祖父母は死ぬ間際ボケてしまって,亡くなったときに遺言書もなかったので,おかげで両親は相続問題で苦労したと話していました。で,そんな両親も隠居してもう長いです。元気だと思っていたけど,最近何やら忘れっぽい様子です。体も小さくなってきました。両親は仕事を頑張ってきたので,家や預貯金など一定の財産を持っています。そう,両親が祖父母の遺産相続で揉めたように,このままいったら私も同じことになりやしないかしらと思うようになったんです。両親は,「俺たちはいつか遺言書を書かないとな」と昔から言っていますが,いっこうに進める気配がなく少し不安になってきました。両親にお願いして遺言書を作ってもらったほうがいいでしょうか。まかせっきりだと進まないので,私が司法書士さんなどに電話して,一緒に相談にいったほうがいいでしょうか。教えてください。
はい,分かりました。私は,遺言書作成などの遺産相続の相談は,あなたも両親と一緒に行ったほうがいいと思います。いやむしろ,あなたが主導して,司法書士事務所への相談予約を進めてください。それがいいです。その理由について,私の考えるところを述べます。
尻を叩いて進めることができる
あなたはおっしゃいましたね?「いっこうに進める気配がなく少し不安」「まかせっきりだと進まない」のだと。そのとおりですね。遺言書を書くというのは,自分の死後のことを決めるわけで,どうしても遺言書=死のイメージが付きまといます。戦後時代の武士じゃあるまいし,現代社会では,やっぱり死は避けたいことだと思われています。なので,どうしても両親は自分から進んで遺言書について相談しよう,遺言書を書こうとは思わないんですね。生前に墓を準備する人が少ないのと同じです。
そのようなことですから,両親に任せていると,いつまでも遺言書の作成ができないで,気が付くとボケてしまって,遺言書の作成が法律的・能力的・物理的に不可能になりかねません。なので,あなたが主導して,いっしょに相談に行こうと持ちかけることで,物事を前に進めることができるんです。
両親を遺言書の作成に誘う際は,次のようなことを伝えてあげるとより話が進みやすいでしょう。
- 私が遺言書作成のお金(作成費用)を出してあげるから相談に行こう。
- 財産が少なくても揉めるからお願い。相続人全員の実印と印鑑証明がないと相続手続きできないよ。
- 遺言書は何回でも書き直しできるんだって。一回作ったらおしまいじゃないんだって。
- ちゃんと書けば,遺言書で手書きでもできるらしいよ。相談だけでも行こう。
- いま元気でも「ボケたら」書けないよ。それからでは遅いんだって。「元気なうちにしか」遺言書は作れないよ。
親の財産を把握できる
遺言書による相続か,普通の法定相続かを問わず,相続手続で一番?重要なのは,まずもって遺産・相続財産・遺言財産を把握することです。財産があるのかないのか,あるとしたらどういう種類の財産がどこにあるのか,そういうことが分からないと相続処理ができません。長いこと放置した休眠預金は国に取られてしまうかもしれないですよ?
それはいいとして,現在の日本の社会制度では,ある人が亡くなった場合に,その人の持っているすべての財産を一括して調べたり,開示してくれるような仕組みも役所もありません。不動産なら法務局,預貯金なら民間の各金融機関にそれぞれ当たらないと,あっちのほうから勝手にお知らせをくれることはありません(亡くなったことを知らずに取引報告書等が来るのを除く)。なので,とにかく,いまのうちに両親の財産についてある程度把握していることが大事なんです。
両親と一緒に司法書士事務所に遺言書作成の相談に行けば,次のとおりの理由で,両親のおよその財産を把握することができるでしょう。
- 司法書士が,両親に対して,財産はどんなものがあるか,遺言書の内容をどうするかなど,詳しく聞き取りを行うので,その話を聞いていればおよその財産が分かるから。
- じっさいに遺言書を作成する際は,自筆証書遺言であれ公正証書遺言であれ,おそらく受遺者となるあなたが遺言書を見る機会があるので,それを見ればおよその財産が分かるから。
あなたも司法書士に法的なことを聞いておける
両親といっしょにあなたも司法書士事務所に行けば,両親が分からないことのほか,あなたが法律的に分からないことを司法書士にしっかり確認して理解しておくことができます。
法律的な問題や手続きは実に厳密で,一つ事実が違うと結果が全然異なることはままあります。親に聞いたら「大丈夫,こうなるよ」と言っていても,実は重要な事実を聞き漏らしていて,早合点していることもあります。また遺言書を作る両親は比較的高齢なので,言い方は悪いが頭がぼーっとしていて,ちゃんと相談した内容を理解したり記憶したりできていない可能性もあります。
なので,あなたも一緒に司法書士事務所に相談に行って,法律関係を正しく理解し,また両親との間でその正しい理解を共通にしておくといいでしょう。
親の気持ちがわかって絆が深まる
親子関係は人それぞれ,家庭によってまちまちですが,日本人はシャイなので,常日頃あんまり腹を割って話をする機会はないのでは?また経済的なこと,お金のことをおおっぴらに話すのははしたないという常識が通用しているので,あなたのほうからあんまり直截的に両親に財産や資産のことを聞いたこともないでしょう。
ところで,お金のことはお金のこと,親子の絆は親子の絆とそうそう簡単に割り切れるものではありません。現代の人間にとってお金や資産はとても大切なので,そんな話をするときにこそ,人間の本当に考えていることや,お互いをどのように思っているのか,などということが垣間見えたりします。
遺言書を書いてほしい,一緒に相談に行ってほしい,そのように誘い掛けることで,あなたと両親の人間関係や信頼関係がどの程度のものなのか推測できるかも??「では早速!」という話になって絆を深めるのもよし,「やっぱりもうちょっと考えるわ,後にするわ」と言われて落ち込むもよしです。後者の場合にはもうちょっと親孝行に努力されてはいかがでしょうか(笑)。
執行のときに話がスムーズ
これは当然のこととしてお分かりでしょうが,遺言書は書いてもらっただけでは意味がない。両親に不幸があった後,その遺言書を使って,適正迅速に財産の相続手続・承継手続ができなければならない。むしろそのためにこそ遺言書があるんです。
自筆証書遺言であれば,まずもって遺言書を発見しないといけない。発見できなければ遺言書はないも同じです。遺言書を手元に確保したら,家庭裁判所に検認手続を申し立てます。
それが終わったら,財産の種別ごとに,それを管理管轄している役所や民間事業者に申請を出して,相続手続をしていきます。それには,戸籍謄本をはじめとして,いろんな必要書類を準備する必要があるでしょう。それもこれも,どんな遺言財産があるかによって変わりますが。
その相続財産,遺言財産は,両親が書き,作成してもらった遺言書でスムーズに手続きできるでしょうか?遺言執行者は指定してある?指定していなくても手続きができる??よく分かりませんよね。そんなの遺言書があれば簡単だろ?と思われる方は素人です。それほど単純ではないんですよ,,,
あなたが両親と一緒に司法書士に遺言書作成の相談に行ってそのあたりを詰めておきましょう。司法書士は専門家なので,あなたや両親の疑問や不安な点をクリアにする遺言書をきっと作成してくれますよ。やはり,両親に遺言書を書いてもらうには,あなたも一緒に相談に行ったほうがよさそうです。
勇気を出して話をしてみてください。
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