先の冬はとても寒い冬でした。また長い冬でした。しかし急を告げて暖かくなりました。直近天気も優れています。
これから暑くなります。夏の暑さもさることながら,春風の爽やかさと,有無を言わせぬ真夏の灼熱に挟まれた6月のそれは,中途半端であるが故に身に染みて,気持ちも塞がるのが常です。
暑いときは暑いとあるがままに受け止めてしまうのがいいです。そういうものだと全身で受け止めるのがいいです。避けられるようなそうでないような気持ちはよくありません。その暑さは,戦争末期に南方で戦った先人に比べるべくもない。暑い暑いというのも恥ずかしいことです。
快適に慣れると,そんな中途半端な気持ちが生まれます。苦しいときは正面から,全身でそれを受け止めるのがいいです。苦しみを身を斜めにかわしたり,誰かが何とかしてくれるとするのは望ましくないです。
安政の大獄に天に召された幕末の天才橋本左内先生は,その15歳に『啓発録』をしたためて人生を規定されましたが,文書のはじめに「稚心を去る」を言い,これを文書の通則とし(他に言う「気を振う」「志を立つ」「学に務む」「交友を択ぶ」を貫くもの),生きるの根本規則とされ,末に天下一流の大人物となられました。
稚心とはおさなごころのこと,子供のように甘えた心のことです。誰かがなんとかしてくれるという心,責任を他に転嫁する拗ねた心です。すなわち,大人物たるには子の如き拗けたる甘えの一切を捨てよ!という強い命令です。誰しも自分はすっかり大人で,子供染みた心など持ち合わせていないと思うものですが,真に自省すれば,大方最後は誰かがなんとかしてくれるという稚心に満ち満ちているものです。大人の判断である,政治的判断である,これが慣例である,などという詭弁で稚心を覆っていないか。
己の一挙手一投足に稚心がないかを自省せよとの言葉は,橋本左内先生がこの世に残した日本の宝物だと信じます。
つまりは,灼熱であれ何であれ暑いくらいで甘えてはいけません。暑い暑いと社交的に言うのはよし,本心は蒸されず冷え冷えと緊張して,自己を見つめていなければ。