相続大全集

遺留分がいらないときに遺留分を放棄する方法について説明します

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遺留分の放棄

私は次男です。私には兄が一人だけいます。田舎に両親がいます。私は東京で仕事をしていますが,長男である兄は地元で家業を手伝っていて,将来家業を継いで二代目の社長になる予定です。といっても,小さな同族の自営業なんですが,,父もそろそろ引退を考えているらしく,兄に会社を譲るつもりらしいのですが,財産を生前贈与すると贈与税が高いので,遺言で兄に相続させたいようです。それで,,今般実家から連絡があり,「兄に遺言するからお前は遺留分を放棄してほしい」と言われました。東京に出て自分のやりたいようにやらせてもらっている身なので協力したいんですが,遺留分というのは放棄できるんですか?遺留分は相続人に最低限保障されてる持分だと聞いたことがあるんですが放棄なんてできるんでしょうか?

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

おっしゃるとおり遺留分は,将来相続が期待される遺留分権利者に最低限保障さる取り分です。そもそも相続制度というのは,遺族の今後の生活保障等のために存在しています。そうすると,相続人は,将来相続によってその生活保障を受けられるという期待を持つのが自然であり,ならば被相続人の遺言によってその権利を全部奪ってしまうのは酷だと考えられるので,遺留分という形で一定の保護をしているのです。

だとすると

遺留分権利者であるあなた自身が,「そんな期待権はいらない」「最低保障など必要ない」というのであれば,遺留分権利者であるあなた自身の意思表示で,遺留分を放棄することができるはずです。

もっとも

現在あなたが確かにそのように考えていたとしても,これから何があるか分からない。今後あなたの経済状態が悪化して,1円のお金でも欲しいと思うようになるかもしれない。これから心変わりして,兄が全部相続するのは許せないと考えるようになるかもしれない。

そのときに,「あ,遺留分放棄しなければよかったな」と後悔しても取り返しがつかない。生活が成り立たないと,お国に援助を求めたり,生活保護を受けないといけなくなるかもしれない。国としては,それはそれで困る。

なので,法律は次のように決めています。

民法1043条  相続の開始前における遺留分の放棄は,家庭裁判所の許可を受けたときに限り,その効力を生ずる。
2  共同相続人の一人のした遺留分の放棄は,他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。

許可ですよ。届け出ではないです。裁判所が認めてくれないと放棄できないということ。裁判所は,あえて遺留分を前もって放棄する理由や必要性があるのか,その意思は確かか,そしてあなたが将来生活に困るようなことがないのか等を総合的に検討して許可するかどうかを決定します。

結論(ご質問に対する答え)

  • あなたが生前に遺留分を放棄するには,家庭裁判所の許可が必要
  • 相続の開始後,父の死後,遺留分を放棄するのは自由

あなたが今すぐ遺留分を放棄したいなら,実家の所在地を管轄する家庭裁判所に申立書と添付書類を提出して,遺留分放棄の許可審判を受けないといけません。そこまでしてあげたほうがいいのかどうか,本当にそれでいいか,あなた自身で考えて決めてください。

参考

  • そもそも遺留分というのは,父親の死後,あなたが,兄に対して,遺留分減殺請求権を行使しないと実現しないもの(形成権)です。あなたが何も言わなければ,父の遺言はそのとおりになるのです。そのへんも踏まえてご判断ください。
  • 遺留分を放棄しても,相続権は残ります。相続放棄したことにはなりません。
  • 対して,相続開始後,家庭裁判所で相続放棄をすると,遺留分もなくなります。遺留分とは,法定相続人の地位に付随するものだからです。
  • ちなみに生前に相続放棄することはできません。

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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