法律用語集

家(いえ)

一つの戸籍に登録されている親族の団体のことです。昭和22年に民法が改正され、戦後民法ができるまでは、この家というものが重要視されていました。家にはその統率者・管理者として戸主がいて、家の財産管理権とともに、結婚などの同意権や居場所の指定権といった絶大な権力をもっていました。戸主が亡くなると、戸主の地位は、家督相続という制度によって承継され、家が継続していきました。

遺骨(いこつ)

故人の骨のことですが、法律的にこれをどう扱ったらいいのかについて争いがあります。まずこれが法律上の「物(ぶつ)」にあたるかどうかという問題です。「物(ぶつ)」にあたれば、人間が管理する権利の対象になります。次にこれが、「所有権」の対象になるかという問題です。「所有権」の対象になれば、遺骨について、所有権の権利の内容である使用・収益・処分がすべてできるという結論になります。そして、「相続」の対象になるかどうかという問題もあります。「相続」の対象になるかどうかという問題は、遺骨が「物」かどうか、「所有権」の対象になるかということとも関係します。これらの問題は、遺骨を、誰がどのように扱っていくのかということを考えるうえで重要です。

遺言(いごん)

遺言とは、遺言者の死亡によって一定の法律効果を生じる人の最終の意思表示です。法律的には、「相手方のない単独行為」という法律行為に分類されます。遺言は、遺言能力のある人が、一定の方式にしたがってしなければ効力が認められない要式行為です。また、遺言をして法的効力が認められる内容(財産の処分や一定の身分行為)は法律によって限定されており、これを遺言事項といいます。

遺言事項(いごんじこう)

遺言書に書いておくと法的効力が認められる事柄のことです。民法に定められています。遺言事項以外の事柄には法的効力が認められません(遺訓としての効果は別として)。遺言事項を分類すると次のとおりになります。

1 法定相続の修正
相続人の廃除と取消し、相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺産分割禁止など
2 相続以外の財産処分
遺贈、財団法人の寄附行為、信託設定など
3 身分関係
認知、未成年後見人指定など
4 遺言執行関係
遺言執行者指定など

遺言執行者(いごんしっこうしゃ)

遺言書の内容を執行して、手続きをする担当者のことです。法律上遺言執行者は、「相続人の代理人」とみなされます。認知、相続人廃除、遺贈、寄附行為などのように、必ず遺言執行者が担当しないといけない職務を行うほか、相続人に代わって、財産の相続手続を行ったりします。遺言執行者は、遺言書で指定されていればその人がなり、なければ家庭裁判所が選びます。

遺言書(いごんしょ)

遺言とは、遺言者の死亡によって一定の法律効果を生じる人の最終の意思表示ですが、遺言書とは、それを紙に書いた書面のことです。遺言書は要式行為といって、法律に定めた方式にしたがってしないと効力がありません。つまり無効になります。日本の場合、特殊の場合を除いて口頭による遺言は認められていないので、遺言は、通常、遺言書という書面を作成してすることになります。自筆証書遺言、公正証書遺言など、すべて遺言書という書面を作成します。

遺言書の検認(いごんしょのけんにん)

遺言書を家庭裁判所に提出して形式や態様のチェックを受け、遺言書の偽造変造などを防ごうとする制度です。公正証書遺言以外の方式の遺言書の保管者は、相続の開始を知った後遅滞なく、遺言書を家庭裁判所に提出して検認を請求しないといけません。検認の手続きをしていない遺言書は執行をすることができません。遺言書の方式でよく使われるのは自筆証書遺言と公正証書遺言ですが、自筆証書遺言はこの検認手続が必要で、公正証書遺言は不要です。公証人という法律家が作成しているので形式が確かですし、公証人役場に記録があるので偽造変造されないからです。

遺言書の開封(いごんしょのかいふう)

遺言書に封がしている場合に、封を解いて、遺言書の内容を確認閲覧できる状態にすることです。封印のある遺言書は、家庭裁判所で、相続人又はその代理人の立合いをもってしなければ開封することがでいないと民法に定められています。法律に違反すると、5万円以下の過料に処せられます。

遺言信託(いごんしんたく)

本来は遺言書により信託を設定することを言いますが、よく用いられているのはこれではなく、遺言書の作成、保管、執行をしてくれる信託銀行のサービスのほうです。これは、信託契約とは関係がありません。信託銀行が行う遺言書関係の一サービスです。信託銀行の遺言信託は、高額な手数料がかかるうえ、実際の手続きは弁護士事務所や司法書士事務所に取り次いだりします。この場合、弁護士報酬、司法書士報酬は別にかかります。

遺言相続(いごんそうぞく)

遺言によって行われる相続のことです。法定相続ではない相続です。民法は、遺言相続を法定相続に優先させています。例えば、遺言書で、「遺産をある相続人に相続させると」決めれば、基本的にはそのとおりに相続されます。民法は、故人の意思を一番に大切にしているのです。遺言書がない場合の相続が、補充的に、法律に書いてあると考えるとよいでしょう。

遺言能力(いごんのうりょく)

法律上有効に遺言をすることができる能力のことです。民法にはいろいろな能力の基準があります。一つは「意思能力」。これは、自分が何をやっているか判断できる能力のことです。「行為能力」というのもあります。これは、自分がやった法律行為を確実に法的に有効にできる能力のことです。例えば未成年者が親の同意を得ずにした行為は取り消すことができますので、未成年者には「行為能力」がないといえます。単独で、完全に有効な行為がでいないからです。「遺言能力」については、民法に、満15才にならないと遺言できないと書いてありますので、それが一つの要件です。また、「意思能力」も当然に備えていなければいけないとされます(分かっていない人の行為を認めるわけにはいかないから)。「行為能力」は必ずしも必要ではありません。

遺言の執行(いごんのしっこう)

遺言書に書いてある内容を、具体的に実現することです。遺言の執行を担当する人のことを遺言執行者といいます。例えば、遺言で認知をすることができますが、この場合戸籍の届出をするという執行行為が必要です。遺言で相続人廃除がされていれば、家庭裁判所に申立をして、廃除の審判を得る手続きが必要です。遺産の遺贈があれば、その遺産を受遺者に引き渡す行為も必要です。このような行為のことを、遺言の執行といいます。なお遺言の執行者は遺言書で指定することができます。いなければ、家庭裁判所が選びます。

遺言の証人(いごんのしょうにん)

自分で書く自筆証書遺言には証人は必要ありませんが、公証人役場で作成する公正証書遺言などでは証人が必要です。遺言の証人とは、遺言をする人に人違いがないとか、遺言が真意にもとづいているとかということを確認して証する人のことです。遺言の証人には誰でもなれるわけではありません。遺言の証人になれない人が、民法に定められています。次のような人です。未成年者のほかは、遺言の利害関係者です。

1 未成年者
2 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
3 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

遺産(いさん)

故人が遺した相続される財産のことで、相続財産とほぼ同じ意味です。厳密には、「故人の側」から見た、相続の対象になる財産の「全部」をいうとされています。相続人の側から見たものを相続財産といいます。

遺産共有(いさんきょうゆう)

ある人が亡くなって、相続が開始し、遺産分けの遺産分割が終わるまでの間の、共同相続人の遺産の共有状態のことです。遺産共有は、あとから遺産分割をするまでの過渡的な状態ですから、各相続人の持ち分の処分などについて、遺産相続とは関係ない通常の共有状態と同じく取り扱っていいかどうかが問題になります。遺産が「物(ぶつ)」なのか、「債権」なのか(債権としてもどんな債権なのか)、「債務」なのかによっていろんな検討が必要です。

遺産整理(いさんせいり)

遺産の相続手続一式をひとまとめにして、相続人に代わって、これを代行する法的サービスのことです。司法書士や信託銀行などが行います。相続が開始して、一定の財産がある場合、財産の種類ごとに相続手続きをしなければいけません。不動産は法務局へ申請、預貯金はそれぞれ個別の金融機関に、株式は証券会社等にという具合です。またその前提として、戸籍をたくさん集めたり、財産目録を作ったり、遺産分けの遺産分割協議書を作ったりすることも必要です。これらは大変面倒で、時間がかかり、法律知識もいるため、司法書士などに任せることによって、相続人の負担が大きく軽減します。

遺産相続(いさんそうぞく)

現在日本で行われている相続はすべて遺産相続です。民法にも、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」を書かれているとおりです。つまり、相続とは、遺産(財産)面だけの相続なのです。これに対するのが、「家督相続」です。家督相続とは、「家」の相続であって、家の統率者である「戸主」の地位の相続です。家督相続は、財産(家産)の相続もすべて含まれる、総合的な地位(家)の承継ですが、昭和22年の戦後民法によって家制度が廃止されたので家督相続もなくなりました。

遺産評価(いさんひょうか)

遺産の価値を金銭的に評価することです。相続人が複数いる場合、遺産分けの遺産分割協議をする場合でも、話し合いができずに裁判所で遺産分割審判等をする場合でも、遺産の価値を金銭的に評価しないと、正しく相続人に分配することができません。遺産の評価には、遺産評価の基準時の問題と、遺産評価の方法の問題があります。基準時の問題とは、日々価値がかわっていく遺産の評価をいつの時点でするかということです。方法の問題とは、金銭以外の遺産には評価方法がいくつかありますので、どういう方法を使って評価するのかということです。

遺産評価の基準時(いさんひょうかのきじゅんじ)

遺産分けの遺産分割の前提として、遺産の評価が必要ですが、日々価値がかわっていく遺産の評価を、どの時点でもってするのかという問題のことです。遺産評価の基準時の問題は、さらに二つに分かれます。一つは、相続分(具体的相続分)を算定するための遺産評価の基準時です。これは、過去にあった特別受益(生前贈与)や寄与分(出資など)の価値を今どう評価するのかということです。もう一つは、まさに相続が開始して遺産分割をする際の基準時です。相続が開始してから遺産分割をするまでに通常時間がかかりますので、この間の価値の変動をどう考えるのかという問題です。

遺産分割(いさんぶんかつ)

相続人が複数いる場合に、その共同相続人間で遺産分けを行うことです。遺産分けのことを遺産分割といいます。遺産分割は普通相続人で話し合いをして決めます。決めたら遺産分割協議書を作ります。揉めたら家庭裁判所で調停や審判をして決めます。話し合いや調停でするときは、遺産が偏ってもかまいませんが、家庭裁判所の審判でするときは、遺産分けの結果は、法定相続分のとおりになります。

遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)

相続人が複数いる共同相続の場合には,遺産分けのために遺産分割協議という話合いをしますが,その結果を記録した文書が遺産分割協議書です。相続人が1人のときは遺産分割協議書は不要です。遺産分割協議書は,不動産の相続登記や預貯金の相続手続をするときに,法務局や金融機関から提出を求められますので,必ず作成しなければいけません。遺産分割協議書には,相続人全員が署名(記名)して,実印を押印し,印鑑証明書とセットにしておきます。

遺産分割審判(いさんぶんかつしんぱん)

遺産分割審判とは,遺産分割の内容を決める家庭裁判所の裁判のことです。共同相続人で遺産分けの遺産分割協議をしたが話合いがまとまらなかった場合,家庭裁判所が遺産分けの内容を決めてくれます。審判というのは,裁判官が決めてくれるという意味です。遺産分割審判を利用するには,家庭裁判所に申立書を提出して,請求します。遺産分割協議による遺産分けをする場合,相続人が納得すれば,法定相続分のとおりに分けなくてもかまいませんが,遺産分割審判による遺産分けは,法律で決められた相続分のとおりになります。なお,通常は,遺産分割審判をする前に,遺産分割調停とう裁判所での話し合いをします。これがまとまれば,審判をする必要はありません。

遺産分割調停(いさんぶんかつちょうてい)

遺産分けの遺産分割協議の話合いがまとまらない場合に,家庭裁判所でする遺産分割の話合いのことです。共同相続人で遺産分けの遺産分割協議をしたが話合いがまとまらなかった場合に,そのままでは相続手続が前に進まないので,家庭裁判所に話を持っていきます。家庭裁判所では,遺産分けについて,遺産分割審判と遺産分割調停という手続が利用できます。遺産分割審判とは裁判所が決めてくれる裁判のこと。遺産分割調停とは裁判所でする相続人の話合いのことです。通常,遺産分割調停を先にします。遺産分割調停は,調停委員が仲介して話合いをします。話がまとまれば,調停調書という文書を作って,遺産分けの内容を確定させます。

遺産分割の遡及効(いさんぶんかつのそきゅうこう)

相続人が複数いる場合,共同相続人が遺産分けの遺産分割をしますが,遺産分割の効力は,相続の開始時点(死亡時)に遡って生じます。例えば,相続人が3人いて,不動産をAさんが相続する遺産分割協議が成立した場合,その不動産は,相続開始時点(死亡時)で,直ちに,Aさんが相続していたことになります。

遺産分割の態様(いさんぶんかつのたいよう)

遺産分割の態様とは,共同相続人の間で,具体的にどのように遺産分けをするかということです。遺産分割の内容と同じ程度の意味です。遺産分割の態様には,「現物分割」,「換価分割」,「代償分割」の三つがあります。「現物分割」とは,遺産の現物をまさに複数に分割して遺産分けをすることです。「換価分割」とは,遺産を売却してその代金を分けることです。「代償分割」とは,遺産を特定の人が相続するかわりに,その人から他の人に代償金を支払うやり方です。遺産の種類や状況に応じて,遺産分割の態様を使い分けます。

遺産分割の方法(いさんぶんかつのほうほう)

遺産分割の方法とは,話合いでするのか,家庭裁判所でするのかというような,遺産分けの手続の種類のことです。遺産分けの内容をどうするかという遺産分割の態様(内容)とは区別されます。遺産分割の方法には,「指定分割」,「協議分割」,「調停分割」,「審判分割」の四つがあります。「指定分割」とは,被相続人が遺言で決めている場合です。「協議分割」とは,共同相続人で話合いをすることです。「調停分割」とは,家庭裁判所で,調停委員の仲介のもと,話合いをすることです。「審判分割」とは,家庭裁判所の裁判官に裁判で決めてもらうことです。通常,優先順位は,「指定分割」→「協議分割」→「調停分割」→「審判分割」のとおりになります。

遺産分割方法の指定(いさんぶんかつほうほうのしてい)

被相続人が,遺言で,遺産分割の内容を決めることです。例えば,遺言書に,「Aには不動産を,Bには預貯金を,Cには株式を,それぞれ相続させる」と書いてある場合,これは遺産分割の方法の指定があったものと解釈されます。この方法による遺産分割を,「指定分割」といい,共同相続人で遺産分割協議をするのと法律的には同じ意味になります。遺産分割方法の指定がった場合,それぞれの遺産は,最初からそのとおり相続したことになります。なお,遺言書に,「Aに2/3,Bに1/3を相続させる」と書いてある場合は,遺産分割方法の指定ではなく,相続分の指定と解釈されますので,AとBは,この相続分にもとづいて遺産分割協議などをする必要があります。

意思能力(いしのうりょく)

自分の行為の結果を認識して弁えることができる能力のことです。法律の世界は,判断能力のある人間が,自分の意思で,権利や義務という法律関係を発生させるが故に,それらに法的拘束力があるという私的自治の原則(自分で決めたから守る)に立っているので,意思能力がない者のした行為は無効になります。一般的には,幼児,泥酔者,高度の認知症患者には意思能力がないとされます。このような,私法上の能力基準には次のようなものがあります。

○権利能力 権利や義務の主体になりうる能力。法律上人といえるかどうか
○意思能力 以上のとおり。事理弁識能力
○行為能力 行為の結果を確定的に有効にする能力。未成年者などは行為能力がない。
○遺言能力 有効に遺言をする能力。満15歳であることと,意思能力があること
○訴訟能力 有効に訴訟行為をする能力。未成年者などは訴訟能力がない。

遺贈(いぞう)

遺言で遺産の全部又は一部を譲渡することです。無償でもいいし,負担付でもかまいません。遺贈には,特定の遺産を譲渡する「特定遺贈」と,遺産の全部又は割合的一部(1/2,1/3,,)を譲渡する「包括遺贈」があります。包括遺贈は限りなく相続に似ているので,包括受遺者(包括遺贈で遺産の譲渡を受ける人)は,相続人と同一の権利義務をもつとされ,相続の承認放棄,相続放棄,遺産分割などについて,相続人と同一の取扱いを受けます。

遺贈義務者(いぞうぎむしゃ)

遺言で特定の財産を譲渡する特定遺贈があった場合に,特定受遺者(特定遺贈で遺産の譲渡を受ける人)に対して,遺言の内容のとおりの遺産の引渡し等を実行する義務を負う者のことです。通常は,相続人が遺贈義務者になります。包括受遺者も相続人に含まれます。ただし,遺言執行者がいるときは,遺言施行者が相続人に代わって遺贈義務者になります。

遺族給付(いぞくきゅうふ)

1 公務員や会社員などで公的年金制度に加入している組合員が死亡したとき,その遺族に支給される年金や一時金のことです。
2 また,労働者災害補償保険法にもとづいて,通勤災害の遺族に支給される保険給付を指すこともあります。なお,業務災害による保険給付を遺族補償給付といいます。

遺族年金(いぞくねんきん)

1 国民年金保険法や厚生年金保険法にもとづいて,被保険者などが死亡したときに,その遺族に支給される年金給付のことです。遺族基礎年金,遺族厚生年金があります。
2 公務員等については,各種の共済組合法にもとづいて,組合員が死亡したときに,その遺族に対して遺族共済年金が支給されます。
3 また,労働者災害補償保険法にもとづいて,通勤災害の遺族に支給される保険給付の一種を指すこともあります。

一身専属権(いっしんせんぞくけん)

特定の人だけが持つことができたり,使ったりすることができる権利のことです。その人の一身に専属した権利のことをいいます。特定の人だけが持つことができる一身専属権を,「帰属上の一身専属権」といい,特定の人だけが使うことができる一身専属権を,
「行使上の一身専属権」といいます。民法は,相続について,「相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし,被相続人の一身に専属したものは,この限りでない」と定めていますので,一身専属権は相続の対象になりません。

一般隔絶地遺言(伝染病隔離者遺言)(いっぱんかくぜつちいごん(でんせんびょうかくりしゃいごん))

特別方式の遺言のうち,伝染病のため行政処分によって交通を絶たれた場所にある者がすることができる遺言です。警察官1人と証人1人の立会いが必要です。伝染病ではなく,刑務所の服役囚もこの方式で遺言ができるとされています。
なお,遺言の方式は以下のように分類できます。

普通方式
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別方式
危急時遺言
一般危急時遺言(死亡危急者遺言)
難船危急時遺言(船舶遭難者遺言)
隔絶地遺言
一般隔絶地遺言(伝染病隔離者遺言)
船舶隔絶地遺言(在船者遺言)

一般危急時遺言(死亡危急者遺言)(いっぱんききゅうじいごん(しぼうききゅうじゃいごん))

特別方式の遺言のうち,疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者がすることができる遺言です。「一般危急時遺言」は「死亡危急者遺言」ともいいます。証人3人の立会いが必要で,証人に遺言の趣旨を口授して,その証人が書面化します。家庭裁判所の「確認」手続も必要です。
なお,遺言の方式は以下のように分類できます。

普通方式
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別方式
危急時遺言
一般危急時遺言(死亡危急者遺言)
難船危急時遺言(船舶遭難者遺言)
隔絶地遺言
一般隔絶地遺言(伝染病隔離者遺言)
船舶隔絶地遺言(在船者遺言)

一般承継(包括承継)(いっぱんしょうけい(ほうかつしょうけい))

ある人(A)からある人(B)へ,権利義務をまとめて一体として引継ぎ,BがAとまったく同様の地位にたつような権利義務の承継の形式のことです(ただし一身専属権は除く)。相続,包括遺贈,合併などがこれにあたります。これに対して,特定の権利義務だけを承継することを「特定承継」といいます。売買契約による権利の移転などがこれにあたります。

一般定期借地権(いっぱんていきしゃくちけん)

借地借家法が適用される借地契約(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)のうち,存続期間を50年以上として契約されるもののことです。「一般定期借地契約では,契約の更新,建物の築造による存続期間の延長,建物買取請求権という各権利がないとの特約を付けることができます。借地契約は賃借人の保護が強く,普通の借地契約は期間が満了しても正当理由がなければ契約を終了させることができません(更新される)。しかしすべての借地契約がそのようになると,土地の所有者が土地を貸せなくなって,貸す人にも借りる人も困ることになるので,定期で契約を終了できるパターンが三つ借地借家法に定められています。そのうちの一つがこの一般定期借地権です。

遺品整理(いひんせいり)

人が亡くなったときに,家財道具や生活雑貨といった,遺産のうちでもとくに動産を中心とした物品全般を整理して,相続人に形見分けしたり,廃棄物として処分したりすることです。これに似ている言葉に遺産整理があります。遺産整理とは,遺産のうちでも特に財産的価値のある不動産や債権(預貯金),有価証券といった財産を整理し,財産目録を作成して,遺産分割協議にしたがって各財産の相続手続(名義変更や解約)をおこなう法律手続のことをいいます。身の回りの物品の片付けが遺品整理,財産の相続手続・法律手続が遺産整理です。

遺留分額(いりゅうぶんがく)

兄弟姉妹以外の相続人には法律上最低限の取り分が保障されており,それを遺留分といいますが,遺留分の具体的な額は,法律で決まっている遺留分の算定の基礎となる財産額に,各相続人の遺留分の割合を掛けて計算します。計算式は以下のとおりです。

遺留分算定の基礎となる財産額(相続開始時に被相続人が有していた財産の価格+被相続人が贈与した財産の価格-相続債務全額)×遺留分の割合

※遺留分の割合とは
直径尊属のみが相続人であるときは,被相続人の財産の1/3
その他の場合には,1/2
ただし,共同相続の場合には,各相続人の法定相続分の割合を掛けます。

遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)

遺留分を侵害する贈与や遺贈があったときに,遺留分権利者(及びその承継人)が,自分の遺留分を充たす範囲内で,手元にない財産の返還を請求し,手元にある財産に対する請求を拒否する権利のことです。遺留分減殺請求権は,形成権といって,遺留分権利者が行使する意思表示をすることによって初めて効力が生じます。なお,遺留分減殺請求権は,遺留分権利者が,相続開始の事実と,減殺請求できる贈与や遺贈があったことを知ったときから1年で消滅時効にかかります。また,相続開始のときから10年が経過すると,行使できる権利が消滅します。

遺留分権利者(いりゅうぶんけんりしゃ)

遺留分減殺請求をすることができる権利をもっている人のことです。兄弟姉妹以外の法定相続人がこれにあたります。つまり,配偶者相続人,子の相続人,直系尊属の相続人です。兄弟姉妹の遺産はあてにすべきでない(その必要性も低い)というところから,兄弟姉妹に遺留分は認められていません。すべての法定相続人が遺留分減殺請求権を持っているわけではないことに注意する必要があります。

遺留分放棄(いりゅうぶんほうき)

遺留分減殺請求権を行使する権利を,いらないとして,放棄することです。兄弟姉妹以外の法定相続人が持っている最低の取り分である遺留分は,放棄することができます。相続開始後に遺留分を放棄することは自由にできます。一方相続開始前に遺留分を放棄するには,家庭裁判所の許可を得なければいけません。なお,遺留分を放棄しても,相続人であることに相違ないので,相続関係から完全に離れるには,相続の開始後,別に相続放棄をする必要があります。相続放棄を先にすれば,法定相続人ではなくなるので,当然に,遺留分も失います。

遺留分率(いりゅうぶんりつ)

法律に定められた遺留分権利者の遺留分の割合のことです。遺留分率・遺留分の割合は,直系尊属のみが相続人にになるときは,被相続人の財産の1/3,その他の場合には,被相続人の財産の1/2です。なお,相続人が複数いる共同相続の場合には,これにさらに,各人の法定相続分をかけます。つまり,法定相続分の,1/3とか,1/2とかが,遺留分率になります。

印鑑証明書(いんかんしょうめいしょ)

市町村に登録した印鑑と同一の印影であること,登録した者の住所氏名等を証明した市町村発行の書面のことです。市町村に登録した印鑑を実印といいます。相続手続や不動産の登記手続など重要な法律手続では,申請書面などに実印を押し,印鑑証明書をいっしょにして関係機関に提出する必要があります。なお,会社などの法人の印鑑登録は,市町村ではなく法務局が取り扱っており,印鑑証明書も法務局が発行します。

姻族(いんぞく)

民法上,自己の配偶者の血族と,自己の血族の配偶者を姻族といいます。婚姻関係から生じる法律関係のことで,三親等内の姻族は,親族となると定められています(親族とは,六親等内の血族,三親等内の姻族,そして配偶者のことです)。姻族関係は,婚姻によって当然に生じ,また離婚によって当然に消滅しますが,配偶者が死亡しただけでは姻族関係は消滅しません。この場合姻族関係を終了するには,姻族関係終了の意思表示をする必要があります。

延滞税(えんたいぜい)

国税を納期限までに納めなかった場合に課される遅延利息のことで,付帯税の一種です。延滞税を納めなければいけないのは,以下のような場合です。

・申告などで確定した税額を法定納期限までに完納しないとき
・期限後申告書又は修正申告書を提出した場合で,納付しなければならない税額があるとき
・更正又は決定の処分を受けた場合で,納付しなければならない税額があるとき

延納(えんのう)

相続税や贈与税を一括で支払えない場合に,年払いによる分割を認めてもらう制度です。延納期間は利子税という付帯税を払う必要があります。延納は,以下のような要件を満たしている場合にのみ認められます。

・申告による納付税額が10万円を超えていること
・金銭による一括納付が困難な事情があること
・担保を提供すること(50万円未満,3年以内の延納の場合は不要)

改製原戸籍(かいせいはらこせき)

法律の改正によって戸籍の様式が作り変えられる場合,その作り変えられる前の戸籍のことを改製原戸籍(かいせいはらこせき)といいます。戸籍が改製されると,前の戸籍に記載されていた事項のうち,除籍になったものなどは,新しい戸籍に移されません。戸籍の改製は何度か行われているので,相続手続の際は,改製後の戸籍と,改製原戸籍をすべて集める必要があります。なお,現行戸籍(げんこう戸籍),現戸籍(げんこせき)とまぎらわしいので,原戸籍は,一般に,「はらこせき」と呼ばれています。

隔絶地遺言(かくぜつちいごん)

遺言者が一般社会と交通を絶たれた場所にあるために,普通遺言の方式で遺言できない場合にすることができる特別方式の遺言の一種です。隔絶地遺言には,一般隔絶地遺言(伝染病隔離者遺言)と,船舶隔絶地遺言(在船者遺言)とがあります。隔絶地遺言や危急時遺言といった特別方式の遺言は,遺言者が,普通方式による遺言ができるようになってから6か月生存するときは無効になります。つまり,普通方式の遺言によってやり直すことが想定されている臨時の遺言です。
なお,遺言の方式は以下のように分類できます。

普通方式
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別方式
危急時遺言
一般危急時遺言(死亡危急者遺言)
難船危急時遺言(船舶遭難者遺言)
隔絶地遺言
一般隔絶地遺言(伝染病隔離者遺言)
船舶隔絶地遺言(在船者遺言)

貸金債権(かしきんさいけん)

お金を貸し借りする契約(金銭消費貸借契約)によってお金を貸した人が,借りた人に対して持っている,お金を返してもらう請求権のことです。貸金債権も,一つの財産権ですので,相続や譲渡の対象になります。

貸宅地(かしたくち)

民法上は,賃貸借契約又は使用貸借契約にもとづいて他人に貸している住宅用の土地のことです。相続税法上は,借地権など(借地権,地上権,区分地上権,区分地上権に準ずる地役権),宅地の上に存する権利の目的となっている宅地のことをいい,自分が使っている自用地とは異なった評価を受けます。つまり,自分で使っている土地ではなく,他人の権利がついていて自分の権利が制限されているので,自分で使っている土地よりも低く評価されるわけです。具体的な評価は,宅地上に存在する権利の種類ごとに計算方法が決まっています。

家事審判(かじしんぱん)

家庭に関する事件について,家事事件手続法にもとづき,家庭裁判所が行う審判(裁判)のことです。家事審判は,家事事件手続法別表第1に掲げる事件(子の氏の変更,相続放棄,後見人選任といった一般に当事者の対立構造のない事件)と,同第2に掲げる事件(親権者の変更,養育料の請求,婚姻費用の分担,遺産分割といった対立構造のある事件)について行われます。家事審判を利用するには,書面で家庭裁判所に申立てをします。申立てをすると,裁判官が,当事者の提出した資料や家庭裁判所調査官の調査をもとに決定をします。不服があれば二週間内に再審理の申立てをします。なお,相手方に支払いを求める審判などには執行力(審判書があれば強制執行ができる効力)があります。

家事事件(かじじけん)

家庭に関する事件のことです。家庭に関する事件の解決には,当事者の感情やプライバシーに配慮することが求められるため,一般の訴訟事件とは異なる特別の紛争解決の手続が用意されています。家事事件は,公開法廷で,当事者が事実関係の存否を争い,裁判所がこれに法律の適用のみを行う一般の訴訟事件(いわば,当事者の喧嘩に任せる)とは違います。家事事件は,非公開で,裁判所が後見的見地に立って,職権主義で裁判(いわば,裁判所がおせっかいをやく)をします。具体的な手続は,民事訴訟法ではなく,家事事件手続法によって行います。家事事件手続法には,家事調停と,家事審判の手続が定められています。

家事調停(かじちょうてい)

家事事件手続法に定められている紛争解決手続きの一つです(もう一つは家事審判)。家庭に関する事件について,家庭裁判所でする話合いです。家事調停員が仲介をしてくれます。家事調停を利用することができるのは,人事に関する訴訟事件(人事訴訟法が定めている離婚事件など)のほか,家事事件手続法別表第2(親権者の変更,養育料の請求,婚姻費用の分担,遺産分割といった対立構造のある事件)に定められた事件などです。なお,これらの事件について「訴訟」(たとえば離婚訴訟など)を起こすときは,前もって,家事調停の手続をしなければいけません。調停が成立しないときにはじめて訴訟ができます。これを「調停前置主義(ちょうていぜんちしゅぎ)」といいます。訴訟の前に,今一度話合いによる解決ができないか試すためです。

貸付事業用宅地(かしつけじぎょうようたくち)

相続税法で用いられる言葉であり,相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(いわゆる「小規模宅地等の特例(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」)の対象の一つで,相続税の課税価額の大幅な軽減が受けられる土地のことです。具体的には,相続開始の直前において被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等であって,さらに細かい要件を満たしたものがこれにあたります。小規模な宅地や,事業用の資産について,相続税の負担を軽減したり免除したりして,住宅の引継ぎや事業の代替わりをしやすくしています。

貸家建付地(かしやたてつけち)

相続税法上,貸家が建っている土地,つまり自分の土地に,自分の所有名義の家屋を建てて,その家屋を建物賃貸借契約により貸し出している場合における,その建物が建っている土地のことです。貸家建付地は,貸宅地と同じように,所有者による土地の利用が制限されていますので,相続税の評価が低めに計算されます。

課税価格(かぜいかかく)

課税物件の金額や価格をもとに計算される税(従価税)について,その課税標準(課税物件の税額を計算するために,課税物件を金額・価額・数量等を表現したもの)と同じ意味で用いられる言葉です。金額や価格をもとに計算される租税について,税率を乗ずる直前の価格のことです。

家族(かぞく)

一般的には,住まいを同じくする親族集団や血族集団のこと又は直系親族を中心とする単家族など,生活関係を同じくする血縁中心の小規模共同体のことを指します。様々な用途に用いられる言葉で,法律上も(法律用語としても),使用されるケースによって,その指し示す親族の範囲は変わるようです。ところで,昭和22年改正前の旧民法においては,家族は,「家(いえ)」を構成する要素とされており,「家」は,戸主と家族とから成っていました。旧民法では,戸籍簿上,家として登録されている親族の団体のうち,戸主を除く者のことを家族といいました。

家族法(かぞくほう)

民法第4編の親族法を指して,これと同じ意味でつかわれる言葉です。また,民法第5編の相続法を含めて,民法第4編親族法と民法第5編の相続法の総称として使われることもあります。民法第4編親族法と民法第5編相続法は,これを合わせて「身分法」と呼ばれることもありますので,この意味では,「家族法」と「身分法」は同じ事柄を表すことになります。

家庭裁判所(かていさいばんしょ)

家庭に関する事件の審判(家事審判)と調停(家事調停)及び少年の保護事件の審判(少年審判)を専門的に取り扱う裁判所です。家庭裁判所で取り扱われる事件は,性質上プライバシーに配慮され,一部の例外(離婚など)を除いて非公開で審理されます(地方裁判所等は公開法廷で審理)。家庭裁判所には家庭裁判所調査官が置かれ,人間諸科学の知見を用いて事件の調査などと行います。

家庭裁判所調査官(かていさいばんしょちょうさかん)

家庭に関する事件や少年事件を扱う家庭裁判所に置かれる専門職で,国家公務員です。家庭に関する事件や少年事件は,事件の背後にある人間関係や,感情,生活環境などが事件に影響していることから,これらに配慮した解決が求められています。家庭裁判所調査官は,裁判官の指示により,これらに関する事項を調査して,裁判官に報告します。家庭裁判所調査官は,人間諸科学の専門的知見を用いて事件の調査などと行います。家庭裁判所調査官になるには,まず調査官補として採用され,裁判所職員総合研修所で,2年間の研修を受ける必要があります。

家督相続(かとくそうぞく)

昭和22年改正前の旧民法にあった相続の形式で,「家(いえ)」の制度を前提として,家の統率者である「戸主」の地位を承継する身分の相続のことです。旧民法では,戸主が家の財産や身分行為の同意権など,権力をすべて持っていました。家督相続は,戸主の死亡のほか,隠居などの生前相続によっても生じました。相続人の順位も法律に定まっており,常に単独相続といって,1人の者が地位を継いでいく相続でした。現在の民法では,家の制度が廃止されたので,家督相続も廃止され,「遺産相続」という財産の相続のみになりました。

寡婦年金(かふねんきん)

国民年金の1号被保険者(自営業者,農業者,学生など)として保険料を納めた期間が25年以上ある夫が亡くなったときに,残された妻がもらえる年金です。婚姻期間が10年以上必要で,もらえる期間は,60歳から65歳になるまで。もらえる額は,夫の第1号被保険者期間のみで計算した老齢基礎年金額の3/4です。

換価分割(かんかぶんかつ)

共同相続人で遺産分けをする遺産分割の態様の一つで,遺産が現物分割に適していないか,不可能であるときに行われる遺産分割のやり方です。換価分割は,遺産を,競売又は換価人によって換価をし,その代金を共同相続人で分配します。遺産分けのやり方は,ほかに,現物分割(遺産を物理的に二つに分けたり,物理的にはそのままで割合的な共同所有にする)と代償分割(特定の人が遺産をもらって,代わりにもらった人が代償金を支払う)があります。

管理行為(かんりこうい)

管理行為とは,保存行為と財産の性質を変えない範囲での利用・改良行為をいいます。管理行為を超えるものは,「処分行為」といいます。管理行為には,物の修繕(大修繕は処分行為と解釈されています)のような事実行為のほか,契約などの法律行為も含まれます。財産の管理人の権限の範囲を考えるときなどに使われる概念です。例えば,裁判所に選任された相続財産管理人や不在者財産管理人は,単独で管理行為ができますが,処分行為を行うには裁判所の許可が必要になる,などです。

危急時遺言(ききゅうじいごん)

遺言者に死期が迫っているために,普通方式による遺言ができないときにすることができる特別方式の遺言の一種です。危急時遺言は「口頭」ですることができ,証人がこれを書き写して,署名押印します。危急時遺言には,一般危急時遺言(死亡危急者遺言)と,難船危急時遺言(船舶遭難者遺言)とがあります。危急時遺言は,遺言書作成後20日以内に家庭裁判所の「確認」手続が必要です。危急時遺言や隔絶地遺言といった特別方式の遺言は,遺言者が,普通方式による遺言ができるようになってから6か月生存するときは無効になります。つまり,普通方式の遺言によってやり直すことが想定されている臨時の遺言です。
なお,遺言の方式は以下のように分類できます。

普通方式
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別方式
危急時遺言
一般危急時遺言(死亡危急者遺言)
難船危急時遺言(船舶遭難者遺言)
隔絶地遺言
一般隔絶地遺言(伝染病隔離者遺言)
船舶隔絶地遺言(在船者遺言)

基礎控除額(きそこうじょがく)

簡単にいうと,問答無用(何も検討する必要がなく)で相続税が課税されない遺産の額のことです。相続税は,ある程度の遺産を相続(相続・遺贈・死因贈与など)した場合にだけ課税される税金です。基礎控除額の計算式は,以下のとおりです。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

寄与者(きよしゃ)

共同相続の場合の相続分は,相続人間の公平の観点から,生前にたくさんもらっている人の相続分は差し引き,逆に,生前に被相続人の財産の維持・増加に特別に寄与した人には加算して計算する仕組みになっています。寄与者とは,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加にについて特別の寄与をしたので,相続ではそれを考慮しておおく相続分を計算してもらえる人のことです。

寄与分(きよぶん)

共同相続の場合に,生前にたくさんもらっている人の相続分や,逆に生前に被相続人の財産の維持増加に貢献した人の相続分が,他の相続人の相続分と同じだとしたら公平ではありません。寄与分とは,後者のほう,つまり,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加にについて特別の寄与をした人がいる場合に,その人が寄与した財産の額をいいます。寄与分がある場合の相続分の計算は,相続開始時の遺産の価額からその人の寄与分を控除した額をみなし相続財産として,これに相続分の割合を乗じて各人の相続分を出します。次に,寄与者については,最初に控除した寄与分を加算してあげて,その人の相続分とします

協議分割(きょうぎぶんかつ)

遺産分けのことを法律上遺産分割といいますが,その遺産分割の方法の一つで,共同相続人全員の話合いで遺産分けをすることです。協議分割のことを,遺産分割協議ともいいます。協議分割ができたら,その内容を,遺産分割協議書という書面にして,相続人全員が署名(記名)し実印を押印します。この書類を使って,遺産の名義変更などの相続手続を行います。なお,協議分割ができないときは,家庭裁判所で調停分割をしたり,審判分割をしたりします。ちなみに,被相続人の遺言で遺産分割の方法が指定されているときは,そのとおりしますが,これを指定分割といいます。

共同遺言(きょうどういごん)

民法で禁止さている遺言で,「2人以上の者が同一の証書でする」遺言のことです。2人以上の人が同一の書面で遺言をすると,誰の財産が,どのように相続されるのかはっきりしなくなり,法律的に争いが生じる危険があるため,禁止されています。禁止されていますので,これをすると遺言書は無効になります。

共同所有(きょうどうしょゆう)

複数の人が,一つの物の所有権を,同時に持って分け合っている状態のことです。相続が開始して相続人が何人かいる場合を共同相続といいますが,共同相続の場合,個別の遺産の所有権は,共同相続人で共有していることになります。なお,法律は,物の共有状態を望ましくないものと考えていますので,いつでも共有者は,共有関係の解消(共有物分割)を請求することができます。遺産が共有状態になっている場合の共有関係の解消の手続を,遺産分割と呼びます。

共同相続(きょうどうそうぞく)

2人以上が共同して相続人になる相続のことです。戦前の民法は,家督相続といって,1人の相続人がすべてを相続する法律になっていましたが,現在の民法は,法定相続人が複数いる場合は共同相続になります。共同相続になった場合,遺産分けの遺産分割をするまで,遺産の所有権は共同相続人の共有になります。

金銭債務(きんせんさいむ)

金銭を支払わなければいけない法律的な義務のことです。債権(債務)とは,特定の人から特定の人への請求権のことですが,債権(債務)は,原則として,契約,不法行為といった民法が定めた四つの事実関係からのみ生じます。例えばお金を借りて返す契約を金銭消費貸借契約といいますが,この契約をすると,債務者にはお金を弁済するという金銭債務が生じます。故意過失で他人の権利を侵害すると,損害賠償しなければならないという金銭債務が生じます。なお,金銭債務は,原則として,相続の対象になります。

口授(くじゅ)

口でもって教え授けること,つまり口で申述すること,口でいうこと,を口授といいます。民法にもこの言葉が出てきますが,例えば公証証書遺言をするには,遺言者が,証人2人以上の立会いのもと,公証人に対して,遺言の趣旨を「口授」することが必要です。遺言者が,自分の意思を,口で表現することが要件になっているものです。口で表現させることで,遺言者の意思が確かなものであるか判断できます。

具体的相続分額(ぐたいてきそうぞくぶんがく)

相続人が複数いる共同相続の場合に,結局いくらもらえるのかというのが「具体的相分額」です。相続で最終的にもらえる額のことです。共同相続の場合には,相続人間の公平の観点から,特別受益や寄与分といったような,相続分の修正をすることがありますが,それらすべてを考慮して,終局的にもらえる額のことをいいます。

具体的相続分率(ぐたいてきそうぞくぶんりつ)

特別受益や寄与分といった相続分の修正理由を考慮して計算される共同相続人の相続分率(全遺産に対して相続する割合)のことです。これに対して,特別受益や寄与分といった相続分の修正理由を考慮する前の相続分率のことを,「抽象的相続分率」といいます。たとえば一般的に配偶者の相続分は1/2であるというとき,この1/2というのは,抽象的相続分率です。

区分所有権(くぶんしょゆうけん)

マンションのために特別に認められた所有権です。民法は一物一権主義という理屈を採用していて,原則的に,一つの物には,一つの所有権しか認めていません。所有権というのは非常に強い権利で,所有者は,物の使用・収益・処分ができるため,一つの物に複数の所有権を認めると権利関係が複雑になるからです。ただし,一つの物の上に複数の所有権を認める社会的必要性があって,ちゃんと複数の所有権を公示(みんなに分かるように公表すること)できる場合には,例外を認めています。マンションは,一つの大きな建物のほかに,一部屋一部屋の所有権を認める社会的必要性があるので,区分所有法という特別の法律が作られており,建物と敷地との関係も含めて細かく権利関係が定められています。

区分地上権(くぶんちじょうけん)

地下の一定の範囲や,地上空間の一定の範囲を決めて,土地の工作物を所有するために設定することができる地上権のことです。地上権とは,工作物等を所有することを目的として,土地を利用するために設定される土地に対する権利です。土地の利用が高度化してくると,地下や地上空間も利用の対象となってきますが,土地自体に地上権や賃借権を設定すると,土地全体の利用権となるので,他の利用権との関係が複雑になります。このことから,民法には,地下や空間の一定の範囲を定めて権利を設定することができる仕組みが用意されています。

契印(けいいん)

一つの文書が数ページになるときに,各ページの継ぎ目に印鑑を押して,その文書が一連一体のものであることを証明しますが,このとき押される印のことを契印といいます。ホッチキスでとめてある文書のときは各ページの継ぎ目に,製本してあるときは裏表紙(場合によっては表も)の製本テープと文書の継ぎ目に,それぞれまたがるように押します。なお,ほかに「割印」という言葉がありますが,これは,二つの文書について,それぞれの文書が関連しているとか,内容が同じだとかいうことを証明するために押される印鑑です。例えば契約書を当事者分の2通作って,契約書の表紙をずらして割印すると,同じ機会に,同じ内容で契約書を作ったことを証明できます。

形式的競売(換価のための競売)(けいしきてきけいばい(かんかのためのけいばい))

本来民事執行法による競売とは,債務者の所有財産をお金に代えてそこから強制的に債権の回収をする手続で,債権者が担保を持っていない場合の強制競売と,担保を持っている場合の担保権実行の手続に分けられます。「形式的競売(競売)」とは,文字通り,形式的には民事執行法による競売の手続を使って財産を換金するけれども,本来の目的はそうでない手続のことをいいます。例えば,遺産分けの遺産分割において,遺産が現物として分けられないもののときには,遺産をお金に代えて代金を分ける手続をしますが,この遺産の換価手続も形式的競売です。共有物の代金分割も形式的競売によります。

形成権(けいせいけん)

潜在的に権利を持っている人が,その権利を使う意思表示をしてはじめて,法的な権利が発生する(法律関係の変動が生じる)と考えられている権利又は権利者の地位のことです。相続法の関係では,遺留分減殺請求権などが形成権に該当します。つまり,遺留分を侵害された遺留分権利者が,遺留分を侵害している人(贈与を受けた人,遺贈を受けた人)に対して,遺留分減殺請求権を行使しますよ,使いますよと請求してはじめて減殺の効果が生じます。簡単にいうと,遺留分減殺請求権を行使するかどうかは,権利者が自由に決めることができるわけです。

継続的見守契約(けいぞくてきみまもりけいやく)

高齢者などの委任者として,受任者が,定期的に委任者に電話したり面談したりすることにより,委任者の生活状況や判断能力の状況を見守ることを内容とする委任者と受任者との契約のことです。一般的には,公正証書によって任意後見契約を締結するときに,一緒にこの契約も締結します。というのも,任意後見契約は直ちに効力が発生せず,委任者の判断能力が低下したときに,効力を発生させる手続をとる必要がある契約ですが,継続的に委任者の判断能力をチェックしていないと,効力を発生させる時期を判断できないからです。任意後見契約を締結しなくても,遺言書を作成して司法書士等の第三者がが遺言執行者になるような場合は,同時にこの契約を締結して,遺言者の状況を定期的にチェックすることもあります。

競売(けいばい)

売主が複数の人に物の購入の申出をさせて,一番高い値段を付けた人に売却する売買契約の方法のことです。競売の手続を国家が管理して行う場合を「公(おおやけ)の競売」といい,その中には,官公庁が滞納税金の回収のために行う「公売(こうばい)」と,民間の債権回収のために行われる「民事執行法による競売」があります。一般によく使われている民事執行法による競売は,さらに,判決などの債務名義などにもとづいて,債務者の財産を換価して債権回収をする「強制競売」と,あらかじめ設定した担保権にもとづいて債権回収をする「担保権実行」とに大きく分かれます。なお,競売は,法律上,「けいばい」と読みます。

系譜(けいふ)

先祖から子孫に至るまでの血縁関係等を記した図面のことです。家系図,親族図,親族説明図,相続関係説明図などというのもおよそ同じ意味です。遺産の相続手続を行うには,亡くなった人の相続関係をすべて証明する戸籍,除籍,原戸籍等を収集して,これにもとづいて,相続関係説明図,つまり相続関係を説明する系譜を作成します。

契約(けいやく)

人から人に対する請求権(債権)を発生させることを目的として,二当事者の,対立する意思表示の合致をもって成立する法律行為です。民法上,人から人に対する請求権は,「契約」「不法行為」「不当利得」「事務管理」という四つの法律関係からしか生まれません。これらの法律関係がないところでは,人に対する請求も,債務もありません。当事者が1人の遺言などは単独行為といって契約ではありません。意思表示が同じ目的に向いているものを「合同行為」などといい,契約とは区別されます。意思表示の合致は,口頭でも,身振り手振りでも大丈夫です。書面にするかどうかは契約の成立とは関係ありません。書面にするのは,争いになったときに備え証拠を準備するためです。契約によって請求権(債権)が発生すると,履行請求権(相手に契約内容の履行を求める権利),給付保持力(契約どおりもらったものをそのまま持っていられる権利),訴求力(裁判に訴える権利),執行力(強制執行の手続に進んでいるける権利)などといった効力が生じます。なお,契約については,契約自由の原則が当てはまります。また,契約をちゃんとしたものにするには,契約のプロセスをクリアしないといけません。この二つは特に重要ですので,トピックを以下に書いておきます。

契約自由の原則)
民法上,契約は,契約自由の原則が適用されます。原則なので例外もあります。
・締結の自由
・相手方選択の自由
・内容の自由
・方式の自由

ちゃんとした契約になるためのプロセス)
契約をしようと考えてから,ちゃんと効力を発生させるには,厳密には,次のようなプロセスをクリアしていないといけません。
・成立要件
申込みと承諾の意思表示が合致しているかどうかの問題です。
・有効要件
当事者に関わる主観的有効要件と,契約内容に関わる客観的有効要件を満たしていることが必要です。主観的有効要件には,本人に判断能力があるかどうかという意思能力や行為能力(未成年者,成年被後見人など)の問題と,本人の意思表示が間違ってされた場合の詐欺・脅迫などの問題があります。客観的有効要件には,契約内容の確定性,実現可能性,適法性,社会的妥当性の問題があります。
・効果帰属要件
ちゃんと本人に効力が及ぶのかどうか,具体的には,代理権の関係の問題です。
・効力発生要件
契約に条件や期限がついている場合の問題です。条件には,停止条件,解除条件,既成条件,不法条件,不能条件,純粋随意条件があり,内容によって契約の効力に影響します。期限には,確定期限,不確定期限,始期,終期の区別があります。

契約上の地位(けいやくじょうのちい)

契約をすると相手方に対していろいろな請求権(債権)が発生するとともに義務(債務)もまた生じますが,「契約上の地位」とは,それらを発生させるもとになる契約上の立場のことです。売買契約であれば,買主の地位,売主の地位のことです。買主は,売主に対して,売買した物を引き渡してくれと請求できますし,不動産であれば登記をしてくれと請求することもできます。その代わり,代金を約束どおり支払う義務を負います。売主はその逆の権利義務を持っています。これら買主や売主がそれぞれ持っている権利や義務の総体のことを,契約上の地位といいます。契約上の地位も,財産上の権利として,相続の対象になります。

気配相場等のある株式(けはいそうばとうのあるかぶしき)

相続税法上の用語で「気配相場等のある株式」とは,日本証券業協会の登録銘柄や店頭管理銘柄あるいは公開途上にある株式をいいます。相続税法では,株式を,「上場株式」「気配相場等のある株式」「取引相場のない株式」にわけて,財産的な評価をします。気配相場等のある株式のうち,登録銘柄や店頭管理銘柄の評価は,日本証券業協会が定めている取引価格をもとにして上場株式を同じように決まります。公開途上にある株式は,上場又は登録時の公開価格により評価します。

原価主義(げんかしゅぎ)

税法上の言葉で,資産を取得時の原価で評価する考え方のことです。「取得原価主義」ともいいます。これに対して,資産を,評価する時点の時価で計算する考え方を「時価主義」といいます。相続税は,「時価主義」を採用しています。具体的にいうと,相続・遺贈の場合は被相続人が死亡した日で,贈与の場合は贈与契約などによって財産を取得した日で評価します。

限定承認(げんていしょうにん)

遺産がプラスかマイナスが分からないときに,相続した積極財産の範囲内で,消極財産を負担する相続の承認手続のことです。もう少し正確にいうと,「相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して」する相続の承認のことです。被相続人が亡くなって相続が開始すると,法定相続人は,まず3か月以内に,相続を承認するのか放棄するのか決めなければいけません。相続を承認するのか放棄するのかというのは,そもそもその相続に関して,「相続人になるのかならないのか」という根本的なことを自分で決めることです。すべて認めて引き継ぐのを「承認」といい,すべて拒否して相続関係から離れるのを「放棄」といいます。その中間で,一応承認するけど,財産の限度でしか債務などは払わないよという責任を限定した承認が,「限定承認」です。例えば,思い出のある家は相続したいけど,借金がたくさんあるのが分かっているような場合に,限定承認をすれば,家の価値の限度で借金を支払うことができます。

現物分割(げんぶつぶんかつ)

相続人が複数いる場合に行われる遺産分けの遺産分割のやり方(態様)の一つで,まさに文字通り,遺産である物を複数の相続人で分割して相続することです。例えば不動産である土地を,二つに分筆して二つの土地とし,それぞれ別の相続人が相続するようなケースがこれにあたります。一つの土地を複数の相続人が共有(割合的に)で相続することも,現物分割に含まれるといえます(これを特に「共有とする分割」と呼ぶこともあります)。なお,遺産の性質が現物分割に適さないときは,遺産を売却して代金を分ける換価分割や,ある遺産を特定の相続人が相続して代わりに代償金を支払う代償分割といったやり方で遺産分けをします。

原本・副本・謄本・正本・抄本(げんぽん・ふくほん・とうほん・せいほん・しょうほん)

「原本」とは、ある事実関係などを表示するために確定的に作られた原典となる文書のことです。原本には、通常、一定の法的効力が付与され、当事者の署名押印がされます。原本を複数作成して、送達に用いるものを、「副本」といいます。
「謄本」とは、原本の内容を一言一句全部写して、原本に記載されている事項の内容全部を証明するために作成される文書です。
「正本」とは、謄本の一つの種類・形式であり、特に権限あるものが原本にもとづいて作成し、原本と全く同一の法的効力があるものとして用いられる文書です。原本は通常一箇所に保存して動かさないので、原本の持っている法的効力を別の場所で発揮させたい場合には正本を作成することになります。
「抄本」とは、原本の内容の一部を写して、その一部の事実内容を証明するために作成される文書です。

権利証(けんりしょう)

旧不動産登記法にいう「権利に関する登記済証」のうち、とくに「所有権」に関するもののこをを指してこう呼ばれていました。旧不動産登記法では、登記を申請するには、登記申請をするもとになった当事者間の権利変動の内容が記載された登記原因証書等を法務局に提出しました。そして登記が完了すると、これに法務局の受付印が押されて戻ってきました。これを登記済証といい、特に所有権の登記(所有権の移転や保存)の登記済証を「権利証(又は権利証)」と呼んだのです。権利書、権利証は、二度とは発行されず、次に登記を申請するときに必要となるため、大切に扱われました。先の不動産登記法の改正によって、登記はコンピュータシステムを利用して処理されるようになったので、今後従来の権利書は発行されないで、物件ごと、権利者ごとに発行される「登記識別情報」がこれに変わることになりました。「登記識別情報」とは、書面ではなく「情報」であり、12桁の英数字のパスワードのことです(現実にはその情報が書面に印刷されて法務局から権利者に交付されます)。

権利能力(けんりのうりょく)

民法上、権利義務の主体になることができる能力の基準のことです。権利義務の主体となるとは、所有権や債権などの持ち主などになることです。民法は、あらゆる物事をすべて「権利」と「義務」として捉え直し、世の中を整理します。ですから、権利義務の主体になることができないことは、この民法の世界の登場人物として認められないことを意味します。民法や法律は、基本的には、人間が人間のために作ったものですから、人間にはすべてこの「権利能力」が備わっています。法律で人と認められた「法人」にもこの能力が認められています。法律の世界には、「権利能力」のほか、「意思能力」「行為能力」「遺言能力」「訴訟行為能力」などの能力基準があります。

行為能力(こういのうりょく)

民法上、自分が行った法律行為(意思表示を内容とする私法上の行為のこと)の効果を、確定的に間違いなく自分に帰属させることができる能力のことです。簡単にいうと、ひとりで完全な法律上の行為ができること。無効になったり取り消されたりしない能力を備えていることを意味します。例えば、未成年者が親権者の同意を得ないでした法律行為は原則として取り消すことができます。未成年者については、親権者などの法定代理人の同意がなければ、単独で完全な法律行為ができないということです。よって、未成年者のことを、民法では、「行為能力がない」「行為無能力者」又は「制限行為能力者」などといいます。その他、基本的に判断能力がない成年被後見人などにも行為能力がありません。

後見登記(こうけんとうき)

判断能力が不十分な人の権利保護と、それらの人と取引をする人の取引の安全を両立するために民法には成年後見制度が定められています。成年後見制度には、判断能力がない人の後見人などを法律で定める法定後見制度と、契約によって財産管理等の代理人を定めておく任意後見制度があります。後見登記とは、これら成年後見制度が利用されているときに、成年後見人の権限や、任意後見契約の内容などを国の帳簿に登録して、一定の場合に、その内容の証明書などを発行する制度です。後見登記は、東京法務局の後見登録課が一括して取り扱っています。

後見人(こうけんにん)

被後見人(本人)の財産を管理したり、財産に関する法律行為を代理したりする人です。民法は、ちゃんとした判断能力がる人が、合理的な判断をして、契約などをするからこそ、その行為に法的な拘束力が認められるという私的自治の原則、意思自治の原則を採用しています。分かっている人が、自分の意思で決めたことだから、是非とも守ってっもらいましょう、ということです。ところで、社会には、現実には、判断能力が不十分な人たちがいます。判断能力が不十分な人がした契約などを無理やり守らせることは、先ほど述べたとおり無理が生じます。そこで、未成年者といった未成熟な者や、認知症などによって常時判断能力がない人には、後見人などを付けて、代わりに財産管理や法律行為をしてもらうことになっています。後見の制度は、大きく分けると、未成年者後見と、成年後見とに分かれます。成年後見は、法律によって後見人などを決める法定後見と、契約によって代理人を決める任意後見に分かれます。

後見開始の審判(こうけんかいしのしんぱん)

未成年者や常時判断能力がない人は、1人で契約などの法律行為ができないので、保護者である後見人を付けて、財産管理をしたり、法律行為の代理をしたりします。これらの手続きは裁判所で管理して行います。具体的には、家事事件手続法という法律にもとづいて、管轄の家庭裁判所が手続きの開始とその後のチェックを行うことになります。この、手続きを始めますよという宣言が、「後見開始の審判」という家庭裁判所の決定です。なお、未成年後見については、未成年者について親権を行う者がないか、親権者が財産管理権を持たないときに、関係人の申し立てによって開始します。成年後見については、成人が、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にあるときに、関係人の申立によって開始します。

後見監督人(こうけんかんとくにん)

未成年者や判断能力がない者に後見人が選任されているときに、家庭裁判所の決定によって、これらの後見人の業務をさらにチェックするために選任される者です。任意後見契約によって後見人が選ばれている場合を除いては、後見監督人は常に選任されるわけではなく、必要に応じ、関係人の申立人によって、家庭裁判所が選任します。後見監督人は、後見人の業務をチェック(監督)し、後見人がいなくなった場合には後任者を選ぶ手続きをとるほか、未成年者や成年被後見人と後見人の利益が相反する法律行為(例えば親の後見人に子がなっていて、2人が共同相続人になる相続の遺産分割協議をする場合など)について、未成年者や成年被後見人といった本人側を代理します(こういった場合後見人には代理権がなくなります)。

公示価格(こうじかかく)

国土交通省(土地鑑定委員会)が地価公示法という法律にもとづいて毎年1月1日現在の全国の標準地の価格を査定した価格のことです。不動産の公的価格の一つで、公共事業用地の取得価格算定の基準となるほか、一般の取引の参考にしたり、また国が考える望ましい地価を作り出すために使われています。これに似たものに、都道府県が国土利用計画法にもとづいて7月1日現在の基準地の価格お査定する「基準価格」というものもあります。その他不動産の公的価格には、相続税や贈与税の課税価格算定のために国税庁が定める「路線価」や、固定資産税の課税価格算定のために市町村が定める「固定資産税評価額」があります。

公社債(こうしゃさい)

公社債とは、公債と社債のことです。公債とは、国や地方公共団体が資金調達をするときに負う金銭債務(債権)などのことです(国債や地方債)。社債とは民間の会社が資金調達をするときに負う金銭債務(債権)のことです。公社債を発行(起債)するときは、証拠となる証券を発行したりします。相続税による公社債の評価は、利付公社債、割引発行の公社債、元利均等償還が行われる公社債、転換社債型新株予約権付社債に区分し、券面額100円あたりの価額を基準として、それぞれについて決められた評価表方法にもとづいて評価します。

公証人(こうしょうにん)

公証人法にもとづいて法務大臣に任命(実質的意義の公務員)され、公正証書を作成したり、私署証書や定款の認証などの業務を行う法律実務家です。公証人は、法務局や地方法務局に所属していますが、仕事は各地にある公証人役場で行います。法務大臣による公証人の任命は、公証人となる資格のある人の中から行います。この資格は公証人法に決められていますが、およそ以下のとおりです。実際には、検察官、裁判官、法務局OBからほとんどが任命されています。なお、公証人は公務員ですが、依頼人から受け取る手数料を収入源とする独立採算制を採用しており、仕事量に応じて収入が変わります。

○公証人試験に合格した人
○司法試験に合格して30年実務した人
○学識経験者やこれに準ずるもので公証人選考委員会で認められた人
・簡裁判事、副検事を一定期間つとめた人
・裁判所職員、法務局職員、検察庁職員を一定期間つとめた人
・司法書士を一定期間つとめた人など

公証役場(公証人役場)(こうしょうやくば(こうしょうにんやくば))

公証人が仕事をする役場です。公証人は、公証人となる資格のある人から法務大臣が任命する特別な公務員で、法務局や地方法務局に所属していますが、実際の仕事は、独立に設けた公証人役場で行います。全国に約300か所あります。公証人役場には、通常、公証人と、書記(補助スタッフ)の数名が勤務しています。大都市には、複数の公証人が働いている合同の公証役場(公証人役場)もあります。

公正証書(こうせいしょうしょ)

公証人がその権限にもとづいて作成した証書です。公証人は公務員ですので、公正証書は公文書になります。公正証書には強力な証明力があります。公務員が職務上作成した文書は、民事訴訟法法上、「真正に成立したもの」と推定されます。これを形式的証拠力といいます。公正証書には形式的証拠力があります。また、公証人が十分にチェックして作成しますので、公正証書には高い実質的証拠力もあります。その他、お金の貸し借りや養育費の支払いなど、金銭の支払いに関する公正証書で一定の要件を備えたものは、「執行証書」と呼ばれ、約束が守られない場合に裁判所を起こさないで、この証書を使って強制執行をすることができます。

公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)

民法に定められた普通方式の遺言で、遺言者が口で話した内容にもとづいて公証人が作成する遺言の方式です。「遺言公正証書」ともいいます。「公正証書遺言」をするには、事前に公証人役場で公証人と打ち合わせをし、必要な書類を公証人に提出して準備をしてもらいます。準備ができたら、遺言者と証人2名が公証人役場に出向いて、公証人に遺言内容を話し、準備しておいた書面を公証人が仕上げて、関係人がこれに署名押印します。公正証書遺言は法律家である公証人が作成するので、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所で遺言書検認(形式をチェックして記録すること)の手続をする必要がありません。よって、素早く遺言書の執行(遺言書に書かれた内容の実現)ができます。

更正の請求(こうせいのせいきゅう)

相続税や贈与税などの国税の申告をしたが税額などが過大(税金を納め過ぎた)であったときに、間違いを訂正して減額してもらう手続きです。ケースに応じて、請求できる期間が決められていて、その期間内に、更正の請求の理由の基礎となる事実を証明する書類等(要するに証拠書類)を添付して行います。

香典(こうでん)

「香典」や「弔慰金」は、慣習上、喪主や遺族に対する贈与だと考えられています。被相続人の死後、香典や弔慰金を出す人から、喪主や遺族に対して直接渡された贈与金ですから、法律上、これらは相続財産にならないと解されます(一度も被相続人の財産になったことがないからです)。

国税(こくぜい)

租税の種類の一つで、国が課税したり徴収したりする税のことです。租税の種類には、この「国税」と、地方公共団体がそれらを行う「地方税」とがあります。地方税には「都道府県民税」と「市町村民税」があります。なお、国税のことは、国税の一般法である国税通則法と、相続税法や所得税法といった個別の税法に定められています。地方税のことは一般法である地方税法と、各地方公共団体による条例に定められています。

戸主(こしゅ)

明治31年から昭和22年までの民法で定められていた身分上の地位です。この旧民法の家族制度は、「家」を中心に考えられており、家の全権を握って統率する人として、家には1名の「戸主」がおかれました。家制度は、戸籍に記載された戸主と、戸主の率いる家族からなっており、江戸時代における武家社会の家父長制の家族制度をもとに作られていました。戸主は、家の全財産を管理し、家族を扶養し、結婚の同意や居場所の指定をし、また先祖を祀るというように、家に関する権利義務を一身に負っていました。戸主が亡くなったり、隠居したりすると、家督相続という身分相続が開始して、次の戸主に権利義務の一切が引き継がれました。

戸籍(こせき)

人の法律的な身分関係を登録して管理し公証する国の制度です。日本では、人の出生から死亡に至るまでの重要な身分関係の変遷が戸籍に記載されることになっています。戸籍法に詳しいことが定められています。戸籍には「本籍」が記載されていて、本籍地の市町村役場で管理される仕組みです。戸籍は、「市町村に本籍のある夫婦及びこれと氏を同じくする子供」の単位で作られます。夫婦同一戸籍の原則、親子同一戸籍の原則、同一戸籍同一氏の原則といったルールが適用されます。なお、日本のような戸籍制度(土地との結びつきや家族との関係を重視)を採用しているのは、現在では日本と中国だけです。ヨーロッパ諸国はもともと個人登録の制度を採用しています。もっとも、社会保障制度を充実させるため家族関係を行政が把握する必要から、近年家族登録制度に移行する流れがあります。

戸籍法(こせきほう)

人の法律的な身分関係を公証するための制度である戸籍について定めている法律です。日本では、人の出生から死亡までの間に生じる重要な身分関係の変動が戸籍に記載され、国によって管理され、記載事項を証明できるようになっています。戸籍法には、誰が戸籍簿を管理するか、戸籍簿の作り方と記載内容、婚姻や養子縁組、出生等々といった戸籍の各種届出のほか、戸籍の訂正方法や、不服申立てのやり方など、一通りのことが戸籍法に書いてあります。もっとも、戸籍法の条文だけでは十分戸籍事務の取扱いができないので、過去に出された戸籍先例が重要な役割を果たしています。

戸籍謄本(こせきとうほん)

戸籍の記載事項の全部を証明した書面のことです。戸籍簿は市町村長の責任のもと市町村がその取扱いをしていますので、戸籍謄本の発行責任者は市町村長です。戸籍には重要な身分事項が記載されており、プライバシーに関わりますので、戸籍謄本を請求できる人も戸籍法に定められ人だけです。これを簡単に説明すると、戸籍謄本を請求できるのは、だいたい次のようなケースです。

○戸籍に記載されている人、その配偶者、直系尊属、直系卑属が請求する場合
○自己の権利行使や義務の履行に必要である人が請求する場合
○公的機関に提出する必要がある場合
○公的機関自身が請求する場合
○弁護士、司法書士、会計士、税理士といった専門職が、業務をするのに必要で、依頼者が上記に該当している場合
○弁護士、司法書士等が紛争解決業務を受任して、業務に必要である場合

固定資産税評価額(こていしさんぜいひょうかがく)

市町村は、毎年1月1日現在の土地建物の所有者に固定資産税を課税しますが、市町村が固定資産税を課税するための価格として、この固定資産税評価額が定められます。固定資産税評価額は、国が用意した固定資産評価基準にもとづいて、公示価格の七割を基準に、市町村によって決められることになっています。3年に一回評価替えをして評価額を決め直します。固定資産評価額を調べるには、市町村の税務課で、固定資産課税台帳の閲覧をします。固定資産評価証明書という証明書を取得することもできます。なお、固定資産税評価額は、不動産の公的価格の一つです。不動産の公的価格には、国土交通省が定める「公示価格」、都道府県が定める「基準価格」、相続税や贈与税の課税価格算定のために国税庁が定める「路線価」、そしてこの「固定資産評価額」があります。

ゴルフ会員権(ごるふかいいんけん)

会員制のゴルフ場の施設利用等を内容とする権利で、一般に会員権を取得すると、ビジターより割安でプレーできたり、優先予約権が与えられたりするものです。会員が株式を取得して施設運営会社の株主になる形式と、予約金(保証金)を預ける形式があります。バブル経済の時期に会員権の乱売事件などが社会問題となり、現在は、「ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律」によって業務が規制されています。ゴルフ会員権の形式や内容はいろいろあり、その経済的な価値も異なりますので、相続税では、いくつかに分類して価値を評価することになっています。なお、株主形式ではなく、譲渡できない利用権であって、預託金返還が予定されておらず、施設利用とプレーのみができるに過ぎないゴルフ会員権は、相続税評価をしないことになっています。

婚姻準正(こんいんじゅんせい)

父に認知されている非嫡出子が、両親の婚姻によって、婚姻の時から、嫡出子の身分を取得することです。嫡出子とは、「両親の婚姻に「よって」生まれた子」のことです。そうでない子を非嫡出子といいます。「準正」とは、非嫡出子が、生まれてから事後的に、嫡出子の身分を取得することをいいます。準正には、もう一つ、「認知準正」と呼ばれるものがあります。認知準正とは、父母の婚姻後に子供が父に認知されることにより、認知の時から、非嫡出子が嫡出子の身分を取得することです。

祭具(さいぐ)

宗教儀式に使われる器具、祭り(祀り)に使用される道具のことです。仏教では仏具、神道では神具と呼ばれたりします。仏壇や祖霊舎(御霊舎)の周辺の道具などを指します。現在の民法は、財産の相続を意味する遺産相続であること、複数人が共同で相続人になる共同相続を認めていることなどに特徴があり、祖先の祭祀や宗教的なことには立ち入らないことになっているのですが、祭具などは、一応財産的な物であるとはいえ、宗教儀式と結びついた特別の財産ですので、法律もそららの相続について特別の取扱いをしています。具体的には、系譜・祭具・墳墓の所有権は、慣習にしたがって、祖先の祭祀を主宰する者が単独で相続することになっています。

債権(さいけん)

特定の人から特定の人に対してある行為を請求する権利のことです。人から人に対する行為請求権です。これは、民法上、財産を直接的排他的に支配する「物権」と区別されます。債権は人に対する権利、物件は物に対する権利です。物権には、代表的には、所有権があります。債権と物権を併せて「財産権」といいます。債権は、契約や不法行為といった債権を発生させる原因があってはじめて生じます。勝手に債権(権利)が発生したり、過失もないのに債務(義務)を負ったりすることはありません。なお、遺産相続があると、相続人は、相続開始のときから、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。債権は財産権であり、財産に属した一切の権利義務に当たりますので、基本的に、相続の対象になります。

財産管理(ざいさんかんり)

一般的には、財産の効用を維持するために、対象となる財産を、事実上・法律上、保存し、その性質を変えない範囲で利用し、改良したりする行為全般を指します。財産の所有者ではない人が他人の財産を管理するケースは二つあります。一つは、ある人がある人に対して財産管理を依頼するケースで。法律的には、財産管理委任契約による財産管理といいます。この場合、財産管理の内容は、契約で決めます。もう一つは、法律の規定にもとづいて、ある人がある人の財産を管理するケースです。親権者や認知症の人の後見人、不在者財産管理人、相続財産管理人、破産管財人などさまざまなケースがあります。この場合、財産管理の内容は、法律で決まっています。管理人は、通常、裁判所が選び、そして裁判所が管理人の業務をチェックします。

財産管理委任契約(ざいさんかんりいにんけいやく)

法律の規定によるのではなく、ある人とある人の契約によって、財産管理を行うことです。委任契約の一種です。よく使われるのは、高齢者が、現在はまだまだしっかりしているが、自分の判断能力や記憶力の衰えを感じるので、今のうちに他人に財産の管理を任せるケースです。そのような場合、判断能力が完全に衰えたときに備えて任意後見契約を結びますが、任意後見契約の効力は、判断能力が衰えてから生じるので、今すぐ財産管理を任せたい場合は、さらにこの財産管理委任契約も併せて結んでおく必要があるのです。つまり今から判断能力が衰える時点までを財産管理委任契約でカバーし、判断能力が衰えてからあとを任意後見契約でカバーします。なお、財産管理委任契約をしないで、しばらく自分で財産を管理していく場合は、「見守り契約」を締結して、生活状況をチェックしてもらうこともできます。

財産管理人(ざいさんかんりにん)

自分以外の他人の財産を管理する人のことです。財産管理とは、財産の効用を維持するために、対象となる財産を、事実上・法律上、保存し、その性質を変えない範囲で利用し、改良したりする行為全般のことです。人と人の契約で、財産管理の内容と、財産管理人を誰にするかを決めることを財産管理委任契約といいます。これとは違い、法律にしたがって、財産管理の内容と財産管理人が決まることがあります。例えば、未成年者の親権者は、子供の財産管理権と法律行為の代理権を持っている財産管理人です。親権者がいない場合には後見人が選ばれますがこれも財産管理人です。その他、行方不明者の財産を管理する不在者財産管理人や、相続財産を管理する相続財産管理人、破産者の財産(破産財団)を管理する破産管理人など、法律の規定によって選ばれるいろんな財産管理人がいます。

財産分与請求権(ざいさんぶんよせいきゅうけん)

離婚した一方が相手方に対して婚姻中に築いた財産の分前を請求する権利のことです。財産分与の法律的な性質については、「夫婦の共同財産の清算」、「慰謝料」、「離婚後の扶養料」の要素があると考えられています。遺産相続との関係では、清算的財産分与の請求権と慰謝料的財産分与の請求権は財産権として相続の対象となりますが、扶養的財産分与の請求権は、一身専属的な権利であるとして、相続の対象にならないものと考えられています。

財産目録(ざいさんもくろく)

財産の種類と数量、評価などを記載したリストのことです。商業帳簿の一種ですが、民法上も、財産目録をつくらなければいけない場合があります。例えば、行方不明者(不在者)の財産管理人に選任された場合、後見人に就任した場合、遺言執行者に就任した場合などです。また、民法上は財産目録を作成する義務まではありませんが、事実上財産目録を作る必要がるケースや、作ったほうがいいケースはあります。例えば、遺産相続において、共同相続人の間で適切に遺産分けの遺産分割協議をする場合などです。長男が全部相続するというような場合は特に財産目録を作らなくても問題ありませんが、法定相続分で遺産分けをするには、財産目録を作成して遺産の内容と評価額をはっきりさせないと遺産分けのための計算ができないからです。

祭祀(さいし)

祭祀(さいし)とは、神様や祖先を大切にする行いのことです。神や祖先を祭る(まつる)、祀る(まつる)ことであり、簡単にいえば、宗教のことです。現在の日本国憲法では、信教の自由が保障されており、法律はできるだけ宗教にはタッチしないことになっています。民法の相続法も、基本的に、財産の相続だけを認めており、「家や宗教そのもの」の相続については定めていません。ただし、系譜・祭具・墳墓といった、祭祀に関係する「財産」については、あくまで「物」であり、「財産」ですから、特別に相続の規定を置いて定めています。これらの財産はほかの財産の相続とは切り離して、祭祀を継ぐものが継ぐことになっています。

祭祀財産(さいしざいさん)

民法上、系譜・祭具・墳墓のことを祭祀財産(さいしざいさん)といいます。系譜とは家系図のことです。祭具とは宗教儀式に使用される道具のことです。墳墓とはお墓のことです。これらの祭祀財産はあくまで「物」であり「財産」ですから、「祭祀そのもの」「宗教そのもの」とは異なるわけですが、祭祀や宗教と切り離すことはできず、一体として管理すべきものですから、民法上も特別な取扱いがされます。つまり、祭祀財産の相続においては、一般の財産の相続とは切り離して、祭祀・宗教そのものを継ぐものが、これらの財産も当然に継ぐことになります。

祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)

神や祖先の祭祀(さいし)を司る地位を継ぐ人のことです。日本国憲法は信教の自由を保障しており、現在の法律は宗教にタッチしないという考え方が取られています。相続についても同じで、祭祀を司っていた人が亡くなっても、その地位は、相続の対象にはなりません。その地位を誰が継いでいくのかということは、法律には書いてないのです。もっとも、系譜・祭具・墳墓については、特別の定めをしています。系譜とは家系図のこと、祭具とは宗教に使用される道具、墳墓とはお墓のことですが、これらは祭祀宗教と密接に関わりますので、今後祭祀を司る人が、これらも継いでいくことになっています。繰り返しますが、今後祭祀を司る人が誰になるかは、法律には書いてありません。それは、それぞれの宗教によって異なるからです。

在船者遺言(船舶隔絶地遺言)(ざいせんしゃいごん(せんぱくかくぜつちいごん))

特別方式の遺言のうち,船舶中にあって陸地と離れたところある者がすることができる遺言です。船長又は事務員に加えて、証人2人以上の立会いが必要です。
なお,遺言の方式は以下のように分類できます。

普通方式
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別方式
危急時遺言
一般危急時遺言(死亡危急者遺言)
難船危急時遺言(船舶遭難者遺言)
隔絶地遺言
一般隔絶地遺言(伝染病隔離者遺言)
船舶隔絶地遺言(在船者遺言)

再代襲相続(さいだいしゅうそうぞく)

子が親より先に亡くなっている(死亡、相続欠格、相続人廃除も含む)場合、孫は子を代襲して相続人になりますが、さらに孫も亡くなっている場合、孫の子が孫を代襲して相続人になります。この場合の相続を、再代襲相続といいます。なお、兄弟姉妹が推定相続人になっている場合に、兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなると、兄弟姉妹の子が兄弟姉妹を代襲して相続人になりますが、さらに兄弟姉妹の子が無くなっていても、再代襲相続にはなりません。再代襲相続は、直系卑属が相続人になる場合に限ります。

再転相続(さいてんそうぞく)

ある相続が開始して、「相続人が相続の承認や放棄をしない間」に、その相続人が亡くなって、さらに相続が開始した場合の、この二番目の相続のことを「再転相続」といいます。再転相続の相続人は、一番目の相続の「承認や放棄をする権利」も相続しますので、原則として、それぞれ別個にこの権利を行使することができますが、ただ、二番目の相続を放棄したときは、一番目の相続について、承認放棄する権利を失うとされています。

債務(さいむ)

ある人が、特定の人に対して、ある行為をする義務のことをいいます。人が人に対して負う法的な行為義務です。反対語は「債権」です。民法は、意思自治の原則、過失責任の原則という考え方を採用していて、自分が望んだり、又は故意過失がない場合には、原則として他人に対して法的な義務を負うことはありません。自分が望む場合というのは、代表的には、契約をすることです。例えば売買契約をしたら、物を渡したり、お金を払ったりする債務が生じます。その他故意過失によって不法行為をすれば、損害賠償をする債務が生じます。債務というのは財産に関する権利義務ですから、一般に、相続の対象になります。

死因贈与(しいんぞうよ)

贈与者の死亡を不確定期限(始期)とする、贈与者と、受贈者との間の、贈与契約です。契約ですから、生前に、当事者間の合意が必要です。遺言者が、遺言で財産を譲渡する「遺贈」とは区別されます。遺贈は、生前に、受贈者の承諾の必要がない単独行為であって、契約ではありません。ただし、死因贈与も遺贈も、人の死亡によって財産の譲渡の効力が生じる法律行為ですから、様子が非常に似ているので、死因贈与の効力については遺贈の効力に関する民法の条文が準用され同じ取扱いを受けます。もっとも、死因贈与はあくまで契約ですから、遺言のように作成の方式は決められていないし、未成年者が単独ではできないなど、やはり違いがあります。

市街地山林(しがいちさんりん)

相続税法の財産評価上、都市計画法の市街化区域内にある山林のことです。山林ですが宅地並みの評価を受けます。相続税では、山林を、「純山林」「中間山林」「市街地山林」に分けて評価をします。純山林や中間山林は、固定資産評価額に一定の倍率をかけて評価しますが、市街地山林のうち、宅地に転用が見込める土地については、その土地が、「宅地であるとした場合の価額(路線価や近傍宅地から計算)」から、「通常必要となる宅地造成費相当額」を引いた金額で評価します。市街地山林のうち、宅地への転用が見込めない土地については、他の山林と同じように固定資産倍率で評価します。

市街地周辺農地(しがいちしゅうへんのうち)

相続税法の財産評価上の農地の区分の一つで、宅地に近い評価を受けます。相続税では、農地を、「純農地」「中間農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」に分類して評価をします。最後の市街地農地は宅地なみの評価を受けますが、この市街地周辺農地は、市街地農地の80%の金額で評価されます。ちなみに市街地農地は、その土地が、「宅地であるとした場合の価額(路線価や近傍宅地から計算)」から、「通常必要となる宅地造成費相当額」を引いた金額で評価します。

市街地農地(しがいちのうち)

相続税法の財産評価上の農地の区分の一つで、宅地並みの評価を受けます。相続税では、農地を、「純農地」「中間農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」に分類して財産の評価をしています。市街地農地は、その土地が、「宅地であるとした場合の価額(路線価や近傍宅地から計算)」から、「通常必要となる宅地造成費相当額」を引いた金額で評価します。なお、純農地や中間農地は、固定資産評価額に一定の倍率をかけて評価し、市街地周辺農地は、市街地農地の80%で評価します。

時価主義(じかしゅぎ)

税法上の言葉で,資産を、評価する時点の時価で計算する考え方のことです。相続税は,「時価主義」を採用しています。具体的にいうと,相続・遺贈の場合は被相続人が死亡した日で,贈与の場合は贈与契約などによって財産を取得した日で評価します。なお、これに対して、資産を取得した時の原価で評価する考え方のことを「原価主義」又は「取得原価主義」といいます。

事業承継(じぎょうしょうけい)

ある人が持っている経営に関する支配権を別の人に引き継ぐことをいいます。親から子へ引き継ぐケースや、第三者が引き継ぐケースもあります。また個人事業であったり、会社組織であったりします。中小企業を取り巻く経済環境が厳しいこともあり、事業承継に関しては、これをやりやすくするために、税法上特別の制度が用意されています。いわゆる「事業承継税制」と呼ばれるものが一つです。これは、会社の株式を生前贈与したり相続により取得したりしたときに、一定の要件のもとに、贈与税や相続税の納税を猶予する制度です。もう一つは、「特定事業用宅地の特例(小規模宅地等の特例)」で、一定の要件のもとに、特定の事業用宅地について、相続税の課税価格に参入する金額を減らすことができます。

事業用定期借地権(じぎょうようていきしゃくちけん)

借地借家法が適用される借地契約(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)のうち,専ら事業の用に供する建物の所有を目的として,かつ,存続期間を30年以上,50年未満として契約されるもののことです。「事業用定期借地契約」では,契約の更新,建物の築造による存続期間の延長,建物買取請求権という各権利がないとの特約を付けることができます。。借地契約は賃借人の保護が強く,普通の借地契約は期間が満了しても正当理由がなければ契約を終了させることができません(更新される)。しかしすべての借地契約がそのようになると,土地の所有者が土地を貸せなくなって,貸す人にも借りる人も困ることになるので,定期で契約を終了できるパターンが三つ借地借家法に定められています。そのうちの一つがこの一般定期借地権です

時効取得(じこうしゅとく)

一定期間他人の物を占有しているとうい事実状態だけでもって,権利の取得という法的効果を認める民法上の制度です。ある人が時効取得すると,ある人は権利を失います。時効取得や時効制度は,「長年継続した事実状態の尊重」「もはや真実の権利関係の立証が困難である」「権利の上に眠る者は保護しない」といった理由から認められていると解釈されています。20年間占有して時効援用の意思表示をするか,10年間無過失で占有して時効援用の意思表示をすると取得時効が認められます。なお,時効の効果は時効期間の起算日に遡りますので,例えば占有中の土地の利用から得られた収益(法定果実)は,時効取得をした人がそのまま取得します。

死後事務(しごじむ)

人が亡くなった後の葬儀,埋葬,死亡届の提出といった諸手続や,家の片付けなどの事務全般のことです。例えば不動産や預貯金といった遺産の相続手続は,遺言で決まっていればそのとおりに,遺言がなければ法律どおりに相続手続をしますが,宗教的なことや,行政の手続,その他身の回りの片付けなどは,基本的にこれに含まれません。相続遺言で処理できること以外で必要になる死後の手続が「死後事務」です。死後事務について,親族等に任せられる方は問題ありませんが,身寄りがなかったり,特定の人に権限を任せたいときは,「死後事務委任契約」という契約を締結することになります。

死後事務委任契約(しごじむいにんけいやく)

人が亡くなった後の葬儀,埋葬,死亡届の提出といった諸手続や,家の片付けなどの事務全般のことを他人に任せる委任契約のことです。死後の財産の処分については遺言書で決めることができますが,遺言書に書けること(遺言事項)は法律で決まっていて,それ以外のことを書いても法律的には効力がありません。そこで,遺言書に書いても法的効力がないような,葬儀,埋葬,死亡届の提出,家の片付けといった事務一式について特定の人に任せたい場合,「死後事務委任契約」を締結しておく必要が出てきます。死後事務委任契約は委任契約です。委任契約は,一般的に,委任者の死亡によって契約が終了しますが,死後事務委任契約には,「委任者の終了によっても契約は終了しないという特約」を付けます。民法には契約自由の原則という考え方がありますので,このような契約ができます。

死後認知(しごにんち)

父親の死亡後に,非嫡出子と自然血縁関係にある父親との間の親子関係を成立させる法制度のことです。認知とは,父親と非嫡出子との間の親子関係を成立させる意思表等のことですが,認知には,任意認知と強制認知の二種類があります。任意認知とは,文字通り,父親の任意の意思表示で行われる認知のことで,生前に自分で戸籍届出をする認知と,遺言による認知があります。強制認知とは,家庭裁判所に訴えてする認知です(認知の訴え)。子又は一定の関係者が,父を訴えます。父の生前にするのが原則ですが,父が死亡してから3年以内であればできます。「死後認知」とは,死後に行われる認知のことですから,任意認知のうち遺言で行われるものと,強制認知のうち死後に行われるものをいいますが,特に後者のみを指して死後認知ということもあります。

事実婚(じじつこん)

法律婚に対比できる言葉で,市町村役場に婚姻届を出して法律上の婚姻をしているわけではないが,社会慣習上,婚姻をしているのと同様の事実状態にある男女関係のことです。内縁関係とほぼ同じ意味です。この事実婚に,どれだけの法的な保護を与えるのか(事実婚の成立や解消の際にどの程度法律婚と同じような取扱いをするのか)ということが問題になります。例えば,事実婚を生前に解消する場合,離婚と同様の取扱いを受けます。つまり,財産分与や慰謝料請求権が認められます。一方,事実上の配偶者(内縁配偶者)には相続権がありません。その他,借家権や遺族給付など,法律で特別の手当てがされているものもあります。

事実上の養子(じじつじょうのようし)

市町村役場に養子縁組の届出をしていないが,社会慣習上,人と人とが,法律上の親子と同様の事実状態にある場合における,その子のことです。事実婚,内縁関係の親子版と考えていただければ分かりやすいでしょう。一番問題になるのは,事実上の養子には,親の相続権がないことです。子として親の相続人になるには,必ず養子縁組の届出をする必要があります。

自然血族・法定血族(しぜんけつぞく・ほうていけつぞく)

自然血族とは,生理的に血筋のつながっている血縁関係のことです。親,子,祖父母,兄弟姉妹などです。法定血族とは,養子縁組という法律上の手続をすることにより,自然血族と同様の法律上の取扱いを受ける血縁関係のことです。民法上,6親等までの血族(自然血族・法定血族)と3親等までの姻族そして配偶者を,「親族」といいます。

実印(じついん)

印鑑登録制度にしたがって行政機関に登録した印鑑のことです。個人の印鑑登録は条例が定める方法にしたがって市町村に、法人の印鑑登録は商業登記法が定める方法にしたがって法務局に行います。印鑑を登録した市町村や法務局は、申請に応じて、登録した印鑑(実印)の印鑑証明書を発行してくれます。不動産の所有権移転登記や相続登記、遺産の相続手続、住宅ローンの契約その他財産に関する重要な手続きをする際には、通常、関係書類に実印を押して、印鑑証明書を提出することが必要です。

実子(じっし)

生理的に血のつながった子のことです。自然的血縁のある子ともいいます。ちなみに、自然的な血縁のない法的な子のことを養子といいます。「実子」は、父母の婚姻関係によって生まれた「嫡出子」と、父母の婚姻関係によらない「非嫡出子」とに分かれます。

失踪宣告(しっそうせんこく)

ある人が一定期間行方不明で,生きているか死んでいるか分からない場合に,裁判所の決定によってその人を法律上死んだとみなす制度です。生死不明の状態が長く続くと,その人の財産や関係者の身分関係が放置されて困るので,一定の要件を定めて人を法律上死亡したことにできる制度が用意されています。失踪宣告が出されると,その人は死んだものとみなされるので,財産の相続や,婚姻の終了といった身分関係が生じます。なお,失踪宣告には,行方不明の期間が7年間の普通失踪と,1年間の特別失踪があります。特別失踪は,船舶の沈没などの際に認められるものです。

自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)

民法に定められた普通方式の遺言のうちもっともシンプルなもので、自分で書く遺言書です。自分の腕で直接書くので「自筆証書遺言」といいます。有効に自筆証書遺言をするには、「全文」「日付」「氏名」を「自書」して、これに「押印」をします。方式が簡単であるだけに、法律知識がない人が作成すると、内容どおりに実行できない遺言書になる危険性があります。なお、自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所に提出して、「検認」の手続きをする必要があります。

死亡(しぼう)

人が死ぬことです。人が死ぬことと法律との関係をいくつか紹介します。

1 人が死んだら法的にどうなるか
民法上は、権利能力を失います。権利義務を持つことはできなくなります(権利義務の主体ではなくなる)。つまり民法上人ではなくなります。死亡によって、配偶者があるときは婚姻関係が解消し、また相続が開始します。
刑法上は、生きている人を対象とした犯罪の客体となる能力を失います。保護法益が著しく減少し、以降適用される刑罰が死体損壊など一部に限定されます。
その他、一定期間内に戸籍法による死亡届を提出し、各種の私的公的な手続きをする義務が生じます。

2 いつ人が死んだと考えるか
三徴候説(呼吸・心臓・瞳孔)が通説ですが、脳死説も有力です。なお、臓器移植法は、脳死説にもとづいて立法されています。

3 死亡を確認できなくても法律上死んだと取り扱われる制度
民法には、「失踪宣告制度」があります。長い間生死が分からない人を裁判所が死んだと見做して法律関係を整理する制度です。
戸籍法には、「認定死亡制度」があります。災害(水害、火災等の事変)時に死体が確認できなくても、災害によって死亡したことが確実である場合は、捜査機関の認定と市町村への報告によって死亡を推定して、戸籍上死んだと取り扱う制度です。

死亡一時金(しぼういちじきん)

国民年金の1号被保険者として3年以上保険料を納めた人が亡くなった場合に、生計を同じくしていた遺族(受け取れる人の順番が決まっています)に対して支給される金員です。ただし、以下の場合には支給されません。

・死亡した人が老齢基礎年金や障害基礎年金をもらっていた場合
・遺族が遺族年金をもらうことができる場合

死亡危急者遺言(一般危急時遺言)(しぼうききゅうじゃいごん(いっぱんききゅうじいごん))

特別方式の遺言のうち,疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者がすることができる遺言です。「死亡危急者遺言」は「一般危急時遺言」ともいいます。証人3人の立会いが必要で,証人に遺言の趣旨を口授して,その証人が書面化します。家庭裁判所の「確認」手続も必要です。
なお,遺言の方式は以下のように分類できます。

普通方式
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別方式
危急時遺言
死亡危急者遺言(一般危急時遺言)
船舶遭難者遺言(難船危急時遺言)
隔絶地遺言
伝染病隔離者遺言(一般隔絶地遺言)
在船者遺言(船舶隔絶地遺言)

司法書士(しほうしょし)

法務省が管轄する司法関係の書類作成に関する国家資格です。法務局に対する不動産や会社の登記申請の代理、裁判所に提出する書類の作成一般、少額紛争の訴訟代理関係、成年後見をはじめとした他人の財産管理などを業務として行います。法的書類作成と財産管理の専門家です。司法書士の資格や業務など詳しいことについては、司法書士法という法律に定められています。

死亡退職金(しぼうたいしょくきん)

民間企業の場合は就業規則などにより、公務員の場合は法律や条例により、労働者の死亡退職の際に遺族に支給される退職金です。支給順位が決まっている場合は民法上相続財産になりません。支給順位が決まっていない場合も、相続財産にならないという考え方が一般的です。もっとも、相続税法上は課税対象になります。死亡後3年以内に確定する死亡退職金が課税対象になりますが、法定相続人の数に500万円を乗じた金額までは非課税になっています。

死亡届(しぼうとどけ)

人が死亡したときに戸籍法にしたがって市町村にする届出です。人が死亡したときは、戸籍法による届出義務者は、死亡の事実を知った時から7日以内に、死亡年月日と場所などの届出をしなければいけません。届出義務者とは、同居の親族、その他の同居者、家主、地主、土地家屋の管理人です。死亡届には、原則として、死亡診断書か死体検案書を添付します。

借地権(しゃくちけん)

「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」のことです。賃貸借契約や地上権設定契約については民法に決まりがありますが、特に、土地の上に建物を建てて所有することを土地の利用目的にした賃貸借契約と地上権設定契約については、「借地借家法」という特別の法律で規制されています。このような契約は、主に人の住居に関わることが多いので、賃借人(借主)などの生活が簡単に脅かされることがないように、基本的には、賃借人などの権利を保護する内容で借地借家法が作られています。例えば、契約の存続期間が最低30年以上になったり、借地権の登記が不要とされたり、賃貸人(貸主)正当理由がなければ契約更新を拒絶できないなどです。

借地借家法(しゃくちしゃくやほう)

借地人や借家人を保護するためにある民法の特別法です。一般に、地主や大家に比べて、借主の立場は弱いので、借主の権利を守る必要があることから、借地や借家の賃貸借契約などについて特別の法律が用意されています。借地借家法が適用になる契約は、「建物の所有を目的とする地上権設定契約と土地の賃借権設定契約そして建物の賃貸借契約」です。したがって、駐車場契約や資材置場のための借地契約には適用がありません。借地借家法が適用になった場合、契約の存続期間、借主の権利の対抗力、契約の更新などについて強い法的な保護を受けることができます。

借家権の援用(しゃくやけんのえんよう)

内縁の配偶者が死亡して、ほかに相続人がいる場合に、内縁の配偶者が、相続人が相続した借家権を使って、変わらず同じ物件に住み続けることです。内縁の配偶者には相続権がありませんので、借家権は相続人が相続することになり、内縁の配偶者は、本来なら無権利者として物件を退去しなければならないのですが、それでは内縁の配偶者の保護に欠けることから、判例が内縁の配偶者の居住権を保護するために認めている考え方です。もっとも、借家権の援用が認められたとしても、賃料の支払いを今後誰がどうやってするのかなど問題もあります。

借家権の相続(しゃくやけんのそうぞく)

借家権とは建物の賃貸借契約の借主が持っている権利や地位のことです。借家権も財産権として相続の対象となります。つまり、借家人が亡くなった場合、相続人は、当然に借家権・借家人の地位を引き継ぎます。大家の承諾は不要です。なお、狭い意味での「借家権の相続」とは、「内縁の配偶者の借家の居住権をどのように保護するか」という問題のことを指します。内縁の配偶者には相続権がないことから、内縁の配偶者が亡くなったときに、どうやって相手方の居住の権利を保護するのかという問題が生じるのです。この点、内縁の配偶者に相続人がいないときには、相手方が「借家権を承継」できると借地借家法が定めています。つまり法律によって解決しています。内縁の配偶者に相続人がいるときは、相手方は、相続人が相続した「借家権を援用」して、居住を継続できるという最高裁判所の判決があります。判例によって最低限の保護が考えられています。

借家権割合(しゃくやけんわりあい)

相続税法上、財産的権利である借家権の価値をどのように決めるのかを計算する際に使われる固定資産税評価額に対する割合のことです。国税庁によって30%と決められています。借家権の評価は、次のような計算式で算出します。
建物の固定資産税評価額×借家権割合×賃借割合
賃借割合は次の通り決まります。
賃借している独立部分の床面積の合計/建物の独立部分の床面積の合計
なお、貸家の所有者からみた貸家の評価は、次のような計算式で算出します。
建物の固定資産評価額×(1-借家権割合)×賃貸割合
賃貸割合は次のとおり決まります。
賃貸している独立部分の床面積の合計/建物の独立部分の床面積の合計

受遺者(じゅいしゃ)

遺言者の作成した遺言で、遺贈を受ける人として定められた者のことです。受遺者は、自然人でも法人でもよく、相続人でもそうでなくてもかまいません。財産を特定した特定遺贈の受遺者を特定受遺者といい、財産の全部又は割合的な一部を遺贈する包括遺贈の受遺者を包括受遺者といいます。包括受遺者は、相続人と同一の法律的取扱いを受けます。特定受遺者は自由に遺贈を放棄できますが、包括受遺者は相続人と同一の地位に立つので、相続放棄と同様の手続をしなければ遺贈を放棄できません。なお、受遺者は、遺言の内容に関して利害関係があるので、遺言の証人や立会人になれません。つまり、遺言で財産をもらう人は証人や立会人にはなれません。

終身定期金(しゅうしんていききん)

人が死亡するまで一定期間ごとに給付される金銭のことです。民法上の終身定期金契約によって権利や義務が発生します。個人が個人の生活を契約によって保障するという使い方が本来想定されていましたが、日本ではそのような習慣は定着しないで、公的年金、生命保険会社の個人年金、企業年金などが同様の役割を果たしています。なお、相続税法上、定期金については、以下のとおり分類して財産的な評価をしています。

・有期定期金 給付期間が決まっているもの
・無期定期金 給付期間が決まっていないもの
・終身定期金 人が死ぬまで給付されるもの

修正申告(しゅうせいしんこく)

相続税や贈与税などの国税の申告をしたが、申告が間違っているなどの理由により、申告内容が過小(税金が少なすぎた)であったときに、間違いを訂正して追加で税金を支払うための手続きです。申告した納税者が自分で修正申告をする場合と、税務署の調査によって間違いを指摘され、正しく修正申告する場合があります。行政罰として「加算税」や「延滞税」が課されたり、脱税の場合は刑事罰が課されることもあります。

住宅取得等資金贈与の特例(じゅうたくしゅとくとうしきんぞうよのとくれい)

直系尊属から、20歳以上の子供に対して、住宅取得等の資金を贈与する場合に、一定金額まで贈与税が非課税になる贈与税の特例です。親や祖父母の財産を生前に子供の住宅取得資金に充当することを認めて、住宅取引や、それにともなう経済活動を活発にするために認められている特例です。直系尊属の年齢には制限がありません。子供は20歳以上で、合計所得金額が2000万円以下でなければいけません。住宅の環境性能に応じて特例を受けることができる金額が変わります。

生来嫡出子(しょうらいちゃくしゅつし)

生来嫡出子(しょうらいちゃくしゅつし)とは、生まれながらにして、嫡出子の身分を取得している子供のことです。嫡出子とは、「父母の婚姻によって」とか「法律上の婚姻関係にある男女を父母として」と表現される状態で生まれた子のことです。民法には、婚姻成立の日から200日後又は婚姻終了の日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定するという定めがあり、このような子を、「推定される嫡出子」といいます。推定される嫡出子は、最も典型的な、生来嫡出子となります。また、婚姻成立の日から200日以内に生まれた子は、民法上嫡出の推定がされず、「推定されない嫡出子」を呼ばれますが、これも生来嫡出子の取扱いをうけます。なお、生来嫡出子に対する言葉が、「準正嫡出子(じゅんせいちゃくしゅつし)」です。準正嫡出子とは、生来嫡出子ではない子供が、後になって、嫡出子の身分を取得することです。これには「認知純正」と「婚姻準正」があります。

捨印(すていん)

契約書や申込書などの書面を作成して押印する時に、後で書類の内容に間違いがあることが判明した場合に備えて、書類の欄外にあらかじめ訂正印を押印して、相手方に書類を訂正する権利を与える(相手方によって書類が訂正されることを認める)行為そのもの又はそのときに押される印鑑、印影のことです。実際に捨印を使用して間違いを訂正するには、間違いの箇所を二重線で消したりして、正しい文字を書き入れ、捨印の近くに、「何行目、何文字削除、何文字加入」などと誰が見ても訂正内容が分かるように記載します。捨印は、相手方等第三者に書類を訂正する権利を与えることになるので、重要な部分を書き換えられる危険性があります。相手方が信頼でき、合理的な理由がある場合以外は押さないほうがいいでしょう。

住民基本台帳(じゅうみんきほんだいちょう)

住民の住所を証明したり、選挙人名簿の登録、社会保険の資格事項の記載など、住民に関する事務処理の基礎とするために、市町村によって管理される公募・帳簿です。個人・世帯の住民票からできています。住民基本台帳・住民票に関する詳しことは、「住民基本台帳法」に定められています。なお、現在は外国人も住民基本台帳法の適用対象になっています。よって外国人も住民票が作られています。

住民税(じゅうみんぜい)

地方税法に定められた地方税の一種で、地方公共団体が、そこに住所や事業所などを持っている者に対して課税する税金です。住民税には、道府県民税と、市町村民税があります。東京都の場合は、都民税と、特別区民税として同様に課税されます。住民税は、1月1日現在に住所のあったところ(住民票上の住所)で課税されます。各人一定額の「均等割」と前年の所得に応じて決まる「所得割」の二つからなっていて、両方の合算金額を支払います。支払い方法は、普通徴収(請求書払い)と特別徴収(源泉徴収)とがありますが、サラリーマンや、年金収入のある人は、特別徴収(源泉徴収)になります。

受贈者(じゅぞうしゃ)

受贈者(じゅぞうしゃ)とは、贈与契約によって財産をもらう人のことです。財産をあげる人のことは「贈与者(ぞうよしゃ)」といいます。さて贈与契約は、「無償・片務・諾成」の契約です。「無償」とは、財産をもらう人は代金などを支払わないという意味です。「片務」とは片一方だけが義務を負うということです。財産をあげる側だけがあげる義務を負いますが、もらう人は何もしないので、片側だけに義務があります。「諾成」とは、申込みと承諾の意思表示だけで成立し、書面作成などは契約成立の要件ではないということです。もっとも、「書面によらない贈与」は、履行が終わった部分の除いて、各当事者がいつでも撤回できることになっています。なお、これと似た言葉に、「受遺者(じゅいしゃ)」があります。受遺者とは、遺言者の単独行為である遺言によって、財産の譲渡を受ける人のことです。死因贈与契約の受贈者は、亡くなってから財産をもらえる人という意味で受遺者と非常によく似ていますが、契約と遺言は厳密には異なります。

準確定申告(じゅんかくていしんこく)

所得税は、1月1日から12月31日までの1年分の所得とこれに対する所得税を計算して、翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署に申告納税しなければならないところ、年の途中で死亡した場合には、その人の相続人が、1月1日から死亡日までの所得などを計算して、死亡日から4か月以内に申告納税をすることになっています。これを準確定申告といいます。亡くなった人が、以下のような確定申告をしなければならない人であったときは、準確定申告もまた必要になります。

・自営業者
・給与所得が2000万円を超える人
・一つの会社からの所得以外に20万円を超えるの所得のある人

純山林(じゅんさんりん)

相続税法の財産評価上、「中間山林」や「市街地山林」に該当しない山林のことです。相続税では、山林を、「純山林」「中間山林」「市街地山林」に分けて評価をします。純山林や中間山林は、固定資産評価額に一定の倍率をかけて評価します。国税庁の財産評価基本通達では、純山林の評価は、「その山林の固定資産税評価額に、地勢、土層、林産物の搬出の便等の状況の類似する地域ごとに、その地域にある山林の売買実例価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。」と定められています。なお、市街地山林のうち、宅地に転用が見込める土地については、その土地が、「宅地であるとした場合の価額(路線価や近傍宅地から計算)」から、「通常必要となる宅地造成費相当額」を引いた金額で評価します。市街地山林のうち、宅地への転用が見込めない土地については、他の山林と同じように固定資産倍率で評価します。

純資産価額方式(じゅんしさんかがくほうしき)

相続税法上、「取引相場のない株式」の価値を評価する原則的方法の一つです。会社の総資産や負債を相続税法上の財産評価方法で評価して、それによって計算された資産から負債などを引いて会社の価値を評価します。簡単にいうと、会社を解散した場合に配当される財産をもとに計算する方式です。ところで、相続税法上、株式は、「上場株式」「気配相場等のある株式」「取引相場のない株式」に分類されます。上場株式は市場株価をもとに、気配相場等のある株式は日本証券業協会の公表取引価格などにより評価しますが、取引相場のない株式については客観的な価格がないので、国税庁が、財産評価基本通達において、会社の規模などに応じて詳しく評価方法を定めています。取引相場のない株式の評価方法には、この「純資産価額方式」のほかに、「類似業種比準方式」「併用方式」「配当還元方式」があります。

準正嫡出子(じゅんせいちゃくしゅつし)

準正嫡出子(じゅんせいちゃくしゅつし)とは、「生来嫡出子(しょうらいちゃくしゅつし)」ではない子供が、後になって、嫡出子の身分を取得することです(又は、その場合の子をさしていいます。)。これには「認知純正」と「婚姻準正」があります。嫡出子とは、「父母の婚姻によって」とか「法律上の婚姻関係にある男女を父母として」と表現される状態で生まれた子のことです。非嫡出子とは、そうでない状態で生まれた子のことです。認知純正とは、父母が婚姻してから父によって認知され嫡出子の身分を取得すること、婚姻準正とは、父によって認知された後に父母が婚姻して嫡出子の身分を取得することです。なお、「生来嫡出子(しょうらいちゃくしゅつし)」とは、生まれながらにして、嫡出子の身分を取得している子供のことです。

純農地(じゅんのうち)

相続税法の財産評価上の農地の区分の一つで、「中間農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」に該当しない農地のことです。相続税では、農地を、「純農地」「中間農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」に分類して財産の評価をしています。純農地や中間農地は、固定資産評価額に一定の倍率をかけて評価します。国税庁の財産評価基本通達では、純農地の評価は、「その農地の固定資産税評価額に、田又は畑の別に、地勢、土性、水利等の状況の類似する地域ごとに、その地域にある農地の売買実例価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。」と定められています。なお、市街地農地は、その土地が、「宅地であるとした場合の価額(路線価や近傍宅地から計算)」から、「通常必要となる宅地造成費相当額」を引いた金額で評価し、市街地周辺農地は、市街地農地の80%で評価します。

障害者控除(しょうがいしゃこうじょ)

相続税の税額控除の一つで、相続人が85歳未満の障害者であるときに、一定額を相続税額から控除できる制度です。「税額控除」とは、計算された各人の相続税額から、最後に引くことができる金額のことです。障害者控除の金額は、6万円に、障害者が85歳になるまでの年数を掛けて計算します。特別障害者の場合は、12万円を掛けて計算します。なお、相続税の税額控除には、「暦年課税分の贈与税額控除」「配偶者控除(税額軽減)」「未成年者控除」「数次相続控除」などがあります。

小規模宅地等の特例(しょうきぼたくちとうのとくれい)

相続財産のうち,相続人が引き続き居住するための宅地や事業用地について,相続税の評価額を大幅に引き下げて計算することができる相続税法上の制度です。正確には,「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」といいます。一定の規模までの住宅や事業用地は,それを引き継いだ相続人の生活を支えるものであることから,そのような財産に過大な相続税が課税されないよう配慮されています。

条件付遺贈(じょうけんつきいぞう)

遺言者が遺言によってする財産の譲渡が,一定の条件にかかっているような形式の遺贈のことです。例えば,「長男が国立大学の医学部に合格したら,大阪市内の土地を遺贈する。」というようなケースです。この場合,長男が合格すれば土地をもらえるので,「停止条件付の遺贈」です。なお,これと似たものに,「負担付遺贈」があります。負担付遺贈とは,遺贈に一定の義務の負担が引っ付いているものです。例えば,「住宅を遺贈するが,お母さんの面倒を必ずみること。」というようなケースです。条件付遺贈と,負担付遺贈の違いは,遺贈の効力が直ちに生じるかどうかです。条件付遺贈の場合は,条件が成就してはじめて遺贈の効力が生じ財産がもらえます。負担付遺贈の場合は,直ちに遺贈の効力が生じます。もっとも,負担を履行しない場合は遺贈が取り消されることがあります。

上場株式(じょうじょうかぶしき)

上場株式とは,東京証券取引所などの金融商品の取引所に上場されている株式のことです。相続税法では,株式を,「上場株式」「気配相場等のある株式」「取引相場のない株式」にわけて,財産的な評価をします。上場株式の評価は,市場価格をもとに,以下のうち最も低い価格で評価します。

・課税時期(被相続人の死亡日等)の最終価格
・課税時期にあたる月の毎日の終値の月平均額
・課税時期の前月の毎日の終値の月平均額
・課税時期の前々月の毎日の終値の月平均額

なお,気配相場等のある株式とは,日本証券業協会の登録銘柄や店頭管理銘柄あるいは公開途上にある株式をいいます。気配相場等のある株式のうち,登録銘柄や店頭管理銘柄の評価は,日本証券業協会が定めている取引価格をもとにして上場株式を同じように決まります。公開途上にある株式は,上場又は登録時の公開価格により評価します。
ちなみに,以上の評価は,あくまで相続税法上の評価方法であって,遺産分割協議をする場合などに用いる民法上の評価は,また別の方法によって行います。

自用地(じようち)

「自用地」とは,相続税法上の用語で,他人に貸さずに自分で使用している宅地のことです。他人の権利による制限がないので,その価値は比較的高く評価されます。

熟慮期間(じゅくりょきかん)

相続が開始して,相続人が,相続を承認するか,相続を放棄するかをよく考えて決めることができる期間のことです。相続人は,自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に,相続の承認をするか放棄をするかを決めなければいけません。この3か月という期間を熟慮期間といいます。通常,相続財産がたくさんあれば,相続人は,相続を承認します。負債が多く,相続財産が債務超過になっていれば,相続を放棄するでしょう。財産のことがよく分からなければ,プラス財産の範囲でマイナス財産の責任を負う限定承認という方法を選択することもできます。なお,相続を承認する場合,相続人は何もしなくてかまいません。3か月が経過すれば自動的に承認したことになります。相続の放棄や限定承認をするときは,この期間内に家庭裁判所にその旨の申述(申立て)をしなければなりません。

書画・骨董品(しょが・こっとうひん)

書道作品,絵画,陶芸品その他の美術作品全般のことです。美術作品の価値は,他の財産と比べると,客観的に算定しがたいものですが,相続税法では,以下のような方法でこれを評価しています。

・売買実例価格(実際に過去に売買されたときの価格や類似品の市場価格)
・精通者意見価格(要するに美術鑑定人等の専門家の評価額)

除籍(じょせき)

戸籍は,戸籍法によって,「市町村に本籍のある夫婦及びこれと氏を同じくする子供」の単位で作られます。結婚,離婚,養子縁組などの法律的な出来事があった場合,該当する人を,今登録されている戸籍から除く作業を行います。この,今登録されている戸籍から除かれることを「除籍」といいます。コンピュータ化されていない従来の戸籍の場合,戸籍から除かれたことを表現するために,該当者のところにバッテンが付けられますが,一度離婚をしている人をバツイチなどというのはこれが原因です。なお,戸籍に記載されている人全員が除籍になって戸籍に誰もいなくなった場合,戸籍簿は除かれて除籍簿に移されます。この場合における除かれた戸籍簿のことを,除籍と呼ぶこともあります。まとめると次のようになります。
除籍とは,

・結婚離婚などによって戸籍から除かれること
・戸籍の全員が除籍され除籍簿に移された戸籍のこと

除籍謄本(じょせきとうほん)

戸籍に記載されている人全員が結婚,離婚などによって除籍され,その戸籍に登録されている人が誰もいなくなった場合,その戸籍は除かれて,除籍簿に移されます。この除籍簿の記載事項の全部を証明した書面のことを「除籍謄本」といいます。なお,コンピュータ化されている市町村の場合は,これを除籍全部事項証明書といいますが,内容は同じです。

処分行為(しょぶんこうい)

単なる財産の保管を超えて,その財産の性質を変更する行為のことです。「処分行為」には,物理的に財産の現状を変更したり壊したりするような事実的処分行為と,不動産の所有権を第三者に移転するような法律的処分行為があります。処分行為に至らない行為を「管理行為」といいます。管理行為には,財産の現状を維持するために必要な「保存行為」と,財産の性質を変えない範囲で財産を使用する,利用・改良行為との両方を含みます。ただし,保存行為と管理行為を分けて使用するケースもあります。
なお,保存行為,管理行為,処分行為は一応以下のように分類できますが,どのような事実行為や法律行為がそれに該当するのかは,判例や裁判例,解釈によって定まります。

保存行為 財産の現状を維持するために必要な行為
管理行為 財産の性質を変更しない範囲で利用・改良する行為
処分行為 財産の性質を変更する行為

所得税(しょとくぜい)

広い意味では,所得に対して課される租税をいいます。狭い意味では,個人の所得に課される租税であって,国税として所得税法に規定のある税のことをいいます。日本では,法人の所得には,法人税法にもとづいて法人税が課税されます。

所有権移転(しょゆうけんいてん)

物の所有者が変わることです。もう少し正確にいうと,所有権の権利主体が変わることです。民法は,人の持つ権利を,大きく,「物」に対する直接支配権と,「人」に対する行為請求権に分けています。前者を「物権」といい,後者を「債権」といいます。物権にはいろんな種類がありますが,その中でもっとも強くて万能な権利が所有権です。所有権を持っている人は,対象となっている物を,使用したり,人に貸して収益したり,人に売ったり捨てたりして処分することができます。他の人に所有権を売った場合(売っても,贈与しても,交換してもいい),所有権を持っている人が変わります。これを,権利主体が変わると表現します。所有権移転とは,物権のうちの所有権の権利主体が他の人に代わることを指した言葉です。

人事訴訟(じんじそしょう)

婚姻や養子縁組,親子関係といった人の身分関係の紛争を解決する特別の民事訴訟のことです。民事訴訟の一種ですが,民事訴訟法のほかに,特別法である人事訴訟法が優先して適用され,通常の民事訴訟とは手続に違いがあります。通常の民事訴訟の場合,紛争の当事者が主張した事実や証拠のみにもとづいて裁判所が判断をし,裁判所が積極的に口出しすることはありません。紛争解決の資料は当事者が用意するのが公平だからです(弁論主義)。そして結論として出された判決は基本的に当事者だけを拘束します。しかし,身分関係の争いは,金銭の貸し借りなどといった経済取引とはかなり性質が違うので,人事訴訟という特別の仕組みが用意されているのです。具体的には,まず,人事訴訟法が適用になる事件については,話合いで解決するのが何よりであることから,いきなり訴訟を提起することはできず,家事事件手続法にもとづいて,まず家庭裁判所で調停を試みる必要があります。調停ができない場合に訴訟ができます。訴訟資料は一定の範囲で裁判所が積極的に収集します(職権探知主義)。そして結論としての判決は,当事者にだけではなく,第三者に対しても効力があります(対世効)。「離婚が成立した」などという事実は一つでなければならないからです。

親族(しんぞく)

親族とは,民法上,6親等内の血族,3親等内の姻族そして配偶者のことを言います。親等とは親族関係の距離を測る単位で,直系の場合は世数により,傍系の場合は一度共通の先祖の世代に上って,再び世代を降りた数を足して計算します。血族には自然血縁関係による自然血族と,養子縁組による法定血族を含みます。

親等(しんとう)

民法上の親族関係の遠近(距離)を測る単位・基準のことです。直系の場合は世数により,傍系の場合は一度共通の先祖の世代に上って,再び世代を降りた数を足して計算します。具体的には,親は1親等,祖父母は2親等,兄弟は2親等,叔父叔母は3親等,いとこは4親等になります。

審判前の保全処分(しんぱんまえのほぜんしょぶん)

家庭に関する紛争が当事者間で解決できない場合,最終的には家庭裁判所の審判等によって,法的に,紛争を解決することになりますが,裁判所の家事審判が出る前に,相手方によって財産隠し等が行われることがあります。これを未然に防ぎ,相手の財産をロックしたりする制度が,「審判前の保全処分」です。従来の法律では,家庭裁判所に家事審判の申立てがされていることが審判前の保全処分をしてもらうための要件でしたが,法律の改正によって,家事審判をすることができる事件について家事調停の申立てがされていれば,審判前の保全処分をしてもらうことができるようになりました。申立てることができる審判前の保全処分は以下のとおりです。

・財産の管理者の選任
・財産の管理又は本人の監護に関する指示
・後見(保佐,補助)命令
・本人の職務の執行停止又は職務代行者の選任
・仮差押え,仮処分その他の必要な保全処分
・養子となる者の監護者選任
・児童の保護者に対する児童との面会,通信の制限

審判分割(しんぱんぶんかつ)

家事事件手続法にもとづき,家庭裁判所の家事審判によって裁判所に決めてもらう
遺産分けの方法です。裁判所の審判によって行う遺産分割ですから,これを「審判分割」と呼びます。通常相続が開始して,相続人が複数いる場合,その共同相続人間の話合いで遺産分けをします。この話合いを遺産分割協議といい,話合いでする遺産分割の方法のことを「協議分割」といいます。通常話合いがうまくいかない場合,相続人は,まず家庭裁判所に調停を申し立てます。調停とは,裁判所でする話合いのことです。これで話がまとまれば,調停調書という書類を作って遺産分割は終了しますが,そのような方法でする遺産分割の方法を,「調停分割」といいます。ところで,遺産分割の方法は,被相続人が遺言で指定することもできます。遺言によって遺産分割の方法が決まっているようなケースを,「指定分割」といいます。

推定される嫡出子(すいていされるちゃくしゅつし)

嫡出子とは,両親の法律上の婚姻関係から生まれた子供のことをいいますが,一定の場合には,この嫡出子であることが民法によって推定されます。この嫡出性の推定が及ぶ子供のことを「推定される嫡出子」といいます。具体的には以下のとおりです。

・妻が婚姻中に懐胎した子
・婚姻の成立の日から200日後に生まれた子
・婚姻終了の日から300日以内に生まれた子

なお,父親がこの嫡出の推定を覆すには,「嫡出否認の訴え」という特別の訴えによらなければなりません。

推定されない嫡出子(すいていされないちゃくしゅつし)

嫡出子とは,両親の法律上の婚姻関係から生まれた子供のことをいい,以下のような場合は,嫡出子であることが法律上推定されます。

・妻が婚姻中に懐胎した子
・婚姻の成立の日から200日後に生まれた子
・婚姻終了の日から300日以内に生まれた子

ところで,婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は,両親の婚姻後に生まれた子ですから,戸籍には夫婦の実子として記載されますが,法律上の嫡出推定はされません。例えば婚姻から3日後に生まれた子は,夫婦の子として登録できますが,婚姻前は自由恋愛が可能なことに鑑みて,法律上夫婦の子である推定まではしていません。このような,法律上の嫡出推定はされないが,嫡出子として戸籍登録ができるような子のことを,「推定されない嫡出子」といいます。
なお,父親が子の嫡出関係を争うには,「親子関係不存在確認の訴え」を提起すれば足り,「嫡出否認の訴え」のような特別の制限は受けません。

推定の及ばない子(すいていのおよばないこ)

形式的には法律上の嫡出推定が及んでいるが,そもそも推定の前提条件を欠いていて,推定を及ぼすことが妥当ではない子のことです。
さて,嫡出子とは,両親の法律上の婚姻関係から生まれた子供のことをいい,以下のような場合は,嫡出子であることが法律上推定されます。

・妻が婚姻中に懐胎した子
・婚姻の成立の日から200日後に生まれた子
・婚姻終了の日から300日以内に生まれた子

ところで,婚姻成立の日から250日後に子供が生まれたが,そもそも性交渉によって懐胎可能な期間中,父親となるべき男性がずっと刑務所に収監されていた場合はどうでしょうか。この場合,形式的には嫡出推定が及びますが,子がこの男性の実子であるはずがありません。よってこのようにして生まれた子を「推定の及ばない子」として,「推定される嫡出子」と区別しています。

推定相続人(すいていそうぞくにん)

ある人が今死亡したら,相続人になるような立場の人を「推定相続人」といいます。相続は,人の死亡によって開始するので,実際にその人が死亡するまで,相続人は確定しません。先に推定相続人のほうが死亡したり,推定相続人が相続欠格に該当したり,相続人廃除の審判が出されて,相続人が変更になることもあるからです。よって,推定相続人の立場は単なる「期待権」に過ぎず,推定相続人であることによって直ちに何らかの権利を行使できるものではありません。

生前贈与(せいぜんぞうよ)

贈与者(財産をあげる人)と財産をもらう人との間の贈与契約であって,生前に契約の効力が生じるもののことをいいます。同じ贈与契約であっても,贈与者の死亡とともに効力が生じるもののを,「死因贈与」といい,「生前贈与」と区別されます。生前贈与をするには,以下のようなことに注意する必要があります。

1 民法上(相続法)の問題
・生計の資本としての贈与(端的には多額のもの)は,相続分を考える際に,特別受益の問題が生じること。つまり,後から差し引き計算するのが原則であること。
・贈与者の死亡から1年以内にしたものは,遺留分算定の基礎となる財産に含まれること(受贈者が相続人であるときは,1年より前にしたものでも,特別受益に該当して,遺留分の計算に影響を及ぼすこと)。
2 贈与税の問題
・年間110万円までは自由に贈与できること(基礎控除)。
・それを超えると贈与税が課税されるが,以下のうち要件を満たすものには特例があること。
夫婦間の居住用不動産の贈与
住宅取得等資金贈与
教育資金贈与
相続時精算課税
・死亡の時から3年以内にしていたものは,相続税の対象となる遺産として戻し計算すること。

精通者意見価格(せいつうしゃいけんかかく)

税務当局が財産評価をするときに使用される言葉で,専門的な知見を用いなければ財産の評価をすることが難しい場合に,各種の専門家の鑑定結果などによって得られた財産の価格のことです。不動産であれば不動産鑑定士等,書画・骨董品であれば美術鑑定人等の意見もとに算出された価格がこれにあたります。

成年後見監督人(せいねんこうけんかんとくにん)

文字通り,成年後見人を監督する人のことです。
判断能力の不十分な人は1人で法律行為ができませんから,裁判所によって,これらの人の法律行為や財産管理を援助する人を選任します。これが成年後見制度です。
成年後見制度は,本人の判断能力に応じて三種類に分かれます。本人の判断能力が,常時,ほとんど期待できない場合は,本人に代わってすべての法律行為や財産管理を行う後見人が選任されます。
後見人の権限は非常に大きいので,きちんと財産管理等が行われないと,本人に損害が生じます。よって,後見人の能力等に不安があるときや,後見人が不正をしていると疑われるときなどに,裁判所は「成年後見監督人」を選任して,後見人の事務の監督や調査をさせることができます。
成年後見監督人は,後見人の事務を監督するほか,後見人と本人の利害が対立する行為について後見人に代わって本人を代理します。また後見人に不正があるときは,後見人の解任を裁判所に請求したりします。

成年後見制度(せいねんこうけんせいど)

判断能力が不十分なことにより1人で法律行為や財産管理ができない人がいる場合に,その人を援助する人を法的に選任して,判断能力の不十分な人が適正に社会生活を送れるようにする制度です。
日本の法律は,ちゃんと物事を判断する能力のある人が,他の人と契約などの法律行為をした場合にだけ,その結果に法的な効力を認めています。物事が分かってやったからこそ責任を負うことができるという考え方です。しかし社会には判断能力の不十分な人もいます。このような人が法的な行為ができないといけませんので,援助する人を付けることによって,正規に法的な行為ができる仕組みを作っているのです。
成年後見制度は,判断能力が衰える前に,自分の意思で援助する人を決めておく「任意後見制度」と,判断能力が衰えた後に,裁判所が援助する人を決める「法定後見制度」に分かれます。
法定後見制度は,本人の判断能力の程度に応じて,「後見」「保佐」「補助」の制度に分かれます。それぞれ本人ができること,援助者ができることが違います。可能な限りで本人の意思を尊重しようという法律の考え方にもとづいています。
なお,「成年後見制度」に対応する言葉は,「未成年後見制度」です。親権者がいない場合などに,裁判所が未成年者に後見人を付けます。

成年後見登記事項証明書(せいねんこうけんとうきじこうしょうめいしょ)

本人に成年後見人等が付いているのかいないのか,いる場合はそれが誰で,どのような権限があるのかを,国(法務局)が公的に証明した書類です。
判断能力が不十分な人は1人で正しく契約などの法律行為ができませんから,後見人などの援助者が選ばれて,本人を援助することになっています。例えば,認知症で本人の判断能力がまったく無くなったときは,裁判所によって本人のために成年後見人が選ばれて,本人に代わって契約などの法律行為を行います。
成年後見人が選ばれると,法務局に成年後見登記がされます。本人に成年後見人が付いてることを明らかにするためです。
成年後見人は,本人に代わって法律行為をしたり,本人の財産を管理したりしますが,相手方に自分が成年後見人であって,本人の正規の代理人であることを証明しないといけません。相手方は,それを見て,成年後見人を名乗る人と取引していいかどうかを決めるのです。

成年後見人(せいねんこうけんにん)

判断能力の不十分な人は1人で確実に契約などの法律行為をすることはできません。法律は,ちゃんと自分で判断できる人がした行為にだけ,法的な責任を発生させるという考え方をとっているからです。判断能力が不十分な人には,法的な援助者をつけて,こららの人が正しく法律行為をすることができるような仕組みを用意しています。これが「成年後見制度」です。
成年後見制度には,判断能力が衰える前に,契約によって,自分で援助者を決めておく「任意後見制度」と,判断能力が衰えた後に,裁判所によって,援助者を決めてもらう「法定後見制度」があります。
法定後見制度は,本人の判断能力の程度に応じて,「後見」「保佐」「補助」に別れ,できるだけ本人に残っている能力を活かすような仕組みになっています。種類ごとに,本人ができること,援助者ができることが違うのです。
さて,「成年後見人」とは,法定後見のうち,本人が,後見の程度にある場合に,裁判所によって付けられる援助者であり,本人の法定代理人です。後見の程度とは,本人に法的な判断能力がまったくないのが常であるようなケースです。この場合,本人はまったく法律行為ができないので,成年後見人がすべての法律行為や財産管理を代わって行います。つまり成年後見人は,法律行為や財産管理に関しては,完全に本人に成り代わって代理するのです。

成年被後見人(せいねんひこうけんにん)

成年後見制度のうち,法定後見制度の後見の類型にあると裁判所に判断され,援助者として後見人が選ばれる場合の,その本人のことです。成年被後見人になるのは,判断能力がまったくない状態が日常的であるような人です。このような人は,自分1人で,契約などの法律行為や財産管理をすることは不可能ですから,後見人が完全に本人に成り代わってこれらのことを法的に代理します。
ちなみに,成年後見制度には,判断能力が衰える前に,契約によって,自分で援助者を決めておく「任意後見制度」と,判断能力が衰えた後に,裁判所によって,援助者を決めてもらう「法定後見制度」があります。
法定後見制度は,本人の判断能力の程度に応じて,「後見」「保佐」「補助」に別れ,できるだけ本人に残っている能力を活かすような仕組みになっています。種類ごとに,本人ができること,援助者ができることが違います。

節税養子(せつぜいようし)

文字通り,実親子関係と同じような実体がないのに,節税のためにされる養子縁組のことです。節税とは,相続税の節税です。よく孫が祖父の養子に入ります。
相続税には基礎控除というものがあり,ある程度の財産までは税金がかかりません。資産があまりない人の相続から税金をとらないようにする配慮です。平成27年の相続から,この基礎控除の額は,次の式で計算する金額になります。「3000万円+(法定相続人の数×600万円」
さて,子供は法定相続人になります。よって,子供の数が多ければ,相続税が課税されない基礎控除の額が増えるのが分かります。ただし,これを無制限に認めると相続税の課税逃れが横行するため,現在の法律では,実の子がいる場合は養子は1人まで,実の子がいない場合は養子は2人までの分しか,基礎控除の勘定に入れることが認められません。もっとも,これはあくまで税法上の話で,民法上は養子の数に制限はありません。

在船者遺言(船舶隔絶地遺言)(ざいせんしゃいごん(せんぱくかくぜつちいごん))

特別方式の遺言のうち,船舶中にあって陸地と離れたところある者がすることができる遺言です。船長又は事務員に加えて、証人2人以上の立会いが必要です。
なお,遺言の方式は以下のように分類できます。

普通方式
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別方式
危急時遺言
死亡危急者遺言(一般危急時遺言)
船舶遭難者遺言(難船危急時遺言)
隔絶地遺言
伝染病隔離者遺言(一般隔絶地遺言)
在船者遺言(船舶隔絶地遺言)

船舶遭難者遺言(難船危急時遺言)(せんぱくそうなんしゃいごん(なんせんききゅうじいごん))

特別方式の遺言のうち,船舶が遭難したため,船舶中で死亡の危急に迫った者がすることができる遺言です。「船舶遭難者遺言」は「難船危急時遺言」ともいいます。証人2人の立会いが必要で,証人に遺言の趣旨を口授して,その証人が書面化します。家庭裁判所の「確認」手続も必要です。
なお,遺言の方式は以下のように分類できます。

普通方式
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別方式
危急時遺言
死亡危急者遺言(一般危急時遺言)
船舶遭難者遺言(難船危急時遺言)
隔絶地遺言
伝染病隔離者遺言(一般隔絶地遺言)
在船者遺言(船舶隔絶地遺言)

全面的価格賠償(ぜんめんてきかかくばいしょう)

一つの物を複数人で共有している場合にこの共有物を分割する方法の一つとして認められている方法です。
物の共有者は,いつでも共有物の分割を請求することができます。共有者間でどういうふうに分割するか話合いがつけばいいのですが,話合いがつかない場合,裁判所に共有物分割の請求をすることができます。
共有物分割の方法には,次のものがあります。

・現物分割 まさに現物を分けることです。土地であれば分筆をしてそれぞれが所有します。
・代金分割 物を売却して代金を分けることです。
・価格賠償 ある人が物の所有権を取得して,他の人にはお金を払うやり方です。このうち,1人が所有者になって,他の共有者全員にお金を払う場合のことを,「全面的価格賠償」といいます。全面的価格賠償は,判例によって認められていて,次のような要件を満たした場合だけできることになっています。

・共有物の性質及び形状・共有者の数及び割合・共有物の利用状況などを総合的に考慮し、全面的価格賠償が相当であると認められること
・共有物の価格が適正に評価されること
・当該共有物を取得する者に支払能力があること
・他の共有者にその持分の価格を取得させることが共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存在すること

葬祭費(そうさいひ)

一般的な意味では,葬儀費用などのことを意味しますが,ここで説明するのは,保険制度によって,被保険者の死亡時に給付される金員のことです。
国民健康保険,後期高齢者医療制度,健康保険などでは,被保険者などが死亡したときに,埋葬を行った人に対して,「葬祭費」や「葬祭料」,「埋葬料」などの名目で一定の金員が支給されることになっています。例えば,国民健康保険の被保険者が死亡したときは,埋葬を行った喪主に対して,葬祭費として5万円が支給されます。

葬儀費用(そうぎひよう)

葬儀費用とは,文字通り,葬儀葬式に費やされるお金のことです。葬儀屋さんや葬祭会館に支払う費用,飲食接待費用,寺院の費用などのことです。
法律的には,この葬儀費用を誰が負担するのかが問題になります。今のところ,この葬儀費用は,「喪主」が負担すべきだと考えられています。葬儀を主宰して,司っているのは喪主だからです。
なお,葬儀の時に参列者から支払われる「香典」は,喪主に対する贈与だと考えられています。ただの贈与ではなく,葬儀費用に充ててもらうことを前提にした贈与です。

相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)

ある相続の開始前の10年以内に,この被相続人が相続人となって財産を取得している場合に,今回の相続の相続税を軽減してくれる相続税法上の制度です。例えば父親が亡くなって妻と子供が相続し,相続税を支払っているとします。その後すぐに母親が無くなった場合にも相続税がかかるとします。このケースにおいて,両方の相続に通常どおり相続税を課税するとこの家族の負担が大きいので,今回の母親の相続については,父親の相続のときに支払った相続税の一部を額を引いて,相続税の支払い額を軽減してくれるものです。

相続(そうぞく)

一般的には,ある人間が持っている権利や義務を包括的に別の人に引き継いで承継させる法的な仕組みのことです。ただし,現在の日本の法律では,もう少し範囲が狭くなります。つまり,「人の死亡を原因として,亡くなった人の財産的な権利義務を,包括的に一定の範囲の相続人に承継すること」です。以下,現在の日本の法律にいう「相続」について若干説明します。
相続は,人の死亡によって開始します。人が死亡すると,その人の持ってた財産的な権利義務が全部一定の範囲の相続人に引き継がれます。ただし,亡くなった人の一身に専属した権利義務は相続されません。その人しかできないものは引継ぎようがないからです。相続人には,相続分という取り分があります。誰が相続人になるかによって,取り分の割合は変わります。相続人は,遺産分割という遺産分けにより,個別の財産の具体的な分配を受けます。
相続の仕組みは,次のような目的のためにあると考えられています。

・遺族の生活を保障するため
・相続がないと財産が宙に浮くので国がこれを管理して再分配するのが面倒だから

なお,日本の相続は,遺言書があれば大幅に内容が修正されます。遺言による相続を,遺言相続といいます。遺言相続は,法定相続に優先します。
ちなみに,戦前の日本の法律では,財産以外の身分なども相続の対象になりました。「家督」「家」「戸主権」などというのがそれです。

相続開始原因(そうぞくかいしげんいん)

現在の日本の法律における相続開始原因は,「人の死亡」です。人の死亡のみが,唯一の相続開始原因です。
相続とは,人の死亡を開始原因として,亡くなった人が持っていた,財産に関する権利義務を,包括的に一定の範囲の相続人に引き継がせる法律的な仕組みです。
なお,戦前の日本の民法では,相続開始原因は,人の死亡だけではありませんでした。次のような事柄も相続開始原因とされていました。

・死亡
・隠居
・国籍喪失
・戸主の婚姻,縁組の取消しによる去家
・女戸主の入夫婚姻,入夫戸主の離縁

相続回復請求権(そうぞくかいふくせいきゅうけん)

正規の(真正)相続人が,見せかけだけの偽者の(表見相続人)に対して,相続権の確認を求めるとともに,相続権の侵害を廃除して,相続財産の一括返還など,相続権の回復を求める権利のことです。民法884条には,以下のように書かれています。
民法884条
相続回復の請求権は,相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは,時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも,同様とする。
この請求権は何のために認められているのか,なぜ5年の短期の消滅時効にかかるのかなど,昔から法律家の間でいろんな議論のある権利です。

相続欠格(そうぞくけっかく)

本来なら法定相続人になる人が,ある事実に該当することによって,法律上当然に相続人にならなくなる制度のことです。民法891条に詳しく書いてありますが,簡単にまとめると以下のとおりです。

・故意に被相続人や相続で優先する人を殺し,殺そうとしたため,処罰された人
・被相続人が殺されたことを知ったのに,告訴告発しなかった人
・詐欺や脅迫によって被相続人の遺言書作成行為に関与した人
・被相続人の遺言書を偽造変造したり隠したりした人

相続財産(そうぞくざいさん)

被相続人が遺した相続人に引き継がれて相続される財産のことです。遺産とほぼ同じ意味です。厳密には,故人から見た場合が遺産であり,相続人から見た場合が相続財産だとされています。
民法には,「相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし,被相続人の一身に専属したものは,この限りではない」と書いてあるので,被相続人の一身に専属するものでない限り,財産に関するいっさいの権利や義務が相続財産になることが分かります。プラスの財産(積極財産)も,マイナスの財産(消極財産)も全部相続財産になります。具体的には,以下のようなものがあげられます。

債権的なもの
・金銭債権など債務一般
・借地権や借家権
・預貯金
・受取人が亡くなった人になっている生命保険
・株式(株主としての地位)
・信用金庫の社員権
・権利能力なき社団の社員権
・株主制又は契約で相続が認められている預託制のゴルフ会員権
・有価証券
・狭義の著作権
・工業所有権(特許,実用新案,意匠,商標)
・形成権(取消権,解除権,債権者取消権,遺留分減殺請求権など)
・契約上の地位

債務
・債務一般

物権
・占有権
・所有権
・用益物権(地上権,永小作権,地役権)
・担保物権(抵当権,質権,留置権,先取特権)
・その他の担保権(仮登記担保,譲渡担保)

相続財産管理人(そうぞくざいさんかんりにん)

人が死亡して,その人に相続人がいるかどうか明らかでないときに,利害関係人の申立てによって,家庭裁判所が選任する財産の管理人のことです。人が死亡して,相続人がいないかもしれない場合は,相続財産は法律上法人として扱われます。これを「相続財産法人」といいます。この法人として扱われる相続財産をまとめて管理するのが相続財産管理人です。相続財産管理人には,弁護士や司法書士といった法律専門職が選ばれることが多いです。相続財産管理人は,引き続き相続人を探すほか,亡くなった人に請求権を持っていた債権者を探して弁済したり,財産を売却処分してお金に代えたりといった財産の管理清算業務をします。業務が終わって財産が残れば,国に引き渡します。

相続財産法人(そうぞくざいさんほうじん)

相続人がいるかどうか明らかでない場合における相続財産一式のことです。
ある人が死亡して相続人がいるかどうか分からない場合があります。このような状態のことを,法律上,「相続人不存在」といいます。相続人不存在の状態になると,相続財産は宙ぶらりんになって,非常に困ります。だから,法律は,こういう状態の財産は一式まとめて「相続財産法人」という法人になると決めたのです。法人にすれば,これを管理する役員,つまり財産の管理人を選んで一括管理させることで,財産が宙ぶらりんになることを防げるからです。この管理人のことを,「相続財産管理人」といいます。相続財産管理人には,弁護士や司法書士といった法律専門職が選ばれることが多いです。
相続財産管理人は,引き続き相続人を探すほか,亡くなった人に請求権を持っていた債権者を探して弁済したり,財産を売却処分してお金に代えたりといった財産の管理清算業務をします。業務が終わって財産が残れば,国に引き渡します。

相続させる遺言(そうぞくさせるいごん)

遺言者が遺言書で,「相続させる」と書いた場合に,この文言の解釈をどうするかというのが,相続させる遺言の問題として議論されてきた話です。文字通り相続と解釈するのか,遺贈として解釈するのかが問われました。これをどちらに解釈するかによって,放棄する場合の手続や,不動産登記をする場合の手続が大きく変わってくるのです。ただ,現在では,だいたいの解決がついています。

・法定相続人に,割合的に,相続させるとした場合
例「長男に2/3,長女に1/3の財産を相続させる」
この場合は,「相続分の指定」があったものと解釈されています。
・法定相続人に,特定の財産を,相続させるとした場合
例「長男に不動産を,長女に預貯金を相続させる」
この場合は,「遺産分割方法の指定」があったものと解釈されています。
・法定相続人以外に,相続させるとした場合
この場合は,受遺者は相続人ではないので,相続分の指定とか,遺産分割方法の指定と解釈する余地がありません。だから,「遺贈」と解釈されます。

相続資格の喪失(そうぞくしかくのそうしつ)

本来であれば法定相続人として相続人になる地位にある人が,特別の事情のがある場合には,法律上相続人としての地位を失うことがあります。このことを,「相続資格の喪失」とか,「相続権の喪失」とかいいます。相続資格を喪失する事情として民法に書いてあるのは,次の二つです。

・相続欠格
相続欠格とは,相続人が,被相続人や相続順位が優位な人を殺したり殺そうとしたりして処罰された場合や,殺されたのを知って告訴告発したかった場合,それから詐欺脅迫で遺言書を作成させたり,遺言書を偽造変造隠匿したりした場合に,その相続人の相続権を法律上当然に剥奪する制度です。
・相続人廃除
相続人廃除とは,遺留分のある推定相続人(兄弟姉妹以外)が,被相続人に対して虐待や重大な侮辱をし,その他著しい非行があったときに,被相続人が家庭裁判所に申し立てることによって,推定相続人の相続権を剥奪してもらう制度です。被相続人が申し立てたら必ず認められるものではなく,裁判官が相当と認めた場合だけ廃除の決定を出します。なお,被相続人は,遺言でも,相続人の廃除をすることができますが,この場合も,遺言が効力を生じた後,遺言執行者が家庭裁判所に同じ審理を求めることになります。

相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)

相続時精算課税とは,二つある贈与税の課税方法のうちの一つの課税方法です。贈与税の課税方法には,「暦年課税」と,「相続時精算課税」があります。
暦年課税は原則的な課税方法です。毎年課税する方法です。毎年1月1日から12月31日までの贈与について,贈与税を計算して,翌年の申告時期に申告して納税します。
対してこの相続時精算課税は,2500万円までの贈与についてはとりあえず非課税にしておいて,遺産相続のときに贈与が無かったものとして戻し計算し,相続税として支払う方法です(2500万円を超える分は一律20%の贈与税がかかります)。
相続時精算課税のいいところは,相続税には基礎控除という相続税がかからない大きな控除枠(3000万円と法定相続人の数×600万円)があるので,贈与税の支払いをペンディングしておけば,相続税としても支払わないでいい人が多いからです。
ちなみに,どうしてこういう制度があるかを簡単に説明します。そもそも贈与税というのは相続税法の中にある仕組みなのですが,相続税だけだと生前贈与で課税逃れがあるので,生前贈与にも課税するべき,というところから始まっています。ただ大方の人は基礎控除に収まる財産しかもっておらず,死ぬまで財産を持っていても結局相続税が課税されないのですから,それなら生前に贈与することも許してあげましょうということです。贈与税はあくまでも相続税の補完税であることからこの仕組みが成り立ちます。

相続時精算課税に係る贈与(そうぞくじせいさんかぜいにかかるぞうよ)

相続時精算課税制度を利用して,贈与税を支払わず(又は大幅に軽減して),生前に推定相続人などに財産を贈与することです。
贈与税には毎年計算して贈与税を納める「暦年課税」と,その時には贈与税を支払わないで,相続の時に財産を戻し計算して,相続税として収める「相続時精算課税」の制度があります。相続時精算課税を利用すると,相続税の計算上は,生前贈与した財産を戻し計算しないといけませんが,相続税には基礎控除という大幅な控除枠があるので,結局相続税も支払わないで済むケースがあくたんあります。
相続時精算課税制度を利用できる枠は,2500万円です。一度に使わなくても,この金額になるまで何回も使えます。この金額を超える贈与には,一律20%の贈与税がかかります。
贈与する人は60歳以上の人で,贈与を受けるのは20歳以上の子供か,孫です。
この制度を利用して不動産の名義を親から子に移す人がたくさんいます。その他,家賃が入ってくる収益物件をこの制度を利用して早めに子や孫に移しておくと,名義変更をした後の家賃はすべて所有者に入ってくるため,これ以上遺産が増えるのを防ぐことができ,相続税の節税対策になります。

相続時精算課税分の贈与税額控除(そうぞくじせいさんかぜいぶんのぞうよぜいがくこうじょ)

相続時精算課税制度を利用して生前贈与をし,2500万円の非課税枠を超えた部分について,一律20%の贈与税を支払ったとします。その後相続が開始して,相続税を支払わないといけない場合に,先に贈与税として支払っていた税金分を,相続税の税額から控除することができる仕組みのことです。
贈与税は相続税の補完税といわれ,相続税法の中にある税です。贈与税法という法律はありません。国としては,相続税で税金を納めて欲しいが,課税逃れの生前贈与をされると税収がなくなるので,贈与税を用意して調整しているのです。
毎年贈与税を計算する暦年課税制度で贈与をしていれば,財産はすでに相続人に移っているので,その財産について相続税がかかることはありませんが,相続時精算課税制度を使って贈与した場合,相続税の時に戻し計算するので,贈与税と相続税を二重払いしてしまう危険があります。だから,贈与税として支払った金額を相続税から控除する仕組みが必要であり,それがこの相続時精算課税分の贈与税額控除です。

相続税(そうぞくぜい)

民法上の相続によって,被相続人から相続人に移った財産に対して課税される税金です。財産税,資産税として位置づけられます。日本の相続税は,相続人が相続で取得した財産の割合に応じてそれぞれに課税されますが(遺産取得税としての性質),遺産全体に対してまず税額を出して,それぞ相続人の取り分に応じて割り当てるので,相続人がどんな遺産分割をしても,基本的に全体の税額は変わりません(遺産税としての性質)。納税義務者は,相続又は遺贈によって財産を取得した人です。
さて相続税はこのとおり民法上の相続で移転した遺産に対して課税されますが,民法上は相続の対象にならない生命保険なども,みなし相続財産として,相続税が課税されることがあります。
相続税は,課税される財産が大きければ大きいほど税率が高くなる累進課税の仕組みを採用しています。
なお,日本の相続税には,大きな基礎控除枠(3000万円と法定相続人の数×600万円)があるので,じっさいに相続税を納めなければいけない人はそれほど多くないとされています。

相続税申告(そうぞくぜいしんこく)

相続税の金額を計算して国に伝えることです。申告とは,申して告げること,国民が法律上の義務の履行として,国に対してある事実を申し出ることです。相続税法には,こういう財産をこれくらい持っている人は相続税を計算して納めなさいと書いてあるので,それに該当する国民は,自分で金額を計算して国にその事実を伝えるとともに,国に対して税金を納めることになります。こういう税金の仕組みを,申告納税制度といいます。
具体的には次のようにします。

・相続や遺贈によって財産を取得し,その遺産の評価額が相続税の基礎控除額を超える場合,相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に,亡くなった人の住所地の税務署に,相続税の申告と税金の納付を行わなければいけません。
・相続や遺贈によって財産を取得したが,その遺産の評価額が相続税の基礎控除額を下回ると考えられるときは,いっさい何もする必要はありません。そのことを税務署に言う必要もありません。ただし,もし計算が間違っていて,申告と納税義務があるのにそれをしていなかった場合は,あとから割増しで税金を支払わなければいけません。だから,財産がある程度あって,遺産の計算が分からない人は,なるべく早めに専門家に相談しましょう。

相続税法(そうぞくぜいほう)

相続税について書いてある法律です。国民は法律に書いてある税金以外の税金を取られることはないので,すべての税金にはもとになる法律があるのです。相続税の根拠になるのは相続税法です。ちなみに贈与税も,相続税法の中に書いてある税金で,贈与税法という法律はありません。
相続税法は,昭和25年法律73号で成立しています。相続税法には,相続税や贈与税の納税義務者とか,課税する財産の範囲,そして申告や納付の手続が書いてあります。
なお相続税とは,民法上の相続によって,被相続人から相続人に移った財産に対して課税される税金です。財産税,資産税に位置づけられます。日本の相続税は,相続人が相続で取得した財産の割合に応じてそれぞれに課税されますが(遺産取得税としての性質),遺産全体に対してまず税額を出して,それぞ相続人の取り分に応じて割り当てるので,相続人がどんな遺産分割をしても,基本的に全体の税額は変わりません(遺産税としての性質)。納税義務者は,相続又は遺贈によって財産を取得した人です。

相続税養子(そうぞくぜいようし)

相続税の節税のためにする民法上の養子縁組のことです。別名節税養子とも呼ばれます。節税養子は,一般的には,親子としての実体のない孫を養子する形で行われます。
では,どうしてこういうことをするんでしょうか。それは,相続税には,そもそも相続税がかからない大きな基礎控除枠がありますが,基礎控除額は子供の数によって変わります。現在の相続税法では,3000万円に法定相続人の数×600万円を足したものが基礎控除額になります。子供は法定相続人ですから,子供を増やせば基礎控除額が増えるのです。ちなみになぜ子供の数が基礎控除額に影響するのかというと,そもそも相続という法律上の仕組みは遺族の生活を保障するためにあるからです。
ところで無制限にこれを認めると,どんどん養子を増やして節税できることになり不都合です。よって,国は,養子の数を制限しています。具体的には,実子がいるときは養子は1名まで,実子がいないときは2名までしか,基礎控除の計算に勘定しません。もっとも,これは税法上の話なので,民法上は養子の数に制限はありません。

相続登記(そうぞくとうき)

亡くなった人が不動産を所有していた場合,相続が開始することによって,不動産の権利は相続人に移ります。相続によって亡くなった人の財産的な権利や義務はすべて包括的に相続人に引き継がれるからです。ですから,そのことを国の帳簿である登記簿に反映して,世間に公示するためにするのが相続登記です。相続登記という言葉をもう少し詳しくいうと,相続を原因とする所有権移転登記と表現できます。
相続登記には,実に様々なバリエーションがあります。亡くなった人が遺言書を作っていた場合,遺産分割協議で誰かが単独で相続する場合,何代にも渡って相続が生じている場合,裁判所の遺産分割審判によって相続する場合など,数え上げればきりがありません。死因贈与契約が効力を生じたことによる所有権移転登記や,遺贈を原因とする所有権移転登記も,広い意味で相続に関係する登記といえます。
相続登記をするには,そのようないろんな場合において,相続物件にどのような権利の変動が生じているのかを確認するのはもちろん,ケースに応じた書類を用意して,法務局に登記を申請します。民法や不動産登記法その他法務省の登記先例といった専門知識が必要なので,普通は司法書士が代理して相続登記をします。

相続人(そうぞくにん)

相続が開始したことによって遺産(相続財産)を相続した人のことです。相続とは,人の死亡を唯一の開始原因として,亡くなった人の財産に関する権利義務を,一括して相続人に引き継ぐ法律上の制度です。繰り返しますが,相続人とは,この相続の制度によって財産関係の権利義務を取得した人のことです。
一口に相続人といっても,これには種類があります。まず,ある人が亡くなった場合に,相続人になると予定されている人のことを,「推定相続人」といいます。相続というのは,じっさいに開始するまで誰が相続人になるか分かりません。先に誰かが亡くなったりするかもしれないからです。だから,推定相続人には何の権利もありません。将来相続があるかもと期待できるだけです。このような推定相続人も相続人のうちに含まれるでしょう。次に,「法定相続人」いう言葉があります。こちらは実際に人が亡くなって,法律上相続人になる身分にある人のことです。例えば親が亡くなって子供がいると,子供は法定相続人になります。法定相続人はまさしく相続人です。もっとも,法定相続人が相続放棄をすると,相続人ではなくなります。また遺産分けの遺産分割協議して,遺産をまったく相続しない人は,もはや相続人とは言えないでしょう(遺産分割協議が成立すると,最初からそのように相続したとみなされます)。
このように,相続人という言葉はいろんな意味で使われます。このことに注意する必要があります。

相続人廃除(そうぞくにんはいじょ)

遺留分の権利を持っている推定相続人(兄弟姉妹が相続人になる場合は遺留分がないので,子,直系尊属そして配偶者のことです)の相続人としての権利(相続権)を,本人の申し立てと家庭裁判所の審判によって剥奪してもらう制度のことです。
あまりに被相続人に対して悪いことをした人に,被相続人の財産を相続させるのは正義に反するからです。
家庭裁判所に対してこの相続人を廃除してくれと請求できるのは次のようなときです。

・被相続人に対して虐待をした
・被相続人に対して重大な侮辱を加えた
・その他相続人に著しい非行があった
なお,相続人の廃除は遺言でもすることができます。遺言で相続人廃除をしたときは,遺言執行者が遺言者の死後に家庭裁判所に請求して,廃除の審判を出してもらいます。

相続分(そうぞくぶん)

相続分とは,ある人に相続が開始したときに,その相続人が遺産(相続財産)に対して持っている取り分のことです。1/2とか,1/3とかいう割合で表されます。この相続分は,誰と誰が相続人になるのかという組み合わせによって,変わってきます。
なお,相続分と聞いて思いつくのは,「法定相続分」です。配偶者と子供が相続人になったときは,それぞれ1/2ずつが相続分になる,いうそれです。ただし,法定相続分が修正になるケースが4つあります。その4つとは次のとおりです。

・指定相続分
指定相続分とは,亡くなった人が遺言で相続人の相続分を決めてしまうことです。
・特別受益者の相続分
多額の生前贈与など相続の前渡しを受けている人の相続分を減らして調整する仕組みです。
・寄与分
特別受益とは逆に相続財産の維持増加に貢献している人の相続分を増やして調整します
・相続分の譲渡
相続分も財産の一つとして譲渡できます。相続人にも第三者にも譲渡できます。これがあると,相続分は変更になります。

相続分がないことの証明書(そうぞくぶんがないことのしょうめいしょ)

相続人が「自分は相続分を超える生前贈与を受けているので今回の相続に関しては相続分がない」と記載して署名押印した書面のことです。法律的には,ここに記載されてる内容は,法定相続分を修正する理由である「特別受益」があったことを自分で証明するものと解釈できます。よってこの書面は「特別受益証明書」として扱われ,不動産を単独名義に相続登記する際によく使用されていました。
不動産を単独名義にする方法としては,ほかに,相続人全員が参加した遺産分割協議書を作って,これに相続人全員が署名押印して使用する方法があります。こちらが現在主流になっています。
以上の二つの方法は,どちらも「事実上の相続放棄」と呼ばれています。家庭裁判所で正式に相続放棄をしないで,財産を単独の相続人に集めることができるの便利です。ただし,あくまで「事実上の」相続放棄なので,いらないことにできるのはプラスの財産だけです。もし借金などのマイナス財産があれば免れられないことに注意が必要です。

相続分取戻権(そうぞくぶんとりもどしけん)

相続分取戻権とは,共同相続人のうちの1人が,遺産分けの遺産分割の前に自分の相続分を第三者に譲渡した場合に,他の相続人が,相続分を譲り受けた人に対して,その価額と費用を支払って,相続分を譲り受ける,つまり取り戻すことができる権利のことです。相続分取戻しの請求は,相続分の譲渡から1か月以内にしなければいけません。
さて,そもそも相続における共同相続人の相続分とは,遺産に対する取り分のことです。つまり,1/2とか1/3とかいう割合です。この抽象的な権利も,一つの財産権として,譲渡することができます。
相続分が譲渡されると,譲り受けた人は相続人と同じ立場になって,今後遺産分けに参加してきます。しかし,見知らぬ第三者が,相続分を譲り受けたといって身内の話合いに参加してくると,遺産の管理とか遺産分けの話合いが上手くいかないこともあるでしょう。だから,お金を弁償すれば,相続分を身内に取り戻すことができる仕組みが用意されているのです。
ただし,この仕組みの存在理由は上記のとおりですから,相続分が他の共同相続人に譲渡された場合には,相続分の取戻権は使えないと考えられています。

相続分の指定(そうぞくぶんのしてい)

被相続人が遺言で相続人の相続分を決めることです。
相続分とは,相続人の,遺産(相続財産)に対する取り分の割合のことです。子供の相続分は1/2,配偶者の相続分は1/2とかいうのがそれです。一般に相続分といえば,「法定相続分」を想像しますが,法定相続分はいろんな事情によって修正されることがあります。そのうちの一つが,被相続人が遺言で指定して法定相続分を修正する「相続分の指定」です。
なお,法定相続分を修正するケースは次のとおりです。

・相続分の指定
説明したとおりです。
・特別受益者の相続分
相続の前渡しといえるような多額の生前贈与があるときは,もらった人の相続分を差し引き計算します。
・寄与分
遺産が今のとおりあるのは相続人の貢献のおかげだといえるような事実があるときに,その相続人の相続分を増やします。
・相続分の譲渡
相続分は抽象的な権利ですが,取引の対象になります。他人に譲渡することもできるのです。例えば他の相続人の1人に譲渡すると,その相続人の相続分は増えるので,相続分が修正になります。

相続分の譲渡(そうぞくぶんのじょうと)

相続人が,自分の遺産に対する持分である相続分を他の人に譲り渡すことです。他の共同相続人に相続分を譲渡すると,譲り受けた相続人の相続分が増えます。相続人ではない第三者に相続分を譲渡すると,その第三者は今後相続人と同じ立場になって,遺産分けなどに参加することになります。相続分というのは遺産に対する割合であって,抽象的な権利ですが,財産権として譲渡の対象になるのです。
このように,相続分の譲渡は,相続人の相続分を修正する原因になります。この相続分の譲渡など,相続分を修正するケースを以下のとおり整理しておきます。

・相続分の指定
説明したとおりです。
・特別受益者の相続分
相続の前渡しといえるような多額の生前贈与があるときは,もらった人の相続分を差し引き計算します。
・寄与分
遺産が今のとおりあるのは相続人の貢献のおかげだといえるような事実があるときに,その相続人の相続分を増やします。
・相続分の譲渡
相続分は抽象的な権利ですが,取引の対象になります。他人に譲渡することもできるのです。例えば他の相続人の1人に譲渡すると,その相続人の相続分は増えるので,相続分が修正になります。

相続法(そうぞくほう)

民法第5編相続という法律のひとかたまりの部分を「相続法」と読んでいます。相続法という独立した法律があるわけではありません。
民法は,次のように編成されています。

第1編 総則 民法の通則です。根本的なことが書いてあります。
第2編 物権 所有権など,物に対する権利について書いてあります。
第3編 債権 契約など,人に対する請求権について書いてあります。
第4編 親族 夫婦や親子など,人の身分関係について書いてあります。
第5編 相続 まさに相続関係のことが書いてあります。

なお,2編と3編をあわせて「財産法」といいます。4編と5編をあわせて「身分法」といいます。5編の相続は厳密には財産の移動について書いてあり,財産法に含めることもできそうです。ただし,単なる財産の移動ではなくて,親子や夫婦といった身分関係に連動した財産の移動であるため,普通は身分法に位置づけられています。

相続放棄(そうぞうほうき)

相続が開始して,相続人になっている人が,相続を否定して,相続関係から完全に離脱する意思表示や仕組みのことです。相続放棄は,放棄をしようとする人が,「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に」しなければいけません。また,相続放棄は,「家庭裁判所に相続放棄申述書という書類を提出して」しなければなりません。自分で放棄したと決めるだけでは駄目です。
相続放棄をすると,完全に相続人ではなくなるので,たとえ相続債務があったとしても,支払いを拒否できます。家庭裁判所からもらった「相続放棄申述受理証明書」を債権者に見せて,支払えないことを伝えましょう。また,相続人ではないので,遺産を処分することも,遺産分けに参加することも当然できません。これをすると,相続を「単純承認」したものとみなされるので注意しましょう。

贈与(ぞうよ)

ある人がある人に対して財産を無償で譲渡する契約です。民法に,典型的な契約の類型の一つとして書かれています。贈与契約は,無償・片務・諾成契約です。お金を払わないというのが無償契約です。契約の一方だけ,つまり財産をあげる方だけ義務を負うから片務契約です。そして申込みと承諾という意思表示のみで成立し,契約の成立の様式を問わないので諾成契約といいます。契約は自由なのでいろんな贈与契約ができますが,民法には,次のような贈与についてだけ,普通の贈与と少し違う取扱いをすると書いてあります。

書面によらない贈与(しょめんによらないぞうよ)

書面のない贈与契約は,履行済みの部分を除いて,両方がいつでも撤回できます。普通,契約は口頭でも成立し,成立すると一方的に撤回はできないのですが,口頭の贈与契約だけは,それができます。書面の贈与契約は,原則どおりです。

・定期贈与
定期的に贈与する契約は,どちらかが死亡すると終了します。
・負担付贈与
もらう方に負担のある贈与は,その部分では双務契約(両方が義務を負う契約)性質があります。
・死因贈与
贈与者の死亡によって効力が生じる贈与(不確定期限付き贈与)は,問題のない範囲で「遺贈」と同じ法律的な取扱いをします。死んだら財産が移転するというところがほぼ同じだからです。ちなみに遺贈とは,遺言によって財産を譲渡することです。

贈与者(ぞうよしゃ)

贈与契約において財産をわたす方の人のことです。贈与契約は,契約なので,財産をわたす方の人と,財産をもらう方の人の,2人の意思表示が合致すると成立します。この財産を渡す人を「贈与者」といい,財産をもらう人を「受贈者」といいます。贈与契約は,法律上,「片務契約」という契約に分類されます。片務契約とは,契約の両当事者の一方だけが法的な義務を負う契約のことです。贈与契約の場合,贈与者は財産をわたす義務を負いますが,財産をもらう方は義務を負いません。もらうだけです。
ちなみに,無償で財産を渡す行為のうち,遺贈という行為があります。遺贈は,遺言書によって,人が亡くなると同時に財産を他人に移転する単独行為であって,契約ではありません。遺贈の場合,財産をわたす人を「遺贈者」といい,財産をもらう人を「受贈者」といいます。

贈与税(ぞうよぜい)

贈与税とは,民法上の贈与契約による財産の取得に対して課税される税金です。国の税金,つまり国税です。税金にはみな根拠となる法律がありますが,「贈与税法」という法律はありません。ではどこに贈与税のことが書いてあるかというと,「相続税法」の中です。というのも,国の考え方としてまず相続税があって,死亡の時に遺産に課税するのですが,生前贈与による相続税の課税逃れを防ぐために,贈与税も用意しているのです。ですから,贈与税は相続税の補完税だといわれます。相続税が捕捉しきれないところを補う税金です。
贈与税の納税義務者は,贈与によって財産を取得した人です。もらった人,受贈者です。
税金を計算する課税価格は,毎年1月1日から12月31日までの1年間に取得した財産の合計額です。
申告と納税は,贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に,財産をもらった受贈者の住所地の管轄税務署にします。
贈与税の課税方式には,以下の種類があります。

・暦年課税
贈与があった分を毎年計算して翌年申告するやり方です。ただし,年間110万円の基礎控除枠があり,これに納まる分は非課税ですから,申告納税義務がありません。
・相続時精算課税
2500万円までの贈与について,贈与税の支払いを将来にペンディングし,相続の時に財産を戻し計算して,相続税として納めるやり方です。相続税にはかなり大きな基礎控除枠(3000万円に法定相続人の数×600万円を加えたもの)があるので,財産がそれほどない人ならば,結局相続税も支払わないでいいケースが多いです。つまりこの場合,贈与税も相続税もどちらも支払わないですむのです。
なぜこういう課税のやり方があるのかといえば,最初に説明したとおり,贈与税は相続税の補完税だからです。本来相続税を支払う義務のない人から,贈与税をとるのはおかしいということです。
このやり方をとるには要件があります。財産をわたす贈与者は60歳以上で,財産をもらう受贈者は20歳以上の子か孫でないといけません。また,この制度を使うことを税務署に届出ておかないと駄目です。

尊属(そんぞく)

血族の中で,自分より上の(先の)世代にある人のことです。まず血族には自然血族と養子縁組による法定血族があるので,尊属にも,自然的なものと,法定のものがあります。また,自分と垂直につながるものを直系尊属といい,結婚を介して斜め上につながるものを傍系尊属といいます。
ちなみに,自分より下の(後の)世代にある人のことを卑属といいます。
尊属とか,卑属という言葉は,民法に出てくる法律用語です。上の世代を尊いとし,下の世代を卑しいとするのは,一見問題があるようにも思えますが,法律用語として今でも通用しています。民法は明治時代に作られているため,法律用語にも時代背景が映し出されています。

代価分割(だいかぶんかつ)

代価分割とは,物が複数人の共有になっている場合において,これを分割する方法の一つです。物を売却して代金を分ける方式の共有物分割のやり方です。別名を「代金分割」といいます。
法律は,一つの物には,一つの所有権があり,ひとりの所有者がいる状態を理想的なものと考えています。権利関係が分かりやすくて,揉めることがないからです。ただし,いくつかの例外があります。共有もそのうちの一つです。共有とは,一つの物を複数人で持ち合うことですが,物理的に物のどの部分を所有するかを決めずに,全体について,1/2とか,1/3とかいう抽象的な割合で所有します。
こういう権利関係も認められていますが,やはり望ましくないことに変わりはないので,法律は,いつでもこの共有関係を解消することを認めています。これが「共有物分割」です。
共有物分割には,次のようなやり方があります。代価分割もそのうちの一つです。

・現物分割
物そのものを物理的に分けるやり方
・価額賠償
物を誰の所有にして,所有権を失う人にお金を支払うやり方
・代価分割(代金分割)
物を売却してしまって,代金をみんなに分けるやり方

胎児の相続権(たいじのそうぞくけん)

人が死んで相続が開始した場合に,胎児を法定相続人として扱うのかどうかというのが「胎児の相続権」の問題です。
この問題は,胎児に「権利能力」を認めるのかどうかという議論です。
権利能力とは,法律上(民法上),権利義務の主体になることができる能力のことです。権利義務の主体とは,例えば物の所有者になったり,契約の当事者になったりすることです。
そもそも法律というのは人間を対象として作られています。だから人間以外は法律の世界の主役になれません。人間以外の存在は,法律上は「物」として扱われます。
さて,一般に,権利能力が認められる人間とは,この社会に活動している人です。子供は,体の全部が母体から露出した時点が,その判断基準になると考えられています。
ただし,これには例外があります。胎児の相続権も,その例外の一つです。民法886条には,「胎児は,相続については,既に生まれたものとみなす」と書いてあります。つまり胎児には相続について権利能力が認められ,法定相続人になるのです。
もっとも,胎児の権利能力,相続権について,以下のとおり考え方が分かれています。

・停止条件説
生きて生まれることを停止条件として,胎児の時から権利があったことになるという考え方です。これが通説・判例の考え方です。
・解除条件説
胎児のままで権利行使できる。だから法定代理人が代わりに権利行使できる。ただし死産の場合は遡って相続権が消滅するという考え方です。実務では採用されていません。

代襲原因(だいしゅうげんいん)

代襲相続を生じさせる原因(理由)となる事実のことです。
代襲相続とは,子供又は兄弟姉妹が相続人となるはずの相続が開始した場合において,その子供又は兄弟姉妹が,被相続人よりも先に亡くなっているなど「一定の事実」に該当して相続できないとき,その子供や直系卑属が代わりに相続人になる相続のことです。この場合における「一定の事実」のことを「代襲原因」といいます。
代襲原因は以下のとおりです。

・死亡
・相続欠格
・相続人廃除

なお,子供又は兄弟姉妹が「相続放棄」をしたことは代襲原因になりませんのでご注意ください。

代襲相続(だいしゅうそうぞく)

代襲相続とは,「子供又は兄弟姉妹」が相続人となるはずの相続が開始した場合において,その子供又は兄弟姉妹が,被相続人よりも先に亡くなっているなど「一定の事実」に該当して相続できないとき,「その子供や直系卑属」が代わりに相続人になる相続のことです。
なお,上記の「子供又は兄弟姉妹」のことを,「被代襲者」といいます。
また,「一定の事実」のことを,「代襲原因」といいます。
そして,「その子供や直系卑属」のことを,「代襲者」といいます。
つまり,代襲相続とは,相続が開始して,相続人となるべき被代襲者が,代襲原因の存在によって相続できないときに,代襲者が代わって相続する制度のことです。

代償分割(だいしょうぶんかつ)

代償分割とは,遺産分けをする遺産分割の態様の一つで,遺産となる物を誰か特定の相続人が相続し,他の相続人はその物を相続しない代わりに,相続した人から代償金を受け取るような遺産分割のやり方のことです。遺産分割には,次のようなやり方があります。

・現物分割
一筆の土地を分筆してそれぞれ相続するような分割です。まさに現物を二つに割って分けます。
・共有とする分割
現物を分けられないときは,何人かで割合的に共有することもできます。
・換価分割
いっそのこと物を売却してしまい,その代金を相続人で分けるのがこのやり方です。
・代償分割
ある人が物を直接相続し,他の人が代わりに代償金を受け取るようなやり方です。この代償分割は,相続人が話し合いでする分にはいくらやってもかまいませんが,家庭裁判所の審判でするときには条件があります。相続財産が現物分割になじまないもので,相続人の全員がその方法をとることや遺産の評価額に納得していて,さらには物を相続して代償金を支払う相続人に代償金の支払い能力があるというような「特別の事由がある場合」にだけ,代償分割による遺産分割の審判を受けることができます。

宅地比準方式(たくちひじゅんほうしき)

市街地農地について相続税の計算するための財産評価の方式のことです。農地の財産評価は,純農地,中間農地,市街地周辺農地,市街地農地に分けて行われます。このうち市街地農地は,「宅地比準方式」又は倍率方式によって評価します。
要するに,市街地の農地は,宅地開発ができる可能性がある農地なので,他の農地と違い宅地並みの高い値段で評価しましょうということです。
具体的には,「その農地が宅地であるとした場合の価額(路線価又は近傍宅地の固定資産税評価額に宅地の倍率を掛けたもの)」から,もしその農地を宅地造成した場合にかかる費用として国が定めた「宅地造成費」を引いた額で評価します。

建物譲渡特約付借地権(たてものじょうととくやくつきしゃくちけん)

借地借家法が適用される土地の賃貸借契約のうち,30年以上先の日を決めて,この日に土地の上に借主が建てた建物を貸主が相当の対価で買取る特約をしたもののことです。その日に確実に借地契約が終了して,借地権が消滅するので,「定期借地権」と呼ばれます。
借りた土地に建物を建てて所有するための土地の賃貸借契約には,民法だけではなく,借地借家法が適用されます。こういう借地契約は,宅地として貸し出されることの多い契約なので,急な追い出しなどから住環境を守るために,借地借家法が借主を保護しています。
借地借家法が適用される普通の借地契約の場合,借主は,建物が存在している限り契約の更新を請求することができ,貸主は,高額な立退き料を支払うなど正当な理由がなければ土地を返してもらうことができません。
しかしすべての借地契約にそのようなルールを適用すると,土地を貸し出してくれる地主さんもいなくなるので,一定の期間で借地契約が終了する定期借地権の仕組みも用意されています。定期借地権の種類には,次のようなものがあります。

・一般定期借地権
契約期間50年以上で,必ず書面で契約します。
・事業用定期借地権
事業用建物を建てる目的で,契約期間は30年以上50年未満に限ります。契約は必ず公正証書でしないといけません。
・建物譲渡特約付定期借地権
上記のとおりです。

単純承認(単純承認)

相続が開始して,相続人としての立場にある人が,相続の効力を完全に認める意思表示のことです。相続が開始すると,相続人は,「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に,相続の承認をするか,「相続放棄」をするかを決めなければいけません。承認とは,相続を認めて相続人になることです。放棄とは相続を否定して相続人とならず,相続関係から離脱することです。なお,承認には,無限に被相続人の権利義務を承継することを認める「単純承認」と,相続した財産の範囲で,債務などを弁済するという条件付で相続を認める「限定承認」があります。
ところで,相続人が限定承認や相続放棄をするには,家庭裁判所に期限内に書類を出さなければいけません。これに対して,相続人が単純承認をするには,特に裁判所に書類を出す必要はありません。その理由は,以下のような事実があれば,単純承認をしたとみなされるとする法律の規定があるからです。これを「法定単純承認」といいます。
・相続人が財産の全部又は一部を処分したとき
・限定承認又は相続の放棄をしないで,上記の3か月が経過したとき

地上権(ちじょうけん)

他人の土地の上に,自分の工作物や竹木を所有することができる民法上の権利です。物を自分の物のように(直接的・排他的に支配)扱うことができる「物権」の一つです。地上権を発生させるには,地主との間で地上権設定契約という契約を締結します。
所有する予定の土地の上の工作物が建物である場合,この地上権には,民法のほか,借地借家法という法律が適用になります。住宅を建てるために,土地に地上権を設定するようなケースです。そのような地上権を,別名「借地権」といいます。
なお,地上権も,土地を使用することができる強力な権利ですので,相続税や贈与税の計算をするときは財産評価が必要です。

嫡出子(ちゃくしゅつし)

嫡出子とは,両親の正規の婚姻関係から生まれた子供のことです。法律上の婚姻関係による子供です。嫡出子には,嫡出関係が法律上推定される「推定される嫡出子」と,嫡出関係が法律上推定されるわけではない「推定されない嫡出子」とがあります。しかしいずも嫡出子に違いありません。推定される嫡出子と,推定されない嫡出子について,もう少し説明します。

○推定される嫡出子
次のような子供は,法律上,嫡出子であることが推定されます。
・妻が婚姻中に懐胎した子
・婚姻の成立の日から200日後に生まれた子
・婚姻終了の日から300日以内に生まれた子
※父親がこの嫡出の推定を覆すには,「嫡出否認の訴え」という特別の訴えによらなければなりません。
○推定されない嫡出子
次のような子供は,法律上,嫡出子であると推定されません。
・婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子
※例えば婚姻から3日後に生まれた子は,夫婦の子として戸籍登録できますが,婚姻前は自由恋愛が可能なことに鑑み,嫡出推定はされません。
※父親が子の嫡出関係を争うには,「親子関係不存在確認の訴え」を提起すれば足ります。要件の厳しい嫡出否認の訴えを起こす必要はありません。

嫡出の推定(ちゃくしゅつのすいてい)

ある一定の事実関係のもとで生まれた子供を,嫡出子であると法律上推定することです。民法772条1項によって,法律上嫡出子だと推定されるのは,次のような子供です。

・妻が婚姻中に懐胎した子
・婚姻の成立の日から200日後に生まれた子
・婚姻終了の日から300日以内に生まれた子

なお,嫡出の推定が及んでいる子供について,父親が嫡出性を争うには,「嫡出否認の訴え」という特別の訴えによらなければいけません。子供の嫡出性は,この訴えによってのみ覆すことができます。この訴えは,夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければなりません。

嫡出否認の訴え(ちゃくしゅつひにんのうったえ)

子供に法律上の嫡出推定が及んでいる場合に,父親がその嫡出性を争う唯一の方法です。もう少し厳格にいうと,嫡出否認の訴えとは,父親が「推定される嫡出子」の嫡出性を否認する法的な訴えのことです。
嫡出否認の訴えは,父親が,子の出生を知った時から1年以内に起こさなければいけません。
なお,子供が法律上嫡出子であると推定されるのは次の場合です。

・妻が婚姻中に懐胎した子
・婚姻の成立の日から200日後に生まれた子
・婚姻終了の日から300日以内に生まれた子

ところで,例えば婚姻成立の日から一週間後に生まれた子供は,上記に該当しないので,嫡出子としての推定が及びません。ただし,婚姻期間中に生まれているので,嫡出子として戸籍登録をすることができます。このような子供のことを,「推定されない嫡出子」といいます。推定されない嫡出子の嫡出性を争うのに,嫡出否認の訴えのような制限はありません。

中間山林(ちゅうかんさんりん)

相続税法の財産評価上,通常の山林と状況を異にするため純山林として評価することを不適当と認めるもののことを中間山林といいます。簡単にいうと,市街地ではないが,その近郊にあって,少し高く評価すべき山林のことです。相続税では,山林を,「純山林」「中間山林」「市街地山林」に分けて評価をします。純山林や中間山林は、固定資産評価額に一定の倍率をかけて評価します。国税庁の財産評価基本通達では、中間山林の評価は,「地価事情の類似する地域ごとに、その地域にある山林の売買実例価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する」と定められています。なお,市街地山林のうち、宅地に転用が見込める土地については、その土地が、「宅地であるとした場合の価額(路線価や近傍宅地から計算)」から、「通常必要となる宅地造成費相当額」を引いた金額で評価します。市街地山林のうち、宅地への転用が見込めない土地については、他の山林と同じように固定資産倍率で評価します。

中間農地(ちゅうかんのうち)

相続税法の財産評価上の農地の区分の一つで、「純農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」に該当しない農地のことです。相続税では、農地を、「純農地」「中間農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」に分類して財産の評価をしています。純農地や中間農地は、固定資産評価額に一定の倍率をかけて評価します。国税庁の財産評価基本通達では、純農地の評価は、「その農地の固定資産税評価額に、田又は畑の別に、地価事情の類似する地域ごとに、その地域にある農地の売買実例価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する」と定められています。なお、市街地農地は、その土地が、「宅地であるとした場合の価額(路線価や近傍宅地から計算)」から、「通常必要となる宅地造成費相当額」を引いた金額で評価し、市街地周辺農地は、市街地農地の80%で評価します。

弔慰金(ちょういきん)

弔慰金とは,死者を弔い,遺族を慰めるために出される金員で,法律的には,遺族に対する贈与だと考えられています。これと似たものに,香典があります。香典は,葬儀関係の費用に充ててもらうことを想定した金員で,こちらも喪主への贈与だと考えられています。法律的にはどちらも贈与だと解釈されますが,その性質が少し違います。よって,以下のように取扱いに違いが生じてきます。

○弔慰金
・遺族に渡す
・死後相当期間内に渡す
・金額に制限はない
○香典
・喪主に渡す
・葬儀の時に渡す
・金額は少なめ

調達価額(ちょうたつかがく)

税務上の用語で,課税時期に現況で取得すると考えた場合の,その財産の価額のことです。はっきりしなければ,課税時期に新品で取得する価格から,当該財産の経過年数による減価償却分を引いて計算します。

調停前置主義(ちょうていぜんちしゅぎ)

訴訟提起をする前に,必ず裁判所の調停というステップを踏まなければならないという考え方です。普通法的な紛争の解決は裁判手続で行われます。ただし,家庭に関する紛争など,裁判所が法的に一刀両断で決めることが,必ずしも問題の解決にならない場合があります。裁判所で法的に裁判された後も,夫婦,親子,親族といった人間関係が完全に切れるものではないので,なるべくお互い理解し合って,人間関係を維持できるのが望ましいからです。家事事件で調停前置主義が適用されるのは,離婚,離縁,慰謝料の請求といった人事に関する訴訟事件などです。民事事件では,賃貸借契約における借賃増減請求に調停前置主義の考え方が適用されます。

調停分割(ちょうていぶんかつ)

裁判所の調停を利用して,遺産分けの遺産分割をすることです。相続が開始して,相続人が決まり,その相続分が分かったら,次に相続分を考慮しながら遺産分けの遺産分割をします。遺産分割とは,家などの個別具体的な財産を相続人に割り振って分配することです。遺産分割はまず相続人の話合いでしますが,話がまとまらないこともあります。そういう場合には,家庭裁判所に場所を移して,改めて,遺産分割調停というある意味公的な話合いをすることができます。遺産分割調停は裁判官の管理のもと,調停委員が話合いの仲介をしてくれます。話がまとまると,調停調書がつくられ,この書類を使って相続手続をすることができるようになります。このように,家庭裁判所の調停を利用してする遺産分割の方法のことを,調停分割といいます。
なお,遺産分割の方法はほかにもあります。どういう順番で,どういう方法を使うのか整理しておきます。次のとおり,上から順番にやっていきます。

・指定分割
亡くなった人が遺言でしている場合です。「長男に家を,次男に預貯金を」という具合にです。これがあると,亡くなると同時に,何もしないで遺産分割は完了します。
・協議分割
普通はこれです。相続人全員で話し合います。
・調停分割
話合いがつかなかったときは,改めて裁判所で話し合います。上記に説明したとおりです。
・審判分割
裁判所で話し合っても駄目なときは,裁判官に決めてもらいます。審判という決定によって,「こうしなさい」と決めてもらうのです。

直系(ちょっけい)

垂直に縦の線で表される血族のことです。もう少し厳密にいうと,一方が他方の子孫にあたるような血族関係のことです。直系血族のうち,自分より上の世代のことを直系尊属といい,下の世代のことを直系卑属といいます。また,直系血族には,自然的な血のつながりのある自然血族と,養子縁組関係をもとに法的に作られた法定血族があります。
なお,直系に対する言葉は,「傍系」です。傍系とは,共通の先祖から分かれた枝の関係にある血族のことです。

直系尊属(ちょっけいそんぞく)

一方が他方の子孫の関係にある直系血族のうち,自分より上の世代にある者のことです。自分より下の世代にある者のことを「直系卑属」といいます。上の世代を尊属といい,下の世代を卑属というのは,現代の感覚では問題があるように思えますが,明治時代にできた民法が使用している法律用語として今でも通用しています。
なお,直系血族には,生理的に血のつながりのある自然血族と,養子縁組によって法的に親子関係を作られた法定血族があります。

直系卑属(ちょっけいひぞく)

一方が他方の子孫の関係にある直系血族のうち,自分より下の世代にある者のことです。自分より上の世代にある者のことを「直系尊属」といいます。上の世代を尊属といい,下の世代を卑属というのは,現代の感覚では問題があるように思えますが,明治時代にできた民法が使用している法律用語として今でも通用しています。
なお,直系血族には,生理的に血のつながりのある自然血族と,養子縁組によって法的に親子関係を作られた法定血族があります。

賃貸借契約(ちんたいしゃくけいやく)

お金を払って人の財産を借り受ける民法上の典型契約(民法に書いてある契約)です。貸主には適切に財産の使用収益をさせる義務があり、借主には賃料を支払う義務があります。有償・双務・諾成契約とされます。有償とは、賃料という対価が発生することです。双務とは、先に述べたとおり、当事者双方が義務を負うことです。諾成とは、貸し借りをするという合意のみで契約が成立するという意味です。財産を実際に渡す前に契約が成立します。なお、建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約と、建物の賃貸借契約は、民法に加えて、「借地借家法」という特別の法律が適用になります。

賃貸割合(ちんたいわりあい)

借家として賃借人に貸し出されている部分の割合のことです。相続税で借家の財産評価をするときに使用します。賃貸割合の計算方法は以下のとおりです。
賃貸されている各独立部分の床面積の合計/家屋の各独立部分の床面積の合計
要するに,賃貸ができるような独立した部屋のうち,じっさいに貸している部屋の割合を計算しているだけです。

定期借地権(ていきしゃくちけん)

借地借家法が適用される借地契約(建物の所有を目的とする地上権又は賃借権)のうち,存続期間が50年以上で,契約の更新や建物の買取請求などをしないことを特約で決めたものです。
建物の所有を目的とする地上権や賃借権には,民法だけではなく,借地借家法が適用されます。住宅を建てるために結ばれることが多い契約なので,借主等がすぐに追い出しにあったりしないよう保護するためです。借地借家法が適用されると,契約期間が自動的に決められたり,期間が満了しても正当理由がないと出て行ってもらえないなど,相当強力に借主等が保護されます。ただそのように借主等を保護するばかりでは,地主が貸し出しを嫌がって土地の供給が減ってしまうので,特別の契約に限定して,定期で契約が終了する定期借地権契約を認めているのです。

なお,ここで説明したのは,一般定期借地権と呼ばれるものです。広い意味での定期借地権は,このほかにもあります。「事業用定期借地権」と「建物譲渡特約付借地権」と呼ばれるものです。それぞれ契約期間や契約内容が異なります。

伝染病隔離者遺言(一般隔絶地遺言)(でんせんびょうかくりしゃいごん(いっぱんかくぜつちいごん))

特別方式の遺言のうち,伝染病のため行政処分によって交通を絶たれた場所にある者がすることができる遺言です。警察官1人と証人1人の立会いが必要です。伝染病ではなく,刑務所の服役囚もこの方式で遺言ができるとされています。
なお,遺言の方式は以下のように分類できます。

普通方式
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別方式
危急時遺言
死亡危急者遺言(一般危急時遺言)
船舶遭難者遺言(難船危急時遺言)
隔絶地遺言
伝染病隔離者遺言(一般隔絶地遺言)
在船者遺言(船舶隔絶地遺言)

登記(とうき)

ある内容を広く社会に知らせるために,国の帳簿に記載することです。取引に入ろうとする人は,登記された情報を参照して,権利者や権利の内容を調べ,取引に入るかどうかを判断します。登記のうち,代表的なものは,不動産の権利内容を登記する不動産登記制度です。会社や法人の内容を登記する商業法人登記制度もあります。ほかには,立木登記,船舶登記,工場財産登記,動産譲渡登記,債権譲渡登記,夫婦財産契約登記,成年後見登記などがあります。登記は,法務省民事局傘下の,各地の法務局,地方法務局が管轄します。
なお,登記の手続を代理する職業が司法書士(一部土地家屋調査士)です。

登記原因証明情報(とうきげんいんしょうめいじょうほう)

不動産登記を申請するときに法務局に提出する書類(情報)として不動産登記法に定められている書類です。登記を申請する原因となった法律行為や事実関係を証明するために作成されます。
不動産登記とは,不動産の物理的な状況や,権利関係を,国の帳簿に登録して公開し,取引の安全に貢献する制度です。民法177条には,不動産の権利が変動したら,登記をしなければ,第三者に対抗できないと書かれています。不動産の取引をしたら,登記が不可欠だということです。登記をするのは,不動産の権利が変動した時です。権利が変動しなければ,登記をすることができません。どのように権利が変動したのかを記載したものが,登記原因証明情報です。

登記申請(とうきしんせい)

登記を管轄している法務局に対して,登記をしてもらうようにお願いをすることです。
登記とは,ある内容を広く社会に知らせるために,国の帳簿に記載することです。取引に入ろうとする人は,登記された情報を参照して,権利者や権利の内容を調べ,取引に入るかどうかを判断します。登記のうち,代表的なものは,不動産の権利内容を登記する不動産登記制度です。会社や法人の内容を登記する商業法人登記制度もあります。ほかには,立木登記,船舶登記,工場財産登記,動産譲渡登記,債権譲渡登記,夫婦財産契約登記,成年後見登記などがあります。
登記をするには,登記の申請をします。登記申請は,法律にもとづいて行います。通常,登記申請書に必要な添付書類を添付して行います。

登記済権利書(とうきずみけんりしょ)

不動産の権利に関する登記をしたときに,登記完了後,法務局から一度だけ交付される書類のことです。所有権とか,地上権とか,抵当権とか,いろんな種類の登記済権利書があります。ただし,一般に,「登記済権利書」「権利書」「権利証」などといわれるのは,所有権に関する登記済権利書だけです。住宅を購入したときに登記をして,司法書士から渡される登記済権利書のことです。
登記済権利書は,不動産の権利そのものではなく,その権利者であることを証明する一つの書類です。次にその権利を処分する際に,法務局に提出して,本人が関与していることを確認する書類として使用します。
なお,不動産の登記について定めた不動産登記法が大改正され,今から登記する分については,登記済権利書は発行されます。代わりに「登記識別情報」というパスワードが発行されます。ただし,既に発行済みの登記済権利書はそのままで,差し替えなどはされません。

登記請求権(とうきせいきゅうけん)

取引の相手方などに対して,登記をしてくれと請求する権利のことです。例えば不動産の売買契約をして不動産の所有権を取得したら,登記をしないと第三者に対抗できません。登記をしないと第三者に権利を奪われてしまう可能性があるのです。だから登記を急ぎます。この時,買主は,売主に対して,自分名義に登記を移してくれと請求する権利があります。これを登記請求権といいます。
この登記請求権の法的性質(法的根拠)について,法律学ではいろんな議論がされています。上記の売買契約のように単純なケースだけではなく,いろんなケースで登記請求権を認めていく必要があるからです。登記請求権には,次のようなものがあると考えられています。

・物権的登記請求権(物権的妨害廃除請求権による)
物権者は物権の効力としての登記請求権を持つとするもの。
例)所有権や抵当権の抹消登記請求など
・物権変動的登記請求権
物権変動自体から登記請求権が発生するとするもの。
例)A→B→Cと所有権が移転した際の,BからAへの移転登記請求など
・債権的登記請求権
当事者間の合意によって登記請求権が発生するとするもの。
例)売買契約による所有権移転登記請求や,賃貸契約による賃借権設定登記請求など

登記識別情報(とうきしきべつじょうほう)

不動産登記法が大改正される前の「登記済権利書」とほぼ同じものです。従来のように書面に法務局の印鑑がおされたものではなく,パスワードが紙に印刷された形で通知されます。登記済権利書のように,紙自体に意味があるわけではなく,そこに記載された情報(パスワード)に意味があります。
登記識別情報は,登記申請をして権利者になった人に,登記が完了すると同時に交付されます。登記識別情報自体は権利そのものではなく,その情報を持っている人が,その権利の持ち主であると証明する一つの情報に過ぎません。次にその権利を処分するときに,法務局に提出して,本人が関与していることを証明します。

登記の対抗力(登記の対抗力)

登記をすることによって第三者に対しても登記された権利を主張することができる効力のことです。民法177条には次のように書かれています。不動産取引をすると,資金決済と同時に直ちに登記をするのはそのためです。
民法177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない。

同族株主(どうぞくかぶぬし)

相続税の財産評価をするときに用いられる概念で,株主の1人とその同族関係者の議決権の合計が30%以上である場合の,株主と同族関係者のことです。ただし,議決権の過半数を有するグループがある場合には,そのグループに属する株主のことです。
株式を相続した人が同族株主かどうかによって,相続した株式の財産評価の方法が変わります。

登録免許税(とうろくめんきょぜい)

登記,登録,特許,免許,許可,認可,認定などを受けることに対して課される国税で,流通税の一つです。不動産登記を例にとると,登記をすることによって所有権移転などの権利移転の効力が守られるので,その利益に対して課税するものと考えられています。登録免許税は,登録免許税法という法律が根拠法になります。

特定遺贈(とくていいぞう)

遺言によって,特定の遺産を譲渡することです。例えば法定相続人以外の第三者に対して,次のような遺言をした場合です。
「遺言者は,甲野太郎さんに対して,今住んでいる住宅の土地建物を遺贈する」
さて遺贈には,特定の遺産を譲渡する「特定遺贈」と,遺産の全部又は割合的一部(1/2,1/3,,)を譲渡する「包括遺贈」があります。包括遺贈は限りなく相続に似ているので,包括受遺者(包括遺贈で遺産の譲渡を受ける人)は,相続人と同一の権利義務をもつとされ,相続の承認放棄,相続放棄,遺産分割などについて,相続人と同一の取扱いを受けます。なお,無償で財産を譲渡することも,受遺者に対する負担付で財産を譲渡することもできます。

特定居住用宅地(とくていきょじゅうようたくち)

相続税の課税価格を減額する「小規模宅地等の特例」を受けられる居住用の宅地のことです。
被相続人の所有していた財産のうち,住宅の敷地や事業用の宅地として相続人が引き続き使用するものは,生活や事業の拠点としてとても重要です。これらに丸ごと相続税が課税されると,相続人の生活や事業の承継が脅かされれます。そこで,これらの財産の相続税評価を減額して,住居や事業を引き継ぎやすくする制度が「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」です。
小規模宅地等の特例を受けられる特定居住用宅地は,240㎡まで,80%分の相続税評価額を減額できます。

特定事業用宅地(とくていじぎょうようたくち)

相続税の課税価格を減額する「小規模宅地等の特例」を受けられる事業用の宅地のことです。被相続人の事業用又は被相続人と生計をともにしていた親族の事業用宅地が対象になります。
被相続人の所有していた財産のうち,住宅の敷地や事業用の宅地として相続人が引き続き使用するものは,生活や事業の拠点としてとても重要です。これらに丸ごと相続税が課税されると,相続人の生活や事業の承継が脅かされれます。そこで,これらの財産の相続税評価を減額して,住居や事業を引き継ぎやすくする制度が「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」です。
特定事業用宅地として小規模宅地等の特例を適用した場合,400㎡までの部分について,80%の相続税評価を減じることができます。

特定同族会社事業用宅地(とくていどうぞくかいしゃじぎょうようたくち)

相続税の課税価格を減額する「小規模宅地等の特例」を受けられる特定同族会社の事業用の宅地のことです。特定同族会社とは,相続開始直前に被相続人やその親族,その他の被相続人と特別の関係がある者が,発行済株式総数又は出資総額の50%超を持っていた法人のことです。
被相続人の所有していた財産のうち,住宅の敷地や事業用の宅地として相続人が引き続き使用するものは,生活や事業の拠点としてとても重要です。これらに丸ごと相続税が課税されると,相続人の生活や事業の承継が脅かされれます。そこで,これらの財産の相続税評価を減額して,住居や事業を引き継ぎやすくする制度が「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」です。
特定同族会社事業用宅地として小規模宅地等の特例を適用した場合,400㎡までの部分について,80%の相続税評価を減じることができます。

特別縁故者(とくべつえんこしゃ)

人が死亡して相続人の不存在が確定した時,本人の請求にもとづく裁判所の判断により,家庭裁判所から相続財産の全部又は一部の分与を受けることができる者のことです。
人が死亡して相続人があるかどうか明らかでない場合,相続財産は法人になります。法人になった財産は相続財産管理人が管理し,相続債権者や受遺者に弁済をするとともに,相続人を探す手続をします。しかし一定期間が過ぎても相続人が出てこない場合,家庭裁判所は,この特別縁故者に相続財産の全部又は一部を分与することができます。それでも残った相続財産は国庫に帰属します。
なお,特別縁故者とは,「被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」のことです。個人でも法人でかまわないとされます。

特別受益(とくべつじゅえき)

相続人が,被相続人から,生前に多額の贈与を受けているような場合に,これを相続分から差し引いて,相続人間の取り分を公平にするための仕組みです。相続分を修正する事由の一つです。どんなものが差し引き計算の対象になる特別受益に当たるかについて,民法には次のように書いてあります。
「被相続人から遺贈を受け,又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本としての贈与」
つまり,相続分の前受けと評価できるような,生計の資本としての贈与などが対象になります。

取引相場のない株式(とりひきそうばのないかぶしき)

相続税法上の用語で「取引相場のない株式」とは,「上場株式」や「気配相場等のある株式」に該当しない株式のことです。相続税法では,株式を,「上場株式」「気配相場等のある株式」「取引相場のない株式」にわけて,財産的な評価をします。
取引相場のない株式の相続税評価は,原則的評価方式又は例外的な評価方法によって行います。

原則的評価方式)
・類似業種比準方式 類似する業種の上場会社の株価を基準に評価
・純資産価額方式 会社の資産などを相続税の財産評価基準によって評価した後,負債などを引いて評価
・併用方式 類似業種比準方式と純資産価額方式を併用し評価
例外的な評価方法)
・配当還元方式 その株式から1年間で得られる利益配当金額をもとに評価

法定相続(ほうていそうぞく)

民法に規定されている法定相続人が法定相続分のとおりに相続することです。民法は,相続が開始した場合に,誰が法定相続人になるのかを定めています。また,法定相続人の,それぞれの取り分,つまり法定相続分について定めています。なお,法定相続の反対語は「遺言相続」です。一般には,法定相続が原則で,遺言相続が例外だと思われていますが実は逆です。民法では,遺言相続を優先しています。遺言によって,法定相続人以外の人に財産を譲渡できるのがその証拠です。

法定相続人(ほうていそうぞくにん)

被相続人の死亡によって相続が開始した場合に相続人になる者として民法に書かれている人のことです。相続順位が決まっていて,優先順位にある人が生きていると,劣後する順位にある人は法定相続人になりません。配偶者は,相続人になる人と同順位の扱いで,常に法定相続人になります。また,法定相続人となるべき子又は兄弟姉妹が,被相続人より先に死亡等していて相続人になれないときは,その者の子などが法定相続人になります(代襲相続)。

第一順位 子
第二順位 直系尊属
第三順位 兄弟姉妹
別格(常にこれらと同順位)

法定相続分(ほうていそうぞくぶん)

民法に規定されている法定相続人の遺産の取り分のことです。1/2とか,1/3とかいう具合に抽象的な割合で表されます。相続分の割合は,誰と誰が相続人になるのか,つまり相続人組み合わせによって決まります。次のとおりです。

子供と配偶者 1/2と1/2
直系尊属と配偶者 1/3と2/3
兄弟姉妹と配偶者 1/4と3/4
※配偶者しかいないとか,配偶者以外の相続人しかいないときは,その者が全部相続
なお,
・指定相続分
・特別受益
・寄与分
・相続分の譲渡

物権(ぶっけん)

民法上,人間が,物(ぶつ)を,直接的・排他的に,支配する財産権です。民法に規定されている財産権は,物権(ぶっけん)と債権(さいけん)の二つです。物権は物に対する権利。債権は人に対する権利(特定人から特定人にある行為を請求する権利)です。
物権には,物権法定主義という考え方が基本的に採用されます。法律に定められている物権以外は認められないという原則です。これは,民法の大原則の一つで,とても重要な考え方です。ただし,いくつかの例外があります。
物権には,次の種類があります。

○民法上の物権
・占有権
・所有権
・地上権
・地役権
・永小作権
・留置権
・先取特権
・質権
・抵当権(根抵当権)
○民法以外の法律で定められた物権
・鉱業権
・漁業権
・採石権
・商事留置権
・商事質権
・企業担保権
など
○慣習で認められている物権(物権法定主義の例外)
・流水利用権
・温泉権
など

民事訴訟(みんじそしょう)

主として民間の財産に関する紛争を解決する国の手続です。民間で争いが生じたら,自分で強行に解決することは認められていません。誰が正しいか分からないし,これを認めると世の中の秩序がめちゃくちゃになるからです。民間で紛争が生じて,どうにも当事者で折り合いがつかなくなったら,国が定めた法律にもとづいて,裁判所で決着をつけてもらいます。この紛争解決の手続を決めているのが民事訴訟法です。民事訴訟は,当事者が裁判所に申立てをしてはじめて開始されます。当事者はそれぞれ自分で努力して(弁護士や司法書士の助けを借りたりして),裁判所において戦いをします。戦いと言っても暴力や感情に訴えるのではなくて,自分が主張する権利があるかないか,法律関係のもとになる事実があるかないかについて主張したり証拠を出したりして戦うのです。裁判所も感情や思い込みで判断をするわけではありません。当事者が争っている法律関係のもとになる事実があるかないか,そのことだけを判断します。民事訴訟の手続は,まず当事者が主張を出して,お互いの主張について認否をし,争いを抽出ししたうえで,その点についてだけ証拠調べをします。民事訴訟は原告が訴訟を取下げたり,請求を放棄したり,被告が請求を認めたりすれば終了します。当事者が和解をして訴訟を終了させることもできます。民間の争いを審理するのが民事訴訟なので,当事者がよいと言えばそれでいいのです。どうしても折り合わなければ,裁判所は判決を出してくれます。

なお,国家が民間人を処罰するために行う訴訟を刑事訴訟といいます。こちらは国家と民間人との裁判です。刑事訴訟は刑事訴訟法にもとづいて行います。

民事保全(みんじほぜん)

将来強制執行をして債権の満足を図るために(近いうちに強制執行してちゃんと債権の回収ができるようにするために),債務者の財産の維持等を目的としてなされる予防的・暫定的な処分又はそのような法律上の手続について定めた法律のことです。民事保全法に規定があります。例えば,債務者が債務の履行をしない場合,債権者は民事訴訟を提起して,裁判所に勝訴判決をもらう活動をします。勝訴判決をもらったら,続いて債務者の財産を差押えて換価する等の強制執行をして,債務者の財産から債権の回収をします。しかし,債務者が財産の差押えを免れるために,前もってこれを不当に処分する等により,いざ勝訴判決をもらったときに債務者の財産がないか毀損していることが考えられます。民事訴訟には時間がかかるからです。分かりやすく言えば,そのような悲劇を避けるために,予防的に債務者の財産をロックしておく制度が民事保全です。民事保全には,債務者の財産の仮差押,係争物に関する仮処分又は仮の地位を定める仮処分があります。この制度を利用するには,債権者が裁判所に申立てをします。裁判所が申立てを認めて保全命令を出してくれたら,改めて保全執行を申立てて,仮差押,仮処分等を実行してもらいます。

無期定期金(むきていききん)

まず定期金とは,一定の時期に支払ったり受け取ったりするお金のことを意味します。何もしないでお金を支払ったり受け取ったりすることはないので,定期金は,契約や法律の規定にもとづいて発生しますが,終身定期金契約については,民法689条に定めがあります。およそ定期金は,その一定の時期の定め方によって,期間の決まっている有期定期金,期間の決まっていない無期定期金,死亡するまでと決まっている終身定期金に分類することができます。つまり無期定期金とは期間を定めずに支払ったり受け取ったりするお金のことです。なお,定期金を受ける権利も財産的な価値があるので相続税の対象になり,財産評価基本通達も上記の分類にしたがって定期金の評価方法を定めています。

持分(もちぶん)

民法上,物を複数人で共同して所有するときの,それぞれの所有割合のこと持分と呼びます。持分権と呼ぶこともあります。各共有者は,その財産の自分の持分について,それぞれ単独で処分することができます。ただし,他人の持分まで処分するには,共有者の全員の同意が必要です。なお,共有物の管理に関する事項は,共有者の持分価格の過半数で決定して行います。共有物の管理費用は各人の持分に応じて負担します。

ちなみに,会社法上は,合名会社・合資会社・合同会社のことを持分会社と呼び,これらの会社の社員の持っている会社財産に対する権利義務の割合を持分と呼びます。

持ち戻し(もちもどし)

共同相続人のうちの誰かが生前被相続人から多額の生前贈与などを受けていた場合,相続人間の不公平を是正するために相続分が修正されます。これを特別受益者の相続分と呼びます。要は,生前贈与等によって特別に利益を受けている人は,相続分の計算にあたって,それを差し引き計算しますよ,という制度です。特別受益者の相続分は以下のように計算します。

  1. まず,相続開始のときにじっさいに存在する相続財産に,生前贈与等の特別受益に該当する財産の額を足した額を出して,これをみなし相続財産とする。
  2. みなし相続財産に相続分をかける。
  3. 特別受益者の相続分から,1で加算した特別受益の額を引いて,特別受益者の相続分とする。

持ち戻しとは,特別受益に相当する財産の額をいったん相続財産に戻して,みなし相続財産を計算する法律上の取扱いのことです。特別受益の持ち戻し計算をすることによって,相続人の相続分を実質的に平等に差し引き計算することができます。

みなし相続財産(みなしそうぞくざいさん)

民法上は被相続人の遺産ではないが,相続税法上は相続財産として課税の対象になる財産のことです。相続人がこれを受け取った場合は「相続」で,相続人以外の人が受け取った場合は「遺贈」で,それぞれ取得したものとみなされます。具体的には,死亡退職金や,被相続人が被保険者・保険料負担者だった生命保険などのことです。

有期定期金(ゆうきていききん)

文字通り、一定期間を区切って、ある人からある人に、定期的に金銭が給付される契約又は給付された金銭のことです。定期金又は定期金契約には、この有期定期金と、給付期間が決まっていない無期定期金、そしてある人が死ぬまで給付する終身定期金があります(終身定期金契約については、民法に規定があります)。
相続税法では、これら三つの定期金ごとに、財産評価の方法が決まっています。具体的には次のように評価します。最後の「一定の割合」の部分が、それぞれに違います。

以下のうち最も高い金額
・解約返戻金相当額
・一時金の給付を受けることができる場合は当該一時金相当額
・1年当たりの平均額に一定の割合を掛けて算出した金額

養子(ようし)

民法上の養子縁組によって法律上実子と同じ法律的な地位を得た人のことです。養子は法律上の子供のこと、実子は自然的な子供のことです。養子の法律的な地位についてもう少し詳しく説明します。養子は、以下のような立場に立ちます。
・養親と同じ氏を称します
・養親の親権に服します
・養親の子供として第一順位の相続人になります
・その他養親の親族との間に法定血族関係が生じます
なお、養子になるには、以下ような条件があります。
・養親よりも年下であること
・特別養子の場合は6歳未満であること(養親は25歳以上)
・未成年の子供が養子になるには、原則として家庭裁判所の許可を得ること(例外として、自分の又は配偶者の直系卑属を養子とする場合、つまり孫や配偶者の連れ子を養子とする場合などは不要です)
・特別養子になるには、家庭裁判所の審判を得ること

養親(ようしん)

民法上の養子縁組によって法律上人の親になった者のことです。対して、自然的な血のつながりで親になった者のことを実親といいます。養親は養子に対して実親と同様の法律的な権利を持っています。したがって、未成年の子が養子に入ると、親権は、実親から養親に移ります。
養親になるには、法律上正しく養子縁組を成立させる必要があります。養子縁組は、養親となる者と養子となる者が合意したうえで、市町村役場に養子縁組届を提出します。養親は成年の者に限ります。養子は養親よりも年下でなければいけません。特別養子縁組の場合は、養親は25歳以上、養子は6歳未満です。なお、未成年者の養親になるには、家庭裁判所の許可を得なければいけません(自分又は配偶者の直系卑属を養子とする場合を除きます。つまり、孫を養子にしたり、再婚相手の子供を養子にしたりする場合)。特別養子縁組の養親になるには、家庭裁判所の審判も必要です。

預託金(よたくきん)

ある契約をするときに、一方の当事者から、相手方の当事者に対して、無利息で預けられる金員のことです。預託金を返してもらう権利のことを、預託金返還請求権といいます。賃貸借契約をするときに、借主から貸主に預けられる敷金や保証金も預託金の一種です。また、ゴルフ場の会員になるときに会員からゴルフ場に預けられることもあります。返還を受けることができる預託金返還請求権は財産的価値があるので、相続税の財産評価の対象になります。

利益相反行為(りえきそうはんこうい)

事者の利益が一致しない、相反する行為のことです。この場合、一方が他方の代理人になったり、一人が双方の代理人となることが禁止されます。法律上特に問題となるのは、本人と、代理人の利益が相反する場合です。法定代理でこれが問題となるのは、未成年者の子供と親権者である親の利益が相反する場合や、本人である成年被後見人と、代理人である後見人の利益が相反する場合などです。任意代理でこれが問題になるケースとして、代表的には、法人と、法人の代表者個人の利益が相反する場合があげられます。
具体的な例を出します。父親が死んで配偶者である妻と未成年の子供が相続人になったとします。相続財産の遺産分割協議は、相続人の全員で行いますが、未成年者は単独で有効な法律行為ができないので、通常親権者が法定代理人として法律行為を代理します。しかし今回は、親権者も共同相続人として、遺産分割協議の当事者になります。このような場合に親権者とての代理行為を認めると、親権者である自分に有利な遺産分割協議が行われる可能性があります。それは子供のためになりません。よって、こういう場合には、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらい、特別代理人が未成年の子を代理して遺産分割協議を行います。このように、ある行為が利益相反行為に当たる場合、特別代理人などを裁判所に選んでもらったり、その行為について代理人の代理権がなくなったりします。

利子税(りしぜい)

相続税などの延納をしたときに、延納期間、延納額に所定の割合で課される附帯税です。利子税が課されるのは、所得税、法人税、相続税、贈与税という国税のため、利子税も国税です。相続税で利子税を収めるのは、先に書いた延納の場合と、物納をする場合です。物納とは、相続税を、金銭の代わりに相続した具体的な財産で支払うことです物納の場合も、納付が完了するまでの期間に対して、利子税がかかります。

利付公社債(りつきこうしゃさい)

公債や社債の券面に利札(クーポン)がついているもののことです。毎年決まった時期に,公債や社債権者に対して利息が支払われます。相続税の財産評価では,公社債は,この「利付公社債」と「割引発行の公社債」そして「転換社債型新株予約権付社債」に分けられ,それぞれに評価の方法が決められています。利付公社債については,さらに,東京証券取引所などの金融商品取引所に上場しているもの,日本証券業協会の売買参考統計値が公表されているもの,及びそれ以外のものに分けられ,それぞれに細かく評価します。

類似業種比準方式(るいじぎょうしゅひじゅんほうしき)

相続税を計算するために財産評価を行いますが,「類似業種比準方式」とは,遺産が「取引相場のない株式」である場合に,この株式の財産評価をする方式の一つです。上場会社等ではない株式は,市場価格がないので,会社の規模などによって,財産評価をする方法が細かく決められているのです。類似業種比準方式とは,簡単に言うと,評価する株式を発行している会社と類似する業種の上場会社の株価を基準に評価する方法です。上場企業に匹敵するような大会社の株式にこの評価方式が採用されます。

暦年課税(れきねんかぜい)

贈与税の課税方法の一つです。暦年課税とは,毎年1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の価額の合計額から,110万円の基礎控除額を控除し,これに金額に応じた税率を掛けて,その年の贈与税額を計算する方法です。計算した贈与税額は,翌年の確定申告時期に送付します。
もう一つの方法が,「相続時精算課税」です。こちらは,一定の金額までの贈与について直ちに贈与税を支払わず,相続時に相続税として計算したうえ納付します。ただし一定金額を超える部分については,翌年,一律20%の贈与税を支払います。贈与税は相続税の補完税であることから認められている方法です。

暦年課税分の贈与税額控除(れきねんかぜいぶんのぞうよぜいがくこうじょ)

相続税の税額控除の一つです。税額控除とは,基礎控除や各種控除をした後の課税価格に税率を掛けて算出した相続税額から,さらに引くことができる控除額のことです。「暦年課税分の贈与税額控除」は,相続開始前の3年以内に,贈与財産に贈与税が課税されている場合に,贈与を受けた人の相続税額から,支払済みの贈与税額を控除できる制度です。どうしてこういう控除があるのかを説明します。
相続税の課税価格には,相続開始前3年以内にした贈与財産の価額を戻し計算して加算することになっています。死亡直前の贈与は,実質相続と考えることができるからです。ところで贈与税は,相続税の補完税といわれ,死亡時の相続税を逃れるためにされる生前贈与に課税して,バランスをとるために存在しています。そのため,贈与税を支払ったにもかかわらず相続税も課税すると二重取りになるので,この暦年課税分の贈与税額控除の仕組みが用意されています。

連帯債務(れんたいさいむ)

複数いる債務者が,それぞれに,債権者に対して,全部の債務の履行義務を負い(逆にいうと,債権者は,全員に対して,債務の全部の履行を請求できる),その中の1人が弁済すれば,すべての債務者が債務を免れるという法律関係のことです。連帯債務については,債権者に対する対外的な効力と,債務者間の内部での体内的な効力に分けて考えることが必要です。そして,対外的な効力は,債務者の1人に生じたことが他の全員に効力を及ぼす絶対効と,そうではない相対効に分類しておくことが必要です。

○対外的効力
絶対効は次のとおりです。これ以外のことは相対効です。
・弁済(代物弁済,供託を含む)
・履行の請求
・更改
・相殺
・債務免除
・混同
・時効の完成
○体内的効力
連帯債務者は,その全員が,債権者にたいしてそれぞれ全部の履行義務を負いますが,債務者間では特約で負担部分を決めることができます。負担部分を超える履行をしたときは,他の債務者に対して求償をすることができます。

連帯納付の義務(れんたいのうふのぎむ)

納税義務者が連帯して税金を納める義務を負うことです。日本の相続税は,まず全体の相続税額を計算して,それを遺産の取り分の割合に応じて各相続人に割り付ける仕組みなっています。そして,各相続人が,それぞれ,税金を納める義務を負う納税義務者になります。この納税義務者である相続人や受遺者の中に,相続税を支払わない人がいる場合に,ほかの相続人が受遺者が代わりにその相続税を支払う義務を負います。これが連帯納付の義務ということの意味です。相続人や受遺者は納税について連帯責任を負います。

路線価図(ろせんかず)

国税庁が公開している路線価を書き込んだ地図のことです。路線価とは,相続税や贈与税を計算する際の,宅地の財産評価の基準になる価格です。国税庁が,毎年1月1日現在の全国の市街地の道路に面する宅地の,1㎡あたりの価格を決めたものです。公示価格の8割程度の価格とされています。なお,路線価には相続税路線価と,固定資産税路線価がありますが,ここで説明したのは相続税路線価です。

路線価方式(ろせんかほうしき)

相続税が贈与税を計算するための財産評価のうち,宅地を評価する一つの方式のことです。路線価方式は,国税庁の定めた土地の路線価にその土地の㎡数を掛けた後,各種の修正(間口の広さ,土地の形など)を行って宅地の評価額を計算する方式です。
もう一つの方式は,倍率方式と呼ばれる方式です。路線価が定められていない土地は,路線価方式で評価することができないので,倍率方式で計算します。倍率方式は,その宅地の固定資産税評価額に,国税庁の定めた評価倍率表に記載された倍率を掛けて計算します。

割印(わりいん)

二つの文書について,それぞれの文書の内容が同じであるとか,内容が関連しているとかいうことを証明するために,二つの文書にまたがって押される印鑑のことです。例えば契約書を当事者分の2通作って,契約書の表紙をずらして割印すると,同じ機会に,同じ内容で契約書を作ったことを証明できます。
なお,一つの文書が数ページになるときに,各ページの継ぎ目に印鑑を押して,その文書が一連一体のものであることを証明しますが,このとき押される印のことを契印といいます。ホッチキスでとめてある文書のときは各ページの継ぎ目に,製本してあるときは裏表紙(場合によっては表も)の製本テープと文書の継ぎ目に,それぞれまたがるように押します。

割引発行の公社債(わりびきはっこうのこうしゃさい)

券面額から利子相当額を差し引いた発行価額で発行される公社債のことです。
公社債とは、公債と社債のことです。公債とは、国や地方公共団体が資金調達をするときに負う金銭債務(債権)などのことです(国債や地方債)。社債とは民間の会社が資金調達をするときに負う金銭債務(債権)のことです。公社債を発行(起債)するときは、証拠となる証券を発行したりします。相続税による公社債の評価は、利付公社債、割引発行の公社債、元利均等償還が行われる公社債、転換社債型新株予約権付社債に区分し、券面額100円あたりの価額を基準として、それぞれについて決められた評価表方法にもとづいて評価します。