相続大全集

遺産相続した不動産を数人の相続人で分ける方法

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奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

今日は,相続した不動産を,複数の相続人で共同相続した場合に,不動産をどうやって分けたらいいかという問題についてお話します。

相続した物件を共同相続人でどうやって分けるかという問題は,何も不動産に限った話ではありませんが,相続でよく問題になるのは不動産です。なので,不動産に限定してお話していきます。

なお,個別具体的な遺産をどうやって共同相続人で分けるのかということを,「遺産分割の態様(たいよう)」の問題といいます。

なので,いまからお話するのは,遺産たる不動産の遺産分割の態様の問題です。

 

不動産の遺産分割の態様の種類

不動産の現物を何個かに割って分ける(現物分割)

原則というか,基本的なのがこの方法です。例えば相続財産が「大きな土地」で,現物を分けても使い道がある場合はこの方法がとれます。

土地の現物を分けることを「分筆」といいます。分筆は,土地家屋調査士に頼んで測量などをしてもらってから,法務局で手続をして完了します。時間と数十万円単位のお金がかかります。分筆をすると,土地の地番も増えて,法律的に別々の土地が出来上がります。ただ,位置などによって価値が違うという考え方もできますので,誰が,どの土地を相続するかという話をしないといけません。

不動産を何人かで共同所有していく(共有とする分割)

不動産の現物は分筆しないで,一つの土地のままで,その土地を何人かで共有していく方法もあります。それぞれの人の所有権は,1/3とか,1/4とかいう割合になります。あくまで土地は一つなので,物理的に,どの場所が誰の土地ということはありません。所有権がまざっていると思ってください。

この方法の問題点は,今後の土地の利用や処分が難しくなることです。誰がどうやって使用するかなどというのを,法律では,「共有物の管理」といいますが,共有物の管理は,「持分価格の過半数」で決めることになっています。割合の多数決ですね。だから,少数者は思ったとおりの方法で土地を管理することができません。また,土地を処分するには共有者の全員が同意しないとできません。例えば売却する場合,誰に売るか,代金はいくらにするかなどの条件を全員が飲めないと,売却できないのです(理屈上自分の分だけ処分できますが,割合だけ欲しい人はいないからです)。

不動産を誰かが相続して他の人にはお金を渡す(代償分割)

どうしても不動産を相続したい人がいるときは,その人が,相続財産じゃなくて,自分の貯金で不動産を買取ることもできます。不動産を相続する代わりに,他の相続人に対して,代償金を支払って納得してもらうやり方です。みんながそのやり方に同意していて,実際に不動産を相続する人が自分のお金で代償金を支払うことができるのなら,この方法が採用できます。

不動産を売却して代金を分ける(換価分割)

誰も不動産を欲しがっていないときや,代償金を支払える相続人がいないときは,土地を売却して,お金を分けることもできます。みんなが納得できる場合は,不動産業者に頼んで任意に売却することもできるし,もめそうなときは裁判所の競売の方法を使って売却することもできます。これを形式競売(形式的競売)とか,換価のための競売と呼びます。いずれにしろ,不動産を売却してお金に代えてお金を分けるのです。

 

相続人間で揉めて話合いがつかない場合はどうなるか

上記のとおり,不動産の遺産分割の態様には,現物分割,共有とする分割,代償分割,換価分割とあります。このいずれかのやり方で遺産分割をするのですが,遺産分割協議をしても共同相続人の話し合いがつかないケースがあります。例えば,代償金の支払いができないのに,相続した不動産に自分だけ住み続けたいという相続人がいるようなケースです。

相続人の話合いができなければ,遺産分割は,調停から審判へと手続を踏んで決着します。まず遺産分割調停という話合いを家庭裁判所でやって,それでも合意できなければ,裁判所が審判で決めてくれます。

さて,最後まで相続人が揉めたときに,どういう順番で遺産分割の態様が決まっていくのか,このことについて説明しておきます。優先順位,適用の順番がだいたい決まっています。上に説明した遺産分割の態様を,今度は優先順位で並べ替えて説明します。

現物分割

まずもって現物分割ができないか検討します。これが原則です。不動産の現物分割とは,先述のとおり,土地の分筆がそれにあたります。また,相続財産に,土地や建物が複数ある場合に,甲相続人はこの土地,乙相続人はこの土地と建物,丙相続人にはこの土地という具合に割り付けることも現物分割に該当します。

代償分割

例えば土地の間口が狭いとか,不整形であって,土地の切り分けが難しいケースがあります。また,建物は一般に現物を切り分けることが難しいでしょう。このように不動産の現物を分けることが難しいときには,代償分割を検討します。以下のような要件を満たせば代償分割ができます。

  • 不動産の現物分割が物理的に難しい
  • 代償分割によることに誰からも異議がない
  • 不動産の評価額について合意できる
  • 当該不動産を相続したい相続人がいる
  • 当該相続人に代償金の支払い能力がある

換価分割

不動産が現物分割になじまず,代償分割もできないときは,仕方がないので不動産を売却してお金で分けます。お金は可分なので,お金にすれば必ず相続分で分けることができるからです。

  • 売却先や代金額について相続人に争いがなければ「任意売却」で売却することができます。
  • もしそれらに全員合意ができなければ,家庭裁判所の審判によって競売(形式的競売・換価のための競売)を命じてもらいます。

共有とする分割

1から3までのいずれの方法によることもできないときは,やむなく共有とする分割の審判が出ます。すなわち,不動産を競売しても買い手がつかなないだろうと想定されるような場合です(農地など)。

これは,一つの不動産を,複数の共同相続人で共有する形の遺産分割です。子供が三人の共同相続においては,それぞれが持分3分の1を所有することになります。不動産が複数あれば,すべての不動産について,それぞれ持分3分の1で共有します。

不動産の共有は望ましくありませんが,他に方法がないので仕方ありません。事後,共有関係を解消したければ,別途共有物分割の手続きを踏んで処理しなければなりません。

◎揉めたときのまとめ

揉めたときのまとめをします。難しいようですが,よく考えれば当たり前の理屈です。つまり,,,

  1. 遺産分割の態様は相続人において合意できる限り自由だ。しかし合意できない場合がある。そういうときは法的ルールにしたがう。
  2. 法的ルールの原則は現物分割だ。合意できないんだから,「遺産分割」の文字どおり,現物で分けて,それぞれが現物を持ち帰れば(相続すれば)いいではないか(現物分割)。
  3. しかし現物で割れないものがある。物理的に不都合なものは割れない。なので欲しい人を募り,欲しいがいればその人に現物を相続させて,代わりにお金(代償金)を払ってもらって解決すればいい(代償分割)。
  4. もっとも,欲しい人がいないとか,欲しい人が代償金を支払えない場合はそうもいかない。これはもうお金で解決するしかない。物件を換金して,それぞれ相続分に沿ったお金を持ち帰ってもらうのがよい(換価分割)。換金とは売却のこと。任意売却か競売による。
  5. しかし困った,,売ろうとしても買い手もつかないのじゃ仕方ない。一応遺産分割の決着をしないといけないので,やむなく一旦みんなで現物を共有してもらうほかない(共有とする分割)。

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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