相続大全集

財産以外のことがいろいろ書いてあった遺言書の効力について説明します

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遺言事項以外の遺言

父親が亡くなって自筆証書遺言が出てきたんです。遺言書にはこんなことがいっぱい書いてあったんです。ちょっと抜粋してみます。

  • 結婚するなら公務員としなさい。金貸しとだけはするな。
  • 孫はあんまり勉強しろと言わないで伸び伸び育ててくれ。学校は公立でいい。
  • 孫に贅沢はさせるな。小遣いは高校卒業までやらなくていい。
  • 床の間の絵は大変いいものだから大事にしてくれ。処分せずに代々大事にしてくれ。
  • 近所の人と仲良くしなさい。ただし3班の田中さんはケチでプライドが高いので口を利かなくていい。
  • お隣の鈴木さんの桜の木から虫が落ちてくるのが気になっている。お前たちから桜の木を切ってもらうようにお願いしなさい。
  • 俺が死んだら,葬式で一緒に入れておいた手紙を読んでくれ。
    などなど

これ,そのとおりにしないといけないんですか?もちろん財産のことも書いてあって,家とか預貯金とか,誰が相続してくれと決められてるんですが,そこに不満はないんです。そこはいいんですけど,上に書いたようなことまで,そのとおりに守らないといけないんですか?

遺言書にいろんなことを書く方がいます。両親の遺言書を見てみたら,納得できることから納得いかないことまで,いろんなことを書き残しておられる人がまれにあります。遺言書は,書いてあること一言一句,すみずみまでそのとおりにしないといけないのか。そのとおりにしないと財産を受け取ることもできないのか,そのあたりについて説明します。

ほかでもお話しているとおり遺言といのは要式行為で,法律に決まっているとおりにしないと効力がありません。具体的には,遺言書は,

  1. 遺言能力ある人が
  2. 一定の方式にしたがって
  3. 遺言事項について

しないと(書かないと)無効です。

逆に言うと,

  1. 遺言能力ある人が
  2. 一定の方式にしたがって
  3. 遺言事項について

した(書いた)遺言書は有効です。

  • さて遺言能力とは遺言書を書く(作成する)ことができる人はどんな人かという問題です。
  • 一定の方式というのは,自分で書く自筆証書や,公証人役場で作成する公正証書という遺言書の種類ごとに,なにをどうすればいいかという具体的な手順が決まっているそのことです。

この部分は今はよしとしましょう。父親が,自筆証書遺言の方式どおりに,ちゃんと遺言書を自署したという前提にします。本件では最後の要件,遺言事項のところが問題です。

遺言事項とは?

遺言事項というのは,遺言書に書いて法的効力が認められる事柄のことです。遺言書には何でも書けますが,そのうち法的効力が認められるのは,「遺言書に書くと法的効力があるよ」と法律に書いてあることだけです。つまり,遺言事項以外の事柄(が書いてある部分)については遺言書としての法的効力が認められないのです。

法的効力が認められないとはどういうことか?無意味ということか?そうです。法的には無意味です。あくまで「法的には」「遺言書としては」無意味な事柄になります。なので,遺言事項以外の事柄が遺言書に書いてあっても,そのとおりする必要はありません。あくまで父親が,便宜,遺言が書かれた同じ紙の一部を使って,あなたに「お手紙」を書いていると考えればよいです。父親の想い,考え,願いを伝えるお手紙として受け止めれば宜しいです。そのとおりにしてあげるかどうかはあなた次第。

※もっとも,遺言事項以外の事柄が,財産を相続する条件となっていたり,負担付遺贈の負担となっていたりすれば話は別です。ややこしいのでここでは詳しいことは割愛します。

遺言事項のリスト(遺言事項の内容)

では,「遺言書」と「お手紙」を分ける分水嶺である「遺言事項」にはどんなものがあるか見ておきます。遺言事項が何かを知っておくことが大事です。遺言事項は,およそ,財産に関すること,戸籍上の身分等に関すること,遺言の執行に関することに分類できます。

財産の取り分や処分方法に関すること

身分や宗教に関すること

遺言書そのものに関すること

  • 遺言執行者の指定,指定の委託(民法1006条)
  • 遺言の取消し(同1022条)

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