4. 書類一式を銀行に提出する
  5. 2週間程度で手続きが終了しお金が振り込まれる

これでは抽象的すぎるので,今度は具体的な手続きの流れを説明します。

 

個別の手続き例(三井住友銀行)

事例の設定

相続にはいろんな種類パターンがありますので,1番よく見られるケースを想定して話をします。こんな感じでいかがでしょうか。

  • 父が亡くなり,母とあなた,弟の3名が法定相続人である。
  • 父が三井住友銀行大和王寺支店に普通預金口座(残高1000万円),定期預金口座(残高300万円)を持っており,貸金庫の契約もある。
  • 遺産分割協議により預金については解約し,母が900万円,あなたと弟が200万円ずつ相続したい。
  • なお,あなたが銀行とのやりとりを任されており,代表で預金を受け取った後母と弟に分配したい。
  • 貸金庫に何が入っているのか良く分からないが,こちらも代表であなたが開庫し,中身を持ち帰って3人で3分の1ずつ分けたい。

要するに,お父さんが死んで,妻子が銀行預金等を相続した。遺言書はない。共同相続人で遺産分割協議をして相続したい。こんなよくあるケースです。

相続手続きの前に,先にやっておくこと!

父の口座から振替により払っているものがあれば,振替口座を変更しておく!

相続手続きをするために,銀行に死亡の旨を申し出ると,瞬間直ちに口座が凍結されて,入手金のみならず,公共料金などの振替も出来なくなってしまいます。事前に振替口座を母の口座に変更するなどの手続きをしておく必要があります。

葬儀費用や法事の費用のほか,相続手続きの諸費用を出金しておく!

共同相続人の仲が良くて人間関係に全く問題がなく,遺産の分け方や,遺産の管理等について争いが生じる可能性がない場合には,葬儀費用等を先に出金しておいてもいいもしれません(キャッシュカードを利用するなど)。もちろん厳密に言うと,法的には問題があります。父親はもう死んでしまって,死後に預金を出金することはできないからです。そのあたりはよく考えて行ってください。

三井住友銀行に連絡して書類を請求する

三井住友銀行大和王寺支店又は最寄の支店に連絡

電話で連絡しても,直接行って窓口で伝えてもかまいません。また,口座のある支店じゃない別支店に行って窓口で伝えることも可能です。

電話連絡は,相続センターである相続担当部署(田町相続オフィス 0120-141-611)でも受け付けています。

まずは父が亡くなったことを伝える

故人を特定するため,手元に通帳があれば支店や口座番号を伝えてください。通帳がなければ,住所氏名に生年月日等を伝えて特定してもらいます。亡くなった日やあなたとの関係等も聞かれるかもしれません。聞かれたことには答えてください。

この連絡時点以降,父親の口座は凍結されます。貸金庫の開閉もできなくなりますからご注意ください。

三井住友銀行所定の「相続手続き依頼書」や「必要書類一覧表」を発行してもらう

手続内容により必要書類が変わるので,今回なら以下のようなことを伝えてください。

  • 遺産分割協議をして協議書を作成予定である
  • 預金は相続人代表が受け取って責任をもって分配すること
  • 貸金庫も相続人代表が開披開庫に行くと伝えること

窓口に行って申請したら窓口で書類をもらえます。電話で連絡したら,後日郵便で書類が送られてきます。

相続手続きの前に残高証明書が欲しい場合の手続き

残高証明書(死亡日時点等の預金残高を銀行が証明した書類)をもらって財産目録を作ったりきっちり遺産分割したい場合は,このとき,先に残高証明書の請求もしておいてください。残高証明の請求するための注意点は次のとおりです。書類が揃っていれば,残高証明書はすぐもらえます。

  1. 必ず預金口座がある支店の窓口に行って申請すること
  2. 以下の書類を持っていくこと
  • 父が亡くなったことの分かる戸籍謄本
  • あなたの戸籍謄本
  • あなたの印鑑登録証明書
  • あなたの実印

銀行から必要書類の一覧が送られて来たら,その書類を揃える

相続手続きのためにどういう書類を揃えなければいけないのかは,三井住友銀行から送られてくる書類の中に書いてあります。次のような書類を集め,書き込み,お手元を探して準備し,すべて揃えてください。

◎相続関係を証する戸籍謄本等

亡くなった父について(被相続人)

出生から死亡までのすべての戸籍,除籍,改製原戸籍の謄本(1年以内に発行されたもの)

母と子の全員について(相続人)

最新の内容の戸籍謄本(1年以内に発行されたもの)

戸籍の読み方や取り寄せ方はこちらに書いておきました。

戸籍謄本や除籍や原戸籍を取り寄せて相続人の全員を確定し相続関係説明図を作成する

◎相続人全員の印鑑証明書(6か月以内に市町村役場で発行されたもの)

◎遺産分割協議書

相続人が遺産である銀行預金の分け方を決めた書類です。銀行預金の相続手続きに使用するためには,次のようなことを書いておいてください。

  • あなたが相続人代表として預金の解約手続,受領,分配を行うこと
  • 貸金庫もあなたが代表で開庫をし,中身を引き取り,解約を行うこと
  • 貸金庫の内容物含め,はっきり分からない遺産については,例えば「その他の財産を発見したときは母,あなた,弟で3分の1ずつ分ける」のように書いておくこと

その他遺産分割協議書の作り方等を詳しく説明します。

遺産分割協議のやり方と遺産分割協議書の作り方

◎相続手続依頼書

三井住友銀行所定の,正式な,相続の申請書になります。書式は控えますが(順次改定されていきます),要は以下のようなことを銀行に伝えていく書類になります(書いていけば,こういうことを伝えたことになります)。

  • 「父が亡くなったので相続手続をお願いします」
  • 「相続財産は普通預金,定期預金と貸金庫です」
  • 「普通預金は解約し,私が代表して一括受領します。貸金庫も私が代表して開庫します」

この相続手続依頼書にも,共同相続人の全員が署名押印をして,実印を押さなければいけません。

◎当該口座の預金通帳とキャッシュカード

もし紛失している場合は,相続手続依頼書の中に,その旨届け出る項目があるのでチェックしてください。預金通帳とキャッシュカードを紛失しているからといって手続きできないことはありません。ご心配なく。

◎貸金庫のキー

こちらは仮に紛失していると少し問題があります。貸金庫のキーは,銀行といえどもスペアを持っていないので,開庫の手続きに際して,業者にキーを壊してもらう必要性があります。壊すのに実費がかかるので,事前にキーを紛失している旨を銀行に伝えて,かかる金額を確認しておいてください。おそらく数千円程度です。

◎貸金庫の使用料

年払いの場合

年払いの場合は先払いなので問題は生じません。

月払いの場合

父の口座からの振替により支払っていた場合,日割り計算が必要です。開庫時に現金にて精算しますので,事前に金額を確認してください。

◎相続手続きをする相続人代表者の実印

必要書類をセットして,大和王寺支店に提出し,貸金庫を開庫する

預貯金の送金処理

書類の提出

書類が準備できたら銀行に提出します。窓口に持参しても,送ってもいいですが,窓口に持参して手渡ししたほうが不備等の確認ができてよいです。もっとも,窓口に持参しても,後日書類の追加提出等を求められることがあります。

現状,相続の手続きについて,銀行には,あまり体制が整っていない印象があります。支店窓口や相続センターの言っていることが,最初と変わったり,担当者間で齟齬したりすることも往々にしてあります。ある程度はそういうものだと思って順番に(気長に?)手続きしていきましょう。もっとも,法的におかしいことや,相続人に著しく不利なことを指示されたら,それはおかしいと主張します。言うべきは言わないといけません。

届出口座への送金

申請後預金は次のとおり処理されます。

必要書類を窓口に提出した後,数日から数週間内に口座の解約処理がされ,相続人の預金口座にお金が送金されます。銀行の混み具合によって日数が変わるので,必ず何日で送金されるとは言えません。あまりに遅ければ,銀行に電話して確認することも必要でしょう。

送金完了後,後日,次の書類をもらえます。窓口に取りに行ってもよいし,送ってもらうこともできます。これは送ってもらえば楽です。

  • 利息計算書
  • 振込伝票
  • 解約処理済みの預金通帳
    など

貸金庫の開庫

貸金庫の手続きは書類を出すだけでは終わりません。書類を出すだけでなく,じっさいに貸金庫に行って銀行立会いのもと開庫する手続きが必要です。貸金庫の手続きは極めてアナログです。預金口座と切り離して考えたほうが良いです。原則として,貸金庫の手続きは,電話,郵便によらず,貸金庫のある支店でのリアルなやり取りが必要です。

貸金庫契約のある銀行支店窓口(今回のケースの場合は大和王寺支店)に書類を提出する

必ず貸金庫のある店舗に行って書類を提出してください。書類のチェックが出来る担当者が不在の場合もあるので,事前に日時を指定して,その日時に行ってください。でないと,場合によっては,何度も支店に出向くことになります。

手続きのために提出した書類は返してもらってください。戸籍謄本や遺産分割協議書等です。その他の手続(預金,他の銀行の相続手続き,不動産等他の財産の相続手続き)にも使用できる書類は返却してもらうよう,必ず伝えてください。そうすると,窓口でコピーをとって,原本は返してくれます。

貸金庫を開庫し,内容物の全部を引き取る

指定日時に銀行に行って,開庫の立会いをします。銀行としても,契約終了時に,中身に置き忘れのトラブルがあってはいけないので,中身が全部持ち出されたことの確認をするためです。なお,注意点を以下にあげておきます。

  • 貸金庫は名義変更ができません。つまり,契約名義を相続人に変更して,そのまま使い続けるという処理は不可能です。なので,貸金庫の内容物は,当日,相続人がそのまま持ち帰らないといけません。貴金属や宝石など持ち帰るのが不安なものがあってもそれは銀行の関知しないことです。必ず持ち帰りが必要です。
  • もし持ち帰りが不安なのであれば,事前に同支店に相続人名義の貸金庫を契約(かつ使用可能な状態にしておく)しておいて,そこに移す方法があります。他の銀行支店の貸金庫に運んでもよいですが,途中で盗難にあっても,それは相続人の自己責任です。当然のことですが,貸金庫の開庫の立会い後は,銀行は内容物保管の責任をとってくれません。

遺産分割協議書で決めたとおりに遺産を分ける

預金が相続人代表者の口座に送金され,貸金庫の中身を引き上げてきたら,いよいよ遺産の分配をします。遺産の分配は,必ず遺産分割協議書のとおりに行ってください。

預金は口座から直接送金するのがいいでしょう。貸金庫に入っていたものは,中身が何なのかによって手続きが変わります。場合によっては,それ自体,改めて名義変更等の相続手続きが必要になります。

以上で,三井住友銀行の相続預金や貸金庫の処理は終わりです。

奈良王寺の司法書士で銀行の相続

 

他の銀行の相続手続きもだいたい同じです

三井住友銀行以外の以下ような銀行における預貯金の相続手続きも,およそ似たような手順になります。

もっとも,銀行は民間の金融機関であり,必ずも全銀行が同じ手続きを採用しているわけではありません。財務省や全国銀行協会の指導もと,また一般の法解釈と法律実務の通例により,およそ手続きは統一されていますが,各行手続きに微細な違いあることをご承知ください(書式などはオリジナルなので全然違います)。また,記事作成日以降,法改正や判例動向,ITの進歩により手続きが変更になることもありますからその点も留意とご容赦をお願いします。

一般社団法人全国銀行協会 預金相続の手続の流れ

例えば奈良王寺の明徳司法書士事務所の近くにある銀行の例)

都市銀行

  • 三菱東京UFJ銀行
  • りそな銀行
  • みずほ銀行
  • ゆうちょ銀行

地方銀行

  • 南都銀行
  • 京都銀行
  • 紀陽銀行
  • 近畿大阪銀行
  • 関西アーバン銀行

信用金庫

  • 奈良中央信用金庫
  • 大和信用金庫
  • 奈良信用金庫

その他信託銀行,農協等

  • 三菱UFJ信託銀行
  • みずほ信託銀行
  • 三井住友信託銀行
  • 信用組合
  • 農業協同組合 JA
  • 労働金庫
    など

 

面倒なら司法書士に依頼してください(遺産整理業務の相談や依頼)

いかがでしたでしょうか。面倒くさい,時間がない,しんどいなどと思われましたか?

奈良王寺の司法書士に遺産整理業務を依頼

そういった相続人の方は,銀行等の預貯金や貸金庫の相続手続きを,司法書士に任せてしまうことができます。また,銀行の手続きだけではなく,証券会社での株式等の相続手続きや,法務局でする土地家屋といった不動産の相続登記手続きなど,遺産相続に関するいっさいの処理を司法書士事務所に依頼していただくこともできます。

司法書士法施行規則31条 法第二十九条第一項第一号の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。
一 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務
二 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務
三 司法書士又は司法書士法人の業務に関連する講演会の開催、出版物の刊行その他の教育及び普及の業務
四 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(平成十八年法律第五十一号)第三十三条の二第一項に規定する特定業務
五 法第三条第一項第一号から第五号まで及び前各号に掲げる業務に附帯し、又は密接に関連する業務

そのように遺産相続手続きを一括して任せること,司法書士からすれば請け負うことを内容とする業務のことを,「遺産整理業務(いさんせいりぎょうむ)」と呼びます。当事務所は遺産整理業務を日常的に行っておりますので,相続処理のいっさいを任せていただき,ご依頼人である相続人のご負担を著しく減らしていただくことができます。要は,司法書士に遺産整理業務を依頼すると,手続きをしなければならない不安と負担から解消されます。

遺産整理業務について以下に少し紹介してこの記事を終わりとさせていただきます。

遺産整理業務の対象となる相続人の方

遺産をもらう相続人の方、特に以下のような方におすすめします。

  • 相続手続に不慣れで大変だと感じる
  • そもそも何をしていいかまったく分からない
  • 仕事が忙しいのでいろんな相続手続をしている時間がない
  • 都会に出ているのでなかなか帰れない
  • 相続人がたくさんいる
  • 相続人も高齢で相続手続をするのは負担
  • 遺産がたくさんあって把握できない
  • 遺産の分け方についてアドバイスしてほしい
  • 遺産を処分してお金でわけたいと思う
  • 相続税の申告が必要
  • きっちり漏れなく手続できるか自信がない
    など

遺産整理業務の概要(遺産整理業務って何のこと?)

遺産相続の手続は大変ですね。特にある程度財産がある方が亡くなると、遺産を調査するだけでもひと苦労です。相続手続をするためにたくさん昔の戸籍謄本を揃えたり、不動産や金融機関ごとに出向いて手続したりと、多忙な方や、法律知識のない方には、相当な負担であることは事実です。「遺産整理業務は、このような相続人であるお客様に代わって、すべての財産の相続手続を代行するサービスです。 明徳司法書士事務所は、お客様に代わって、遺産を調査し、戸籍謄本等を収集して相続人を確定し、相続関係図や財産目録を作成します。相続税がかかりそうなら税理士を手配します。つづいて遺産分けについてアドバイスをし、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書ができたら、順番に、すべての金融機関や法務局で相続手続をしていきます。遺産売却のご希望があれば、それも手配します。 このように、遺産整理業務をご依頼いただくと、お客様は複雑な相続手続の負担から開放され、適正確実に、かつ迅速に、相続手続を完了することができます。

遺産整理業務をご相談・ご依頼いただく時期

「相続開始後できるだけ速やかに」

四十九日が済んだら等,ひと段落ついて落ち着いたらなるべく早く相談いただくのがベストです。財産調査に時間がかかります。手続きにも時間がかかります。期限のある手続きがあります。

遺産整理業務の内容(遺産整理業務に含まれる法的サービス)

  • 自筆証書遺言の検認申立(自筆の遺言書がある場合)
  • 戸籍調査と相続関係説明図(家計図・系譜)の作成
  • 相続財産目録(遺産目録)の作成
  • 家庭裁判所への相続放棄の申述
  • 遺産分割協議書(遺産分け)の作成
  • 不動産の相続登記(名義変更)
  • 預貯金の相続手続一式(全銀行支店分)
  • 株式や投資信託、公社債の相続手続(全証券会社等支店分)
  • 遺産分割調停や審判の申立て(紛争が生じたら。弁護士の紹介も可能)
  • 不在者財産管理人選任の申立て(相続人中に行方不明者がいる場合)
  • 特別代理人選任の申立て(相続人中に未成年者がいる場合)
  • 遺言の執行(遺言書がある場合)
  • 所得税の準確定申告をする税理士の紹介(申告義務がある場合)
  • 相続税申告をする税理士の紹介(同上)
  • 税理士との協働(資料の共通化等によるお客様の負担軽減)
  • 遺産を売却する場合はその手配と法律手続きのいっさい(仲介業者の手配,売却に関する登記等)

その他こんなこともご相談いただけます。可能な範囲でアドバイスします。

  • 健康保険証を返して葬祭費等を請求したいがどうしたらいいか?
  • 年金支給をとめて未支給年金等を請求するにはどうするのか?
  • 会社に死亡退職届を出す(現役の場合)のはどうやるのか?
  • 生命保険金(死亡保険金)の請求をするにはどうするか?
  • ライフライン(電気,ガス,水道,携帯電話,固定電話,ネット回線)をとめたり名義変更をする方法や時期は?
  • クレジットカード,会員カードやサービスの退会処理をするやり方が分からない
  • 保険の切り替えをする(火災保険,自動車保険,生命保険等)のはどうするのか?

営業エリア・業務地域を教えてください。

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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証券会社の株の相続はこちら

証券会社の株の相続手続きをして売却する(遺産整理業務)

 

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相続登記(名義変更・名義書換)の手続きを自分で法務局に申請する方法

 

相続登記(名義変更・名義書換)の手続きを自分で法務局に申請する方法

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

今日は親などが亡くなってその被相続人が生前所有していた住宅その他の不動産の相続登記をする方法,とりわけ相続人の方が相続登記手続きを自分でする方法」を説明します。

とはいうものの,不動産の相続登記や相続手続きには様々なバリエーションや例外があり,そのすべて説明することはできません。よって説明するのはあくまでオーソドックスなケースにおける手順になります。なので,これにチャレンジして途中で挫折したり,最初から専門家に任せてしまいたいと思われる方は,速やかに司法書士に相談依頼してください(ほとんどの方が司法書士に依頼されます)。

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※相続登記は全国対応可能です

では説明を始めます。最初に相続登記について大きなまとめ(概説)をして,次にじっさいに手続きを進めるための手順を書いていきます。早く手続きを知りたい方は前半を飛ばして途中2.からお読みください。

 

1.相続登記まとめ

(1)相続登記とはいったい何のことか -What?-

「相続登記」という言葉は法律用語ではありません。つまり法律等の条文に相続登記という言葉はでてきません。いわば業界用語のようなものです。ここにいう相続登記は,厳密には,以下ような登記を指します。

「年月日相続を登記原因とする不動産の所有権移転登記」

もっとも,以下のようなものも,広い意味での相続登記と呼ぶことができます。

  • 「相続人からする建物の所有権保存登記」
  • 「年月日遺贈を登記原因とする不動産の所有権移転登記」

なんだかよく分かりませんよね,,,

あんまり細かいことを言っても意味がないので,「相続の開始(人の死亡)を直接的な理由として実行すべき不動産の権利に関する登記一般のこと」と考えておけばいいでしょう。

余計分からなくなったでしょうか。

相続登記とは相続関連の登記のこと,相続の登記のことです。これでどうでしょうか。説明になってませんね,最初に戻りました笑

(2)なぜどうして相続登記をしなければいけないのか又はするのか -Why?-

相続登記をしなければいけないという法律はありません。相続登記をすることは相続人の法的義務ではありません。しかし,相続登記をしなければ困ったことになるし,相続登記をしなければ前に進まないことが出てくるので,やはり相続登記は速やかにすべきです。つまり,相続登記は法律上の義務ではないが,事実上の義務だと言うことができます。相続登記をしないとどのように困るか,その例を挙げてみます。

①相続登記をしないと売却や贈与や担保設定ができない

相続登記をしないと不動産を売ろうと思ってもできません。親の家が不要なのであなたが不動産業者に行って売りたいと言っても「まずは相続の話合いをつけて相続登記をしてください」と言われます。もうその物件は故人の所有物じゃなく,相続人に権利が移っているので,誰が相続したか登記しないとそもそもあなたに所有者としての売却権限があるかどうか分かりません。また売買したら次に買主名義に登記を移しますが,その前に相続登記をしてからでないと売買による所有権移転登記ができない仕組みです。権利が移った順番に登記しないといけないというのが日本の法律の仕組みなんです(「動的公示主義」といいます)。なので,相続登記をしないと不動産を売却できません。これは,次に生前贈与をしたり,お金を借り入れるために担保設定をする場合についても同じです。とにかく,相続した不動産について何かするのなら,先に相続登記しないと無理です。不動産を相続して所有者になったといっても現実問題相続登記をしないと意味がないのです。

②相続登記をしない間に次の相続が発生すると複雑になる

相続登記をしない間に法定相続人に次の相続が開始(つまり次に相続人がさらに死ぬ)すると,最初の相続の問題を処理するのに,次の相続の相続人も加えて,その全員に書類に判子を押してもらう必要があります。その中に連絡をとっていない人がいたり,折り合いが悪い人がいたらどうなるでしょう。また行方不明で音信不通の人がいたら?早く相続登記をしておけば,そのような問題は生じないのです。

③相続登記をしない間に法定相続人が認知症等になるとやっかい

同じような問題に,相続登記をしない間に例えば高齢の母親等が認知症を患ってしまうケースがあります。要するにボケてしまって判断能力がないので,遺産分割協議ができないし,協議書に判をつけなくなるケースです。こうなると認知症の人のために家庭裁判所で成年後見人を選んでもらわないと遺産分割協議ができません。つまり相続登記ができません。さらに,成年後見人がつくと成年被後見人の法定相続分を守る必要から,不動産を誰かの単独名義にして売却するなどということが非常に難しくなります。相続人の中に高齢者がいるときは,早く相続登記を済ますのが鉄則です。

④相続登記をしないと不動産が差し押さえられるかもしれない

親が死んであなた含め兄弟が法定相続人になったとしましょう。あなたが不動産を継ぐのは既定路線なので相続登記は後でいいやと考えたとする。しかしある日登記簿を調べてみたら,勝手に法定相続分で相続登記がされ,さらに兄弟の相続した共有持分に差し押さえの登記が入っている!ということがあります。兄弟が誰かから借金をしており返済が遅れている場合です。こうなってしまうと,債権者の差し押さえを消してもらうため,兄弟の借金の肩代わりを余儀なくなれるケースもあります。相続登記は速やかに処理すべきです。

その他相続登記をしないと困ってしまうことについては次の記事をご覧ください。

家(住宅)の相続登記をいつまでもやらないで放置した場合のデメリット

(3)誰が相続登記の手続きをしなければいけないのか -Who?-

不動産の所有権を相続した相続人です。物件を相続した人です。原則として,物件を相続した人しか相続登記を申請することができません。つまり他人はやってくれません。自分でするしかないのです(又は自分で司法書士に依頼するか)。

国や法務局は勝手にやってくれません。相続登記をするのは相続人の責任です。こういうのを「申請主義」と呼びます。

(当事者の申請又は嘱託による登記)
不動産登記法16条1項  登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託がなければ、することができない。

(4)いつまでに相続登記をしないといけないのか,期限はあるのか -When?-

相続登記自体法的義務じゃないのですから,当然期限はありません。しかし,相続登記をしないと困ってしまう件は先に説明したとおりです。そして,困ってしまう原因となる事実は突然やってきますし,後から気がついてももう遅く,取り返しがつきません。

なので,相続登記は,「なるべく早く」すべきです。

(5)どこで相続登記の手続きをするのか -Where?-

相続した物件の所在地を管轄する法務局又は地方法務局でします。

(登記所)
不動産登記法6条1項  登記の事務は、不動産の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所(以下単に「登記所」という。)がつかさどる。

(登記)
同11条  登記は、登記官が登記簿に登記事項を記録することによって行う。

例えば当事務所,明徳司法書士事務所の所在する奈良県内の土地建物の相続登記申請をする管轄法務局は,物件の所在地ごとに,以下表のように決まっています。

例)

  • 北葛城郡王寺町や河合町や上牧町にある不動産の相続登記は,奈良県大和高田市にある奈良地方法務局葛城支局に申請します。
  • また,その周辺や近隣の市町村であっても,生駒郡三郷町や斑鳩町や平群町の土地家屋の相続登記の申請は,奈良市高畑町にある奈良地方法務局本局にすることになります。
法務局庁名 法務局所在地と電話番号 管轄地域・区域(不動産物件の所在地)
奈良地方法務局本局 〒630-8301
奈良市高畑町552
TEL:0742-23-5534 (代表) 
奈良市,大和郡山市,天理市,生駒市,山辺郡山添村,

生駒郡斑鳩町,平群町,三郷町,安堵町

葛城支局

(葛城法務局)

〒635-0096
大和高田市西町1-63
TEL:0745-52-4941
大和高田市,御所市,香芝市,葛城市,

北葛城郡上牧町,王寺町,広陵町,河合町

桜井支局

(桜井法務局)

〒633-0062
桜井市大字粟殿461-2
TEL:0744-42-2896
桜井市,宇陀市,宇陀郡曽爾村,御杖村,

吉野郡東吉野村

五條支局

(五條法務局)

〒637-0043
五條市新町三丁目3-2
TEL:0747-22-2484
五條市,吉野郡吉野町,大淀町,下市町,黒滝村,天川村,

野迫川村,十津川村,下北山村,上北山村,川上村

橿原出張所

(橿原法務局)

〒634-0078
橿原市八木町一丁目6-12
TEL:0744-22-3045
橿原市,高市郡高取町,明日香村,

磯城郡田原本町,川西町,三宅町

(6)相続登記をするにはどのように手順を踏んだらいいのか,結局何をしたらいいのか -How?-

では,どうやって相続登記をしたらいいか。

その具体的な手続きを以下に説明していきます。手続きを進めていく手順にしたがって時系列で記載しますが,必ずしも,すべての部分,この順序どおりに進めなくても構いません。やりやすいように取り組んでください。

 

2.相続登記の手続きを自分で法務局に申請する具体的な手順

最初にも言いましたが相続登記にもいろんなバリエーションがあります。すべてを説明できないので,代表的なパターンを事例として想定して話をします。こんな感じでいかがでしょうか。

事例)

  • 親が死亡して,住宅が遺された
  • 子供複数名が法定相続人となった
  • 親は遺言書を書いてないと思うが,はっきりとは分からない
  • 家をどうするか,だいたい話はできている
  • 長男が単独で引き継ぐ予定である

目次も眺めておきましょう。こんな順です。

目次)

  1. 遺言書の有無(あるかないか)を確認する
  2. 戸籍謄本等を集めて法定相続人を確定する
  3. 登記簿謄本(登記事項証明書)を取得して現在の登記内容を確認する
  4. 固定資産評価証明書を取得して登録免許税額を計算する
  5. 遺産分割協議書を作って相続人全員が実印を押す
  6. 「登記申請書」を作成する
  7. その他「添付書類」等を整える
  8. 法務局に登記申請をする
  9. 登記が終わったら登記識別情報と登記簿謄本(登記事項証明書)等を回収する

では始めます。

(1)遺言書の有無(あるかないか)を確認する

相続登記は,相続によって被相続人の不動産の所有権が相続人に移転したことを法務局の登記簿(登記記録)に記載してもらう手続きです。相続登記を申請するのは先述のとおり不動産の所有権を取得した相続人です。

さて,もし被相続人が遺言書を書き残していれば,不動産の所有権の相続人であり,相続登記の申請人となるべき人が変わる可能性があります。日本の法律では遺言書による相続が法定相続に優先し,相続人相続分遺産分割の方法等を遺言書で指定することができます。なので,不動産の相続登記に限らず,相続問題の処理で最初にすべきは遺言書の存否の確認です。遺言書があれば相続の内容が根本的に変わり,その後の手続きもそれにしたがって変わるからです。

もっとも,被相続人の生前の弁や生活状況に鑑み,「明らかに遺言書など存在しない」場合には,きっちりした調査をしないのが通常です。しかし,「もしかしたら遺言書を書いていないかしら」という具体に少しでも遺言書の存在が疑われる場合はきっちり調査すべきです。

①自筆証書の場合

貸金庫,家の金庫,タンス,押入れ,テレビボード,サイドボード,デスク引出し,貴重品入れ等に探してなければないでしょう。

②公正証書の場合

平成元年以降に作成された公正証書遺言は,公証人連合会のシステムに登録されているので検索することができまます。全国どこの役場で作成された遺言書であってもこのシステムに登録されています。登録されているのは,遺言書を作成した公証人名,遺言者の名前,作成年月日等です。まずは,全国どこでもいいので公証人役場に行き,システムで検索をかけてもらいます。もし公正証書遺言が作成されていると判明したら,今度はその遺言書を作成した公証人役場に行って,遺言公正証書の謄本を請求します。もしあなたが不動産の相続人になっていれば,相続登記をするのにこの公正証書の謄本が必要になります。

公証人役場一覧

システムで検索をしてもらうには,以下の書類を準備して公証人役場に提出します。

  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本等
  • 申請人が相続人であることが分かる戸籍謄本等
  • 申請人の身分証明書(運転免許証やパスポート等顔写真付の公的身分証明書又は実印と印鑑証明書セット)
  • 認印

(2)戸籍謄本等を集めて法定相続人を確定する

①戸籍謄本等の収集

遺言書がない又は見つからなかったことを前提に継ぎのステップに進みます(遺言書があれば少し話が変わります)。まずもってすべきは,相続関係を立証する戸籍謄本等や住所証明書を収集して揃え,法定相続人の地位と住所氏名を確定することです。相続人が誰なのか公的書類をではっきりさせないと,法務局で相続登記は受け付けられません。市町村役場で取り寄せないといけない戸籍謄本等は次のとおりです。

  • 亡くなった被相続人が生まれてから死亡するまですべての経歴が間断なくつながって記載されている全部の戸籍謄本等(と,住所証明書)
  • 相続する権利のある法定相続人の全員分の現在の戸籍謄本(と,住所証明書)

要は,

  • 亡くなった人については生まれてから死ぬまで全部
  • 法定相続人(全員)については最新の

各戸籍謄本等が必要です。数ある戸籍謄本等のうち1通でも漏れると相続登記できません。完璧を求められます。

  • なお戸籍謄本は,戸籍の本籍地の市町村役場に請求します。
  • 住所を証する戸籍の附票も同じく本籍地の市町村役場に,住民票を取る場合は当然ですが住所地の市町村役場に請求します。

②相続関係説明図の作成

戸籍等が揃ったらこれにもとづいて相続関係説明図を作ります。次のような書類です。

相続登記を自分でする相続関係説明図

この相続関係説明図の作り方について法律に絶対の決まりはありません。なので,およそ次の手順で作り,人間関係を線でつなぎ,体裁を整えてください。

◎タイトルを書く

「被相続人 ○○○○ 相続関係説明図」

◎被相続人(死んだ人)の情報を書く
  • 最後の本籍地
  • 最後の住所地
  • 出生年月日
  • 死亡年月日
  • (被相続人)である旨
  • 氏名
◎法定相続人の情報を書く
  • 住所地
  • 出生年月日
  • 被相続人との続柄
  • 当該財産の(相続人)である旨
  • 当該財産の相続人とならない人についてはその法的な理由
    相続人廃除によって相続人にならない場合=(廃除)
    相続放棄によって相続人にならない場合=(放棄)
    遺産分割によって相続人とならない場合=(分割)
    特別受益によって相続人とならない場合=(特別受益)
    など
  • 氏名
◎人間関係を線でつないで図にする
  • 夫婦関係は,二重線でつなぐ
  • 離婚した夫婦は,二重線を引いてうえから×印(バッテン)をし,近くに離婚日を付記する
  • 親子関係は,両親をつないだ二重線の中心を起点として直角に単線(1本線)を引く
  • 兄弟関係は,親から引っ張った線を先ほどの見本のように分岐のツリー図で表現する
◎その他のこと
  • 作成者の氏名と押印をする
  • 「相続を証する書面は還付した」と書く
    この文言の近くに法務局の登記官が判子を押します。相続登記を申請すると,法務局は,提出された戸籍謄本等一式を確認し,この関係図のとおり間違いないことを確認して判を押します。そして,関係図だけを法務局に保管して,戸籍は申請人に返します。そうすることで,法務局は分厚い戸籍一式を保管せずに済みます。つまり,実は,「相続を証する書面は還付した」と言っているのは法務局の登記官なんです。ただ,どのみち法務局で,このように書くことが想定されるし,逐一法務局が書くのは面倒なので,相続登記を申請する申請人のほうであらかじめ先に書いておいてあげるのです。

戸籍謄本等のことは突き詰めると難しいです。こちらにより詳しく書いておきましたのでこの辺にして以下記事に譲ります。

戸籍謄本や除籍や原戸籍を取り寄せて相続人の全員を確定し相続関係説明図を作成する

(3)登記簿謄本(登記事項証明書)を取得して現在の登記内容を確認する

次に肝心要の,相続する不動産物件の登記を調べましょう。登記の情報は,その物件の所在地を管轄する法務局にあります。法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得して,その記載内容を確認します。相続登記は亡くなった人の名義の所有権の登記を移転して,相続人の名義に書き換える手続きなので,その前提として,現在の登記がどうなっているか調べないと話になりません。登記簿謄本・登記事項証明書を取得したら,以下のようなことを確認してみてください。

  • 所有者は本当に今回の被相続人名義になっているか,祖父や親族名義ではないか
  • 被相続人の住所氏名は間違いなく登記されているか
  • 被相続人が建てた建物ならそもそも登記はされているか
  • 所有者が配偶者や親子との共有になってないか,全部被相続人の名義になっているか
  • 土地の面積(地積)や建物の床面積は現状と合致しているか
  • 借金の担保として設定した抵当権の登記が残っていないか
    など

もしこれらのことがあったら,普通に相続登記ができない可能性がありますので司法書士に相談してください。

①登記簿謄本(登記事項証明書)は,次の方法で取得できます。

  • 法務局の窓口に請求書を出して取得する方法
  • 法務局に請求書を郵送して往復郵便で取得する方法
  • インターネットを利用してオンラインで請求し,法務局か自宅等に郵送してもらって取得する方法

法務局トップページ>各種証明書請求手続

②登記簿謄本を取らなくても登記の情報を確認する方法がある

なお,正式な登記簿謄本(登記事項証明書)ではなく,現在の登記状態のみが記載されたものであって,法務局の印鑑が押してない(正式な登記簿謄本としては使えない)情報でよければ,登記情報提供サービスを利用すればPC上で確認できます。一般的な相続登記をするために情報を得るなら,これで足りることが多いです。

登記情報提供サービス

登記簿謄本(登記事項証明書)の見方や読み方を知らない方はこちらを。

相続?贈与?離婚?不動産のことが気になったらまずすること(前編)

(登記事項証明書の交付等)
不動産登記法119条  何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができる。
2  何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面の交付を請求することができる。
3  前二項の手数料の額は、物価の状況、登記事項証明書の交付に要する実費その他一切の事情を考慮して政令で定める。
4  第一項及び第二項の手数料の納付は、収入印紙をもってしなければならない。ただし、法務省令で定める方法で登記事項証明書の交付を請求するときは、法務省令で定めるところにより、現金をもってすることができる。
5  第一項の交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、請求に係る不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる。

(登記事項証明書の交付の請求情報等)
不動産登記規則193条  登記事項証明書、登記事項要約書、地図等の全部若しくは一部の写し(地図等が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面。以下この条において同じ。)又は土地所在図等の全部若しくは一部の写し(土地所在図等が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面。以下この条において同じ。)の交付の請求をするときは、次に掲げる事項を内容とする情報(以下この章において「請求情報」という。)を提供しなければならない。地図等又は登記簿の附属書類の閲覧の請求をするときも、同様とする。
一  請求人の氏名又は名称
二  不動産所在事項又は不動産番号
三  交付の請求をする場合にあっては、請求に係る書面の通数
四  登記事項証明書の交付の請求をする場合にあっては、第百九十六条第一項各号(同条第二項において準用する場合を含む。)に掲げる登記事項証明書の区分
五  登記事項証明書の交付の請求をする場合において、共同担保目録又は信託目録に記録された事項について証明を求めるときは、その旨
六  地図等又は土地所在図等の一部の写しの交付の請求をするときは、請求する部分
七  送付の方法により登記事項証明書、地図等の全部若しくは一部の写し又は土地所在図等の全部若しくは一部の写しの交付の請求をするときは、その旨及び送付先の住所

(登記事項証明書等の交付の請求の方法等)
同194条  前条第一項の交付の請求又は同項若しくは同条第二項の閲覧の請求は、請求情報を記載した書面(第二百三条並びに第二百四条第一項及び第二項において「請求書」という。)を登記所に提出する方法によりしなければならない。
2  登記事項証明書の交付(送付の方法による交付を除く。)の請求は、前項の方法のほか、法務大臣の定めるところにより、登記官が管理する入出力装置に請求情報を入力する方法によりすることができる。
3  登記事項証明書の交付の請求は、前二項の方法のほか、法務大臣の定めるところにより、請求情報を電子情報処理組織を使用して登記所に提供する方法によりすることができる。この場合において、登記事項証明書を登記所で受領しようとするときは、その旨を請求情報の内容としなければならない。

(4)固定資産評価証明書を取得して登録免許税額を計算する

登記簿謄本を取って物件の登記内容が確認できたら,続いて市町村役場で固定資産税の評価証明書を取得して評価額を調べます。相続登記をするには,登記と同時に,登録免許税という国税を国に納めなければいけないからです。登録免許税を計算し,その計算根拠となる資料を相続登記の申請と一緒に法務局に出さねばならないので,市町村役場で固定資産評価証明書を取得するのです。

①固定資産評価証明書の取り方

固定資産評価証明書の請求取得方法とその見方についてはこちらをご覧ください。要は,評価証明書の「評価額」とか「価格」欄に書いてある金額を調べます。

相続?贈与?離婚?不動産のことが気になったらまずすること(後編)

②登録免許税の計算の仕方

固定資産評価額(評価証明書の「評価額」「価格」)に税率をかけて計算します。相続登記の税率は1000分の4。具体的には次のとおり計算します。

  • 固定資産税評価額の1000円未満を切り捨てる。評価額が1000円未満のときは1000円とする。
  • これに相続登記の税率である1000分の4(0.4%)を掛ける。
  • 出てきた金額の100円未満を切り捨てる。計算結果が1000円未満のときは1000円とする。

計算結果の金額が相続登記と同時に国に納めるべき登録免許税額です。

なお,以下のような場合には特別の計算が必要です。

③固定資産評価額がない建物の場合

法務局や地方法務局が独自に定めた認定価格にもとづいて評価して計算します。

新築建物課税標準価格認定基準表等について

④登記簿の面積と評価証明書の面積が違う場合

こちらは専門的技術的なので司法書士に相談依頼してください。

(不動産等の価額)
登録免許税法10条  別表第一第一号、第二号、第四号又は第四号の二に掲げる不動産、船舶、ダム使用権又は公共施設等運営権の登記又は登録の場合における課税標準たる不動産、船舶、ダム使用権又は公共施設等運営権(以下この項において「不動産等」という。)の価額は、当該登記又は登録の時における不動産等の価額による。この場合において、当該不動産等の上に所有権以外の権利その他処分の制限が存するときは、当該権利その他処分の制限がないものとした場合の価額による。

(不動産登記に係る不動産価額の特例)
登録免許税法附則7条  新法別表第一の第一号に掲げる不動産の登記の場合における新法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年十二月三十一日現在又は当該申請の日の属する年の一月一日現在において地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百四十一条第九号(固定資産税に関する用語の意義)に掲げる固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格を基礎として政令で定める価額によることができる。

登録免許税法施行令附則3項本文  法附則第七条に規定する政令で定める価額は、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百四十一条第九号に掲げる固定資産課税台帳(以下「課税台帳」という。)に登録された価格のある不動産については、次の各号に掲げる当該不動産の登記の申請の日の属する日の区分に応じ当該各号に掲げる金額に相当する価額とし、課税台帳に登録された価格のない不動産については、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産で課税台帳に登録された価格のあるものの次の各号に掲げる当該申請の日の区分に応じ当該各号に掲げる金額を基礎として当該登記に係る登記機関が認定した価額とする。

⑤収入印紙を買う

登録免許税は相続登記と同時に納めないといけないのでお金を準備しておいてください。法律上は現金納付が原則ですが,実務はほぼ印紙納付です(司法書士はインターネットによるオンライン登記申請をするので登録税もネットバンクで電子納付することが多い)。つまり収入印紙を後から説明する登記申請書に貼り付けて納めます。

なので,登録免許税額を計算し,お金を準備したら,郵便局等でその金額に相当する収入印紙を買っておいてください。登録免許税は国税なので買うのは収入印紙です。

(現金納付)
登録免許税法21条  登記等を受ける者は、この法律に別段の定めがある場合を除き、当該登記等につき課されるべき登録免許税の額に相当する登録免許税を国に納付し、当該納付に係る領収証書を当該登記等の申請書にはり付けて当該登記等に係る登記官署等に提出しなければならない。

(印紙納付)
同22条  登記等(第二十四条第一項に規定する免許等を除く。)を受ける者は、当該登記等につき課されるべき登録免許税の額が三万円以下である場合その他政令で定める場合には、当該登録免許税の額に相当する金額の印紙を当該登記等の申請書にはり付けて登記官署等に提出することにより、国に納付することができる。

(印紙納付ができる場合)
同施行令29条  法第二十二条 (法第二十四条の二第三項 及び第三十五条第四項 の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一  登記所の近傍に収納機関が存在しないため当該登記所においてつかさどる登記又は登録に係る登録免許税を法第二十一条 (法第二十四条の二第三項 及び第三十五条第四項 の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により納付することが困難であると法務局又は地方法務局の長が認めてその旨を当該登記所に公示した場合
二  登記等につき課されるべき登録免許税の額の三万円未満の端数の部分の登録免許税を納付する場合
三  前二号に掲げる場合のほか、印紙により登録免許税を納付することにつき特別の事情があると登記機関が認めた場合

(5)遺産分割協議書を作って相続人全員が実印を押す

戸籍の収集も終わった。登記簿も調べて間違いなく故人の単独名義になっていることが分かった。

そうしたら,次に,共同相続人で正式に遺産分割協議をして,遺産分割協議書を作成してください。遺産分割協議書には共同相続人の全員が実印を押して,これに対応する印鑑証明書を全員分,各1通用意します。遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書は,相続登記の申請書の必須添付書類になります。

①遺産分割協議書の書式記載例

 


遺産分割協議書

共同相続人である私達は,次の相続について,下記のとおり遺産分割の協議をした。

【相続の表示】
被相続人の最後の本籍 ●●●
最後の住所 ●●●
氏名 ●
相続開始の日 平成●年●月●日

1.●は,次の不動産を相続する。
所在
地番
地目
地積

所在
家屋番号
種類
構造
床面積

2.●は,次の預金を相続する。
南都銀行 王寺南支店 普通預金 ●●●
三井住友銀行 大和王寺支店 定期預金 ●●●
ゆうちょ銀行 通常貯金 記号● 番号●●●

3.その他の遺産があったときは,法定相続で相続する。

以上の協議を証するため,この協議書を作成し,各自署名押印のうえ,各1通を保有するものとする。

平成●年●月●日
住所
氏名 印

住所
氏名 印

住所
氏名 印


 

②遺産分割協議書の書き方のポイント

遺産分割協議とは,◎被相続人が,◎死亡して相続が開始し,◎残された相続財産・遺産について,◎相続人の全員が,◎どのように割振りするか合意することです。なので,その結果を証する遺産分割協議書に書くべき内容もおのずと決まってきます。

◎被相続人の表示

相続の当事者である故人を特定できるように以下のようなことを書きます。

  • 最後の本籍
  • 最後の住所
  • 氏名
◎相続開始日

相続は被相続人の死亡により効力が生じますから相続の開始日である死亡日を記載します。

例)

相続開始の日 平成●年●月●日

◎相続財産・遺産・物件の特定

遺産分割協議書において割振りをする遺産はちゃんと特定できる程度に書く必要があります。遺産が特定できていなければ,関係機関もどういう遺産分割が成立したのか判断できません。

例)

  • 南都銀行 王寺南支店 普通預金 1933723
  • 以下の土地
    所在 奈良県北葛城郡王寺町王寺二丁目
    地番 7番
    地目 宅地
    地積 ●㎡
◎相続人全員の署名押印(記名押印)

協議の当事者である共同相続人全員の住所氏名を書いて実印を押します。住所は,普段書いているように「-(ハイフン)」などで省略せず,住民票又は印鑑証明書を見ながら,そのとおりに書いてください。

◎協議内容

誰がどの財産をどのように相続するのか具体的に書いてください。「任せる」とか「一任する」とかでは駄目です。

例)

  • 以下の不動産は,●●が相続する。
  • 以下の預貯金は,●●が取得する。
  • 以下の現金は,●●と●●が,各2分の1の割合で相続する。

なお,遺産分割協議後に財産が見つかった場合に備えて,予備的な文言も必ず記載してください。次のような感じです。

例)

  • 協議後,その他相続財産が発見されたときは,法定相続人の全員が法定相続分の割合で相続する。

さらに詳しく遺産分割協議について知りたい方は以下をお読みください。遺産分割協議のやり方・仕方や,遺産分割協議書の作り方・書き方について全部説明しています。

遺産分割協議のやり方と遺産分割協議書の作り方

(6)「登記申請書」を作成する

ではいよいよ故人の不動産の所有権を移転する相続登記をするための登記申請書を作成します。

相続登記をするには,登記申請書と,登記申請書に記載された内容を裏付ける添付書類を用意し,これをセットにして管轄の法務局に提出します。登記申請書は,「要するにこういう登記をしてください」と国にお願いする結論を書いた書面です。添付書類は,「ほらほら確かにこういう事実関係があったことがこの書面から分かるでしょ?」という証拠書類です。これらをセットにして法務局に出すと,法務局の登記官が法律等にもとづいて書類をチェックしてくれます。問題なければ登記が実行されて登記識別情報(権利書・権利証)が発行されます。

  • 登記申請書
  • 添付書類

まずは登記申請書のほうから説明します。登記申請書は,要するにこういう登記をしてくれと結論を書いた書類なので,その内容はシンプルです。今回設定した事例に使用する登記申請書の書式見本は以下のとおりです。

相続登記を自分でする登記申請書

①タイトル

書類のタイトルとして,「登記申請書」と記載してください。

②登記の目的

要するにどういう登記をしてほしいかその趣旨を書きます。登記をする対象となる権利の種類と,その権利がどうなったか(どうしてほしいか)の組み合わせで記載します。今回登記の対象となるのは故人が持っていた住宅不動産に対する所有権という権利です。なのでまず「所有権」と書きます。次に,その権利がどうなったかです。今回所有権の権利主体(※)が親から子に移ったので「移転」と書きます。あわせると「所有権移転」です。

不動産登記は不動産に関する物権の変動(発生・変更・消滅)を登記するもの。物権とは,人が物に対して持つ権利のことです(法律上,人の物に対する直接的排他的支配権などと表現します)。人→物の関係です。この場合の人のことを権利のオーナーという意味で「権利主体」といい,物権の対象となる物のことを「権利の客体」といいます。その他所有権という権利そのものの態様のことを「権利内容」といいます。不動産登記では,権利主体がAからBに移ること,つまり権利主体の変更を「移転」と呼び,権利内容が変容することを「変更」と呼んでいます。また権利自体を新たに発生させる合意のことを「設定」と呼び,権利自体が消滅し権利内容が無に帰したことを「抹消」と表現します(ほかにもいろいろあります)。例えば銀行が債務者所有の物件に担保をつけたら「抵当権・設定」登記をし,ローン完済して担保が消えたら「抵当権・抹消」登記を行います。

③原因

物権変動が起こった日付と,物権変動を生じさせた法律上の原因事実を,組み合わせて記載します。今回は,相続という原因事実によって,不動産の所有権が親から子に移る物権変動が起こったので,登記原因は,「年月日相続」です。この年月日は相続開始の日,つまり被相続人の死亡日です。相続の効力は人の死亡によって生じるからです。

④相続人

相続の場合には,「相続人」とまず書いて,その下に「(被相続人●●●●)」と括弧付で死亡した人の名前を書きます。次に,申請人の住所氏名を住民票の記載どおりに一言一句書きます。ハイフンなどで省略してはいけません。

それから,連絡のつく電話番号も書きます。何かあれば法務局から直接電話があります。

最後に,申請人の氏名の横に,押印してください。この印鑑は認印でも大丈夫です。

(申請情報を記載した書面への記名押印等)
不動産登記令16条  申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印しなければならない。

⑤添付書類

今回の相続登記の場合は,「登記原因証明情報」と「住所証明書」の二つを書けばよいです。登記原因証明情報とは,先に収集した戸籍謄本等一式と遺産分割協議書さらには相続人全員の印鑑証明書をまとめたものであり,住所証明書は戸籍附票や住民票のことです。

⑥申請日と法務局

じっさいに登記申請書を提出する年月日と管轄法務局を記載します。

⑦課税価格

登録免許税の課税価格です。先にも説明のとおり,基本的には,固定資産評価証明書の1000円未満を切り捨てた金額です。

⑧登録免許税

課税価格に1000分4を乗じ,100円未満を切り捨てた金額です。結果が1000円未満でも,登録税は最低1000円納めます。

⑨不動産の表示

最初に取得した登記簿謄本・登記事項証明書のとおりに相続登記する不動産を特定するための情報を書きます。これは書き方が決まっています。登記簿のとおり写すようにしてください。

土地の記載事項は以下の項目です。
  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積
  • 不動産番号
建物は以下の項目です。
  • 所在地番
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積
  • 不動産番号

(申請の方法)
不動産登記法18条  登記の申請は、次に掲げる方法のいずれかにより、不動産を識別するために必要な事項、申請人の氏名又は名称、登記の目的その他の登記の申請に必要な事項として政令で定める情報(以下「申請情報」という。)を登記所に提供してしなければならない。
一  法務省令で定めるところにより電子情報処理組織(登記所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この号において同じ。)と申請人又はその代理人の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法
二  申請情報を記載した書面(法務省令で定めるところにより申請情報の全部又は一部を記録した磁気ディスクを含む。)を提出する方法

(申請情報)
不動産登記令3条  登記の申請をする場合に登記所に提供しなければならない法第十八条 の申請情報の内容は、次に掲げる事項とする。
一  申請人の氏名又は名称及び住所
二  申請人が法人であるときは、その代表者の氏名
三  代理人によって登記を申請するときは、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
四  民法 (明治二十九年法律第八十九号)第四百二十三条 その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請するときは、申請人が代位者である旨、当該他人の氏名又は名称及び住所並びに代位原因
五  登記の目的
六  登記原因及びその日付(所有権の保存の登記を申請する場合にあっては、法第七十四条第二項 の規定により敷地権付き区分建物について申請するときに限る。)
七  土地の表示に関する登記又は土地についての権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる事項
イ 土地の所在する市、区、郡、町、村及び字
ロ 地番(土地の表題登記を申請する場合、法第七十四条第一項第二号 又は第三号 に掲げる者が表題登記がない土地について所有権の保存の登記を申請する場合及び表題登記がない土地について所有権の処分の制限の登記を嘱託する場合を除く。)
ハ 地目
ニ 地積
八  建物の表示に関する登記又は建物についての権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる事項
イ 建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である建物にあっては、当該建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)
ロ 家屋番号(建物の表題登記(合体による登記等における合体後の建物についての表題登記を含む。)を申請する場合、法第七十四条第一項第二号 又は第三号 に掲げる者が表題登記がない建物について所有権の保存の登記を申請する場合及び表題登記がない建物について所有権の処分の制限の登記を嘱託する場合を除く。)
ハ 建物の種類、構造及び床面積
ニ 建物の名称があるときは、その名称
ホ 附属建物があるときは、その所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である附属建物にあっては、当該附属建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)並びに種類、構造及び床面積
ヘ 建物又は附属建物が区分建物であるときは、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の構造及び床面積(トに掲げる事項を申請情報の内容とする場合(ロに規定する場合を除く。)を除く。)
ト 建物又は附属建物が区分建物である場合であって、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の名称があるときは、その名称
九  表題登記又は権利の保存、設定若しくは移転の登記(根質権、根抵当権及び信託の登記を除く。)を申請する場合において、表題部所有者又は登記名義人となる者が二人以上であるときは、当該表題部所有者又は登記名義人となる者ごとの持分
十  法第三十条 の規定により表示に関する登記を申請するときは、申請人が表題部所有者又は所有権の登記名義人の相続人その他の一般承継人である旨
十一  権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる事項
イ 申請人が登記権利者又は登記義務者(登記権利者及び登記義務者がない場合にあっては、登記名義人)でないとき(第四号並びにロ及びハの場合を除く。)は、登記権利者、登記義務者又は登記名義人の氏名又は名称及び住所
ロ 法第六十二条 の規定により登記を申請するときは、申請人が登記権利者、登記義務者又は登記名義人の相続人その他の一般承継人である旨
ハ ロの場合において、登記名義人となる登記権利者の相続人その他の一般承継人が申請するときは、登記権利者の氏名又は名称及び一般承継の時における住所
ニ 登記の目的である権利の消滅に関する定め又は共有物分割禁止の定めがあるときは、その定め
ホ 権利の一部を移転する登記を申請するときは、移転する権利の一部
ヘ 敷地権付き区分建物についての所有権、一般の先取特権、質権又は抵当権に関する登記(法第七十三条第三項 ただし書に規定する登記を除く。)を申請するときは、次に掲げる事項
(1) 敷地権の目的となる土地の所在する市、区、郡、町、村及び字並びに当該土地の地番、地目及び地積
(2) 敷地権の種類及び割合
十二  申請人が法第二十二条 に規定する申請をする場合において、同条 ただし書の規定により登記識別情報を提供することができないときは、当該登記識別情報を提供することができない理由
十三  前各号に掲げるもののほか、別表の登記欄に掲げる登記を申請するときは、同表の申請情報欄に掲げる事項

(申請情報)
不動産登記規則34条  登記の申請においては、次に掲げる事項を申請情報の内容とするものとする。
一  申請人又は代理人の電話番号その他の連絡先
二  分筆の登記の申請においては、第七十八条の符号
三  建物の分割の登記又は建物の区分の登記の申請においては、第八十四条の符号
四  附属建物があるときは、主である建物及び附属建物の別並びに第百十二条第二項の符号
五  敷地権付き区分建物であるときは、第百十八条第一号イの符号
六  添付情報の表示
七  申請の年月日
八  登記所の表示
2  令第六条第一項 に規定する不動産識別事項は、不動産番号とする。
3  令第六条 の規定は、同条第一項 各号又は第二項 各号に定める事項が申請を受ける登記所以外の登記所の管轄区域内にある不動産に係る場合には、当該不動産の不動産番号と併せて当該申請を受ける登記所以外の登記所の表示を申請情報の内容としたときに限り、適用する。
4  令第六条第一項第一号 又は第二号 の規定にかかわらず、不動産の表題登記を申請する場合、法第七十四条第一項第二号 又は第三号 に掲げる者が表題登記がない不動産について所有権の保存の登記を申請する場合及び表題登記がない不動産について所有権の処分の制限の登記を嘱託する場合には、令第三条第七号 又は第八号 に掲げる事項を申請情報の内容としなければならない。

※登記申請書の文字を書き間違えた場合どうするか

登記申請書は基本的にPCで作成すると文字が読みやすくてよいです。もし打ち間違えたり,法務局に提出する前に間違いに気づいたら,もう一度作り直して擦り出したほうがよいです。法務局に提出する間際に間違いに気づいてその場で修正したいときは,訂正等の方法が法律で決まっているのでそのとおりにしてください。いわゆる間接訂正のほか,直接訂正でも訂正(加入,削除)できます。以下条文のとおりです。

(申請書等の文字)
不動産登記規則45条  申請書(申請情報の全部を記録した磁気ディスクを除く。以下この款(第五十三条を除く。)において同じ。)その他の登記に関する書面に記載する文字は、字画を明確にしなければならない。
2  前項の書面につき文字の訂正、加入又は削除をしたときは、その旨及びその字数を欄外に記載し、又は訂正、加入若しくは削除をした文字に括弧その他の記号を付して、その範囲を明らかにし、かつ、当該字数を記載した部分又は当該記号を付した部分に押印しなければならない。この場合において、訂正又は削除をした文字は、なお読むことができるようにしておかなければならない。

※登記申請書のいろいろ

登記申請書はとてもシンプルです。しかし法務局に「こういう登記をしてくれ」という最終意思表示をする書類なので間違いは許されません。

法務局には,日々,いろんな権利関係や事実関係にもとづいて,大量に登記申請が持ち込まれます。法務局はこれを順番に審査して処理しないといけないので,申請書の内容は簡潔明瞭でないといけません。申請書の書き方が,申請人ごと,地域ごとにに様々異なったのでは,法務局もこれを登記していいのか判断に迷ってしまうからです。

ということで,どういう場合にはどういう登記申請をするという先例(約束事)の積み重ねが,不動産登記法施行以来100年分積み重なっています(申請書の書式・ひな形だけで数百種類ある)。相続登記についても実はいろんなパターンがあるので,ご自身の事例についてどう書いていいか分からなくなったら司法書士に依頼してください。

(7)その他「添付書類」等を整える

申請書ができたら次に添付書類です。登記申請書を含め,下記の順番で書類を準備して並べます。

並べたら今度は,これらの書類を二つの大きなグループに分けて,グループごとにクリップでとめてください。

  • 一つ目 法務局に提出してしまう書類のグループ
    「①登記申請書」から,「⑧固定資産評価証明書の写し(コピー)」までの書類です。
  • 二つ目 返してもらう書類(登記完了後)のグループ
    「⑨申請人(不動産を相続する人)の住所証明書の原本」から,最後の「⑭固定資産評価証明書の原本」までの書類です。

法務局に提出してしまう書類のグループ

①登記申請書

先ほど説明した申請書です。1番うえに申請書を置きます。

相続登記を自分でする登記申請書

②印紙台紙

登録免許税納付用に買っておいた収入印紙を準備します。この収入印紙は法律上登記申請書に貼る決まりですが,申請書の余白は小さいので貼りにくいです。なので,通常印紙台紙という印紙貼付用の白紙の用紙を準備します。これを申請書の次に重ねてホッチキスでとめ,申請書と印紙台紙のつなぎ目に契印(申請書に押した印鑑で)して1通の書類にすれば,印紙台紙も含めて登記申請書となり,印紙台紙は登記申請書の一部となります。こうして印紙台紙の部分に収入印紙を貼れば,印紙は登記申請書に貼ったことになります。

相続登記を自分でする印紙台紙

③申請人(不動産を相続する人)の住所証明書の写し(コピー)

相続人の住所証明書として,先に集めておいた住民票又は戸籍附票のコピーをとって添付します。コピーではなく原本を提出してもいいんですが,原本は他の相続手続きに使用するので通常は原本還付の処理をします。原本還付とは,法務局には写しを提出して,原本は登記完了後に申請人に返してもらう手続きのことです。法務局に写しと原本の両方を提出して,法務局の登記官が照合してその旨記録したのち,原本は返却処理をします。

この原本還付をしてほしいときは,住所証明書の写しを提出し,その写しに,「原本と相違ない」と記載して,「押印」しなければいけません。以下見本は司法書士が使用しているゴム印(から代理人司法書士の記載を削除したもの)ですが,このとおりの内容を,住民票等のコピーに書き込んで押印すればよいです。コピーが何通かになるときは,最初のページにこれを書いて押印し,2枚目以降は契印をしてつなぎます。

相続登記を自分でする原本還付

(添付書面の原本の還付請求)
不動産登記規則55条  書面申請をした申請人は、申請書の添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求することができる。ただし、令第十六条第二項 、第十八条第二項若しくは第十九条第二項又はこの省令第四十八条第一項第三号 (第五十条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第四十九条第二項第三号 の印鑑に関する証明書及び当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない。
2  前項本文の規定により原本の還付を請求する申請人は、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければならない。
3  登記官は、第一項本文の規定による請求があった場合には、調査完了後、当該請求に係る書面の原本を還付しなければならない。この場合には、前項の謄本と当該請求に係る書面の原本を照合し、これらの内容が同一であることを確認した上、同項の謄本に原本還付の旨を記載し、これに登記官印を押印しなければならない。
4項以下略

(契印等)
同46条  申請人又はその代表者若しくは代理人は、申請書が二枚以上であるときは、各用紙のつづり目に契印をしなければならない。
2  前項の契印は、申請人又はその代表者若しくは代理人が二人以上ある場合は、その一人がすれば足りる。ただし、登記権利者及び登記義務者が共同して登記の申請をするときは、登記権利者又はその代表者若しくはその代理人及び登記義務者又はその代表者若しくはその代理人の各一人がしなければならない。
3  令別表の六十五の項添付情報欄に掲げる信託目録に記録すべき情報を記載した書面が二枚以上であるときは、申請人又はその代表者若しくは代理人は、各用紙に当該用紙が何枚目であるかを記載し、各用紙のつづり目に契印をしなければならない。この場合においては、前項の規定を準用する。

④相続関係説明図

先に戸籍調査の後作成しておいた相続関係説明図をつけます。この相続関係説明図も戸籍類の原本還付請求のために作成するものです。つまり,相続関係説明図は,上記住民票の写し(コピー)と同じ役割を果たします。

相続登記を自分でする相続関係説明図

⑤被相続人の住所証明書の写し(コピー)

亡くなった人の徐住民票又は戸籍附票の除票の写しを取って付けます。同じく原本還付の処理をします。以下写しにはすべからく同様の処理をします。

⑥遺産分割協議書の写し(コピー)

相続人全員が実印を押した遺産分割協議書の写しです。遺産分割協議書の記載事項に間違いや漏れがないか,押印は漏れてないか(契印など)をもう一度チェックしておいてください。

⑦相続人全員の印鑑証明書の写し(コピー)

全員分の印鑑証明書をコピーして添付します。

⑧固定資産評価証明書の写し(コピー)

市町村役場で最初に取得した固定資産評価証明書の写しです。登記申請書に記載した登録免許税の課税価格や税額に間違いがないか法務局に証明するために添付します。

 

ここまで順番を維持したまま一まとめにしてクリップ!

 

返してもらう書類(登記完了後)のグループ

⑨申請人(不動産を相続する人)の住所証明書の原本

⑩相続関係を証する戸籍謄本等一式の原本

以下の書類の原本をまとめて提出します。

  • 被相続人の出生から死亡までが一連記載された戸籍,除籍,原戸籍謄本の全部
  • 法定相続人全員分の現行の戸籍謄本

なお,

亡くなった被相続人に関する戸籍類→相続人の戸籍類の順番

で添付します。さらに被相続人の書類は,

死亡時の戸籍→出生時の戸籍

の並びになるように,さかのぼってたどれる順番に添付するとよいです。

⑪被相続人の住所証明書の原本

⑫遺産分割協議書の原本

⑬相続人全員の印鑑証明書の原本

⑭固定資産評価証明書の原本

 

続いて順番を維持したまま一まとめにしてクリップ!

 

以上

(添付情報)
不動産登記令7条1項  登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。
一  申請人が法人であるとき(法務省令で定める場合を除く。)は、次に掲げる情報
イ 会社法 人等番号(商業登記法 (昭和三十八年法律第百二十五号)第七条 (他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法 人等番号をいう。以下このイにおいて同じ。)を有する法人にあっては、当該法人の会社法 人等番号
ロ イに規定する法人以外の法人にあっては、当該法人の代表者の資格を証する情報
二  代理人によって登記を申請するとき(法務省令で定める場合を除く。)は、当該代理人の権限を証する情報
三  民法第四百二十三条 その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請するときは、代位原因を証する情報
四  法第三十条 の規定により表示に関する登記を申請するときは、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 の指定都市にあっては、区長又は総合区長とする。第十六条第二項及び第十七条第一項を除き、以下同じ。)、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)
五  権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる情報
イ 法第六十二条 の規定により登記を申請するときは、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)
ロ 登記原因を証する情報。ただし、次の(1)又は(2)に掲げる場合にあっては当該(1)又は(2)に定めるものに限るものとし、別表の登記欄に掲げる登記を申請する場合(次の(1)又は(2)に掲げる場合を除く。)にあっては同表の添付情報欄に規定するところによる。
(1) 法第六十三条第一項 に規定する確定判決による登記を申請するとき 執行力のある確定判決の判決書の正本(執行力のある確定判決と同一の効力を有するものの正本を含む。以下同じ。)
(2) 法第百八条 に規定する仮登記を命ずる処分があり、法第百七条第一項 の規定による仮登記を申請するとき 当該仮登記を命ずる処分の決定書の正本
ハ 登記原因について第三者の許可、同意又は承諾を要するときは、当該第三者が許可し、同意し、又は承諾したことを証する情報
六  前各号に掲げるもののほか、別表の登記欄に掲げる登記を申請するときは、同表の添付情報欄に掲げる情報

(添付情報の提供方法)
同15条  書面を提出する方法(法第十八条第二号 の規定により申請情報を記載した書面(法務省令で定めるところにより申請情報の全部又は一部を記録した磁気ディスクを含む。)を登記所に提出する方法をいう。)により登記を申請するときは、申請情報を記載した書面に添付情報を記載した書面(添付情報のうち電磁的記録で作成されているものにあっては、法務省令で定めるところにより当該添付情報を記録した磁気ディスクを含む。)を添付して提出しなければならない。この場合において、第十二条第二項及び前条の規定は、添付情報を記録した磁気ディスクを提出する場合について準用する。

同別表30 所有権の移転の登記
イ 登記原因を証する情報
ロ 登記名義人となる者の住所を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

(8)法務局に登記申請をする

①相続登記申請が却下,取下げ,補正にならないよう最終チェックをする

登記申請書を作成し,添付書類の写しをとって原本還付処理をして並び替え,申請書にセットして整え申請準備ができたら,いよいよ法務局に相続登記の登記申請をしましょう。その前に,ちゃんと次の作業ができているか最終確認をしておいてください。

これまでの作業)

  1. 遺言書の有無(あるかないか)を確認する
  2. 戸籍謄本等を集めて法定相続人を確定する
  3. 登記簿謄本(登記事項証明書)を取得して現在の登記内容を確認する
  4. 固定資産評価証明書を取得して登録免許税額を計算する
  5. 遺産分割協議書を作って相続人全員が実印を押す
  6. 「登記申請書」を作成する
  7. その他「添付書類」等を整える

チェックしてください)

  • 戸籍謄本等は揃ってますか?被相続人の戸籍は,死亡から出生まできっちりつながっていますか?
  • 戸籍の記載におかしなところはないですか?市町村役場による記載間違い等はありませんか?
  • 登記簿上の被相続人の住所と,被相続人の住所証明の住所は同じですか?つながりはついてますか?
  • 登記簿上の被相続人の氏名と,戸籍謄本等の被相続人の氏名は同じですか?文字はどうですか?
  • 登記簿謄本(登記事項証明書)の面積と固定資産評価証明書の面積は同じですか?
  • 登記する物件は固定資産評価証明書に出てきますか?書いてないってことはありませんか?
  • 登録免許税の計算は合っていますか?
  • 遺産分割協議書に記載すべき事柄は漏れなく全部書いてありますか?
  • 遺産分割協議書には相続人の全員が署名押印(記名押印)していますか?
  • 遺産分割協議書に押印漏れはないですか?実印の印影ははっきりしていますか?印鑑証明書と照合できますか?
  • 遺産分割協議書の相続人の住所氏名に間違いはないですか?印鑑証明書の住所氏名と同じですか?
  • 遺産分割協議書の不動産の表示は登記簿謄本と同じですか?間違ってないですか?
  • 登記申請書は法律どおりに作られていますか?記載漏れや間違いはありませんか?
  • 登記申請書に間違いなく収入印紙を貼りましたか?全部又は一部金額の貼り忘れはありませんか?
  • 原本還付してほしい添付書類は全部コピーをしていますか?
    などなど

法務局に相続登記を申請した後に間違いや不足が見つかった場合,その内容により,登記申請が却下されたり,取下げや補正が必要になったりします。そうなると非常に面倒です。なので,法務局に申請書を提出する前に,しつこいくらいに間違いがないか確認するようにしてください。

一度窓口に提出したり,郵便ポストに投函してしまうと,もう申請行為が完了してしまうので,「ちょっと直させて」と簡単に間違いを訂正することはできません。そうなると,法律の規定と仕組みにしたがって,却下,取下げ,補正の処理にて進めるほかありません。

申請人であるあなたも面倒ですし,法務局にも余計な迷惑をかけますから,登記は可能な限り一発で審査通過するように申請すべきです。

(申請の却下)
不動産登記法25条 登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない。
一  申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないとき。
二  申請が登記事項(他の法令の規定により登記記録として登記すべき事項を含む。)以外の事項の登記を目的とするとき。
三  申請に係る登記が既に登記されているとき。
四  申請の権限を有しない者の申請によるとき。
五  申請情報又はその提供の方法がこの法律に基づく命令又はその他の法令の規定により定められた方式に適合しないとき。
六  申請情報の内容である不動産又は登記の目的である権利が登記記録と合致しないとき。
七  申請情報の内容である登記義務者(第六十五条、第七十七条、第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)、第九十三条(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)又は第百十条前段の場合にあっては、登記名義人)の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき。
八  申請情報の内容が第六十一条に規定する登記原因を証する情報の内容と合致しないとき。
九  第二十二条本文若しくは第六十一条の規定又はこの法律に基づく命令若しくはその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならないものとされている情報が提供されないとき。
十  第二十三条第一項に規定する期間内に同項の申出がないとき。
十一  表示に関する登記の申請に係る不動産の表示が第二十九条の規定による登記官の調査の結果と合致しないとき。
十二  登録免許税を納付しないとき。
十三  前各号に掲げる場合のほか、登記すべきものでないときとして政令で定めるとき。

(登記すべきものでないとき)
不動産登記令20条  法第二十五条第十三号 の政令で定める登記すべきものでないときは、次のとおりとする。
一  申請が不動産以外のものについての登記を目的とするとき。
二  申請に係る登記をすることによって表題部所有者又は登記名義人となる者(別表の十二の項申請情報欄ロに規定する被承継人及び第三条第十一号ハに規定する登記権利者を除く。)が権利能力を有しないとき。
三  申請が法第三十二条 、第四十一条、第五十六条、第七十三条第二項若しくは第三項、第八十条第三項又は第九十二条の規定により登記することができないとき。
四  申請が一個の不動産の一部についての登記(承役地についてする地役権の登記を除く。)を目的とするとき。
五  申請に係る登記の目的である権利が他の権利の全部又は一部を目的とする場合において、当該他の権利の全部又は一部が登記されていないとき。
六  同一の不動産に関し同時に二以上の申請がされた場合(法第十九条第二項 の規定により同時にされたものとみなされるときを含む。)において、申請に係る登記の目的である権利が相互に矛盾するとき。
七  申請に係る登記の目的である権利が同一の不動産について既にされた登記の目的である権利と矛盾するとき。
八  前各号に掲げるもののほか、申請に係る登記が民法 その他の法令の規定により無効とされることが申請情報若しくは添付情報又は登記記録から明らかであるとき。

(申請の取下げ)
不動産登記規則39条  申請の取下げは、次の各号に掲げる申請の区分に応じ、当該各号に定める方法によってしなければならない。
一  電子申請 法務大臣の定めるところにより電子情報処理組織を使用して申請を取り下げる旨の情報を登記所に提供する方法
二  書面申請 申請を取り下げる旨の情報を記載した書面を登記所に提出する方法
2  申請の取下げは、登記完了後は、することができない。
3  登記官は、書面申請がされた場合において、申請の取下げがされたときは、申請書及びその添付書面を還付するものとする。前条第三項ただし書の規定は、この場合について準用する。

(補正)
同60条  登記官は、申請の補正をすることができる期間を定めたときは、当該期間内は、当該補正すべき事項に係る不備を理由に当該申請を却下することができない。
2  申請の補正は、次の各号に掲げる申請の区分に応じ、当該各号に定める方法によってしなければならない。
一  電子申請 法務大臣の定めるところにより電子情報処理組織を使用して申請の補正をする方法
二  書面申請 登記所に提出した書面を補正し、又は補正に係る書面を登記所に提出する方法

②じっさいに登記申請をする

チェックができたら登記申請しましょう。相続登記の申請をする方法は,大きく分けて次の二つです。

  • 書面申請
    紙で作った相続登記の申請書(申請情報)と添付書類を法務局に提出して登記申請する方法です。
  • オンライン申請
    インターネットによるオンライン申請により登記申請する方法です。

トップページ > 法務省の概要 > 各組織の説明 > 内部部局 > 民事局 > 登記 -不動産登記- > 不動産登記の電子申請(オンライン申請)について

そして,うち書面申請には,さらに二つの方法があります。

  • 法務局の窓口に直接書類を持って行って提出し登記申請する方法(窓口申請)
  • 申請書と添付書類を管轄の法務局に郵便で送って登記申請する方法(郵送申請)

さて,司法書士が登記申請をする場合,ほぼオンライン申請と郵送申請を利用しますが,まず,現状,一般の方にはオンライン申請のハードルは高いはずです。なので書面申請をおすすめします。

さあ,ようやく登記申請をします。

■窓口申請の場合

最初に登記簿謄本(登記事項証明書)を取得したときに管轄の法務局を調べたはずです。その法務局に行って登記申請書を手渡します。

法務局の営業時間?は現状こうです。

奈良地方法務局本局,支局及び出張所の窓口取扱時間は下のとおりです。
なお,土曜・日曜・休日及び祝祭日は,すべての窓口の取扱いをしておりません。
窓口取扱時間
午前8時30分 から 午後5時15分 まで
(ただし,登記相談については,各庁にお問い合わせください)

法務局に行ったら担当窓口を探します。

法務局は相続登記だけをやってるのではありません。また不動産の登記だけをやってるわけでもありません。例えば奈良地方法務局に行くと,以下のような担当部署があることが分かります。このうちお世話になるのは不動産登記の部署です。

  • 不動産登記
  • 商業・法人登記
  • 成年後見登記
  • 国籍
  • 供託
  • 人権擁護

もう一つ言うと,不動産登記の部署はさらに二つに分かれます。およそ以下のような標記の看板がかかって,担当が分かれていると思いますから,権利部(権利の登記)のほうの窓口に行って申請書等を手渡してください。

  • 権利部(権利の登記)
  • 表示部(表示の登記)

「相続登記の申請をしたいんですが,,,」と窓口で話しかけたら書類を受け取ってくれるはずです(又は「こちらの箱に入れてください」と案内されます)。

■郵送申請の場合

郵送申請をする場合は同じく管轄の法務局と住所を調べてそちら(不動産登記の権利部)に申請書と添付書類一式を送ります。注意点を三つお知らせします。この注意点3点はとても重要ですのでくれぐれもご承知ください。

◎書留郵便等で送ること

法律で送り方が決まっています。それ以外の方法で送ってはいけません。以下のどちらかの方法で差し出してください。

  • 書留郵便
  • レターパックプラス

相続登記を自分でするレターパックプラス

◎封筒の表に不動産登記申請書が入っている旨記載すること

封筒の表紙に,大きく,「不動産登記申請書在中」を書きます。これも法律で決まっています。法務局には登記申請書以外の書類も届くため,それと分別してもらい,速やかに受付処理ができるようにするためです。

◎完了書類も郵送で送ってほしいときは以下のようにすること
  • 返信用封筒等を同封すること!
    「返信用封筒と切手(本人限定受取郵便での返信に足りる金額分)」又はレターパックプラスを一緒に入れてください。レターパックプラスをおすすめします。コンビニや郵便局で買えます。
  • 「登記申請書」に次の文言を書き加えること!(※)
    「送付の方法により登記完了証の交付を希望します。
    送付先の住所 申請人の住所地」
    「送付の方法により登記識別情報通知書の交付を希望します。
    送付先の区分 申請人の住所」

登記の完了書類を郵便で送ってもらう場合に必要になる「登記申請書」の記載事項です。先ほど見本をお見せした登記申請書にはこの記載をしていません。あのまま登記申請をすると,完了書類は法務局の窓口でのみ受け取ることができます。せっかく登記申請を郵送でしたんだから,完了書類も郵送でお願いしたい場合は,これらの記載を登記申請書に付け加えます。この文言を書く場所(挿入する場所)は,「添付書類」と「年月日法務局御中」の間でよいでしょう。

(申請の方法)
不動産登記法18条  登記の申請は、次に掲げる方法のいずれかにより、不動産を識別するために必要な事項、申請人の氏名又は名称、登記の目的その他の登記の申請に必要な事項として政令で定める情報(以下「申請情報」という。)を登記所に提供してしなければならない。
一  法務省令で定めるところにより電子情報処理組織(登記所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この号において同じ。)と申請人又はその代理人の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法
二  申請情報を記載した書面(法務省令で定めるところにより申請情報の全部又は一部を記録した磁気ディスクを含む。)を提出する方法

(電子申請の方法)
不動産登記規則41条  電子申請における申請情報は、法務大臣の定めるところにより送信しなければならない。令第十条 の規定により申請情報と併せて送信すべき添付情報についても、同様とする。

(申請書等の送付方法)
同53条  登記の申請をしようとする者が申請書及びその添付書面を送付するときは、書留郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律第九十九号)第二条第六項 に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項 に規定する特定信書便事業者(以下「信書便事業者」と総称する。)による同条第二項 に規定する信書便(以下「信書便」という。)の役務であって当該信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによるものとする。
2  前項の場合には、申請書及びその添付書面を入れた封筒の表面に不動産登記申請書が在中する旨を明記するものとする。

(9)登記が終わったら登記識別情報と登記簿謄本(登記事項証明書)等を回収する

①申請したら法務局はどうするか

相相続登記の申請を窓口に出し,又は郵送申請をして法務局に書類が着いたら,法務局は登記の「受付」処理をします。

(受付)
不動産登記法19条  登記官は、前条の規定により申請情報が登記所に提供されたときは、法務省令で定めるところにより、当該申請情報に係る登記の申請の受付をしなければならない。
2  同一の不動産に関し二以上の申請がされた場合において、その前後が明らかでないときは、これらの申請は、同時にされたものとみなす。
3  登記官は、申請の受付をしたときは、当該申請に受付番号を付さなければならない。この場合において、同一の不動産に関し同時に二以上の申請がされたとき(前項の規定により同時にされたものとみなされるときを含む。)は、同一の受付番号を付するものとする。
(申請の受付)
不動産登記規則56条1項2項  登記官は、申請情報が提供されたときは、受付帳に登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに不動産所在事項を記録しなければならない。
2  登記官は、書面申請の受付にあっては、前項の規定により受付をする際、申請書(申請情報の全部を記録した磁気ディスクにあっては、適宜の用紙)に申請の受付の年月日及び受付番号を記載しなければならない。

その後登記官は可能な限り速やかに申請書類を「調査」します。登記は法務局の受付順に処理されるので,前が混んでいれば処理に時間がかかります。なお,調査とは,審査のことだとお考えください。

(調査)
不動産登記規則57条  登記官は、申請情報が提供されたときは、遅滞なく、申請に関するすべての事項を調査しなければならない。

(登記の順序)
同58条  登記官は、法第二十条 に規定する場合以外の場合においても、受付番号の順序に従って登記するものとする。

調査の結果,相続登記の申請内容に却下事由(不動産登記法25条)がなければ,登記は必ず実行されます。法務局の登記官が責任を持って登記簿(登記記録)に登記をします。なお,申請書や添付書類に不備があれば法務局の登記官から電話がかかってくるので指示どおり対応してください。

(登記)
不動産登記法11条  登記は、登記官が登記簿に登記事項を記録することによって行う。

(権利部の登記)
不動産登記規則146条  登記官は、権利部の相当区に権利に関する登記をする場合には、法令に別段の定めがある場合を除き、権利に関する登記の登記事項のうち、登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付のほか、新たに登記すべきものを記録しなければならない。

②登記はいったい,いつ終わるのか

さて,申請した相続登記はいつ終わるんでしょうか。つまり,いつ完了して書類がもらえるんでしょうか。この点,先にも述べたとおり,登記は受付番号の順に処理されるので,どこの法務局に申請するか,その法務局の事件が混んでいるかどうかにより完了までの所要時間は変わります。なので,法務局は,そのときの混雑状況等を前提に,「登記完了予定日」というのを設定しています。いついつ申請受付された登記であれば,ほぼこの時期までに終わるでしょうという目途です。目途なので絶対終わるかどうか分かりませんが,余裕をみて設定されているので十中八九終わるはずです。

  • 相続登記を窓口申請した場合は,窓口横?にその登記完了予定日が書いてあるはずですからそれを控えて帰ってください。分からなかったら受付で聞いてください。
  • 郵送申請した場合は,その法務局のWEBサイト(ホームページ)を確認してみてください。登記完了予定日を掲載している法務局が多いです。例えば奈良地方法務局の場合は以下のとおり。

奈良地方法務局トップページ>登記完了予定日

③登記が完了したら法務局からどんな書類を受け取るのか

登記が完了したら,次の4点の完了書類を受領します。

  • 原本還付した添付書類
  • 登記完了証
  • 登記識別情報(いわゆる権利書・権利証)
  • 登記簿謄本(登記事項証明書)
「原本還付した添付書類」

前に説明しました。登記申請書のセットは,登記申請書ほか法務局に出し切りの書類のグループと,こちらに返却してもらう原本のグループに分けて提出したはずです。登記が完了すると,法務局は,提出した写し(コピー)と原本を照合して処理したうえ,原本のグループを返してくれます。

原本還付した添付書類は,登記完了と同時に,当然に,返還処理がされます。

この書類は,郵便で送ってもらうことができます。

(添付書面の原本の還付請求)
不動産登記規則55条  書面申請をした申請人は、申請書の添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求することができる。ただし、令第十六条第二項 、第十八条第二項若しくは第十九条第二項又はこの省令第四十八条第一項第三号 (第五十条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第四十九条第二項第三号 の印鑑に関する証明書及び当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない。
2  前項本文の規定により原本の還付を請求する申請人は、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければならない。
3  登記官は、第一項本文の規定による請求があった場合には、調査完了後、当該請求に係る書面の原本を還付しなければならない。この場合には、前項の謄本と当該請求に係る書面の原本を照合し、これらの内容が同一であることを確認した上、同項の謄本に原本還付の旨を記載し、これに登記官印を押印しなければならない。
4  前項後段の規定により登記官印を押印した第二項の謄本は、登記完了後、申請書類つづり込み帳につづり込むものとする。
5  第三項前段の規定にかかわらず、登記官は、偽造された書面その他の不正な登記の申請のために用いられた疑いがある書面については、これを還付することができない。
6  第三項の規定による原本の還付は、申請人の申出により、原本を送付する方法によることができる。この場合においては、申請人は、送付先の住所をも申し出なければならない。
7  前項の場合における書面の送付は、同項の住所に宛てて、書留郵便又は信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによってするものとする。
8  前項の送付に要する費用は、郵便切手又は信書便の役務に関する料金の支払のために使用することができる証票であって法務大臣が指定するものを提出する方法により納付しなければならない。
9  前項の指定は、告示してしなければならない。

「登記完了証」

登記完了証とは,文字どおり,法務局から申請人に対して,「こういうふうに申請された相続登記が完了しましたよ」と通知する書類です。この登記完了証はいわばお知らせ文書であり,登記が完了したことを通知する以上の法律的な意味や効力はありません。よく,この登記完了証と,後に説明する登記識別情報を混同する方がおられますのでご注意ください。この登記完了法を大事に保管しておいてもそれほど意味はありません(捨てることもありませんが笑)。

登記完了証は,登記完了と同時に,当然に,交付処理がされます。

この書類は,郵便で送ってもらうことができます。

(登記完了証)
不動産登記規則181条  登記官は、登記の申請に基づいて登記を完了したときは、申請人に対し、登記完了証を交付することにより、登記が完了した旨を通知しなければならない。この場合において、申請人が二人以上あるときは、その一人(登記権利者及び登記義務者が申請人であるときは、登記権利者及び登記義務者の各一人)に通知すれば足りる。
2  前項の登記完了証は、別記第六号様式により、次の各号に掲げる事項を記録して作成するものとする。
一  申請の受付の年月日及び受付番号
二  第百四十七条第二項の符号
三  不動産番号
四  法第三十四条第一項 各号及び第四十四条第一項 各号(第六号及び第九号を除く。)に掲げる事項
五  共同担保目録の記号及び目録番号(新たに共同担保目録を作成したとき及び共同担保目録に記録された事項を変更若しくは更正し、又は抹消する記号を記録したときに限る。)
六  法第二十七条第二号 の登記の年月日
七  申請情報(電子申請の場合にあっては、第三十四条第一項第一号に規定する情報及び第三十六条第四項に規定する住民票コードを除き、書面申請の場合にあっては、登記の目的に限る。)

(登記完了証の交付の方法)
同182条  登記完了証の交付は、法務大臣が別に定める場合を除き、次の各号に掲げる申請の区分に応じ、当該各号に定める方法による。
一  電子申請 法務大臣の定めるところにより、登記官の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された登記完了証を電子情報処理組織を使用して送信し、これを申請人又はその代理人の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
二  書面申請 登記完了証を書面により交付する方法
2  送付の方法により登記完了証の交付を求める場合には、申請人は、その旨及び送付先の住所を申請情報の内容としなければならない。
3  第五十五条第七項から第九項までの規定は、送付の方法により登記完了証を交付する場合について準用する。
4  官庁又は公署が送付の方法により登記完了証の交付を求める場合の登記完了証の送付は、嘱託情報に記載された住所に宛てて、書留郵便又は信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものその他の郵便又は信書便によって書面を送付する方法によってするものとする。
(登記が完了した旨の通知を要しない場合)
第百八十二条の二  登記官は、次の各号に掲げる場合には、第百八十一条第一項の規定にかかわらず、申請人に対し、登記が完了した旨の通知をすることを要しない。この場合においては、同条第二項の規定により作成した登記完了証を廃棄することができる。
一  前条第一項第一号に規定する方法により登記完了証を交付する場合において、登記完了証の交付を受けるべき者が、登記官の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに登記完了証が記録され、電子情報処理組織を使用して送信することが可能になった時から三十日を経過しても、自己の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該登記完了証を記録しないとき。
二  前条第一項第二号に規定する方法により登記完了証を交付する場合において、登記完了証の交付を受けるべき者が、登記完了の時から三月を経過しても、登記完了証を受領しないとき。
2  第二十九条の規定は、前項の規定により登記完了証を廃棄する場合には、適用しない。

「登記識別情報」

登記識別情報とは,従来一般に言われるところの登記済権利書や権利証に該当する書類です。これが最も大事な完了書類になります。登記が完了したら原則として申請人に登記識別情報が(権利書)が通知されます。

登記識別情報通知書(現在さらに形式が変わり,番号の目隠しは以下のようなシール式じゃなく袋とじの方式になってます)

相続登記を自分でする登記識別情報通知書

さて,この登記識別情報通知(書)ですが,

登記識別情報は,原則として,登記完了と同時に,当然に,申請人に通知されます。

登記識別情報も,郵便で送ってもらうことができます。

(登記識別情報の通知)
不動産登記法21条  登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。ただし、当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は、この限りでない。

(登記識別情報の通知の相手方)
不動産登記規則62条  次の各号に掲げる場合における登記識別情報の通知は、当該各号に定める者に対してするものとする。
一  法定代理人(支配人その他の法令の規定により当該通知を受けるべき者を代理することができる者を含む。)によって申請している場合 当該法定代理人
二  申請人が法人である場合(前号に規定する場合を除く。) 当該法人の代表者
2  登記識別情報の通知を受けるための特別の委任を受けた代理人がある場合には、登記識別情報の通知は、当該代理人に対してするものとする。

(登記識別情報の通知の方法)
同63条  登記識別情報の通知は、法務大臣が別に定める場合を除き、次の各号に掲げる申請の区分に応じ、当該各号に定める方法によるものとする。
一  電子申請 法務大臣の定めるところにより、登記官の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された登記識別情報を電子情報処理組織を使用して送信し、これを申請人又はその代理人(以下この条において「申請人等」という。)の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
二  書面申請 登記識別情報を記載した書面を交付する方法
2  登記官は、前項の通知をするときは、法第二十一条 本文の規定により登記識別情報の通知を受けるべき者及び前条第一項各号に定める者並びに同条第二項の代理人(申請人から登記識別情報を知ることを特に許された者に限る。)以外の者に当該通知に係る登記識別情報が知られないようにするための措置を講じなければならない。
3  送付の方法により登記識別情報を記載した書面の交付を求める場合には、申請人は、その旨並びに次項及び第五項の場合の区分に応じた送付先の別(第五項に規定する場合であって自然人である代理人の住所に宛てて書面を送付することを求めるときにあっては、当該代理人の住所)を申請情報の内容とするものとする。
4  前項の場合における登記識別情報を記載した書面の送付は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法によってするものとする。
一  申請人等が自然人である場合において当該申請人等の住所に宛てて書面を送付するとき、又は申請人等が法人である場合において当該申請人等である法人の代表者の住所に宛てて書面を送付するとき(第三号に掲げる場合を除く。) 日本郵便株式会社の内国郵便約款の定めるところにより名宛人本人に限り交付し、若しくは配達する本人限定受取郵便又はこれに準ずる方法
二  申請人等が法人である場合において当該申請人等である法人の住所に宛てて書面を送付するとき(次号に掲げる場合を除く。) 書留郵便又は信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うもの
三  申請人等が外国に住所を有する場合 書留郵便若しくは信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うもの又はこれらに準ずる方法
5  前項の規定にかかわらず、前条第二項の規定により代理人が登記識別情報の通知を受ける場合であって、当該代理人が法第二十三条第四項第一号 に規定する代理人(以下「資格者代理人」という。)であるときは、登記識別情報を記載した書面の送付は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法によってするものとする。
一  当該代理人が自然人である場合において当該代理人の住所に宛てて書面を送付するとき、又は当該代理人が法人である場合において当該代理人である法人の代表者の住所に宛てて書面を送付するとき 日本郵便株式会社の内国郵便約款の定めるところにより名宛人本人に限り交付し、若しくは配達する本人限定受取郵便又はこれに準ずる方法
二  当該代理人が自然人である場合において当該代理人の事務所の所在地に宛てて書面を送付するとき、又は当該代理人が法人である場合において当該代理人である法人の住所に宛てて書面を送付するとき 書留郵便又は信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うもの
6  送付の方法により登記識別情報を記載した書面の交付を求める場合には、送付に要する費用を納付しなければならない。
7  前項の送付に要する費用は、郵便切手又は信書便の役務に関する料金の支払のために使用することができる証票であって法務大臣が指定するものを申請書と併せて提出する方法により納付しなければならない。
8  第六項の送付は、申請人が当該郵便物をこれと同一の種類に属する他の郵便物に優先して送達する取扱いの料金に相当する郵便切手を提出したときは、当該取扱いによらなければならない。第四項第二号若しくは第三号又は第五項第二号の場合において、信書便の役務であって当該取扱いに相当するものの料金に相当する当該信書便事業者の証票で法務大臣が指定するものを提出したときも、同様とする。
9  前二項の指定は、告示してしなければならない。

(登記識別情報の通知)
不動産登記事務取扱手続準則第37条

1.登記識別情報の通知は,登記識別情報のほか,次に掲げる事項を明らかにしてするものとする。
一 不動産所在事項及び不動産番号
二 申請の受付の年月日及び受付番号又は順位番号並びに規則第147条第2項の符号
三 登記の目的
四 登記名義人の氏名又は名称及び住所
2.規則第63条第1項第2号又は同条第3項に規定する登記識別情報を記載した書面(以下「登記識別情報通知書」という。)は,別記第54号様式によるものとし,同条第2項の措置として,登記識別情報を記載した部分が見えないようにするシールをはり付けるものとする。
3.登記識別情報通知書は,申請人に交付するまでの間,厳重に管理しなければならない。
4.登記識別情報通知書を登記所において交付する場合には,交付を受ける者に,当該登記の申請書に押印したものと同一の印を登記識別情報通知書交付簿に押印させて,登記識別情報を交付することができる者であることを確認するとともに,当該登記識別情報通知書を受領した旨を明らかにさせるものとする。
5.前項の場合において,登記官が必要と認めるときは,身分証明書等の文書の提示を求める方法により,登記識別情報を交付することができる者であるか否かを確認し,その際,交付を受ける者の了解を得て,当該文書の写しを作成し,登記識別情報通知書交付簿に添付するものとする。ただし,了解を得ることができない場合にあっては,文書の種類,証明書の番号その他文書を特定することができる番号等の文書の主要な記載内容を登記識別情報通知書交付簿に記載するものとする。
6.登記識別情報通知書を送付の方法により交付する場合には,登記識別情報通知書交付簿に登記識別情報通知書を送付した旨を記載するものとする。

以上3点の書類は,法律の条文に記載のとおり,いずれも郵便で送ってもらうことができます。相続登記を郵送申請をする場合,返信用のレターパックプラスを同封して必要事項を記載しておけば,3点まとめて封入して返送してくれます。

もちろん法務局に行って窓口で受け取ることもできます。窓口で受け取る場合は以下のものを必ず持参してください。大事な書類なのでこれらを持参しないと受け取れません。間違って関係ない人に交付してしまったら大変だからです。

  • 登記申請書に押印した申請印(実印かどうかは問いません。登記申請書の申請人のところに押した印鑑が必要です。いくら実印だと言っても,登記申請書に押印していなければダメです)
  • 身分証明書
「登記簿謄本(登記事項証明書)」

登記簿謄本は,登記が完了したからといって当然に交付されるわけではありあせん。サービスで1通くらいくれないの?と思われるかもしれませんが,まったくもって,くれません。登記完了後に自分で請求しないといけません。

相続登記の申請にチャレンジする初期段階で,現在の登記状態を調べるために登記簿謄本(登記事項証明書)を取得しました。あれと同じ手続きを,登記完了後に,もう一度やらないといけません。

相続登記の申請→受付→調査→登記の実行→前記3点の完了証類の交付という一連の流れの中に,登記簿謄本(登記事項証明書)の発行や受取りというのは含まれません。要するに,新しい登記簿の請求と取得は,相続登記の申請とは全く切り離された別個の手続きになります。最初に法務局で取得したように,登記が完了したら,改めて登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する,ただそれだけのことです。

  • 窓口申請をした場合,登記が完了し,窓口で完了書類を受領した後,その場で登記簿の請求をしてください。
  • 郵送申請をした場合,登記が完了し,完了書類3点が送られて来たら,改めて法務局に郵送で登記簿の請求をしてください。

もっとも,登記簿謄本(登記事項証明書)が必要ない方は請求しなくてもかまいません(その他の3点で登記が完了していることは分かります)

ただ,司法書士が登記をお受けしたら,必ず相続登記完了後の登記簿謄本(登記事項証明書)を各1通取得します。依頼を受けた登記が確実に登記簿(登記記録)に登記実行されているかチェックをしてからお客様に完了報告をするためです。法務局の登記官も人間ですから,まれに間違って登記されていることがあります。そういう場合,司法書士からすぐに法務局に連絡して,登記を訂正(職権更正)してもらいます。

④登記識別情報(権利書)等はどのように保管したらいいか

最後に,完了書類の内容の説明と,その保管方法に触れておきます。

そもそも登記識別情報とは何か

従来いわゆる登記済権利書とか権利証とかいわれていた書類のコンピュータバージョン(電子化された登記制度版)だと思ってください。先だって不動産登記法が100年ぶりに抜本改正されました。従来の紙の権利書は新たに発行されなくなって(前のものはそのままで有効),今後はこの登記識別情報が発行されます。具体的には,12ケタの英数字の組み合わせで組成されたパスワードです。自分の登記のパスワードキーだとお考えください。従来は紙の権利書に押してある法務局の判子を見て本物の権利書かどうか判断していたものを,現在はこのパスワードキーを法務省のコンピュータに入力照合して本物かどうか判定する仕組みになっています。

登記識別情報の管理保管方法

要は,厳重保管してください。登記識別情報は紙に印刷されて登記識別情報通知として申請人に渡されます。そして,この通知書には,情報が直ちに見られないように目隠し(従前はシール,現在は袋とじ)がしてあります。これを開けないようにしてください。見ても面白くありませんので。できれば,これをさらに封筒等に入れて封をして誰にも見られないようにしてください。封を開けたら開けたことが分かるようにしておくとよいです。開封後があれば情報が漏れた危険性が判明します。貸金庫があれば入れておくのをおすすめします(代わりに登記簿謄本(登記事項証明書)などを手元に置いておけばおよそ登記状態は分かります)。

登記識別情報の使い道

基本的にしまっておけばいいんですが,今度新しく当該物件について登記をする際(売却,生前贈与,財産分与,担保設定等)に必要になることがあります。そのときは登記を依頼する司法書士に封をしたまま渡してください。司法書士以外の人間に渡すのは危険です。「司法書士に渡してあげる」と言われても,「直接司法書士に渡します」と言って断ってください。

登記識別情報が盗み見られた・漏れた・紛失したかもしれない場合どうするか

次の3点を押さえてください。

  • 紛失しても登記識別情報通知は再発行されません。なのでパスワードキーを知る方法はありません。ただに紛失しただけで,誰かに盗られたのじゃないかぎり,そのままにしておいて差し支えありません。ただし,今度登記をするときに,いわゆる権利書がない状態になるので,本人確認等特別な手続き(司法書士に本人確認情報の作成を依頼する)が必要になる可能性があり,その場合は余分にお金がかかります。
  • 盗まれたか,誰かに漏れたかどか分からず不安な方は,法務局に対して,登記識別情報の「失効申出」をすることができます。文字どおりパスワードキーを無効にする手続きです。こうしておくと,不正利用は防げます。ただし,後から登記識別情報が見つかっても復帰はできません。一度失効させると,いわゆる権利書を無くした状態になります。つまり上記1.と同じことになります。
  • 「不正登記防止申出」という制度を利用することもできます。登記識別情報が不正利用されないよう,管轄法務局に警戒を呼び掛ける制度です。

登記識別情報,いわゆる権利書を紛失した場合については,この記事に詳しく書いておきました。長いですが,知っておきたい方や,いままさに権利書を紛失等した方は,是非ご一読ください(少しふざけた記事ですがご容赦ください笑)。

【保存版】家の権利書を紛失したらどうなるか完璧に説明します

⑤やっぱり権利書らしい書類がほしい?

相続登記が完了したら,以下の書類を受領すべきと説明しました。

  • 原本還付した添付書類
  • 登記完了証
  • 登記識別情報
  • 登記簿謄本(登記事項証明書)

ところで,相続登記を自分で申請した場合,これらの書類は「素」で手元に来ます。つまり「裸」のままの書類が手元にやってきます。これ,ちょっとイメージと違うんじゃないでしょうか。

  • これが例の「権利書」か,,,正直チープだ
  • ばらばらで整理しにくい
  • 保管方法に困る
  • どれが重要書類が分からない
  • 識別情報が盗み見られるリスクがある
  • そして,有難味がない,,

司法書士に依頼すると,完了書類は,このような用紙にセットされてやってきます。

相続登記を自分ですると権利書の表紙や冊子がない

以上,「相続登記を自分でする方法」について説明しましたが,いかがでしたでしょうか。自分で頑張ってみるもよし,司法書士に依頼するもよしです。

途中で挫折したり,分からなくなったら,いつでも事務所にご連絡ください。ご依頼があれば適正迅速に対応します。そして,あなたのお手元に,少々有難味のある権利書をお届けいたします(笑)

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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家の相続登記をいつまでもしてないデメリット

家(住宅)の相続登記をいつまでもやらないで放置した場合のデメリット

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

うちの家っておじいちゃん名義?それともお父さん名義になってたっけ?税金はちゃんとうちが払ってるからうちのものに違いないと思うけど大丈夫かな,,,近所の人に聞いたら,亡くなったら家や土地の名義変更しないといけないらしいけど,うちはバタバタしててしてないかも,,,面倒だし,お金がかかるし,期限とかもないみたいなので,,まあいいかななんて放ってあったけど何か気になるな。本当に大丈夫なのかな。そうこうしてる間にうちの親も高齢になってきたし,この家ちゃんと私が相続できるんだろうか。

人が死んだら相続が開始します。相続が開始したらその人の持っているいっさいの財産が次世代等に相続されます。名義変更や相続手続きをしてなくても,目に見えない権利が勝手に相続で承継されています。誰が相続するか相続人で話が着く(遺産分割)までは相続人全員で共有してます。相続の話合いがついたら最初からその人が相続したことになります。いずれにしろ自動的に相続はしているので,相続人全員の共有名義で相続登記することもできるし,早く遺産分割して誰かの単独名義等に相続登記することもできます。

  1. この相続登記。つまり遺産相続による不動産の名義変更・名義書換の登記をすることは,法律上の義務ではありません。
  2. また,法律上の義務ではないからして,当然期限もありません。いつまでにやらないといけないという決まりもないです。

しかし,それは,「相続登記単体」「相続登記のみ」「相続登記自体」について問われた場合の話。相続登記だけとってみれば,確かにそれをする法的義務はないし,いつまでにという期限もありません。ただ,

  • 相続登記をしなくてもまったく問題がないか?
    とか
  • 相続登記をしなくてもその不動産を処分できるか?
    とか
  • 相続登記をしなくても他人に迷惑をかけないか?
    とか

このように問われたら話が違ってきます。今度の答えはこうなります。

  • それは問題があります!
  • 相続登記をしないと不動産を処分できません!
  • 相続登記をしないと困ったことになる可能性があります!他人にも迷惑をかけるかもしれません。

ということで,やはり相続登記は早くしたほうがいいんです。いま直ちに問題がなくても,将来取り返しのつかない困難を生じることがあります。なので,そうならないように,相続登記はなるべく早くしておいたほうがよい手続きになります。

すなわち,

  1. 相続登記は法的義務ではないが,事実上の義務です。
  2. 相続登記は「できるだけ早期に」してください。

と言い換えて差し支えないでしょう。

ところで,「困ったことになる」などと抽象的な話をしていても仕方がありません。何が困るのかよく分からないからです。そこで今日は,相続登記をしないとどういう問題が生じる可能性があるのか,具体的に列挙して簡単に説明します。「家(住宅)等の相続登記をいつまでもやらないで放置した場合のデメリット」とはいったいどんなことでしょうか。

事例)

  • 父親が数年前に死亡し,父親名義の住宅その他が相続財産になった
  • 法定相続人は高齢の母と兄弟3名だ
  • あなたは長男で同居していた
  • なので家は当然自分のものだと思っており,弟二人も異議を唱えていない
  • 相続登記は誰に依頼していいか分からなくて面倒だし,お金もかかるので,放置していた

こんな事例をもとに話を進めます。

 

やろうと思っていた遺産分割ができなくなる

新たな相続が発生してしまった

そうこうしているうちに弟が急病になって死んでしまったらどうなるでしょう。父親の相続はまだ遺産分割協議が済んでいません。なので弟は父親の法定相続人として法定相続分があったはずです。この父親の相続に関する弟の権利や地位は,そのままの形で,弟の妻子に相続されます。つまり,これから父親の遺産について遺産分割協議の話をする相手は,亡くなった弟ではなく,その妻子の全員となります。弟とは仲が良かったが,その妻と折合いが悪かったらどうなるでしょう。あなたの妻と弟の妻との相性が悪く頭を下げたくない場合もあるかもしれません。また,弟の子,つまりは甥や姪との人間関係はありますか?甥や姪と交流がなければ,この者に遺産相続の話を持っていくのは結構気を使います。少なくとも,弟が死んで落ち込んでいる早々にそのような話をするのははばかられるでしょう。とにかく,父親の家をあなた名義にするには,弟の妻子と話をつけないといけません。もし父親の家をあなた名義にすることに応じてくれなかったらどうなるでしょう?家をあなた名義にする代わりに法定相続分に相当する金員を請求されたら?あなたには,拒否する権利はありません。弟が生きている間に早く相続登記をしていれば,そんなことにはならなかったのです。

相続登記をするためにいますぐ遺産分割協議を進めてください。

遺産分割協議のやり方と遺産分割協議書の作り方

法定相続人が認知症になってしまった

亡くならないまでも,例えば高齢の母が認知症になったらどうでしょうか。遺産分割協議も法律行為である以上,確かな判断能力があって,これをもとに自分の意思を表示できる人とでないと,成立させるのは無理です。つまり,母がボケてしまったら,ボケてしまった母を相手に遺産分割協議をすることはできません。形式的にやったとしても法律上無効です。そうなると,この認知症の母のために,法定代理人をつけて遺産分割をするほかありません。法定代理人とは,この場合,成年後見人を指します。書類を準備して,家庭裁判所に申立てをし,母のために成年後見人を選んでもらいます。成年後見人が選ばれたら,成年後見人が母の代わりに遺産分割協議に参加します。ただし,成年後見人は母のために選任される代理人であり,母の財産を守るのが仕事です。なので,父親の相続にかかる母の相続分をみすみす放棄することは許されません。たとえ従前母が,家はあなたの名義にしないさいと,そのように言っていたとしても,正式な契約が残っていない以上,そのとおりにはできません。成年後見人は母の相続分を主張して,家の持分をとるか,代わりに金銭請求を行います。つまり,前々から考えていたように,単純に家をあなたの名義にすることはもはやできなくなります。早く相続登記をしておけばよかったのです。ボケる前なら,簡単に判子を押してもらえたのに,,,

もしそうなってしまったら以下のとおり後見人の選任申立てをしてください。

成年後見人をつけて親が認知症で遺産分割できない問題を解決する方法

兄弟が行方不明になってしまった

弟の妻から連絡があり,弟が行方不明なってしまいました。弟は脱サラして小さいお店をしていたんですが,どうも最近経営が宜しくなく,そのことで妻とも揉めていたようです。生活費にも困っていたらしい。ともかく急に家を出て行って,かれこれ半年ほど戻ってないらしいのです。そろそろ家を自分名義にしようと考えていた矢先困ったことになりました。このままでは遺産分割協議ができません。弟がいないと書類に実印を押せないし,印鑑カードがないから印鑑証明書もとれません。このようなケースでは,やはり弟の代わりに法定代理人を選んでもらって遺産分割する必要があります。今度は不在者財産管理人という法定代理人です。同じく家庭裁判所に選任請求をして,家庭裁判所が選任を決定します。この不在者財産管理人も,成年後見人と同じで,弟の財産を守ることを使命とする弟の財産管理人です。なので,先の父親の相続にかかる弟の相続権を放棄することは許されません。つまり法定相続分を主張します。ということで,もはや単純に父親名義の家をあなた名義に相続登記することは許されなくなりました。家を相続したければ,お金を払うほかありません。相続財産はとっくに分けたので,家の相続分に相当する金員の支払いは,あなたの個人財産から出す必要があります。早く相続登記しておくべきでした。

不在者財産管理人についてはこちらをどうぞ。

遺産分割ができないので不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申請する

相続人の心変わりや経済状態の変化

父親が亡くなってすぐ家のことを話したことがあった。相続人全員,それは当然そうだなと私の考えに同意してくれた。四十九日や一周忌,三回忌の折にもそのように言っていた。「早く名義変更したら?」とまで言ってくれていた。あれから約2年,ようやく相続登記をしようと弟に切り出したところ,話が変わっていた。弟は,「その件なんだが少し考えさせてくれ」と言うではないか。どういことだろう。もう一人の弟にこの件を相談したところ,次のような話が聞かれた。実は,弟はこの間に会社をリストラされ,職探しをしているが思うようにいかないらしい。住宅ローンもたくさん残っており,大学生の子供の学費の支払いにも窮していると。少しお金を貸してくれないかと相談されたこともあるとのこと,,,なるほど。しかし,あなたとしては,家の話は別問題にしてほしいと考えている。いや,前に何度も確認した際私の思うとおりにしてくれと言っていたじゃないか。口頭ではあるが遺産分割協議ができていると合点していたのに。弟から相続分を主張されたらどうするか。無理強いしたって,意志が固ければやはり法定相続分があることに相違ない。困ったな,,あのとき相続登記をやっておけばなあ,,,

仕方がありません。揉めたくはありませんが遺産分割調停をしてください。

遺産分割調停の話合いを家庭裁判所に申請(申立て)する方法

 

不動産が使い物にならなくなる(管理処分不能)

売りたくても先に相続登記しないと売れない

近くに新築の物件が安く出たので買い換えたい,家を売って子供の近くに住み替えたいと思い,あなたは不動産業者の門をたたきます。そこで自宅を売いたいと相談する。詳しく話をするうち,相続登記が未了であることが判明。不動産業者はこう言います。「先に相続登記を処理してあなたの名義にしてください。そしたら契約を進めます」これに対し,「いやいや,間違いなく私が相続することになってるから早く進めてくれ,時間がないんだよ」と伝えても,やはり先に相続登記をしてくれと言われる。「なんだよ,融通が効かないな」とあなたは思う。しかし不動産業者の言い分はもっともです。そもそも相続登記をしないと,家があなたの所有になる保証はどこにもありません。母にそれから兄弟がいれば各人法定相続分があるんですから,全員が遺産分割協議に実印を押して,全員から印鑑証明をもらうその瞬間まで,家は確定的にあなたの所有にはならないのです。そして,家があなたの単独所有にならければ,どのみち家の売買契約を完了できません。家を処分できるのは不動産の所有者のみです。百歩譲って遺産分割が済んでいない状態で契約するなら,相続人全員が売主になって契約しないと無理です。繰り返しますが,あなたが単独で不動産の売買契約をして家を売るには,遺産分割が済んで,あなたの単独所有名義に相続登記を完了していることが必要になります。家を売るにはその前提として相続登記が必要です。

相続登記しないと生前贈与もできない

あなたがもし今後のことを考えて,夫婦間贈与をしたり,相続時精算課税制度を利用して子供に家を贈与しようと企画しても,先に相続登記をしないと無理です。生前贈与による家の所有権移転登記をするには,その前提として,父親の相続によるあなたへの所有権移転登記を完了している必要があります。父親の相続による所有権移転登記をすっとばして,父親名義から直接にあなたの子,すなわち父親から見て孫名義に所有権移転登記をすることはできません。日本の法律では,所有権という権利が移った順番にすべてそれを登記しなければいけない仕組みになっています(動的公示主義,中間省略登記の禁止)。父親の相続はしばらく前に開始しており,このとき目には見えず登記もしてなくとも自動的に相続人に所有権は移っています。なので,この所有権の移転を先にしてから贈与の登記をします。相続登記をとばせないのです。

相続登記しないと他人に貸すにも問題がある?

すでに貸している不動産の相続

住宅以外に他人に貸している貸家があって,これもあなたが相続する予定だったとします。少ないながら,毎月家賃収入があるものとします。父親の死後,あなたが借主に家賃の取り立てに行ったら,借主が家賃を払ってくれませんでした。「父親が亡くなったと聞いたので,早く遺産分割協議をして,相続登記をしてくれないと誰に支払ったらいいのか分からない」とのことでした。「問題ないから私に全額払ってくれ」とお願いしたのですが断られました。今後は法務局に家賃を供託するとのこと。そんなことをされたら面倒なので私に払ってほしいのですが無理でしょうか?

これは無理です。借主のいうとおり,いまの状態だと借主に請求できる家賃はあなたの法定相続分に相当する金額だけです。賃料債権は可分なので,法定相続人が法定相続分だけ相続します。これを全額請求しようとするなら,物件の所有権をあなたが単独で相続するほかありません。なので,早く相続登記をしてください。

相続登記未了の不動産をこれから貸す

相続した当時この貸家や貸宅地がたまたま空き家等になっていたのが,その後近くの人が借りたいと言ってきて,これから賃貸借契約を締結して貸し出したいとします。もちろん家賃は全額受け取りたいと。

しかしまずもって,このままでは借主と賃貸借契約ができません。少なくとも,あなたが単独で借主と契約をすることはできません。なぜなら,この物件は相続人の共同所有になっているからです。父親名義のこの物件は,父親の死亡と同時に,共同相続人が相続し,共有状態になっています。そしてその共有状態は,遺産分割が成立して,確定的に物件の所有者が決まるまで続きます。

さて,共有状態の物件をどう管理したらいいか,誰が処分できるのか,といったことは,民法という法律で決まっています。今回,貸家が貸土地について,どういう賃貸借契約を結ぶのかにもよりますが,少なくとも共有者の持分価格の過半数の同意,もしかすると共有者全員の同意を得なければ,借主との間で物件の賃貸借契約を締結することはできません。父親の相続に関し,母親が配偶者相続人として2分の1の法定相続分を持って相続しています。なので,少なくとも母親の同意を得なければ,共有者の持分の過半数の同意は得られず,賃貸契約は締結できません。

もっとも,過半数の同意を得て賃貸借契約を締結しても,単独名義に相続登記をしていないのであれば,家賃の取り分は相続分で按分せねばなりません。あなたが全部取得できはしません。賃貸借契約を単独で結び,家賃を全額収受したいなら,先に相続登記を済ませることです。

相続登記しないとお金が借りられない?

理由はともかく,相続した自宅を担保にお金を借りようとしても,相続登記が未了だと不可能です。というのは,不動産担保融資を受けるには,自宅不動産を文字どおり担保に差し出さないといけないからです。担保に差し出すとは,通常,不動産に抵当権という担保物件の設定登記をすることです。抵当権を設定すれば,万一債務者が債務の支払いができないとき,債権者は裁判所に申請して不動産を競売して代金から債権回収をすることができます。抵当権をつけずに不動産融資をすることはほぼありえません。

さて,相続登記をしていないと,この抵当権設定登記ができません。抵当権設定登記は債権者と不動産の所有者との抵当権設定契約が必要ですが,登記簿上の所有者である父親はもういないので契約ができず,そのままの状態で抵当権設定登記などできないからです。不動産にはすでに相続が生じているので物件を相続した現在の所有者と債権者との間で抵当権設定契約をする必要があるのです。そして何より,あなたが不動産の所有権を単独で取得して,その不動産の所有権全部を担保として差し出す前提(持分だけ担保にとっても仕方ない)で融資の話が進んでいるはずです。そもそも単独所有名義にする遺産分割が成立しないなら借入れはできないでしょう。なので,早く遺産分割協議を済まして,その足で速やかに相続登記を完了してしまいましょう。そうでないと不動産融資は受けられません。

 

不動産が他人に取られてしまう?

兄弟が勝手に相続登記して持分を売却したら?

ある日あなたが,そろそろ家の相続登記をしようと登記簿謄本(登記事項証明書)を取得したところ,所有者の欄に知らない人が載っていたらどうでしょう?あなたが知らない間に,弟が勝手に法定相続で相続登記を完了し,自分の共有持分だけを知らない第三者に売却していたら?そういう可能性がない訳ではありません。

まず,法定相続人は,他の相続人の協力を求めないで,単独で,法定相続による不動産の所有権移転登記,すなわち相続登記をすることができます。え?遺産分割協議書を作って全員が実印を押さないと登記できないんじゃないの?と思われるかもしれませんが,否です。法定相続分で登記する分には単独でできます。というのも,遺産分割が成立するまでの間は,法定相続の状態で相続人の全員が不動産を相続しており,これと異なる遺産分割を認めなければ,そのとおり相続すべきものだからです。もう一度言います。遺産分割協議が成立するまでの間,法定相続人の各人は,単独で,法定相続の相続分の割合による相続登記を勝手にすることができます。

で,法定相続による相続登記を終えたら,各相続人はそれぞれ相続分について所有権を取得したと同じですから(実際しているんですが),自分が相続した持分だけなら自由に処分できます。当然売ることもできます。第三者にだって売ってしまえるのです(買う人がいるかどうかは別問題)。もし何等かの事情で,弟の共有持分が第三者に売られてしまったら,この法律行為や登記は有効ですから,弟に文句を言っても無駄です。もしあなたが当該不動産の全部の所有権を取得したいなら,この第三者と交渉して,持分を買い戻すほかないでしょう。早く相続登記をしないとこういうリスクもないではありません。

兄弟の債権者が不動産を差し押さえてしまうリスク

似たようなケースをもう一つ紹介します。同じく登記簿謄本を見てみたら,物件がとある金融機関に差し押さえられていた,なんてこともあります。弟が金融機関から融資を受けていて,お金がないので返済が滞ったとします。ずっと支払いをしないので金融機関は債権の回収を試みます。弟には父親から相続した不動産の相続分があることを債権者である金融機関は察知します。そうしたとき,金融機関は,弟に代わって先ほどのように法定相続による不動産の相続登記を申請し,それが終わったところで,弟の持分に差押えや仮差押えをかけてロックすることができます。債権者が弟に代わって,勝手に,父親の相続登記をする登記のことを代位登記といいます。民法には債権者代位権という制度があって,債務者が無資力で債務の弁済ができないとき,債務者がほかに持っている債権を,債権者において代位行使する権利が認められています。弟が相続権を行使して相続登記をする権利にもこの制度が転用できます。細かい話は割愛しますが,このようになると,先ほどの事例で弟が自己の持分を第三者に売却したときと同じ事態になります。持分買受人が債権者に変わっただけです。あなたが不動産の差押え解いて,相続不動産の完全な所有権を守るには,債権者に対して弟の債務の代位弁済をする等により,弟持分相当額の金銭支出をして不動産を買い戻すしかなくなります。

 

その他の困ること

ほかにもいろいろと困ることがあります。ざっといま思いついたことを書きますが,,

住宅ローンを完済したのに抵当権抹消登記ができない

住宅ローンを完済したら金融機関から担保を外してもらえます。というか,金融機関から抵当権抹消登記に関する金融機関差出分の登記書類がもらえるので,これを登記申請書と一緒に法務局に持って行って抵当権設定登記をこちらでやらないといけないのですが(司法書士に依頼はできます)。さて,団信特約付の住宅ローンを借りていて,債務者である父親が亡くなったなら,死亡と同時に保険でローンが完済されるので,ローン完済にともない抵当権が消え,抵当権抹消登記ができます。

このケース,厳密に時系列を追ってみると,父親の死亡し,その後保険でローンが完済され,ローン完済により抵当権が消滅する,という流れになります。で,今度は担保を設定していた不動産の所有権のほうの権利の流れを追ってみるとこうなります。父親が死亡した瞬間に,不動産の所有権が相続人に相続される,と。その後しばらくして遺産分割協議によりあなたが単独相続した場合には,遺産分割の遡及効によって相続開始と同時に単独相続したと法律上みなされるので,やはり同じ理屈になります。つまり父の死亡の瞬間に不動産の所有権はあなたに移転します。

ではここで,ローン完済と,不動産の所有権の移転を混在させて,時系列を見てみます。そうするとこうなります。父親の死亡→不動産の所有権移転→保険によるローン完済→抵当権消滅。

さて,不動産の登記は,動的公示主義といって,不動産に関する権利変動が起こった順にすべて登記しないといけません。それが不動産登記法という法律の考え方です。その考え方からいくと,いま,この事例で抵当権抹消登記をするには,先に所有権の相続登記をしないといけません。というのも,抵当権が消滅して抹消登記ができる状態になったとき,すでに不動産の所有権は相続人にであるあなたに移っているからです。つまり,抵当権が消滅するという抵当権に関する物権変動は,金融機関と不動産所有者であるあなたのもとで生じた事実となります。ならば,先に相続登記をして所有権をあなたに移し,次にあなと金融機関との共同申請(の構造)にて,抵当権抹消登記を申請する必要があります。

以上,相続登記をせずに抵当権抹消登記はできません。抵当権を抹消したければ,相続登記を済ましてください(又は連件申請(相続登記と抵当権抹消登記を連番申請にする)にて同時期に登記する)。父親が保険のないローンを組んでいて,ローンを相続した相続人が,その後にローンを完済した場合も同じです。

火災保険の契約などに差し支えが?

住宅について火災保険に入っていて,契約者=被保険者(受取人)である父親が死んだ場合,火災保険について保険契約の内容の変更をしなければいけません。契約者はあなたが継ぐとして,被保険者も不動産を相続した(する予定の?)あなたとすべきところですが,相続登記をしていないと,所有者が確定していないので,「相続手続き中」などとして処理されます。相続登記をするまで(遺産分割ができるまで)その状態は続くはずです。そして万一,この状態で保険事故が起きたら,保険金を受け取るのは法定相続人の全員となります。遺産分割を終え,あなたが単独で物件の所有権を取得して相続登記をしておけば,万が一のときに,あなたが単独で,速やかに保険金を受け取ることができます。

老朽化した建物を取り壊せない?

住宅を相続したけどその後に新しい家に住み替えて,家は荒れるがままになっている,そんなことがあります。あまり風を通さないので,古い家が傷んで,危険な状態になることも少なくありません。庭の手入れも面倒なので,とりあえず家を解体して更地にし,その後どうするか考えようと決めました。

さて,このとき,あなたこの家を解体できるでしょうか。厳密にいうと,それは難しいし,危険です。というのも,いままでさんざん述べてきたように,家は父親から相続した相続財産で,これについて遺産分割が済んでいません。いくら事実上あなたが相続したと思っていても,どうなるかは分かりませんし,現状遺産分割が済んでないんですから,あくまでこの家は法定相続人の共同所有状態です。つまり共同相続人がそれぞれ家の所有権を持っている,それぞれが少しずつ所有者である,そんな状態が続いています。となると,これを解体して処分する権利があるのは,相続人の全員となります。あなたは他人の所有持分を勝手に処分する権利を持ちません。早く相続登記をしておけば,他の親族に気を遣わなくて済みます。壊したいときに所有者であるあなたが一人で決めればいいのです。

大規模なリフォームも同様に考えてください。

公共事業の際に迷惑をかけてしまう

国,県,市町村が事業を行うためにあなたの家が用地買収の対象になったら?可能性の程度は分かりませんが,少なくともこれがまったくないとは言えません。そうしたとき,家土地の相続登記が終わっておらず,その所有者が確定していないと,用地買収等の手続きがスムーズに進まないことも考えられます。もしこのまま使わなくなった土地を遊ばせておいて,数世代に渡って名義変更をせずにおいたらどうでしょう。いま相続登記をしなければ,時の経過とともに,自然とそうなるのは必然です。そのときには,もはや親族の交流は途絶えて,誰が相続する権利をもっているのかすら分からないかもしれません。もしかすると,公共事業が入るのは,そんな将来のことかもしれないのです。あなたの子や孫や親族が,お国に迷惑をかけることがないよう,私的な不動産の所有権は,速やかに確定しておきたいです。すなわち,早期に相続登記を済ませてください。

公共事業等に迷惑をかけてしまう例)

  • 地域の再開発が進まない又は遅れる
  • 空き家問題を引き起こしてしまう
  • 防災や減災に関する政策の障害となる
  • 災害時の復旧作業の障害となる
  • 農地や山林が荒れて放置される又は集約化が進まない

住んではいるが権利書がない

相続時をしないと当然新しい権利書は作られません。「親の権利書があるよ」とおっしゃるかもしれませんが,その権利書はもはや意味ある権利書ではありません。父が死亡したら,瞬時に所有権は次に移っています。父はもうこの世にいないので,父がいまから不動産を売却等することはできず,いま手元にある権利書を権利書として使用する局面はありません。次に権利書として使えるのは,父の相続によって,相続人に権利移転した相続登記の権利書です。相続登記,つまり父から相続人への相続を原因とする所有権移転登記をすると,その際に新しく権利書が作られます。この権利書のみが,今後使用できる正真正銘の権利書となります。相続登記をしないと,いくらあなたが不動産の所有者だ,権利書がここにある,と言っても空しいです。遺産分割をしてないから100%あなたが不動産を相続できると決まったわけではないし,権利書だって持ってないからです。早く遺産分割を終えて,相続登記を完了し,あなたの権利書を手に入れてください。

権利書(権利証・登記済権利証)は現在制度変更により「登記識別情報」というものに変わっています。今後相続登記をして発行されるのは,この登記識別情報です。形式は違うが法的効力は等しいので,登記識別情報は,いわゆる権利書と呼んで差し支えありません。

営業エリア・業務地域を教えてください。

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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相続登記(名義変更・名義書換)の手続きを自分で法務局に申請する方法

 

遺産の相続登記の手続きをする法務局

物件の場所の法務局でします。例えば当事務所,明徳司法書士事務所の所在する奈良県内の土地建物の相続登記申請をする管轄法務局は,物件の所在地ごとに,以下表のように決まっています。物件が他府県や他管轄にまたがって存在するときは,法務局ごとに手続きしないといけません。

例)

  • 北葛城郡王寺町や河合町や上牧町にある不動産の相続登記は,奈良県大和高田市にある奈良地方法務局葛城支局に申請します。
  • また,その周辺や近隣の市町村であっても,生駒郡三郷町や斑鳩町や平群町の土地家屋の相続登記の申請は,奈良市高畑町にある奈良地方法務局本局にすることになります。
法務局庁名 法務局所在地と電話番号 管轄地域・区域(不動産物件の所在地)
奈良地方法務局本局 〒630-8301
奈良市高畑町552
TEL:0742-23-5534 (代表) 
奈良市,大和郡山市,天理市,生駒市,山辺郡山添村,

生駒郡斑鳩町,平群町,三郷町,安堵町

葛城支局

(葛城法務局)

〒635-0096
大和高田市西町1-63
TEL:0745-52-4941
大和高田市,御所市,香芝市,葛城市,

北葛城郡上牧町,王寺町,広陵町,河合町

桜井支局

(桜井法務局)

〒633-0062
桜井市大字粟殿461-2
TEL:0744-42-2896
桜井市,宇陀市,宇陀郡曽爾村,御杖村,

吉野郡東吉野村

五條支局

(五條法務局)

〒637-0043
五條市新町三丁目3-2
TEL:0747-22-2484
五條市,吉野郡吉野町,大淀町,下市町,黒滝村,天川村,

野迫川村,十津川村,下北山村,上北山村,川上村

橿原出張所

(橿原法務局)

〒634-0078
橿原市八木町一丁目6-12
TEL:0744-22-3045
橿原市,高市郡高取町,明日香村,

磯城郡田原本町,川西町,三宅町

 

不動産の登記のことは奈良王寺の明徳司法書士事務所まで!