相続大全集

遺言書で実の親に認知してもらうメリットと方法について説明します

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父の死後遺言書で認知してもらう方法とメリット

私は非嫡出子,いわゆる婚外子です。この前亡くなった母は一生独身で過ごしました。父親は近所に住んでおり,妻子があります。つまり私は,父親と母親の不倫によって生まれた子になります。一時は父親や自分自信の不遇を恨んだりもしましたが,いまとなっては,もう受け止めることができています。さて,父親とは,年に数回ほど会って話をします。父親は母親や私のことを気にかけてくれており,私が経済的にそれほど恵まれているわけではないのを心配しています。先日父親から,「認知しようか」という話がありました。私はすでに成人しており,一番生活が苦しかった時期を過ぎています。正直「今さら何を」という気持ちがしています。私はどうしたらいいのでしょうか,呼びかけに応えて認知してもらったほうがいいのでしょうか。

はい,高齢の父に認知してもらったほうがいいかどうか。この点について少し考えてみます。

結論からいうと

父親に認知をしてもらってください。

しかも,「遺言書」で。

つまり,「遺言認知」をしてもらってください。

認知とは何か

認知とは,婚姻関係にない男女から生まれた子(非嫡出子)について,その父親が,自分の子であると認めることです。たとえ非嫡出子であっても,母子関係のほうは,分娩という事実から当然に認められますが,父子の関係は認知よって生じます。

認知によって,法律上,子と父親の親子関係が生じるので,親子という身分関係に関係する法律関係もまた認知によって生じます。

認知は父親の生前にすることができるのはもちろん,父親が生前に作成した遺言書にもとづき,父親の死後において効力を生じさせるよう,遺言書ですることもできます。

(認知の方式)
民法781条  認知は、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによってする。
2  認知は、遺言によっても、することができる。

遺言で認知してもらう法的効果とメリット

父親の法定相続人や遺留分権利者になれる

これは生前にする認知でも遺言認知でも同じことですが,認知よって父親との間に法律上の親子関係が生じるので,あなたは父親の子として父親の相続に関する第一順位の法定相続人になります。その相続分は,父親の嫡出子である他の子(あなたからみて父親を同じくする兄弟)と同じです。

法定相続人になれば法定相続分が生じ,遺留分権利者にもなります。仮に父親が全財産を法律上の妻や他の子に相続させる遺言をしても,あなたには遺留分があるので最低限の財産の相続(本来の相続分の1/2)を受けることができます。

なお,遺言で認知する場合,父親の死後,遺言執行者が市町村役場に認知届をします。死後に認知届をする,つまり相続開始後に認知届をするので,あなたは父親の相続人になれないのではないか?との疑問が生じますが,そんなことはありません。遺言認知の場合,認知の効力は,相続が開始したときに遡って生じます(厳密には,遺言認知の効力は遺言が効力を生じると同時に生じ,届出は市町村への報告に過ぎない(報告的届出))。よってあなたは,問題なく父親の子として父親の法定相続人になることができます。

認知だけではなく他の遺言内容を書いてもらえるかも

遺言で認知をする場合,当然のことながら,父親に遺言書を作成してもらいます。遺言書において,あなたを認知する旨を書いてもらうのですが,ついでに(といっては語弊がありますが)その他の遺言内容も書いてもらえるかもしれません。というか,書いてもらうようにお願いすればいいのです。

遺言書の基本的な役割は,やはり財産の処分にあります。遺言者の財産の死後の行き先を遺言者の意思で決めておくのが遺言書の基本的な使われ方です。遺言書で認知をしてもらえるかもしれない,といような段階までいったのなら,いろいろと話ができるはず。あなたや母親がいままでどのように生きてきたかという事実及びあなたの考えや想いを父親に伝え,場合によっては法定相続分を上回る財産を相続する遺言を書いてもらってもいいはず。

遺言書で認知をしてもらうということは,遺言書の作成にあなたが少なからず関与することを意味します。遺言認知をしてもらうと,そのような機会を得ることができます。

父親の妻子と生前に揉めるのを防止できる

遺言認知(父親が生前に遺言書によって認知をし,死後に認知の効力が生じる方法)をすれば,父親の生前,あなたが父親の子になることはありません。認知をすれば戸籍にその旨が記載されて,あなたが父親の子供であることが明らかになるんですが,遺言認知なら生前には戸籍記載されません。父親が死亡して遺言の効力が生じた後,遺言執行者が市町村役場に認知の届出をしてはじめて戸籍に記載されるのです。

もし生前の認知により父親の戸籍に子供としてあなたの名前が記載されたら,妻子がその戸籍の記載を発見して,父親を問い詰めるかもしれません(父親が認知する事実を隠している場合など)。そして,将来の相続分が変更されたことに気づいて,父親の財産を生前贈与したり隠したりする可能性があります。

また,もしかすると父親に遺言書の作成などを迫ることも考えられます。父親がもし妻子のことを最も大切に考えている場合や,あまりに強く迫られた場合には,ときとして父親は,妻子に全財産を相続させる遺言書を書いてしまうかも。そうなるとあなたが相続で取得できる財産は遺留分の額までとなります。

生前贈与や財産隠しによって父親の財産を取り戻すことが難しくなったり,遺言書作成によってあなたの相続分が減ってしまったりすることは十分に考えられることです。なので,そのような恐れを感じるときは,認知は遺言書でしてもらうことが有効になるんです。

父親の扶養義務を免れられる

あなたが生まれてから成人になるまで,父親から十分な養育費が出ていたでしょうか。あなたの母親に対して,あなたの養育費として十分が額が渡され,人並みの生活や教育を受けることができたでしょうか。もしそうではないなら,父親の老後の扶養義務を負わされるのはバランスを失するでしょう。もっとも,そのあたりは妻子に任せておけば十分やってくれるのかもしれませんが,いま申し上げているのは,法律上の扶養義務を負うのか,負わないのかという理屈,つまり法的責任や法的義務の点です。

(扶養義務者)
民法877条  直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2  家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3  前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

法律には以上のように書いてあります。親子は直系血族にあたります。もっとも近しい直系血族関係です。つまり,法律上の親子関係が生じれば,法律の規定によって当然に,あなたは父親の扶養義務を負います。じっさい問題扶養することになるかどうかは分かりませんが,法律上扶養義務者になる,という事実を覚えておいてください。

成人になるのに経済的に苦労して,十分な養育費をもらってないにもかかわらず,法律上の扶養義務を負わされるのはかなわないということなら,遺言認知をしてもらってください。遺言認知の効力は,父親の死亡時に生じるので,生前父親とあなたの間に親子関係はありません。よって扶養義務もありません。扶養とは,父親の生前の生活を助けるものだからです。

遺言認知の手続き

ではじっさいに遺言書で認知してもらい,その認知の効力が生じ,あなたが父親の遺産を相続するまでの流れはどうなるでしょうか。大きな流れは次のようになります。

  1. 遺言書の作成(自筆証書又は公正証書)
  2. 父親の死亡・相続の開始
  3. 遺言執行者による市町村役場への認知の届出
  4. 遺産の相続手続(不動産の名義変更,預貯金や証券口座の解約・払戻し・口座移管等)

遺言書は父親が自分で書いても公証人役場公正証書遺言をしてもかまいません。自分で書く場合は必ず司法書士に相談してください。また,必ず遺言執行者を決めておいてください。司法書士や弁護士を指定するのが望ましいです。父親が亡くなったら,遺言執行者ができるだけ速やかに市町村役場に認知の届出をします。父親の死亡の事実や,あなたが認知されて子になったことが父親の戸籍に記載されたら,その戸籍謄本や遺言書等の必要書類を準備して,相続財産の名義変更等の手続きに入ります。遺言執行者である司法書士等がすべての手続きを代行することが多いでしょう。

戸籍法60条  認知をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一  父が認知をする場合には、母の氏名及び本籍
二  死亡した子を認知する場合には、死亡の年月日並びにその直系卑属の氏名、出生の年月日及び本籍

同64条  遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から十日以内に、認知に関する遺言の謄本を添附して、第六十条又は第六十一条の規定に従つて、その届出をしなければならない。

遺言認知する場合の遺言書見本(例)

遺言認知をする場合の遺言書の見本はこんな感じ


遺言書

  1. 以下の者は,私と,○○(年月日生まれ)との間の子に相違ありません。よってこれを認知します。
    住所 ○○
    氏名 ○○
    生年月日 年月日
    本籍 ○○
    戸籍筆頭者 ○○
  2. 私の財産を,子の○○については3分の1,子の○○については3分の2,の各割合で相続させます。
  3. 遺言執行者として○○を指定します。

年月日
遺言者 ○○ 印


 遺言書作成上の注意点

  • あなた(認知される子)の母親が誰なのかを記載してください。
  • あなた(認知される子)の住所,氏名,生年月日,本籍及び戸籍の筆頭者を記載してください。
  • 遺言が効力を生じた後,市町村役場に認知届を提出する遺言執行者を指定してください。遺言執行者を指定していないと,家庭裁判所に遺言執行者を選んでもらう選任申立をしなければいけなくなります。
  • 遺言書2の相続分の指定は一例です。財産処分の内容は遺言者が自由に決められるので,あなたの希望を伝えてみてください。遺産の全部とか割合的一部を定める相続分の指定のほか,住宅は誰に,預貯金は誰にというように,具体的な財産を割り振る遺産分割の方法の指定もできます。父親とあなたでおよその内容を決めたら,司法書士に具体的な書き方や作成法を相談するとよいです。

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