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仏壇やお墓は誰が後を継ぐのか?

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投稿者:中尾 哲也
お墓や仏壇の相続後継ぎ

絵 村松てんてん

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

今日は,先祖のお祀り,祭祀や祭祀用財産の引き継ぎ,墓守などについてお話します。これらを誰がどうやって引き継いでいくのか。

戦前の家制度のもとでは疑問など生じようがなかった問題ですが,現代ではとても微妙で難しい問題になっています。

項目 記事のタイトル
宗教と憲法 信教の自由と政教分離について
宗教法人 宗教法人の課税について(坊主丸儲け)
人の死と法律 死亡時間や出生時間はどのように決まるか
埋葬 日本では火葬しかできない(土葬禁止)って本当?
葬儀 葬儀・葬式はやらなくていい?
祭祀やお墓 仏壇やお墓は誰が後を継ぐのか?
遺骨 遺骨の権利は誰のもの?

お墓の相続風鈴

 

墓守,後継ぎ,祭祀の承継について

「やっぱり健二(誰?)がわしの後継ぎやで。長男やもん,そないにきまっとるやないか。いや,よー考えたら健二は東京いって墓参りもせん奴やから,次男の健三(なんで三やねん,健二も,,,)に墓守してもらうわ,後継ぎは健三っちゅうことや。せやせや健二みたいなもんに任しとったら草ぼうぼうになってまうわ!わし死んでも死にきれん」

これって法律的なお話?それとも,,

後継ぎとか言っているので,なにやら相続関係の話にも思える。そこで,民法の相続の条文を見てみると,,

民法896条(相続の一般的効力)
相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし,被相続人の一身に専属したものは,この限りでない。

あれ?財産に属したって書いてるな。じゃあ墓守とか,仏壇置いて毎日お祭りするとか,坊さん呼んで法事を仕切る権利はどうなんやろ?宗教的なことって,そもそも財産に属しとるんか?いや,精神的なもんやろ,心の問題やでそんなもん!

正解(久しぶりの,みのもんたでお願いします)

そうです。墓とか仏壇とかは置いておいて,祖先を祀っていく地位は財産に属してない。祖先に感謝する気持ちを子孫に引き継いでいくあの形の無いものは財産に属してなどいない。財産じゃないんです。だから,法律のこの条文では処理できません。

そんならどうするか。ほかの条文をさがすか,,ぺらぺら(六法をめくる音),,な,無い!!そうです。そんなことが書いてある条文はありません。祖先の祭祀そのものを,誰がどういう基準で承継するかなんてことを正面から書いた法律の条文は無いのです。

やっぱりいまの法律は,宗教のことに触れないんだな。しかしなあ,,おっかしいな,,なんか手がかりはないものかと探すと,,

 

祭祀財産(仏壇やお墓)の相続について

なんかそれらしいのがありました。

民法897条(祭祀に関する権利の承継)
系譜,祭具及び墳墓の所有権は,前条の規定にかかわらず,慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし,被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは,その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは,同項の権利を承継すべき者は,家庭裁判所が定める。

祖先の祭祀をあーせー,こーせーという直接の条文じゃないようだが,なんかそれらしことが書いてある。繰り返しますが,この条文は,祭祀を誰が継げと正面から宣言しようとしたものではありません。しかしそれをも決めている条文になります。

  • 系譜とは,家系図のこと
  • 祭具とは,仏壇とか霊舎(神道)など
  • 墳墓とは,お墓のこと

これらって,祭祀そのものじゃなくて,一応モノなので,「財産に属した」権利義務に当てはまるはず。それならば,ほかの財産と同じく,法定相続などの仕組みで処理するのが原則。しかしそれをしないよって条文なんです。

一応モノだけど,普通の相続では処理しない。モノではあるが,祖先の祭祀と切り離せるものじゃない。祭祀に使う道具なので,祭祀と一体として処理されるべきものだ。なので,祭祀そのものを承継する人が,これらのモノも一緒に承継しないさいと書いてあるんですね(仏壇を兄弟3人で相続しても仕方ないしね)。

しかしその中で,ひっそりと控えめに,祖先の祭祀そのものの承継について書いている。この条文によると,祖先の祭祀そのものの承継は,以下の基準で決まる。

  1. 亡くなった人の指定
  2. 慣習
  3. 家庭裁判所が決める

なんと祖先を誰が祀っていくかは,いま先祖祀りの責任者となっている人が指定できる。ちゃんと遺言でやってもいいし,口伝てでもいい。なんとなんと,そういう仕組みになってるんです。人の意思を尊重する戦後民法らしい規定です。

生前何にも言ってなければ,慣習で決まります。要するに,「昔からそういうもんじゃ,常識やろ常識!」と,その地域の誰もが疑わない程度に確固とした慣わしがあれば,それによって決まります。

生前に指定されていなかったし,地域の慣習もあるやないやよーわからんねということになると,最後は家庭裁判所が決めます。仕方ないので最後に裁判所が出てくるんです。

そして,さっきの897条に戻って,祭祀そのものを引き継ぐ人が,おまけといっちゃなんですが,祭祀に使う道具である家系図や仏壇やお墓も引き継ぐんです。祭祀に道具がひっついてきます。

 

まとめ

もう一度確認しておきますね。

祭祀用の道具(系譜・祭具・墳墓)はモノであって,財産である。

それなら一般相続の対象になりそうだが,そうはならない。

これらはお祭りと一緒になって意味のある財産だから,お祭りをする人が承継する。

お祭りをする人は,次のように決まる。そして同時に,祭祀財産についても持ち主が決まる。

1.被相続人の指定
2.慣習
3.家庭裁判所の決定

要するに,祭祀そのものの引継ぎも,祭祀用の財産の引継ぎも,まとめて法律に書いてやったぜベイベー(ただし細かいことは言わないけどね)という構成になってます。

 

あれ??

「やっぱり健二がわしの後継ぎやで。長男やもん,そないにきまっとるやないか。いや,よー考えたら健二は東京いって墓参りもせん奴やつやから,やっぱり次男の健三に墓守してもらうわ,後継ぎは健三っちゅうことや。せやせや健二みたいなもんに任しとったら草ぼうぼうになってまうわ!わし死んでも死にきれん,,,,ごちゃごちゃ」

,,,これって,あながちがんこ親父の独り言ってわけでもなさそうですね。というよりむしろ,法律どおりってことみたいですw

親父が改めて言う

「俺がルールブックだ」

俺がルールブック

 

◎おまけ1 その昔,明治の旧民法ではどうだったか

家制度のあった戦前の民法では,このあたりどうなっていたのか。

旧民法986条
家督相続人は相続開始の時より前戸主の有せし権利義務を承継す 但戸主の一身に専属せるものは此限に在らず

同987条
系譜,祭具及び墳墓の所有権は家督相続人の特権に属す

※ホントハ,ヒラガナジャナクテ,カタカナダヨ

旧民法下,日本には家制度というのがあって,家族はとにかく一体化していました。家には戸主という家長がいて,家を完全に支配統率していた。戸主は家庭の中の神です神。財産は形式上,全部戸主の所有になっていたし,家を出入り(事実上も,戸籍上も)するには戸主の許可が必要だったんです(その代わり家族を扶養するなど戸主の責任も重い)。お国の神は天皇家。間に役所を挟んで,家庭の神は戸主です。こうやって,いっとき,縦割り一直線で国家が運営されていたんですね(天皇家と役所の血統・縦割りはいまでも同じ)。

戸主がいなくなると,家督相続という身分承継儀式が始まる。家督相続人(嫡出長男優先)が地位をすべてを引き継ぐ。ほとんど相続放棄もできません。お国が消滅することがありえないように,家が消滅することも基本的にありえないと考えられた。家を継いで行くことが戸主の義務だったのです。

うえの条文を見てください。986条に,いまの法律のように「財産に属した」って書いてありますか?書いてません。財産だけじゃなく,身分丸ごと引き継ぎました。祖先祭祀は,それ用の財産もろとも家を継いだ,家督相続人の特権とされました。特権!権利なのか義務なのか,,,

へー!いまと全然違うじゃん!って一見思います。

でもほんとにそうなんでしょうか。いまの法律。亡くなった人が祭祀の主宰者を指定しない場合,慣習で決まることになっている。亡くなった人が指定するといっても,ことがことだけに普通突飛なことはしない。慣習にもとづいて指定することが多いでしょうね。指定しないと慣習による。結局慣習によることになりそうw

じゃあどんな慣習かというと,明治以来,つまり旧民法でがっちり日本に根付いた,嫡出長男が継ぐってあれになるでしょう。法律の仕組みは違っても,落ち着くところは当面変わらないと思います。

◎おまけ2 慣習とは?

慣習というのは,法律と同一視してもいいほどに確たるものになった習わしのことです。確固たる伝統というのか。

この慣習というのも立派ななんです。法,つまりルールですね。

法・事実たる慣習

普通,社会一般において,法というと,法律のことを思い浮かべます。法といえば法律。世の中全部,最後は法律で決まると。しかしこれは正確じゃありません。法というのは,厳密には法律のことではありません。法というのは,ルールのことです。そして,法(ルール)のもとになる素材には,次のようなものがあります。こういうのを法源といいます。日本で,ルールとして通用するものという意味です。

一般的な法源

  • 憲法
  • 法律(成文法)
  • 命令(政令・省令)
  • 条例(規則)
  • 慣習法
  • 判例法
  • 条理

民法の法源

  • 法律(成文法)
  • 慣習法
  • 判例法
  • 条理

法律(成文法)というのは国会で決まった国民共通のルール。これは全国民にとって絶対です。

そのほかに慣習がある。慣習というのは,法律と同じくらい効力がある伝統です。法律に書いてないことは(※民法の世界ではこれに限られない),慣習によって判断するのです。

あと判例。法律の解釈についての裁判所の判断ですね。

最後に条理っていうのもある。これを使うのは最終手段。条理とは,「それがものの道理ってもんやろ」「普通考えたらそうなるやろ」ってことw法律,慣習,判例が無いときは,どうしようもないので最後にこれが出てきます。

このように,世の中の決まりごと(法・ルール)って,法律だけじゃないのです。法律は国会で決めた一つのルール。だけど,国会のみで世の中のルールを決めきれないですよね。日本は経済的にでっかいし,それなりに広いし,長い歴史がある。全国民の想いを吸い上げたり,地域の隅々まで納得感のあるルールを決めるのは,国会だけじゃ無理だ。

だから慣習も大事なんです。祭祀(宗教)なんていうのはまさにそういう種類のことですよね。

なお,慣習が大事だってことは,法律にちゃんと書いてあります。慣習の大事さを法律に書くという矛盾がちょっと面白いですw

法の適用に関する通則法3条
公の秩序又は善良の風俗に反しない慣習は,法令の規定により認められたもの又は法令に規定されていない事項に関するものに限り,法律と同一の効力を有する。

民法92条 ※
法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において,法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは,その慣習に従う。

ややこしいでしょ。説明しませんよw

遺産相続が専門で得意分野とのことですが、どんな相談や依頼ができますか?

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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