親の財産目録を作ることのおすすめとその作り方について
以前の記事で,親が元気なうちに,簡単でいいので,親の財産目録を作っておいた方がいいというお話をしました。作り方などもそこでお話したとおりです(以下のとおり)。
親の先が長くないな,親の死期が迫っているな,と思ったら,財産目録を再チェックしましょう
親が病気になったり,認知症のきらいがあると思ったり,今後親が長くないとか,ちょっと本格的に財産管理のことを考えないといけないと思われたら,前に作った親の財産目録にチェックを入れておきます。つまり財産目録をメンテナンスし,最新状態に更新してください。すべき作業は,財産目録を作成したときとほぼ同じです。
- 財産の種類と内容をはっきりさせ
- 財産評価をして
- 書類にまとめる
ということ。前の財産目録が手元にあれば,今度は話が早いはずです。そこに書いてある財産については,以下のような証拠資料を更新して,財産目録の数字を新しくしておきましょう。そして,新たに取得した財産・資産や,新たに負担した債務などがある場合は,以下のような資料を集めて財産目録に書き加えます。
不動産
- 法務局で登記事項証明書を取得する
- 市町村役場で評価証明書,名寄帳,資産明細など評価額が載っている書類を取得する
- WEBサイトで路線価も調べる
預貯金
- 通帳があれば通帳記帳をする
- 証書があればそれを見る
- 何もなければ金融機関で残高証明書をもらう
証券口座
- 郵便で送られてくる取引報告書等を見る
- 何もなければ証券会社で残高証明書をもらう
親の財産目録をチェックするときに注意すべきポイント
いま改めて親の財産や財産目録をチェックするなら,以下のようなことに注意してください。
前回と比べて新しく取得した財産又は負担した債務はないか
- 新たに取得した不動産はありませんか?
- 登記簿(登記事項証明書)の甲区(所有権に関すること)や乙区(所有権以外の権利に関すること)に何か見たことがない権利は設定されていませんか?
- 市町村役場で取得した固定資産税の評価証明書や資産明細に知らない物件が追加されていませんか?
- 預金通帳は確認しましたか?新たに定期預金を作ったりしていませんか?
- 通帳記帳をして中を見たら,よくわからない会社から毎月引き落としされているものなどありませんか?
- 証券会社の取引報告書や残高明細をチェックして,証券会社に預けている金融商品に変化はありませか?新しく加わった商品や,記載が無くなっている商品はありませんか?
その財産は値上がりしているか値下がりしているか,つまり価値の増減はどうなっているか
各財産の値上がり状況や値下がり状況もざっと押さえてください。財産目録に記載する際,前の金額と見比べて,大きく価値が増減しているものはチェックを入れておいてください。場合によっては処分してしまったほうがいい財産があるかもしれません。親とも相談してください。
財産に変動があった場合,その変動の経緯に説明がつくか
例えば新たな定期預金が追加されている場合や,逆に定期預金が解約されている場合。そのお金がどこから来て,またどこへ行ってしまったのか沿革がとれるでしょうか。普通預金との間の移動でしょうか?それとも現金の出し入れ?証券口座の金融商品についても同じことが言えます。証券口座の金融商品が減っていたら,それが証券会社の口座に現金預かりになっているのか,それともどこかの銀行の預金になっているのか,およその流れに説明がつくか確認してください。もしおかしなところがあったら,親に聞いてみてください。その説明がおかしいようなら,何か隠しているか,認知症が始まっているか,何らかの原因が考えられます。
相続税がかかりそうか,節税対策は必要ないか
改めて,親がこのまま死んだら,相続税がかかりそうかどうかざっと試算してみます。相続税の基礎控除額(問答無用で相続税がかからない額)は以下のとおりです。
相続税の基礎控除額=3000万円+(法定相続人の数+600万円)
みなし相続財産である生命保険(死亡保険金)については以下の非課税枠を超える部分を財産に加算すること。
生命保険金の非課税枠=500万円*法定相続人の数
もし少しでも基礎控除額を上回っていたり,今後財産の蓄積(毎月又は年間の収支がプラスになっている)によって死亡時の遺産が基礎控除額を上回ってくる見込みならば,相続税の節税対策について検討してください。できれば税理士に相談すること。もし相続税に詳しい税理士の知合いがいなければ,司法書士に相談していただいても結構です。税理士を紹介します。
死後の相続による財産の承継手続きについておよその段取り(目算)をつけておく
死後速やかに財産の相続手続きをしたい。場合によっては早期に処分して現金化したい。そのようにお考えなら,死後の遺産承継手続きがスムーズにできるよう段取りをつけておくことをおすすめします。
というのも,財産の相続手続きには案外時間がかかるからです。まず親の出生までの戸籍謄本等をさかのぼって集めないといけません。そして各財産の管理先に相続手続きの紹介をして手続書類を受領します。さらに遺産分割協議書も作成して,共同相続人全員が,相続書類と遺産分割協議書に署名押印し,印鑑証明書を揃えて提出する必要があります。法務局,銀行,証券会社等に相続申請をしても,完了までにまた時間がかかります。書類に不備があれば当然やり直しになります。しかしこれがすべて済まないと,相続人が相続財産を売却処分したりはできません。なので,親の先が長くないなと思ったら,親の死後,このような手続きを共同相続人のうちの誰が代表として仕切って,そしてどこのどういう専門家(司法書士など)に依頼して進めるのか,目算をつけておくのが望ましいです。親が死ぬとしばらく大変忙しくなり,時間に追われがちだからです。
なお,親の死後,共同相続人が遺産分割で揉めるとなお大変です。遺産分割で揉めると,当然,その紛争が最終解決しないと相続手続きが進まず,したがって相続財産の現金化も遅れます。もし相続人で揉めそうなら,この際親に頼んで遺言書を作成してもらうべきです。親の死期が迫り,財産目録をチェックして,その後のことが心配になったら,是非遺言書のこともご検討ください。
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