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借金・債務を相続した人が絶対にやるべきことをお教えします

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投稿者:中尾 哲也
借金債務の相続

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

父親が死んで借金を遺産相続した!というケースは珍しくありません。世の中こんなに銀行やクレジットカード会社や消費者金融の会社があるってことは,そこから借入れをしている人がいるということです。そうすると,それを完済しないで死んでしまう人も当然たくさんいるということです。

そうです。あなたのケースは別に珍しくも何ともないんです。だから,亡くなった人を責めるのは止めましょう。だからもうケンカはやめてー2人を止めてー(←お前が借金残すからじゃい!)ということです。

それはいいとして,借金を相続した!というケースには,このくらいのパターンがあるのかなと思います。

  • 亡くなった人が事業をやっていて,いつも債務がたくさんあるのを聞かされていた。
  • 亡くなってすぐに債権者からたくさん請求書がやってきた(招かれざる客がきた)。
  • 生前にいろいろ借金で苦労させられた。完済しているはずだが,なーんか怪しい。どっかから借入れしているような不吉な予感がする。

どの場合もそれなりに深刻ですが,今すべきことははっきりしています。

要は,相続人のあなたが,思っても見なかった借金をかぶることがないようにすること。とにかく債務があるのかないのか,あるとしたらどれだけあるのかを正しく把握して,あなたの意思でどうするかを決めていくこと。これが大切です。

そこで今日は,借金を遺産相続した(かもしれない?)あなたが,亡き人の死後にやるべきこと詳しく説明します。

これを読んでいただければ,亡き人に借金があったのか無かったのか,その額はいくらかを調べる方法が分かります。そして,相続人のあなたが,今後どのような行動をすればいいのかが分かります。

それでははじめます。

まずは借金があるかどうか調べる

どれだけ請求を待つか(調査期間)を決める

結論から言うと,被相続人が死んでから2か月くらい待てばだいたいのことは分かると思います。いま世の中で他人から借金をすると,支払いはほぼ月払いになります。1年払いとか,あるとき払いとかそんな契約ありませんからね。

被相続人が月の初めに死んでも,終わりに死んでも,どのみち最大1か月以内には支払い日がきます。支払日に支払いがなければ,まあ2週間もすれば催促の請求書がきます。場合によっては電話がかかってきます(携帯電話に出るのが嫌でもこの際必ず出ること。着信があったら必ず折り返しましょう)。入金なくても大きな気持ちで支払いを待つwなんていう債権者はこの現代日本にはいませんので,支払いをせずに1か月もすれば請求書の1通や2通はやってくるのです。だから,死んでから2か月くらいすれば,だいたいのことは分かるという寸法です。

もっとも,すでに分かっている債権者の分も見ないふりして2か月待てということではありません。すでに分かっている債権者の分は,資料を確認して,後から説明する債権者のリスト(債権者一覧表)にまとめていきましょう。

また,亡くなった人が商売をしていて,顧問税理士に頼んでいた場合は,すぐその税理士に連絡して亡くなったことを伝えましょう。そうすると,顧問税理士が,事業のしめをするとともに,支払いの内容などについて説明してくれるはずです。

金融機関からの借金

金融機関からの借金は,さっきの調査期間内に金融機関からやってくる請求書,催告書,お知らせ(名前はいろいろ)を必ず開封して確認してください。また,銀行や郵便局の通帳を調べて,金融機関らしいところから引き落としがないか調べます。繰越前の通帳も全部見てください。一度でも引き落としがあったら,明らかに完済しているものでない限り,借金が残っていないか調査したほうがいいでしょう。

なお,金融機関からの借金があれば,たいがい2か月も待てば請求書関係で確認できるんですが,被相続人が借金を支払わずに放置している場合や,住所変更をしていない場合など,すぐには請求書が届かないことがあります。

つまり,請求書を待っているだけでは,本当に金融機関からの借金があるのかないのか,100%正確にはわからないんです。そこで,もう少し正確に調べるには,信用情報機関にデータを紹介するといいです。

信用情報機関とは,金融機関がみんなで作っているデータセンターです。金融機関が貸し出し業務などをするのに,1社だけでやっていては情報が足りないので,みんなでデータセンターを作って,お客さんの情報を共有しているんです。例えば,借入れをしている人の借入状況や事故情報(支払いの遅れとか,自己破産とか)などです。金融機関は,お客さんから借入れの申込みがあったとき,このデータセンターに情報を紹介して,「この人に貸していいのかどうか」を判断する一つの資料にしているんですね。だから,ここに紹介をすれば,被相続人がどこからどれだけ借金をしているかが分かります。

信用情報機関は,金融機関の種類ごとに分かれています。次のとおりです。
銀行 ⇒ 全国銀行個人信用情報センター 通称K(KSC)
クレジット会社 ⇒ シー・アイ・シー 通称C(CIC)
消費者金融 ⇒ 日本信用情報機構 通称ジック(JICC)

この全部に被相続人のデータを紹介すると,銀行,クレジットカード会社,消費者金融会社からの借入れがあるかないか,あったらその金額などがわかります。あなたは相続人なので,データを紹介する権利があります。データ紹介の仕方は以下に書いてあります。

KSCのデータ照会方法はこちら
CICのデータ照会方法はこちら
JICCのデータ照会方法はこちら

取引上の債務

純粋な金融機関からの借金以外にも,債務がある可能性があります。すぐ思いつくのは,いろんな取引上の債務です。被相続人は,次のような契約をしていませんでしたか?してれば,今後これをどうするのか決めないといけません。

引き継ぐ場合は,相手に連絡して,相続したので引き継ぎたいと伝えましょう。どうしたらいいのかを教えてくれます。解約したい場合も相手にそのように伝えましょう。いつ解約になって,支払いがあるのかないのかを教えてくれます。

  • 公共料金
  • インターネット回線
  • ケーブルテレビ
  • フィットネスクラブ
  • 各種の同好会
  • 各種の賛助会員
  • 業界団体
  • 書籍の定期購読
  • 生命保険
  • 貸金庫
  • ゴルフ会員権
    など

友人や知人からの借金

あと,友人や知人から借金をしている可能性もあります。信頼できる親族などには,ストレートにこう聞きましょう。
「借入れして返済してないお金はないでしょうか」と。

しかし,例えば一緒に商売していた怪しい人とか,どうにも信用できない友人とかには,直球勝負で債務があるかどうかを聞くのは危険です。こちらが何も知らないのをいいことに,お金をとってやろうと考える人がいないとも限らないからです。ですから,そういう人には,このように連絡しましょう。
「被相続人が亡くなりました。生前はお世話になりました。お知らせとお礼まで」

決して,「ご迷惑をおかけしてませんか?」とか,「お金を借りてませんか?」とか聞いてはいけません。なお,それでも「実はお金を貸していてね」という話が出てきたら,すぐに支払うとか,すみませんとか,応えてはいけません。本当かどうかわからないからです。そういうときは,まず「借用書の写しを送っていただけますか」と伝えてください。2か月経っても借用書を送ってこず,請求書も送ってこない場合は,かなり怪しいと考えてよさそうです。

 

債権者リスト(債権者一覧表)を作る

このようにして債権者を調べたら,その都度,債権者のリストに書き込んでいってください。別に難しく考える必要はありません。どこから,いくら,どいういう種類のお金を借りているのかをつけていくだけです。

例)
債権者一覧表

  1. かねかし商事 100万円 平成○年○月○日借入れ 金銭の借入れ
  2. マネークレジット 50万円 平成○年○月○日契約 クレジットカード購入

ここまでで,どんな借金を相続することになるのかだいたい分かったはずです。

 

方針を決めたら正しく行動する

相続した借金がだいたい分かったら,次にこれをどうしていくのかを決めます。日本の法律はやさしいwので,自分が作ったわけじゃない借金を無理やり相続人に支払わせることはありません。払いたくなければ,払わないこともできます。もちろん払ってもかまいませんw

払うにしろ,払わないにしろ,具体的に何をしていったらいいのか,それをこれから説明します。

払っていく場合

そのまま払っていく場合

借金をそのまま支払っていく場合は,債権者に連絡をして,今後どのように支払っていけばいいのか確認してください(振込み口座など)。

注意しなければいけないのは,相続人が複数人いるときです。相続人が複数人いるときの相続を,共同相続といいます。共同相続の場合,借金のような金銭債務は,相続が開始すると同時に,共同相続人に対して,相続分の割合に応じて当然に相続されます。この場合,相続人で話合う遺産分割という理屈はありません。

つまり,例えば借金500万円を相続し,相続人が子供2人だとすると,相続開始と同時に,当然に,それぞれ250万円ずつ債務を相続します。このことの意味をまとめるとこうです。

  • 相続人のうちの1人が債務を引き受けることはできない
  • 相続人は自分の分だけ法的な責任を負い,他の相続人の分は無関係

債務というのは,相手方債権者のあることなので,相続人の話合いで,債務を引き継ぐ人を決めることはできません。債権者としてみれば,支払い能力がない人に債務をかためられてはたまったものじゃないからです。誰に払ってもらうのかが大事だからです。逆に言うと,相続人は,自分が相続した金額までしか責任を負わないのです。

このような法的な事実を踏まえて,共同相続人でどうするかを話合い,また債権者に返済をしていきます。「俺は支払わないよ」という相続人がいれば,それは仕方ありません。あなたは自分の分だけ支払えば足ります。ただし,その相続人が相続放棄をすれば,あなただけが相続人になるので,あなたが全額を支払うことになります。

債務整理をして支払っていく場合

借金がクレジットカード会社や消費者金融からのもので,数百万円までにおさまる場合,債務整理をして支払っていくのも一つの方法です。場合によっては,被相続人が,債権者に対して,長年利息制限法を超える違法利息を支払っていて,債務整理をすると借金の額が大幅に減ることもあります。

債務整理をして支払っていけるかどうか判断するには,債権者一覧表の借金の額を全部足して,これを36で割ってみてください。3年払いにした場合の,毎月の支払額が計算できます。これが基準になります。毎月この金額を支払っていける場合,債務整理をしてみるのも一つの方法です。ただ,債務整理をすると,さっきの信用情報機関に事故情報として登録されてしまいます。そこまでして支払っていく必要があるのかよく考えてください。

なお,借金の額が大きい場合は,法的な整理をして支払っていく方法もあります。いずれにしても,債務整理をして支払っていこうと考えたときは,司法書士に相談してみてください。

相続放棄をする場合

相続放棄の手続

借金の額が大きくてとても払っていけない場合は,相続放棄をします。相続放棄をすると,資産も全部放棄することになりますが,借金を支払えないんですから仕方ありません。相続放棄は,「自己のために相続の開始があった時から3か月以内に,家庭裁判所に書類を提出して」しなければいけません。自分で放棄したと宣言するだけではダメなので注意してください。

も一度言います。相続の放棄は,「自己のために相続が開始したことを知った時」から3か月以内にします。自分が相続人になる相続が始まったことを知った時から3か月です。だから,被相続人が死んでいたことを知らなかったり,自分より優先順位の相続人が死んでいたりで自分が相続人になっていることを知らなかったときは,3か月の期間は,それらを知った時からスタートします。ただし,「そんな法律があるのを知らなかった」というのは理由になりませんので注意です。法律を知らないというのは通りません(ガーーン)。

なお,判例により,次のような場合には,3か月を経過していても,相続放棄ができる場合があります。あなたがこれに当てはまるなら,あきらめずに司法書士に相談してください。

  • 遺産(資産も負債も)がまったくないと思っていた
  • そう考えるのに相当な理由があった
  • 遺産の存在を知ってから3か月経っていない

法定単純承認に注意

以上のとおり,3か月内に家庭裁判所で手続きすれば相続放棄できますが,次のような事実があったときはもう相続放棄できなくなります。なんと相続を「単純承認」したものとみなされてしまうのです。これを「法定単純承認」といいます。

単純承認とみなされると,もう借金から逃げることはできません。全部あなたが引き継ぎます。自分が作った借金として,今後これを付き合っていくことになります。だから,ぜったいに法定単純承認にならないように慎重に行動してください。

  • 相続財産の全部又は一部を処分したとき(要注意!いいとこどりはできない!!)
  • 相続放棄や限定承認をしないで3か月経過したとき
  • 相続放棄や限定承認をしたとしても,相続財産の全部又は一部を隠していたり,債権者を害する目的で消費したり,悪意で財産目録に記載しなかったとき

相続放棄を家庭裁判所に申述する場合とその方法

限定承認をする場合

借金がたくさんあるのは分かっているけど,資産もたくさんあるときはどうしたらいいでしょうか。借金と資産を比べても,どっちが多いかよくわからない,もうちょっと調査しないとはっきりしないというケースもあります。

こういうときは,「限定承認」という方法もとれます。限定承認とは,「相続によって得た財産を限度として,相続債務などを弁済するという留保をして相続を承認」すること。つまり,資産の範囲で負債を返済する。マイナスにはなりませんよ,という相続の仕方です。限定承認も,相続放棄と同じく,3か月以内に家庭裁判所に書類を出して手続を始めます。

手続の中で財産を調査していって借金が多かった場合,プラスにもマイナスにもならないので,やる意味がないように思えますが,例えば相続財産の中に,お金では替えられない貴重な財産や思い入れのある財産がある場合,その財産の所有権を取得して,対価をお金で支払うことができるというメリットがあります。例えば,「親父が建ててくれた,思い出いっぱいのこの家だけは守りたい」というケースです。

限定承認をするには,財産を評価したり,競売してお金に代えたり,債権者に弁済したり,複雑な法律手続が必要です。自分でやるのは厳しいので,司法書士に相談してください。

限定承認(限定相続)を家庭裁判所に申請して相続財産の範囲で債務を支払う

 

まとめ

相続で借金を残されて,「何してくれとんじゃい!」「最後までいらんことしやがって!」とぷんぷん怒っている相続人もいるでしょう。
はたまた
「お父さんは1人で歯を食いしばって頑張ってくれてたんやねえ,私らが何とか払ってあげたいねえ」というお涙ケースもあるかも知れません。

いずれにしろ,相続は開始しました。サイは投げられたのです。もはや借金は,被相続人の問題ではなく,あなた自身の問題になりました。だから,あなた自身がしっかり事実関係を把握して,正しい判断をしなければいけません。

まずは,借金の内容をちゃんと調査して事実を把握すること。
そして,自分の経済状態を踏まえて,それをどうするか決めること。
最後に,決まった方針にもとづいて,ちゃんと法律手続を行うこと。

気持ちを強くもって,この三つをやり遂げてください。

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3か月過ぎてしまった人へ

3か月を過ぎたら相続放棄できないとあきらめていませんか?

つづきにどうぞ

借金じゃなくて財産を相続した人。借金も相続したが財産も一緒に相続した人は遺産調査もしましょう。

自分でできる!相続財産の調査方法を誰よりも詳しく説明します

 

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