連休中に,映画「鴨川ホルモー」を観に行きました。去年1月にテレビドラマ化されて話題となった「鹿男あをによし」の原作者,万城目学(まきめまなぶ)さんのデビュー作の映画化で,万城目さんの小説のファンである私は,果たしてどのような映像になっているのだろうかと,とても楽しみにしていました(以下,映画のネタがばれます)。
京都大学へ二浪の末合格した安倍(山田孝之さん)は,同級生の高村(濱田岳さん)と葵祭でのアルバイトに参加した帰り道,同じ大学の三回生である菅原(荒川良々さん)から声をかけられ,「京大青竜会」というサークルに入らないかと勧誘を受けます。しかし渡されたチラシを見ても,具体的な活動内容は書かれておらず,一体何のサークルなのかさっぱり分かりません。安部も高村も不信に思いますが,何となくコンパに行ってみたところ,居酒屋「べろべろばあ」には多くの新入生が集まっていました。安倍は,そこに来ていた新入生の一人である早良京子(芦名星さん)に一目ぼれ。強引に高村を誘ってサークルに入会します。活動は,最初のうちは飲み会やハイキングなどのようなレクリエーションばかりでした。しかし一定期間の後,先輩たちから,実は「京大青竜会」とは京都に1000年も前から伝わる「ホルモー」という謎の競技を行うサークルであることが告げられ,この日を境に安倍たち新入生には「ホルモー」を行うための訓練の日々が始まるのでした。…と,ここからは「ホルモー」についての説明をしたいところなのですが,設定が細かいため,競技の内容やルール,「京大青竜会」のメンバーと安倍の恋etc…大まかなストーリーについてはこちらをご覧になってください。
鴨川ホルモー 出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「ホルモー」の主役である「オニ」たちは,当然CGで制作するしかないわけですが,これが素晴らしい出来で,形も動きも想像以上によくできており感心しました。原作ファンのみなさんもほとんどの人が納得されるのではないでしょうか?それから,「オニ」に命令を発するとき,いちいち大げさな振り付けがあるのが良かったです(原作では振り付けがあるかないかは書かれていません)。役者さんたちがもの凄い形相で(もう,血管がキレそうな感じで)「オニ語」を発しながら気合の入ったポーズを取って「オニ」たちに命令する様を見て,実際に戦うのは「オニ」たちなのですが,命令だけでもものすごく体力が要りそうだなあと思わず笑ってしまいました。「オニ」は一般の人たちには見えませんから,側からサークルのメンバー以外の人が試合を見ていたら,何をしているのか全く不明で,滑稽です。でも学生の時って,社会人になってから振り返ると「何であんなことを」と思うような,どうでもいいようなことに一所懸命になったり,時間を費やしたりするものですよね?映像化された「ホルモー」を目にしたことで,あらためて「ホルモー」という競技そのものが,そんな青春の象徴として描かれているように思えてきてなりませんでした。
安倍の暮らす安アパートの部屋は,私の思っていた雰囲気そのもので驚きました。高村がいる百万遍寮のロケ地は吉田寮だそうですが,その汚さといったら,なんと言いますか…いかにも古典的な貧乏学生の生活!って感じがかえっていいなあと思いました。居酒屋「べろべろばあ」は外観,内装ともに,古さだけでなく,「ホルモー」の歴史を受け継ぐ場所として使われている伝統が感じられて素敵でした。先輩のおごりとなると,先輩たちの話にはほとんど耳を貸さずに料理にがっつく新入生たちの姿が微笑ましかったです。この物語に描かれている魅力の1つである,時代を問わない普遍的な大学生の生活ぶりが,さらに生き生きと表現されていると思いました。
ところで,「ホルモー」は陰陽道からヒントを得て考えられた競技で,「ホルモー」を行うサークルがある4大学の位置とそのサークル名は陰陽五行説から,主人公の安倍という名前も陰陽師の安倍晴明から取られているように,歴史ある京都には何かしら神がかり的な,不思議な大きい力があって,それらによって「京大青竜会」のメンバーも選ばれ,動かされているという,ちょっと怖いような,けれどもワクワクする設定の上に,この青春物語は繰り広げられています。でも映画ではこの点については,あまり説明がありませんでした。もちろん,安倍たちが「十七条ホルモー」を発令したことで,神々の怒りを買ってしまい,不気味な声を聞くようになったり,暗雲が立ち込めて大鬼が暴れだしそうになったりするなど不穏な空気が広がり,最後にもピンチが訪れるのですが…話のテンポのよさに乗りすぎてしまっているせいか,「本当に神々を怒らせたらマジでえらいことになる!」という怖さがあまり伝わってきませんでした。青春コメディー映画としてはこれでも十分なのかもしれませんが,私としてはもう少しこの「神々の大きな力」について説得力が欲しかったです。
演技については,山田孝之さん,濱田岳さん,荒川良々さんは文句なく上手いと思いました。意外だったのは楠木ふみ(凡ちゃん)役の栗山千明さん。クールな雰囲気の栗山さんは,おかっぱ頭に黒ぶちメガネでダサダサの凡ちゃんのイメージとはほど遠かったのですが,映画を観てびっくり!完全に凡ちゃんそのものになっていました。
全体的には,とても面白かったですし,映画版ならではの良さもいっぱいあったのですが,原作ファンとしてはどうしても映画に盛り込めていない原作の設定等について気になってしまい,少々物足りなさを感じた部分もあったので,それだけがちょっと残念でした。興味を持たれた方は,まず映画を観てから原作を読まれることをオススメします。