相続大全集

成年後見人をつけて親が認知症で遺産分割できない問題を解決する方法

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認知症で遺産分割できない問題を奈良王寺の司法書士に相談依頼

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

そのままでは遺産分割協議ができないケース その3

 

相続が開始して共同相続人で遺産分割協議をしたいが,「そのままでは遺産分割協議ができない」という事案をさらにもう1件ご紹介します。ケースその3です。遺産分割協議がでいないと相続の手続きがストップします。遺産分割協議をして協議書を作らないと不動産の相続登記や預貯金の解約払い戻し,証券口座の相続手続きができません。よって当然,遺産はあなたのものになりません。なので困ります。

ということで,そういうときにどうしたらいいのかを具体的に説明します。これを読んでいただければ,「そのままでは遺産分割協議ができない」事案において,遺産分割ができるようになり,遺産相続の手続きを前に進めることができます。

 

共同相続人の中に「認知症の高齢者など」がいると,そのままでは遺産分割協議ができない

前の2件の記事で,共同相続人の中に●●がいると,そのままでは遺産分割ができない,というケースをご紹介しました。

そして

  • その3は,共同相続人の中に「認知症の高齢者など」がいると,そのままでは遺産分割協議ができない

です。

今回のケース3では,遺産分割協議をする共同相続人の中に,認知症などによって判断能力がない高齢者等がいるケースを紹介します。このようなケースでは,やはりそのままでは遺産分割協議ができません。理由は次に説明するとして,一例,事例を想定してみます。

事例)

  • 父親が亡くなった。
  • 母子が相続人になっている。つまり,父親から見て,配偶者と子が法定相続人になった。
  • 住宅の名義が父親になっている。預貯金同じく父名義だ。
  • 父親が亡くなって四十九日も過ぎたのでそろそろ遺産の相続手続きをしたいのだが,このままでは遺産分割協議ができないと言われた。
  • 理由は,相続人である母が認知症で判断能力がないからだそうだ,,,母は確かに認知症で施設に入所しているが,,何とかならないものか,,困ったなあ,,,

 

そのままでは遺産分割協議ができない理由

では,共同相続人中に認知症の高齢者等がいるとそのままでは遺産分割協議ができない理由を説明します。先ほどあげた他のケースと比べつつ説明します。

  • その1は行方不明の不在者がいる場合。そもそも遺産分割協議のメンバーとなる人がここにいないケースでした。
  • その2は未成年者がいて親権者とともに相続する場合。メンバー(未成年者)はいるけれども親と利益相反になってしまうケースでした。
  • そしてその3は,認知症等により判断能力がない人がいる今回の場合。2に同じくメンバーはいるけれども,本人において確かな意思表示ができないケースです。

こらのケースには共通点があります。すなわち,共同相続人の中に,法律上事実上,ちゃんとした意思表示ができない(そもそも行方不明でいない場合含め)メンバーがいるということです。遺産分割協議は,相続の遺産分けなので,その性質上,必ず共同相続人の全員が出席して(の合意のもと)しなければなりません。しかも遺産分割協議は法律行為なので,協議するメンバーは,全員単独で確かな意思表示ができる人,つまり判断能力がしっかりしている人じゃないといけません。そうじゃないと,法律上,協議が成立したとは評価できないからです。判断能力がない人が行った行為は,いくら書面を作るなど形式を整えたところで,法律上無効です。現在の日本の法律においては,判断能力がない人が行った行為は,実体上(真実として)無効になります。

すなわち,共同相続人中に,認知症の高齢者等判断能力がない人がいる場合は,遺産分割協議を強行しても無効になるわけなので,形式的にやっても(形だけ強行しても)意味がありません。これがそのままでは遺産分割協議ができない所以です。

 

どうしたら問題を解決できるか

結論から言います。結論は他のケースとほぼ同じです。

判断能力がない高齢者等のために,「適切な法定代理人を立てる」ことです。判断能力がない人の判断能力を補い,その変わり身となって遺産分割協議に参加する法定代理人を付けるしかありません。

  • ケース1では,不在者財産管理人という法定代理人を付けました。
  • ケース2では,親権者に代わり,特別代理人という法定代理人を家庭裁判所に選んでもらいました。
  • 今度のケース3においては,「成年後見人」という法定代理人を付けます。これには,他のケースがそうであるように,家庭裁判所において選んでもらう手続きをします。

成年後見人とは,文字どおり,成人用の後見人です。対する法律制度は,未成年後見です。未成年者後見人は,未成年者に親権者である親がいないとき等に付けてもらいます。対して成年後見人(法定後見人)は,成人である本人に判断能力がないときに付けてもらいます。

細かいことをいうと,法定の後見人制度には,次のような種類があります。

  • 成年後見(保護者を成年後見人,被保護者を成年被後見人と呼ぶ)
  • 保佐(同じく保佐人,被保佐人)
  • 補助(補助人,被補助人)

仕組みが三つあるのは,被保護者である本人の判断能力の程度にあわせて保護者である法定代理人の権限に強弱をつけ,本人の権利と代理人の権限の調整をするためです。本来しっかりしている人は可能な限り自分で法律行為をすべきなので,本人の判断能力の程度により適用制度を分けているのです。細かいことは割愛しますが,保護者の権限が「強い」順に,成年後見人>保佐人>補助人と並びます。逆に,被保護者の判断能力が「弱い」順に,成年被後見人>被保佐人>被補助人と言い換えることもできます。後見,保佐,補助の各制度の使い分けはおよそそんな感じです。

さて,今回想定するのは認知症の程度がかなり進んでほぼ判断能力を喪失した相続人がいるケース。先ほどの事例の母は,施設入所をしていて自分で身の回りのこともできず,契約等法律行為など到底できない認知能力だとします。そういう場合に適用するのは,三つの仕組みのうち,成年後見の制度です。母のために法定代理人に就任すべきは成年後見人だということができます。

家庭裁判所でこの成年後見人を選んでもらえば,成年後見人が母に代わって遺産分割協議に参加するので,「このままでは遺産分割協議ができない」問題が解消します。つまり,遺産相続の手続きを前に進めることができます。

 

家庭裁判所に成年後見人を選んでもらう具体的な方法

母のために成年後見人なる法定代理人を家庭裁判所に申請して選んでもらうべきことが分かりました。ところで成年後見人は,待っていても選任されません。国が自動的に手続きをしてくれるような仕組みはありません。利害関係人が,自ら積極的に家庭裁判所に選任申立てを行う必要があります。

成年後見人を家庭裁判所に選んでもらうための裁判手続きについては,以下の記事に詳しく書いておきました。具体的な手続きについてはこちらを参考にしてください。

成年後見人を家庭裁判所に申請して認知症の親名義の家を売却する方法

 

成年後見人には誰が選ばれるのか(成年後見人になる人)

この記事のとおり申立てをすればやがて後見開始審判が出て,同時に成年後見人が選ばれます。では,成年後見人には誰が選ばれるんでしょうか。またケースにより誰が選ばれるかに違いはあるんでしょうか。

この点,成年後見人を誰にするかは家庭裁判所の専権です。なので最終的に誰が選ばれるかは裁判官が決めることです。つまり申立人が決められる問題ではなくあれこれ考えても無意味と言えます。もっとも,一定の基準のもとで実務は運用されていますので,ここではそれをお教えします。参考になさってください。

本人の子供など親族が選ばれるケース

本人の財産が少なく,司法書士や弁護士等の専門職後見人の報酬を支払うのが厳しい状態であり,身の回りのお世話をするのが主たる仕事となるようなケースにおいて,親族が後見人に選ばれます。なので,以下のような場合には,親族は,単独で成年後見人に選ばれることはありません。

  • 他の親族(推定相続人)との仲が悪い場合
  • すでに紛争状態にあって訴訟等が予想される
  • 財産を狙っている人がいる
  • 財産が多額又は複雑
  • 高齢で健康面に不安がある
  • 候補者に多額の借金がある
  • 学歴職歴等から判断して財産管理能力に疑問がある
    など

司法書士や弁護士等の専門職が選ばれるケース

親族を後見人に選ぶことができないときは,司法書士や弁護士等の専門職が後見人に選任されます。裁判所は司法書士や弁護士等の名簿を持っているので,その中から適宜選任します。なお,

  1. 一定の財産がある人の場合,通常,司法書士又は弁護士が選ばれます。
  2. 財産がない人の場合,社会福祉士等が選ばれます。

その他いろんなパターン

後見人を誰にするかは,以上の2パターンだけではありません。成年後見制度は過渡期の制度であり,裁判所も,どうやったら本人の財産をよりよく守れるか試行錯誤しています。現在,以上のほかに,以下のようなパターンで後見人等が選ばれることがあります。

  1. 親族と司法書士等が共同で(複数で)後見人に選ばれるケース
  2. 親族が後見人になり,司法書士等が後見監督人に選ばれるケース
  3. 親族が後見人になり,大きな財産は信託銀行に信託するケース(後見制度支援信託 ※ )

極めて大ざっぱにいうと,後見制度支援信託とは,本人の財産を守るために,大きな財産を信託銀行に預けてしまって,生活に必要な小口のお金だけを親族後見人に管理させる仕組みです。最初に信託契約を締結するところまでを司法書士等専門職後見人が行い,信託契約をして信託銀行にお金が渡ったら専門職後見人から親族後見人にバトンタッチします。その後,本人の財産は,信託銀行と親族後見人が管理します。

 

成年後見人が選ばれたら遺産分割協議はどうやってするか

成年後見人が母の代わりに遺産分割協議をする

成年後見人が選ばれたら,早速遺産分割協議をします。成年後見人は認知症の母の財産管理と法律行為の代理をするいっさいの権限を持っているので,当然遺産分割協議という財産処分に関与できます。いや,もはや後見人をおいて,母の相続権を行使して,遺産分割の当事者となれる人はいません。

遺産分割協議は普通にやれば宜しいです。母が元気であれば母がしたように,同じことを後見人が母に代理してやるだけです。遺産分割協議書を作ったら,後見人が代わりに実印を押印します。遺産分割協議書に添付する印鑑証明書は成年後見人の印鑑証明書です。この遺産分割協議書を使って相続財産の相続処理の手続きをするときは,後見人が確かに裁判所に選ばれた後見人であり,母の法定代理人であることを手続先の関係機関に証するため,家庭裁判所が発行した後見人選任審判書の謄本又は法務局発行の後見登記登記事項証明書が必要になります。印鑑証明書と合わせて後見人に用意させます。

遺産分割の仕方,協議書の作成方法等の具体的なことは次の記事を参考にしてください。

遺産分割協議のやり方と遺産分割協議書の作り方

成年後見人がいるときに可能な遺産分割協議の内容

ところで,成年後見人さえ選んでもらえば,どんな遺産分割協議でもできるかというとそうではありません。結論から言うと,今回の相続に関し,母の法定相続分をしっかり確保した内容の遺産分割協議でないと,成年後見人は判を押せません。後見人はあくまで本人である母の代理人として裁判所から選任された人であり,仕事の中心となるのは母の財産を守ることだからです。

いま,母は,父の相続に関し,法定相続人の地位にあります。法定相続人には法定相続分があります。この法定相続分は,民法という法律にもとづき,母に当然に認められた権利です。もし母が元気で,自分の意志で遺産分割協議ができ,財産は子に全部相続させるんだというのならそれはそれで結構です。しかしもう母は意思表示ができません。母がいま現在どう考えているか知る由もありません。後見人は,そのような状況において母の財産管理等を行います。もはや母が積極的に意思表示をすることができない以上,母の考えをおもんばかって,勝手に母の財産を不利益に処分することはできません。できるのは母の財産を守ることです。

以上よって,今回父から相続した不動産を,単に子供の単独所有にすることはできません。できるのは,次のうちのいずれかの分割協議です。

  • 不動産について,法定相続分で相続登記する。つまり,母の所有名義を半分入れる。

又は

  • 不動産は子供が単独で相続し,その代り,不動産の半分の価値に相当する預貯金等を母に相続させる。

 

成年後見のことは奈良王寺の明徳司法書士事務所に相談してください

当事務所成年後見開始の申立書の作成等,成年後見制度に関する業務を取り扱っています。後見人や後見制度について分からないことが合ったらいつでもお気軽にご相談ください。

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