将来両親が亡くなれば当然家は片づけないといけないのですが,今日お話しするのは,親の生前に,親の家を片づけるケースです。親が生きている場合でも,以下のようなケースでは,子供であるあなたが,親の家を片づけないといけないケースが出てくるでしょう。
- 親が歳をとって家事がおっくうになって自分で片付けできない。
- 母親に先立たれた父親は家事ができないので家が荒れてきた。
- 親が軽度の認知症になってちらかってきている。
- 親の認知症が進んで施設に入所することになったので家を片づけないといけない。
- 独り暮らしの母親が急病で倒れて長期入院したので家を片づける必要が。
- 年老いた両親をあなたが呼び寄せて同居するので住んでいた家を片づけないと,,
さて,このように,子供であるあなたが親の家を片づける必要に迫られたとき,あなたはどのように行動すればいいのか。今日はそのポイント・要点を完結にお話してみます(親の死後の遺品整理の場合も注意点はほぼ同じです)。では,早速いきましょう。
まずは親の家を片づける準備をしよう
いきなり片づけに家に向かうのはやめましょう。非効率です。しっかり準備をしてから着手したほうがきっと早く終わるし楽です。何事も準備が大切です。かといって,親の家のことですから,それほど大層に考える必要もありません。考えすぎると片づけが進まないからです。ノートや便箋を用意して,現状を整理してまとめてみましょう。何が問題なのかよく分かって少し楽になりますし,何かのときに役に立ちます。紙でなくても,PCやスマホのメモ帳など,テキストを書き込めるアプリを使って整理すれば足ります。次のような項目を挙げて要点を書いていきましょう。準備としてはこの程度で大丈夫です。
「親」の状況
正確な住所,本籍地,生年月日,年齢,干支,健康状態,生活状態,かかりつけのクリニックの名前と連絡先,本人の願い事,本人の心配事など
「家」の状況
所在地番と家屋番号,所有名義,賃貸の場合は賃貸名義人,オーナーの住所氏名に連絡先,賃貸仲介(管理)会社の連絡先,あなたの家から通う場合の交通手段,ルート,交通実費など
地域のごみ処理システム
その市町村の粗大ごみや生活ゴミの回収方法(引き取りや持ち込みなど),費用,担当部署の連絡先など
手伝ってくれる人(片づけの関係者)
- じっさいの片付けを手伝ってくれる親族
- 自分でできない片づけを手伝ってくれる廃品処理業者,遺品整理業者,運送会社,清掃会社,便利屋さんなどの名前と連絡先
- 法的手続を相談できたり手伝ってくれる司法書士や弁護士の名前と連絡先
片づけ総論(親の家の片付け方のポイント その1)
さて,準備ができたら親の家を片づけていきます。まず最初に,親の家を片づけるにあたっての注意点を総論的にお話しておきます。そのあと別項にて,もう少しだけ具体的なこと,すなわちじっさいに親の家を片づける際のポイントを,家の中にある物品ごとに説明してみます。
家の片付けをすることを親によくよく相談すること
親が長年住んできた家や家財は,親にとってはとても大事な存在です。場合によっては,とても思い入れが強かったり,子供であっても全部あら捜しされるのは嫌だとお考えかもしれません。なので,1回で片付けの承諾を得ようとせず,ゆっくり時間をかけて片づけの必要性を説明してください。親が嫌がっているのに「私が行って片づけるから!」を無理やりするのはできるだけ避けること。以下のようなことに気をつけて説明してください。
- 2,3回と話合いをして情報を得る
- 上から目線ではなく手伝う気持ちで
兄弟ともよく協議してから始める(全部一人で決めずに)
たとえ最後はあなたが片づけの責任者になるとしても,兄弟にはよくよく説明してから着手してください。あなたが家のことをよく知っていて,兄弟は都会にでて家に帰っていない,などの場合,「俺が片づけるのが当然だ」と考えられるかもしれません。しかし,そのような場合はかえって,兄弟は「家に何か私の知らない財産があったんじゃないか」「財産を勝手に処分してるんじゃないか」とか悪い想像を働かせる可能性がないではありません。くれぐれも将来に紛争の種をまかないよう,兄弟にはなるだけ承諾をとって進めるようにしてください。
無理をしないスケジュールを(少しずつ何回かに分けて作業)
仕事ができて忙しく,段取りが得意な方であればあるほど,「家の片付けなんて1回で俺が終わらしてやる」と考えがちです。しかし,親の家はそんなに整然と物が整理されているものではありません。特に日本人は,物を分類整理する習慣が弱いので,無規則に,いろんなところにいろんな物が収納されているものです。なので分別には案外時間がかかるし,予想外の物が出てきて処理を即決できず処分保留になることもあります。「なんだこんなぐちゃぐちゃにして」と一刀両断して,よく確認せずに捨てるようなことは厳禁です。スケジュールをぎりぎりに設定するとそのようになりがちです。要は,1回で全部終わらせようとせず,何回かに分けて整理するよう余裕のあるスケジュールを組んでください。
毎回の終了時間を決めておく
前のところとも関係しますが,とにかく早く終わらせようとすると,予定を超えて夜遅くまで残ったり無理をしがちです。あまり無理をすると親の家を片づけているあなたのほうが疲れてやられてしまいます。スケジュールに余裕を持たせ,複数回に分けてしましょう。そして毎回の片付けは,まだまだできると思っても,予定の終了時間にきっちり終了して引き上げるようにしましょう。くれぐれも無理しないよう。
スタート時には法定相続人全員がそろって貴重品の確認を
もしあなたに兄弟があるなど,親の将来の相続に関し,法定相続関係に立つ人が他にいるなら,可能なかぎり,初回の片付けの際は,皆がそろって行えるようスケジュール調整をしましょう。あなたが先走って親の家を片づけたばかりに,何か疑念を持たれて,将来遺産相続に関する紛争の種にならないともかぎりません。あなたが財産を独り占めしたり,隠したり,処分したりしたのではないか?との疑いを他の相続人に持たれないようにすることが大切です。以下のような貴重品のリストを作って,「今何がどれだけあるのか」について共通の認識を持てるようにしておきましょう。
- 預貯金通帳,同証券,キャッシュカード,届出印
- 証券会社の取引報告書や残高証明,キャッシュカード,届出印
- 不動産の権利書や登記簿謄本,固定資産税通知書
- 保険証券
- 貴金属
- ゴルフ会員権等,その他財産的な価値のあるもの
- 現金
捨てる(自分で,業者で),売る,あげる,の区別を
じっさいの片付けに入る前に,およそ家の中には何があるのかを知っておきましょう。あなたご自身のことを考えればおよそ分かるはずなのですが,案外人は家に何があるのか意識せずに生きているものです。人間が長期間暮らしている家にはいったい何があるのか,そのリストを作ってから片づけに入ると,整理も進みやすく思います。そして,それらについてそれぞれ,捨てる物,売る物,誰かにあげる物の区別をしておきましょう。その区別をしておくことで,効率的に片付けをすることができます。
家にあるものリスト
財産関係の書類等
- 預貯金通帳,同証券,キャッシュカード,届出印
- 証券会社の取引報告書や残高証明,キャッシュカード,届出印
- 不動産の権利書や登記簿謄本,固定資産税通知書
- 保険証券
医療,保険,介護関係の書類等
- 公的年金,私的年金に関する証書や通知書など
- 病院関係の書類や薬など
ライフラインに関する書類
- 公共料金(電気・ガス・水道・電話)の請求書や領収書
- インターネット回線に関する書類
その他民間サービスに関する書類等
- クレジットカード
- 各種の会員カード
- 冠婚葬祭互助会の契約書
- リース契約書
衣類
- 洋服・着物
- バッグ
- 時計
- アクセサリー,貴金属
思い出の品
- 写真やアルバム
- ビデオ
- 記念品
- 人形
趣味の道具や作品
本やAV(CD,DVD等)
宗教関係
- 仏壇
- 位牌
- 御霊舎
- 神棚
家具等
- 家具
- ふとん
- マットレス
- じゅうたん
家電製品
- テレビ,洗濯機,冷蔵庫,エアコン,PC
- その他
食品
玄関と廊下の通り道を確保
じっさいに家の中を片づけるときは,手当り次第着手せずに,よくよく考えてからします。「とにかく手を動かして!」などとできるところからやり始めると収集がつかなくなりがちです。特に,廊下から玄関に抜ける導線(通り道)を確保するように気をつけて下さい。収納から物を出したり,物を移動させたりするときは,とにかく通り道を作っておくことを忘れないようにしてください。その後の片付けの効率にかかわります。
作業スペースを確保
通り道もそうですが,物を分類したり,書類を確認したりすることができるスペースを確保しましょう。例えば,どの部屋にも行き来がしやすい一部屋をまず片づけて作業スペースにする。その部屋には決して大きな物を置かないようにする。作業スペースに物を持ってきて内容を確認し,次にそれを持っていく先(捨てるもの,売るもの,あげるもの,持って帰る物などの置き場所)を決めます。
押入れは最後
押入れに物がのこっていると気になって最初にほじくり出して片付けたくなりますが,ここはぐっとこらえて我慢です。押入れの整理は最後にとっておきましょう。なぜなら,押入れの物を外に出すと家の中に物が増えるからです。せっかく押入れに収まって片付いているものを最初に出してちらかすようなまねはよしましょう。
晴れた日にする(気分の問題,窓開け)
片付けはできるだけ天気のいい,よく晴れた日にしましょう。お天気がいいと,片づけをしている最中,窓を開けっぱなしにして,家の中に風を入れることができます。また日当たりもよくなるので,気分も晴れます。家の中を片づけると,どうしても部屋が埃っぽくなるので,晴れた日に窓を開けて作業できると全然気分が違うでしょう。アレルギー体質の人など,埃っぽい家の中で長時間作業するとじっさいに体調に差し支えることもありそうです。親の家の片付けは,なるべく晴れた日に,窓をあけっぱなしにして行ってください。
音楽を持参する
長時間,家の片付けをもくもくとやっていると,場合によっては気が滅入ってきますので,音楽を持参するといいです。最近はスマホにワイヤレスヘッドホン(イヤホン)などいいものがたくさんあるので,そういったものを利用して楽しい音楽をかけて作業するとしんどさが全然違います。是非おすすめします。スマホ等が利用できない方は,CDラジカセやカセットデッキでもよいでしょう。もちろんポータブルラジオでも。
芳香剤を持参する
相当家が汚れていたり,長時間親が家の掃除をしていない場合には,においが気になることもあります。なので,そのにおいを打ち消すために芳香剤や消臭剤を持参しましょう。両方持って行ってもいいですね。お線香やお香などを焚いてから(焚きながら)片付けをするのもいいかもしれません。特に,雨の日など,窓を開けずに片付けをする日は必須かと思います。かなり気分がよくなるのでこちらもおすすめします。
飲み物やおやつを持参する
親と言えども他人の家の片付けは大変です。勝手が分かりません。なので,片づけをしていると,2時間,3時間はあっという間に過ぎていきます。喉は乾くし,おなかも空くので,飲み物やおやつを持参してこまめに休憩をとってください。特に近くにコンビニなどがない田舎の家には必須でしょう。おなかが空いて血糖値がさがると集中力が著しく低下して非効率ですし,しんどさは倍増します。また気分も落ち込みがちになるので,おやつや軽食は必ず持参するようにしてください。
独りでしない,話し相手を用意して一緒にする
可能なら,兄弟など,誰かといっしょに片付けをしてください。兄弟の都合がつかなかったら,配偶者や子供など,場合によってはお礼をして友達に手伝ってもらうのもありです。一人で他人(親といえども)の家の片付けをするのは大変しんどいです。誰か人としゃべりながらすると気分転換ができてずっと楽になります。独りで孤独にせずに,複数人で片づけましょう。
あえて外食する
飲み物や軽食を持参するのはもちろん,昼食や夕食など,家の片付けの合間や終了後は気分転換に外食をおすすめします。ファミリーレストランなど,近くに何か食事処がないか,事前によく調べてから片づけにいきましょう。親の家の片付けはしんどいです。ストレスがたまります。少なくともわくわく楽しいものではないでしょう。外食をして気分転換をしつつ行ったり,その日のスケジュールを終えた後のご褒美を用意して,なんとか落ち込まないで進めたいものです。
あえて近所のホテルに泊まる
親の家があなたの家のごくごく近所なら別ですが,他府県にある場合,あえて片付けの日の前日に近くのホテルに前泊したり,片づけ終了の日の夜から宿泊したりするのも一つの方法です。前日に近くの繁華街などで一泊してゆっくり休み,早朝から元気いっぱいに片付けに入るとはかどります。また,片づけのその日は近くの都市部に宿泊してから帰ることにすると,夜遅くまで片付けを頑張ることができます。少し贅沢かも分かりませんが,どうしても気がのらないときは,あえてそのようなことをしてみるのも一考です。
旅費等はちゃんと記録しておく
親の家に何度か通って,それなりの交通実費がかかる場合は,その金額をきっちりメモしておきましょう。場合によっては領収書ももらっておいてください。後から親に経費を請求したり,兄弟で分担してもらったりする際にきっちり数字を出せることは重要です。
業者のサービスを利用する(ヤマトホームコンビニエンス等)
あなたが親の家の片付けをするからといって,全部が全部,具体的な作業まで,あなたがじっさいに行う必要はありません。あなたは責任者となって,できることはやり,できないことはできる人に任せればいいんです。できないことは他人や民間業者のサービスを利用してやればいい,このことを覚えておいてください。粗大ゴミ等の処分や,家の掃除・クリーニングといった家事サービスなど,インターネットで検索するといろんなことを請け負ってくれる民間事業者がたくさんあります。親や兄弟に一応は相談して,費用をどうするかの目途がついたら,任せられることはどんどん業者に任せてしまいましょう。
水道と電気は最後にとめる
家の片付けをするときはライフラインをどうするか,計画的にしましょう。電気,ガス,水道,電話,インターネット回線などのうち,どれをいつまで使うのか,使う可能性があるのか,よく考えて契約の処理を進めます。一般に,水道と電気だけは,片づけが完全に終了するまで停めないでおきましょう。水が使えないと掃除ができないで不便だし,喉が渇いたときの飲み水にも困ります。電気がないと早朝や晩方,そして日当たりの悪い部屋の見通しがきかないほか,夏場冬場はエアコンや扇風機といった空調が使えないし,掃除機やポットも使えません。水道と電気だけは,多少余分に料金を支払うことになっても,片づけ終了までは契約しておくことです。
火災保険は継続契約しておく
火災保険も片付けが終了するまで,いや親の家を売ったり,取り壊したり,完全に処分し終わるまで,間断なくかけておくようにしましょう。更新時期が来たらきっちり更新しておいてください。
早い段階で司法書士や不動産業者に声掛けしておく
あなたが親の家を片づけた後,その親の家はどのようにしますか?親はその家をどのようにするとおっしゃっていますか?もし,もう親がその家に戻ることがないとか,使うことがないとかいうことなら,今すぐ,できるだけ早期に,お知り合いの司法書士や不動産仲介業者等にそのことを知らせておいてください。家を片づけたついでにリフォームし綺麗にしてから売却しようとか,先に取り壊そうとか,ご自身の判断で実行される方がいらっしゃいますが,それは得策ではありません。売却するならリフォームはするべきではありませんし,建物は取り壊したほうがいいケースと取り壊さないほうがいいケースがあります。親やあなたが先にお金をかけてやったことが必要でなかったりかえって不利益であったりするケースがあります。不動産は難しいので,建築,法律,相場と,専門的知識を持った人のアドバイスを受けて処分等することをおすすめします。そのためには,できるだけ早く,専門家に情報を出しておくことです。
片づけないデメリットを知る
無人の家は傷む
よく言われることですが,人が長期間住んでいない家は傷みます。特に昔の家は計画換気もできていないので,長いこと窓を閉め切っていると風通しが悪くよくありません。そのうち,,そのうち,,といって空き家を放置するのは家という建築物にとってよくないので,早期に片付けをしましょう。片付けをして,ちゃんと管理するか,処分方法を決めてしまうことが重要です。
固定資産税等
ご存じのとおり空き家にも固定資産税がかかります。長期に放置するとばかにならない金額です。しかし家を取り壊して更地にすると土地の固定資産税が跳ね上がります。いずにしろ,住宅を放置することは,よほど余裕のある方を除いて得策ではありません。
不法侵入や火事
空き家を放置することは治安等にもよくありません。不法に敷地や建物に誰かが入ってゴミ等を投機されるかもしれません。そんなことがあると親やあなた方がその片付け等の責任を負わねばなりません。また,不審火によってご近所の住宅に延焼するようなことがあると大変です。ご近所の火の後始末や,子供のいたずらなど,火が出る可能性は少なくありません。法的責任はともかく,ご近所に甚大な被害が出た場合,親もあなたも,ただでは済まないでしょう。空き家を放置するのはおすすめできません。
上手くいかない,長時間かかるのは当然と知る
親の家の片付けに着手したのはいいが,いろんな物が出てきて,分類できないで困る。親に聞いてみたけど,どうも要領を得なくて,処分保留になってこまる,,このようなことがあるかもしれないので,冒頭,スケジュールは余裕をもってしてくださいとお伝えしたところです。さて,,,あなたは忙しくて,早く親の家の片付けなんて終わらしてしまいたいというのも分かります。しかし,その親の家は,そして家の中にある家財や思い出の品は,親が,場合によっては数十年という長い期間をかけて形成してきた人生の証,成果物でもあります。2回や3回で片づけられなくても当然ではないですか?上手くいかない,スケジュールどおりにいかないといって憤慨するのではなく,「そう簡単に片付かなくて当然である」という心構えでのぞんでください。
片付けを通じて親の気持ちを知る,親の人生を知る
そう,片づけが思い通りにいかないのは,家財道具等に,親の思い入れがあるからではないですか?写真や記念品など,親の人生の記録や記憶と密接にかかわるものがたくさんあるからではないでしょうか。あなたにとってはつまらないものでも,その処分方法を親と相談する家庭で,思いもよらない話が聞けるかもしれません。親の話を聞いて,親が何を考えていたのか,どんな苦労をしてきたのか,また何を生きがいに今日までやってきたのかを知るかもしれません。そのことは,親の家の片付けをてっとり早く効率的に終わらせることとどちらが大事なことでしょうか。親があって,親に育てられてあなたがある。親の家の片付けを通じて,いままで知らなかったことを知り,新たな感情が芽生え,今後それほど長くはない親の老後とよりよく付き合っていくことができたら,,,親の家の片付けの副産物はとても大きいかもしれません。
片づけ各論(親の家の片付け方のポイント その2)
総論はこのくらいにして,では次に,じっさいに親の家を片づけるにあたり,家の中にある個別の物品をどう整理したらいいのか,そのポイントをごく簡単にまとめておきます。
財産関係の書類等
具体例
- 預貯金通帳,同証券,キャッシュカード,届出印
- 証券会社の取引報告書や残高証明,キャッシュカード,届出印
- 不動産の権利書や登記簿謄本,固定資産税通知書
- 保険証券
どうする?
預貯金通帳は銀行ごとに分けましょう。繰り越し分と現行の通帳も分けておきましょう。近くに金融機関の支店があれば,通帳記帳をして最新の残高が分かるようにしましょう。
証券会社の報告書は日付を見て,直近のものだけとっておきましょう。古いものもとっておくなら,時系列に並べて整理してください。
不動産の権利書や登記簿謄本等があったら,地番から,法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得しておくとよいです。
生命保険等の保険証券は,証券から契約内容が分からなければ,代理店等に電話して契約内容や給付内容を調べておくとよいです。
これら財産関係の書類は,「財産関係の書類」等の名前をつけて,一つのファイルや封筒などにまとめておきましょう。なお,親の同意を得て,親の所有財産をまとめた簡単な財産目録を作っておくと資産状況が把握できてよいと思います(遺言書作成や後の遺産相続手続の参考にもなる)。
医療,保険,介護関係の書類等
具体例
- 公的年金,私的年金に関する証書や通知書など
- 病院関係の書類や薬など
どうする?
年金証書や各種保険の被保険者証その他通知書等は捨てないで全部とっておきましょう。時系列に並べて整理しておくとよいです。
病院からもらった診断書やレポート,薬の処方箋などがあれば,それも全部とっておいてください。病院,クリニック,医師,施設等の連絡先は,別途メモに書き写すか,スマホで写真に納めておいて,いつでも見られるようにしておいください(親に何かあった際)。
なお,これらの書類等は,「医療,保険,介護関係」などと名前を付けて,一つのファイル等にまとめておいtくだだい。
ライフラインに関する書類
具体例
- 公共料金(電気・ガス・水道・電話)の請求書や領収書
- インターネット回線に関する書類
どうする?
電気,ガス,水道,固定電話に携帯電話等,サービスを提供する事業会社の連絡先が書いてある最新の請求書や領収書を一つずつとっておいてください。最後にこれを見て供給停止やサービスの解約申入れ等を行います。
インターネット回線(光ファイバーやブロードバンド)に関する冊子や契約書があれば必ず捨てないでとっておきましょう。ISP(インターネットサービスプロバイダー)の書類についても同様です。これらをすべてとっておいて,誰かに後処理を相談する際に見せます。
これらの書類は,「ライフライン」等としてひとまとめにファイリングしてください。
その他民間サービスに関する書類等
具体例
- クレジットカード
- 各種の会員カード
- 冠婚葬祭互助会の契約書
- リース契約書
どうする?
クレジットカードや各種の会員カードなどは,輪ゴムやクリップでとめてまとめておきましょう。後から親に,使っているものと使ってないもの,年会費のいるものと不要なものなど,確認できるようにします。
その他あらゆる民間サービスに関する書類は会社ごとにまとめて全部とっておきましょう。これも,後に親に,順番に,契約の効力や内容を確認する必要があります。
これらには,「その他民間サービス一式」などと名前をつけ,一式を一つとしてファイリングしておきます。
衣類
具体例
- 洋服・着物
- バッグ
- 時計
- アクセサリー,貴金属
どうする?
このうち売却処分して値がつくのは,新品の高級ブランド品,中古なら高級機械式腕時計,質のいいダイヤモンド,金,プラチナくらいでしょう。着物ならリメイクしてもいいかもしれません。ブランド品は業者に持ち込むよりインターネットオークション(ヤフオクなど)に出品して売却するほうが高値がつきます。
その他衣類で親が特に残しておくことを希望しないものは,誰か相続人で引き取るか,知人にあげてしまい,残りを廃棄処分します。
思い出の品
具体例
- 写真やアルバム
- ビデオ
- 記念品
どうする?
写真やアルバム,ビデオは,引き取りたい相続人が引き取るのがいいでしょう。その他の人で写真に興味ある人は,借り受けてスキャンするか,スマホやデジカメでデジタル写真をとり,PCにデータとして保管したり,クラウドサービスにアップしてしまいましょう。
賞状やトロフィー,メダルなどの記念品で,引き取る人がいないものは,同じく写真を撮影して記録を残し,現物は廃棄処分してください。こういった物は,いろんな角度からしっかり写真をとっておくとよいです。
趣味の道具や作品
具体例
- 水彩画や油絵等,絵画の道具や作品
- 編み物や織物などの手芸作品
- 工芸作品
- 陶器や掛け軸など骨董品・古美術
どうする?
絵画の道具や作品,手芸作品,工芸作品などについても,欲しい人がないか同好の人に声掛けして,できるならそのまま引き取ってもらってください。作品に興味のある親族なら,その人に引き取ってもらいましょう。引き取り手がなければ,やはりこれもデジタルカメラやスマホでデジタルデータ化し,PCやクラウドサービスで管理します。
骨董品や古美術のうち,ある程度価値のはっきりしているものは,ヤフオクなどのインターネットオークションに出品して売却処分する方法もあります。
本やAVソフト
具体例
- 書籍や雑誌
- CD,DVD,アナログレコードなどのオーディオヴィジュアル系ソフト
どうする?
高価な専門書や絶版になっている希少な書籍やアナログレコードはインターネットオークションに出すと買い手がつくことがありますが,目利きをするのはなかなか難しいですね。
その他の書籍等一切については,ブックオフなどの古本屋に持ち込んだり,送ったりして処分します(段ボールを送ってくれるのでそれに入れて送る)。どうせ値がつかないので廃棄処分してもいいのですが,まとまった量なら,廃棄処分するより,こういった古本屋の自宅引取りサービスを利用する方法もあります。場合によってはゴミの総量が減って,あとでまとめて廃品業者に依頼する際に費用を節約できる可能性があります。
宗教関係
具体例
- 仏壇
- 位牌
- 御霊舎
- 神棚
どうする?
仏壇や位牌の処分は,お寺の住職に相談して決めてください。位牌については,「○○家先祖代々の霊」などといて,一つにまとめてしまう方法もあるようです。仏壇をお寺で処分してもらう費用はお寺と住職によりけりです。仏壇業者にお願いすると数万円~,廃品業者に頼めばより安いと思いますが,これは親と祭祀承継者等の考え方次第です。
家具等
具体例
- 家具
- ふとん
- マットレス
- じゅうたん
- 食器類
どうする?
家具はリサイクルショップに引き取ってもらうか廃棄処分してください。高価で程度のいい欧米のアンティーク家具などはリサイクルショップに出してはいけません。親が購入した店に連絡するか,詳しい人に頼んで専門のショップに査定してもらいましょう。
食器のうち,ティーセットやシルバー,大皿,新品の物,ブランド物は,だれか相続人が引き継いではいかがでしょうか。自分で使わなくとも,預かっておいて,バザーなどに出すのも一つの方法です。
家電製品
具体例
- エアコン
- テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)
- 冷蔵庫・冷凍庫
- 洗濯機・衣類乾燥機
- その他の家電
どうする?
- エアコン
- テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)
- 冷蔵庫・冷凍庫
- 洗濯機・衣類乾燥機
は,いわゆる家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)の対象品目となるので,自分で処分したり,無許可の廃品業者に処分を依頼したりはできません。
特定家庭用機器再商品化法とは、一般家庭や事務所から排出されたエアコン、テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機などの特定家庭用機器廃棄物から、有用な部品や材料をリサイクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を推進するための法律です。リサイクル料を利用者が負担して,資源を有効活用してもらい,同時にゴミを減らすための法律ですね。
対象廃棄物を処分するには,基本的には,それを「購入した店」か「買替えする店」に引取りを依頼しましょう。それが一番リーズナブルです。お店によって引き取り方が異なるので直接問い合わせをします。遠方に引っ越しをしたため購入したお店が近くにない場合などは、住所地の自治体へ相談することもできます。不用品回収業者,廃棄物処理業者に依頼することもできますが費用はかかります。
家電リサイクル法の対象ではない家電は,その大きさ等により,自治体で処分方法が決まっています。不燃ごみとして出せる物と,粗大ゴミとして出さないといけない物があるので自治体に確認してください。もちろん,お金を払って,業者に一括処分をお願いしてもかまいません。
食品
具体例
- 食品
- 調味料
- 洗剤
どうする?
食品の一部や洗剤には,そのまま捨てることができないものがあります。自治体ごとに処分方法が決まっていますので,ゴミとして出す場合は,自治体によく確認し,そのとおりにしてください。仕訳や処理が面倒なら業者に一括してお願いするのも方法です。
個人的なデータ
具体例
- 日記,手紙
- 連絡先リスト
- 家系図・親族図・相続関係説明図
- 戸籍謄本,住民票,印鑑証明書
どうする?
日記や手紙はすぐ捨てないで必ず一度目を通しましょう。親が処分していいというなら処分しますが,あなたやその他関係者の心に響くものは,デジカメやスマホで写真をとって,データとして保存しておきましょう。
連絡先のリスト等は,そのまま持ち帰ってください。もちろん写真を撮ってデータ保存してもかまいません。
司法書士等が作成した家系図・親族図・相続関係説明図や,その作成資料となった戸籍謄本等の書類があれば,それら一式をまとめてファイリングしておいてください。タイトル欄に「相続関係資料」などと銘打ってください。この書類は,遺言書作成や遺産相続の処理に使えますのでそのまま原本の形式にて要保存です。
片づけ傍論(親の家を片づけることが遺産相続にもたらすメリット)
長くなりましたが,最後におまけです。親の家を片づけると,次のようなことが分かります。親の家を片づける副産物です。
親の資産内容が分かる
預貯金通帳や証券会社の通知書,預貯金通帳,不動産の権利書や固定資産税通知書を整理すると親の資産内容が分かります。これを機に,推定相続人の間で,将来の遺産相続について協議したり,遺言書の作成を親にお願いしたりできます。また資産が多額で相続税の基礎控除額を上回っていたら,相続税の節税対策を検討して親にお願いすることもできます。
親に負債が無いかどうかが分かる
親に借金があれば,消費者金融やクレジットカード会社,その他債権者から,請求書や償還表,利息変更等の通知が来ているかもしれません。またそのような文書が,個人名の封書で届いているかもしれません。場合によっては,裁判所からの特別送達の茶封筒が引き出しの中に隠してあるかもしれません。親に借金があると,それも相続するので,親が亡くなった時に相続を放棄するのかしないのか考えておきます。そのような形跡を発見したら,親から借金の内容を聞き出しておくこともできるでしょう。親の協力を得て,信用情報機関に借金の内容を照会することもできます。
親が認知症になってないか分かる
親が普段言っていたことと,家の中の様子に食い違いがある。話が違う。そういうことがあれば,親の認知症が進んでいる可能性があります。入院先やかかりつけの主治医に相談する等して,今後のことを考えておかねばならないでしょう。進行の程度によっては,早期に遺言書を作成したり,任意後見契約を締結して将来の財産管理人を決めておくこともできます。すでに認知症が重度だと思われる場合,法定後見制を利用して,あなたや司法書士が親の財産の管理をする必要があるかもしれません。
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