父親は定年まで地方公務員として働いてきて,定年後も嘱託という形でつい先日まで仕事をしていました。しかしいよいよ隠居して老後の生活を楽しんでいるようです。父親は昔から職業柄大変堅実で,浮ついたことには一切縁のない人生でした。幸いよい職業人生を歩み,母親の公務員だったことから晩年は生活に余裕があり,資産運用はもっぱら国債や地方債,そして大手企業の社債のみでしていたようです。ということで,私もそろそろ両親の相続税がどうなるのか調べ始めたところです。そこで国債とか社債というのは,相続税の財産評価では,どういう風景に計算されるのか知りたいのです。
はいかしこまりました。国債や社債などの債券は,典型的な安定資産であり,その財産的評価が高いことはよくご存じだと思います。公社債の評価のうち,券面・額面が評価の基礎になることは当然として,公社債の評価で大事なのは利息の取扱いなど,周辺部分の細かいところです。これらは国が決めた特定のルールにしたがって技術的に計算式に当てはめるほかありませんので,今日はその計算式を列挙してご説明としたいと思います。
公社債の種類ごとに記します。
利付公社債
利付公社債とは,利札というクーポンがついている債券のことです。簡単にいうと,後から,毎年,利息がもらえる債券のことですね。利息後払いの債券です。利付公社債は三つに分類できます。
金融商品取引所に上場している銘柄
(課税時期の最終価格+既経過利息から源泉所得税額を控除した額)*券面額/100円=金融商品取引所の上場している利付公社債の相続税の財産評価額
日本証券業協会により売買参考統計値が公表される銘柄
(課税時期の最終価格+既経過利息から源泉所得税額を控除した額)*券面額/100円=売買参考統計値が公表される利付公社債の相続税の財産評価額
その他の銘柄
(発行価額+既経過利息から源泉所得税額を控除した額)*券面額/100円=上場銘柄と売買参考統計値が公表されるもの以外の利付公社債の相続税の財産評価額
割引発行の公社債
割引発行の公社債とは,券面額より割り引いた価格で発行される債券です。券面額と発行価額の差額が利息です。簡単にいうと,利息が先に支払われているような債券のことです。割引発行の公社債も三つに分類できます。
金融商品取引所に上場している銘柄
課税時期の最終価格*券面額/100円=金融商品取引所に上場している割引発行の公社債の相続税の財産評価額
日本証券業協会により売買参考統計値が公表される銘柄
課税時期の最終価格*券面額/100円=売買参考統計値が公表される割引発行の公社債の相続税の財産評価額
その他の銘柄
((発行価額+(券面額―発行価額))*(発行日から課税時期までの日数/発行日から償還期限までの日数))*券面額/100円=上場銘柄と売買参考統計値が公表されるもの以外の割引発行公社債の相続税の財産評価額
その他の種類の公社債の評価方法は以下財産評価基本通達に詳しく書いてあります。ご興味のある方はご覧くださるとよいですが,いずれにしろ大変ややこしいですね。しかし公社債については券面額でおよその価値が分かりますから,詳細をご自分で試算する必要は乏しいと思います。
いずれにしろ,申告そのものは相続税専門の税理士に依頼することになるでしょう。お知り合いがいなければ,明徳司法書士事務所に相談してください。
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