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「忘れられる権利」を使って個人情報を削除してもらえるか

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投稿者:中尾 哲也
忘れられる権利

忘れられる権利??

 インターネット検索サイト「グーグル」の検索結果から、自身の逮捕に関する記事の削除を男性が求めた仮処分申し立てで、さいたま地裁(小林久起裁判長)が「犯罪の性質にもよるが、ある程度の期間の経過後は、過去の犯罪を社会から『忘れられる権利』がある」と判断し、削除を認める決定を出していたことが27日、分かった。

検索結果の削除を命じた司法判断はこれまでもあったが、専門家によると「忘れられる権利」と明示し、削除を認めたのは国内初とみられる。決定は昨年12月22日付。

決定などによると、男性は児童買春・ポルノ禁止法違反の罪で罰金50万円の略式命令が確定。名前と住所で検索すると3年以上前の逮捕時の記事が表示された。男性の仮処分申し立てに対し、さいたま地裁が昨年6月、「更生を妨げられない利益を侵害している」として削除を命令。グーグル側がこの決定の取り消しを求めていた。

産経ニュースより

先日うえのような報道がありました。裁判所に対し,「グーグルから過去の個人情報消してくれ」と仮処分申請し,「そうだね,忘れられる権利あるよね」と仮処分決定を受けたとのこと。仮処分というのは,本体の裁判に前もって行われる保全処分で,

  • 本案の訴訟はするが,判決とるまでに時間かかる
  • 時間がたつと仮に勝訴しても手遅れになる
  • なのでいま何らかの対処をしておく必要性が認められる
  • とはいえ仮なので担保金を裁判所に積んだ

ような場合に,当事者が申し立てて,裁判所から出してもらう仮の決定です。仮とはいっても一旦執行するものだし,裁判所も相当だと判断しているので,本案の判決もそのような結論になる可能性が高いです(グーグルはこの仮処分決定に不服申立てしてるようですが)。

よっしゃあ!!「忘れられる権利」が認められたぜ!これから悪いことしても訴訟すればグーグルから消してもらえるぜ!!

というほど単純じゃありませんw「忘れられる権利」って何のことか知ってますか?そもそも何がどのように問題になってるのか知られていないように思います。よってこの際「忘れられる権利」を含め,ネット検索とプライバシーの周辺について整理してみますよ。前半の理屈編で「忘れられる権利」がどういうものか知っていただき,その後の手続編で,もしあなたが「忘れられたい人」としてグーグルに削除請求する場合の方法論を説明します。あくまで投稿日現在の情報。ホットな話題なので,数年でどっと進展するかもしれませんよ。

 

目次

理屈編

  • ネット検索とプライバシー
  • 「忘れられる権利」とは何だ?
  • 主戦場はヨーロッパ

手続編

  • 「忘れられる権利」を直接定めた法律はない
  • GoogleやYahoo!が用意しているフォームから削除申請する
  • プロバイダ責任制限法は使えないの?
  • 個人情報保護法は使えないの?
  • 民法(一般不法行為)によって差止請求する

グーグルロゴ

本文

理屈編

 

ネット検索とプライバシー

ネット空間にある情報量ってとんでもなく拡大しているらしい。まだ当面この状況は続くでしょう。そんなネット情報の支配者にも近い地位にいるのがGoogle,片仮名でグーグル。多くの人が日々グーグル検索を使って何か調べ物をしてますよね。Yahoo検索もかなーり前からグーグルのロボットを使っているので,日本人はみーんなグーグルを使ってます。

で,過去に悪業三昧の人や,やんちゃをしていた人は,あんまり嬉しくない情報がネット検索にあがってくるかもしれません。たとえば犯罪をして逮捕された情報とか,何らか行政処分を受けた情報とか,,いろいろありますけどね。そういうのが検索にかかってくると場合によっては大小不都合もあるでしょう。「やめてけれ」と。もういい加減「消してけれ」と。気持ちを入れ替えてがんばってるんだから更正を妨害しないでくれ,と。

ネットは便利でいろんなことを調べられますが,調べられるほうにとっては嫌なこともある。そういうときは情報をネット空間から消して欲しい。検索結果から削除してほしい。俺がお願いしてんだから削除しろよ。何勝手に載せてんだ。「人の嫌がることはするな」と教育されなかったのかコノヤロー。そう言いたくなる気持ちもわかります。がしかし,そうは問屋が卸さないんですよね,,だって,見たい知りたい人もいるし,ニュースにしたい会社もあるし,,調整しないといけないんですよそれぞれの権利を。だってみんな大事な人間だものみつを(またいうてしもたw)

  • 忘れられたい人
  • ニュースにしたい人
  • 見たい知りたい人

忘れられたい人はどういう権利を持っているか

忘れられたい人は,プライバシー権を持っています。プライバシー権には二つほどある。

  • 消極的プライバシー権(昔ながらのプライバシー権)
    これは,私的なことをみだりに公開されない権利です。みんなそう思いますよね。
  • 積極的プライバシー権(新しいプライバシー権,自己情報コントロール権)
    もう1歩進んで,積極的に,自分の情報は自分で管理できるよって権利です。

プライバシー権を直接に規定した法って無いんですよ。判例で徐々に認められてきた権利です。根拠となる法や法律の条文は次のとおり。

憲法
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)
第七百十条  他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

憲法においては,プライバシーを侵害する法律等が無効になるという形で,民法においては,プライバシーを侵害した者に対して損害賠償請求権等を行使できるという形で,それぞれプライバシー権が守られます。

ニュースにしたい人はどういう権利を持っているか

一方,,人間には,自分の思想や信仰,そして場合によっては事実そのものを取材したり編集したりして社会に問いたいという欲求がある。人間は表現したい生き物ですからね。こういうことを国家からの制限を受けずに自由にできるよってのが「表現の自由」です。憲法で保障されてます。この,情報を出したい人の表現の自由のことを,「言論の自由」とか「出版の自由」とか「報道の自由」とかいいます。情報を出すことや,出すために考えることはとても大事です。何が大事かって,本人の成長のために大事です。個々人が成長すると,その集団としての国家の成長発展にもつながります。

憲法
第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

見たい知りたい人はどういう権利を持っているか

も一つ。情報を,出す人あれば,受け取る人あり。人間誰だって,できればいろんなことを知りたいものです。知りたい欲求も根源的なものでしょう。このような「知る権利」もさっきの「表現の自由」に含まれる。つまり憲法によって保障されます。いや何でもかんでも知りたいという野次馬根性を保障してるんじゃないですよw(それもいいですけど)もうちょっとこう高度なお話。要は,国民がいろんな情報を知って賢くならないと,国民主権(民主主義)の理想が崩れるからなんですね。日本は国民主権でしょう。国民主権主義の民主主義だ。国民が主権者として政治決定(自己決定)して国を動かす。つまり国がよくなるかダメになるかは国民次第。国民が無知でバカだと国家も衰退まっしぐらってことです。なので,国民がいろんな情報に触れて社会を知る権利を国家として保障することが大事なんですね。

以上のように,社会には立場の異なる人がいて,その利害が対立している。

  • 忘れられたい人 → 知られたくない → プライバシー権
  • ニュースにしたい人 → 知らせたい → 表現の自由のうち,言論,出版,報道の自由
  • 見たい知りたい人 → 知りたい → 表現の自由のうち,知る権利

ニュース性や国民の知る権利を優先すべき場合には,プライバシー権の範囲は狭く解釈されるし,とってもセンシティブで個人的な情報についてはプライバシー権の範囲を広くとる解釈がされます。プライバシー権の権利内容も一定ではなくて,ケースバイケースで伸びチジミします。

ともかく,「俺が嫌だから消せ」という主張を一方的に聞くことはできない。反面「とにかく報道させよ」というマスコミの言い分を全部聞き入れるわけにもいかない。そしてまた,「情報は何でも公開するほうがいいんだ」とも絶対に言えない。そういうバランスの中で,いろんな法律が作られたり,裁判所が苦労したりしてます。

インターネットの存在,コンピュータの性能向上と普及が,この問題をどんどん複雑にしてます。膨大な個人情報が国境を超えるから。ということで,個人情報の取り扱いが国際的に議論されてるわけでです。

 

「忘れられる権利」とは何だ?

いま議論されている「忘れられる権利」を一言で説明するならこうなります。

「検索事業者に対して,ネット上に検索結果として表示される個人情報の削除を請求する権利」

具体的にいうと,Googl(グーグル)eやYahoo!(ヤフー)などの検索会社に,自分が嫌だと思う自分に関する検索結果の表示を削除してほしいと請求する権利のこと。

グーグル検索すると,こんな感じで検索結果が並びますね。タイトルとスニペットとリンクが。

司法書士中尾哲也の検索

「え?それってさっき言ってたプライバシー権の話で終わりじゃないの?自分が嫌なだけじゃどうかしらないけど,,とにかく検索結果の表示が俺のプライバシー権を侵害してるって裁判所に判断してもらったらいんじゃない?そしたらページの記載が違法になるんだからフツーに削除してもらえるでしょ?プライバシーの話なら判例で判断基準も出てるし,それでいんじゃないのかい?」

おっとなかなかするどいですねww最後にその話するので,,あれなんですが,,とにかくプライバシー侵害のど真ん中のケースでもグーグルはこういうこというので上手くいかないんです。

  • プライバシーを侵害しているのは情報発信元(公開している)のWEBサイトである。グーグルは自動的にそれを検索結果に表示しているに過ぎない。よってグーグル等検索会社には削除義務がない(という裁判例が,,)。

で,難しいのはそういうケースだけじゃないんです。つまり明々白々に違法な情報がWEBに掲載されてそれをグーグルが拾ったケースだけじゃない。次のような問題がありやしませんか?

  • ネット掲載当時は適法だったが時間がたって違法になるケースはないか?そういう場合,都度都度裁判所やネット会社が違法性を審査するのは手間すぎないか。いや無理じゃないか。判断基準や問題解決の手続があったほうがいいのでは(掲載当時適法なのでネット空間に上がる時点で規制できないから)。
  • プライバシーを侵害して違法と評価されないと削除請求できないのはどうか。そこまでいかなくても削除請求できるケースがあっていいのではないか。本人にとって嫌な情報であって,社会的な有用性も薄いものなら,ネットに載ってても誰も得しないじゃないか。

ちょっと話がややこしいか,,

ややこしいが,これらの問題は,従来からのプライバシー権の仕組みでは解決しきれない問題です。なんせインターネットは情報の量と拡散力が違う。しかもデジタルなので情報がずっと残る。またいろんなプレイヤーがいて,サービスがあって,それらの間を情報が行き交う。構造が複雑で,情報の管理者が誰が分かりにくい。なのでこういう新しい問題が出てくるんです。

従来の権利保護の枠組みでは保護しきれないが,実は保護しなきゃいけない権利があるんじゃないか?それを解決する理論はないか?というところから期待されるのが「忘れられる権利」です。

「忘れられる権利」とは何か簡単に説明します

もっとも,「忘れられる権利」という言葉が一人歩きしている面も。何か画期的な仕組みができたか!!とか。そんなことはないです。まだそこまでいってません。判例もないし。地裁の仮処分ですよ仮処分,,

っていうかそもそもこの「忘れられる権利」って,ヨーロッパEUで議論されてきた権利なんです。日本発ではない。なので,EU内ではともかく日本において,「「忘れられる権利」とはこういうものだ!」「○○の問題が既存の仕組みでは解決できないから,○○の権利(とか解決手続)を生み出したのであーる!」と単純に言えるものでもない。これから議論していろいろはっきりさせていくようなものです。

ということで,「忘れられる権利」のふるさとw EUで何があったのかちょっと整理しておきます。

 

主戦場はヨーロッパ

経緯

ことの経緯はウィキペディアに簡潔にまとめられているので引用します。

2011年11月、フランスの女性がGoogleに対し「過去のヌード写真の消去」を請求して勝訴するという判決が出された。この判決は、世界で初めて「忘れられる権利」を認めたものとして画期的なものであった[2]。

この判決が契機となり、欧州連合では「忘れられる権利」を立法として承認する動きが生まれる。2012年1月、欧州委員会は、EUデータ保護指令に代わる立法として、「EUデータ保護規則案」を提案し、この規則案の第17条で「忘れられる権利」を明文化した。同条では、個人が管理者に対して自らに関する個人データを削除させる権利、当該データのさらなる拡散を停止させる権利、及び、第三者に対して、当該データのあらゆるリンク、コピーまたは複製を削除させる権利が規定されている[3]。

この規則案は2014年3月に、欧州議会の第一読会で修正された[4]。この修正により「忘れられる権利」という文言は条文から削られ、代わりに「消去権(right to erase)」という文言が用いられようになった[5]。

2014年5月13日、EU司法裁判所は、検索主体(data subject)は、一定の場合に、検索事業者に対して、検索リストから自己に関する過去の情報の削除を求めることができるとして、「忘れられる権利」を認める先行判決を下した[6][7][3]。 Google側は「検索エンジンはインターネットで閲覧可能な情報へのリンクを提供しているだけで、情報の削除権限は当該情報を公開する人にのみあり検索結果の修正は検閲に当たる」と主張したが、欧州裁判所は、この主張を認めなかった[8]。

Googleは、この判決を受けて、諮問委員会を設置し、自社の見解について報告書を発表した[9]。報告書では、上記判決の適用範囲が欧州に限定されるということが述べられている。また、削除要請があった際の判断基準について、
データ主体の公的役割
情報の性質(個人のプライバシーへの強い影響,公衆の利益)
情報の出処(source)
時の経過
の4点を考慮すべきことも述べられている。

も少し簡単に言うと,,

  1. グーグルにお願いしても検索結果を削除しない時代が続いた。検索結果はただのリンクだから関係ネー!元WEBに言ってね!訴訟でも連戦戦勝
  2. フランス女性が「自分のヌード検索ができる検索結果を消してけれ」と訴訟提起し,なんと勝訴
  3. EUがこれをきっかけに,「「忘れられる権利」を法律にしたほうがよくね?」と立ち上がる
  4. 「忘れられる権利」から「消去権」に文言修正はしたものの同様の内容を規定したEU規則案(加盟国統一の法)が欧州議会で可決
    ※EUは組織がややこしいのでその後もステップがある
  5. 別件でEU司法裁判所(最高裁相当)が,一定の場合に「忘れられる権利」を認める判断
  6. グーグルはこれを受けて,「EU最高裁が言うならしょーがないからするけどね(あんまりよろしくないと思うよ正直)。まあ俺の基準で判断するけど。あ,あと当然ヨーロッパ版だけね」と従う方針を出す
  7. その後グーグルは,欧州のユーザーが検索した場合世界中のグーグルサイトでこれを適用すると発表。あくまで「欧州ユーザー」が検索した場合ですがww

だいたいいまこんな感じです。

EU司法裁判所の判断のポイント

うえのウィキペディアには以下のように書いてますが,このEU司法裁判所の判断は,具体的な事件の判決ではなくて,じっさいに事件が係属するEU加盟国スペインの裁判所からの照会に応じて一般的な法解釈を示したもののよう(ECの司法制度には詳しくないですが)。

2014年5月13日、EU司法裁判所は、検索主体(data subject)は、一定の場合に、検索事業者に対して、検索リストから自己に関する過去の情報の削除を求めることができるとして、「忘れられる権利」を認める先行判決を下した[6][7][3]。 Google側は「検索エンジンはインターネットで閲覧可能な情報へのリンクを提供しているだ

その要点としては,,

  1. データ保護指令(いま議論しているデータ保護規則の前身)は,地理的に,グーグル検索に適用される
  2. グーグル検索はこれによって規制される業者にあたる
  3. 以下のような場合には,データ保護指令にもとづいて,検索結果の削除を請求できる
    「データが不適切か、関連性がなく、あるいはデータ処理の目的に照らして過度である場合、あるいはデータが最新化されていない場合」

骨董通り法律事務所のWEBサイトに日本語まとめがありましたので引用させていただきます

1995年EUデータ保護指令は、同データ保護指令の条項と相容れないデータの処理について、削除等を請求できることについて規定している。データ保護指令と相容れないという状況は、データが不正確な場合にのみ生じるものではない。データが不適切か、関連性がなく、あるいはデータ処理の目的に照らして過度である場合、あるいはデータが最新化されていない場合にも相容れない状況は生じうる。また、歴史的、統計的もしくは科学的目的の必要性からデータが保存されている場合を除き、必要以上に長期にわたってデータが保存されている場合にも、データ保護指令とは相容れない状況が生じうる。

それゆえ、当初は適法であった正確なデータの処理も、時の経過によって取得や処理の目的に照らしてもはや必要ないとされる場合には、1995年EUデータ保護指令と相容れないと判断される場合がある。殊に、データが不適切か関連性がなく、あるいはデータ処理の目的に照らして過度であり、時間が経過している場合には、そのような判断がなされる。

したがって、1995年EUデータ保護指令12条(b)に基づくデータ主体からの要求に基づいてデータ保護機関が判断した結果として、同人の名前を入力した検索結果に、第三者が合法的に公表し入力した個人に関連した真実の情報を含むウエブページへのリンク先が示される場合に、当該事案のすべての状況に照らして、その情報が不適切か関連性がなく、あるいはデータ処理の目的との関連で過度と認められる場合には、データ保護指令6条(1)(c)から(e)と相容れないことを根拠として、検索結果中の関連情報およびリンクは削除されなければならない。

私的な生活及び家族との生活の尊重を規定しているEU基本権憲章7条およびパーソナルデータの保護を規定している同8条に基づく基本的権利に照らし、データ主体が、検索結果のリストに含まれる情報が公衆に利用されないよう求める場合、その権利は、検索エンジンのオペレーターにとっての経済的利益を上回るだけでなく、データ主体の名前に関連して情報を見つけようとする公衆の利益をも上回るものである。ただし、特定の理由により、データ主体が公的生活で果たす役割や、公衆による問題となる情報へのアクセスの利益が優越するために、データ主体の基本的権利を制約することが正当化される場合には、その限りではない。

本件で問題になっている事案では、データ主体のプライベートな生活に関するセンシティブな情報にかかわる問題であること、記事の最初の公表は16年前であることから、データ主体は、検索結果のリストにより、その情報はもはや彼の名前に関連づけられるべきではないと言うことができる。本件では公衆による情報へのアクセスの利益が優越することもなさそうであるから、最終的にはスペイン裁判所の判断になるものの、データ主体は、それらのリンクを外すよう要求できることになりそうである。

グーグルさんの言い分

いままで,「データを自動的に並べてるだけだよ」「俺はデータ持ってないよ,管理も発信もしてないよ,自動化だよ自動化」と言ってきたグーグルさんも,このECの攻撃にはかなり苛立っているようです。自由でクールなグーグルさんも怒るときは怒るのだ。いろんなところに言い分が出てましたが,勝手に代弁するとこんな感じかな。

Larry_4x3_use僕ラリー。いくでええか?

  • EU?ヨーロッパ?そこで決まった?EUは世界のリーダーちゃうやろ。そこで決まったらそこだけやるけどな。商売さしてもらわなあかんし。
  • まあ自分の国のことは自分で決めたらええんちゃう。他の国のこととか,世界のことに口出すべきちゃう思うで。価値観ってもんがあるやろ。
  • せやけど難しいこと言うてきよるわ。いままで自動的に流しとったからよかったけど,どれが削除するもんか,せんでええもんか,判断せなあかんやん!めっちゃ金かかるやん人件費とか。難しいこというなよ。
  • そもそもEUさんはグーグル恐怖症ちゃうか?俺にデータ全部もってかれるのを怖がってるようやが,国なんかより民間企業がデータ持ってたほうが安心なんやで今日びは逆に。せやろ,民間企業は評判ちゅうのがあるやろ,ちゃんと管理しんと儲からんようになるからしっかりするやん当然。国家って権力のために都合よく利用するやろ?そっちのがやばいって絶対。せやから国が情報のことどやこや決めんほうがええんや。
  • ほんで,あんたら頭ええし人権人権いうてるからまだええけど(100歩譲ってな),独裁国家とか政治的にやばい国も適用するんか?政府が自分に都合の悪いこと全部消してくれいうてきよるで。ええんかそんなんで。ええか?悪い政治家とか金持ちとかみな言うてきよるやろ。もしそれに俺が,,,,
  • 面倒くさいからぜーんぶ応じたら,,,やばい世界なるで。せっかくネットで民主化も進んできたのに,また中世逆戻りやでしかし。あんたらそれを望んでるんか?難民もまたぎょーさん来よるで。
  • そやなくて,俺の判断と力量で専制国家と対決せーいうことか?まじでかんべんしてくれよ。俺の会社にそんな金ないで,軍事力もないし。もし西海岸の俺の会社攻撃してきよったらどうすんねん。EUさん全力で守ってくれるんか?それからちゃんと毎年金も出してバックアップしてくれるんか?俺にそこまでやらすかしかし。
  • やらすっちゅうことはやな,,,事実上俺が民間の情報を「検閲」するっちゅうことやで。これはええのんか,悪いのんかって決まってるやろ,俺は王かよ。それ俺にめっちゃ権力与えてることになるで。EUさん,俺のこと嫌いやろ?もうちょっとおとなしゅうしといてほしいわけやろ?なんか逆のことやってんでチミら。もしかしてアホ?

あ,グーグルさんに感情移入しすぎて関西弁になってしまったwEUさんの主張は立派なんですが,私はグーグルさん派なのでついつい,,ブログなんで多少偏ってもいいでしょ,,,

「忘れられる権利」の主戦場はこのようにEU。もっと言えばEUとグーグルとの一騎打ちですよ。税金の問題,情報の問題と,,国家権力の中心部(源泉)にグローバル企業がメスを入れるので,有史以来続いてきた主権国家の枠組みがギシギシきしんでいる今日この頃です。

あ,「忘れられる権利」という言葉も,EU規則案の日本語訳でしょうね。

グーグルロンドン

手続編

さてこっから手続の話をします。話を日本に戻す。日本人であるあなたが,もしネット検索に気に入らない情報がひっかかってきて,是非ともこれを削除してほしい場合にどうするか。「忘れられる権利」が認められたんだから大丈夫!!とはもう言わないですよねwそんな状況にはなってないことはもう理解いただいたはずです。

あなたはその個人情報がプライバシーを侵害していると思っている。少なくとも「忘れられる権利」に該当するから削除されるべきだと信じている。そういう場合にどうすんの?という話をしましょう。

 

「忘れられる権利」を直接に定めた法律はない

まず日本には,忘れられる権利を直接定めた法や法律はありません。いやプライバシー権ですら明文化されてないんだから当然でしょう。なので「○○法によってこの問題を一挙解決!」というわけにはいかない。EUみたいに最高裁の判断もない。明文なし,判例なしだ。

 

GoogleやYahoo!が用意しているフォームから削除申請する

ならばまずもってグーグルさんやヤフーさんに直接お願いしますか。何かしてほしいなら相手に直接言うのが人類のみならず動物界の常識ですからねw

グーグルやヤフーなどの検索会社は,独自に情報の削除ポリシーを作っている。「俺はこういう方針でやってるぜ。こういうタレこみがあれば消してやる」というようなもの。ポリシーに当てはまっていれば本当に消してくれます。消す必要がないと判断されたら消してくれません。これはもうぜったいに消してくれません。ここまで大企業になると,お金を払うから消してくれというのも通じません。100億払ったら別でしょうが(知らんけど)。

直接申請したけど消してくれなかった場合は,,

 

プロバイダ責任制限法は使えないの?

なんや法律あるやろ?プロバイダ法?プロバイダ責任とれ法?ちゃうわ,プロバイダ責任なんちゃら法ってやつ。あれで削除してもらえるはずや!!と勘違いしている人がいます。

まず法律の名前は通称「プロバイダ責任制限法」です。責任とれ法じゃありませんw正確には,「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」です。長ーーーーい。

プロバイダ責任制限法って何なの

プロバイダ責任制限法解説1

この法律はプロバイダ(ほとんどのネットサービス会社だと思ってください)に責任をとらす法律じゃなく,文字通り「責任を制限」する法律です。むしろ責任を減らしてあげる法律だ。ネット商売をしていると情報をたくさん扱う。逐一情報の適法性とか真偽を確認してたらIT(イットとかいうてるどっかの国のトップがいたような,,)業はできない。ITの発展もない。ITを発展させるためには自由にやらしたげないと。だから管理してる情報に違法なものがあっても原則責任とらなくていいことにしよう。もっと情報集めて発展してね。しかしそうすると違法な情報も出てくるね。素早く削除しないといけないことも。削除するにはちゃんと判断しないと今度は発信者に迷惑だが,審査が大変だよね。ただでさえITは人がいないのに。なので素早く削除してもし正しい情報だったとしても責任とらなくていいことにしよう。よしこれでIT業界の発展と権利の保護(個人情報など)を両立できるじゃん,,という法律です(ぐだぐだ言うとこう)。まとめると,以下のようなことだけ書いてる法律なのだ。

責任の制限(情報の送信の防止措置関係)

  • ネット会社の流した情報で権利侵害があった場合(情報をそのままにしたことによる被害者への責任
    不法な情報が出ていることを知っていたか,知ってしかるべきだったとき以外,ネット会社に責任なし。
  • ネット会社が送信防止措置ととった場合(情報を消したことによる発信者への責任)
    不法な情報だと思ってしかるべきだったときは,ネット会社に責任なし。
    また,被害者らしき人から削除の申請があり,加害者らしき発信者に消していいかどうか聞いたが,7日経っても返事がなかったとき,ネット会社に責任なし。

プロバイダ責任制限法の解説2

発信者情報の開示

権利侵害を受けた人は,次の場合には,ネット会社に対して,発信者情報の明らかにするよう請求できる。

  • 権利侵害が明らか
  • 加害者に損害賠償請求するために必要だとか,その他正当理由がある

なお,ネット会社は,故意重過失の場合を除いて,不開示による責任を負わない。

プロバイダ責任制限法解説3

使えるか

はっきりいって,検索結果の削除請求には,あんまり使えません。

この法律は,ネット会社に情報の削除義務を課すものではありません。確かに情報の送信の防止措置について規定していますが,それはあくまで責任を制限する文脈において必要だから規定しているだけです。どういう場合に削除しろとか,削除しなくていいとか,そういうことはいっさい書いてありません。つまりこの法律にもとづいて情報の削除請求権が発生するわけじゃない。なので,結局削除するかどうかは,そのネット会社の設定したポリシーによることになり,直接請求するのとかわんないってことです。

もっとも,削除請求(防止措置の請求)があった場合に,不法な情報と知ってしかるべきなのに何もしなかったら責任があるし,またどう考えても不法な情報ではないのに防止措置をとっちゃうとこれまた責任がある。そのことは法律の条文ではっきりした。だからネット会社は,防止措置の請求があった以上,ちゃんと調査して対処せざるを得ない。ちゃんと調査して対処させる意味はあるでしょう。

権利侵害があるかどうか,不法かどうか,防止措置をとるべきかどうかについて,総務省がガイドラインを出してます。ネット会社はこれに従って判断し,削除ポリシーを整備してるはずです(グーグルさんレベルになるとどういう処理になるか知らないけど)。

プロバイダ責任制限法についてはここを見ればだいたい分かります。

なお,発信者情報の開示については法律の要件を満たせば開示請求権が発生します。ただ,,権利侵害が明らかかどうか判断できるケースばかりじゃないので,じっさいには開示請求するのに訴訟提起することにはるはずです。

検索結果削除にはこれも使えんか,,となると,,

 

個人情報保護法は使えないの?

しゃーないな,,伝家の宝刀「個人情報保護法」を持ち出すしかないか?個人情報保護ってほらそんな名前ついてんやから,俺の個人情報守ってくれないわけないよな?そうでなきゃ理由ないってもんやで!!ウッキー!!

いや,はっきりいって違います,,,個人情報保護法の勘違いについてはこんどブログを書こうかと思いますが,ちょっとそういう万能な法律ではないんですね。

個人情報保護法のおさらい

そもそも個人情報保護法の立法趣旨(できた背景)は以下のようなこと。

  • OECDプライバシー8原則の日本法化
  • 積極的プライバシー権(自己情報コントロール権)の法律化・具体化

プライバシー8原則とは,1980年にOECD(経済協力開発機構)の理事会で採択された勧告で,正式には,「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関する理事会勧告」といいます。

長いけど総務省WEBより引用しておきます。個人情報保護法は,基本的にこの枠組みをそのまま踏襲し,内容を全部盛り込んで起案立法されてます。

1.収集制限の原則
個人データの収集には、制限を設けるべきであり、いかなる個人データも、適法かつ公正な手段によって、かつ適当な場合には、データ主体に知らしめ又は同意を得た上で、収集されるべきである。
2.データ内容の原則
個人データは、その利用目的に沿ったものであるべきであり、かつ利用目的に必要な範囲内で正確、完全であり最新なものに保たなければならない。
3.目的明確化の原則
個人データの収集目的は、収集時よりも遅くない時点において明確化されなければならず、その後のデータの利用は、当該収集目的の達成又は当該収集目的に矛盾しないでかつ、目的の変更毎に明確化された他の目的の達成に限定されるべきである。
4.利用制限の原則
個人データは、第9条(目的明確化の原則)により明確化された目的以外の目的のために開示利用その他の使用に供されるべきではないが、次の場合はこの限りではない。
(a)データ主体の同意がある場合、又は、
(b)法律の規定による場合
5.安全保護の原則
個人データは、その紛失もしくは不当なアクセス・破壊・使用・修正・開示等の危険に対し、合理的な安全保護措置により保護されなければならない。
6.公開の原則
個人データに係る開発、運用及び政策については、一般的な公開の政策が取られなければならない。
個人データの存在、性質及びその主要な利用目的とともにデータ管理者の識別、通常の住所をはっきりさせるための手段が容易に利用できなければならない。
7.個人参加の原則
個人は次の権利を有する。
(a)データ管理者が自己に関するデータを有しているか否かについて、データ管理者又はその他の者から確認を得ること。
(b)自己に関するデータを、i1)合理的な期間に、ii2)もし必要なら、過度にならない費用で、iii3)合理的な方法で、かつ、iv4)自己にわかりやすい形で自己に知らしめられること。
(c)上記(a)及び(b)の要求が拒否された場合には、その理由が与えられること及びそのような拒否に対して異議を申立てることができること。
(d)自己に関するデータに対して異議を申立てることができること及びその異議が認められた場合には、そのデータを消去、修正、完全化、補正させること。
8.責任の原則
データ管理者は、上記の諸原則を実施するための措置に従う責任を有する。

総務省より

で,実際の法律の目次はこんな感じの構成でして

第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 国及び地方公共団体の責務等(第四条―第六条)
第三章 個人情報の保護に関する施策等
第一節 個人情報の保護に関する基本方針(第七条)
第二節 国の施策(第八条―第十条)
第三節 地方公共団体の施策(第十一条―第十三条)
第四節 国及び地方公共団体の協力(第十四条)
第四章 個人情報取扱事業者の義務等
第一節 個人情報取扱事業者の義務(第十五条―第三十六条)
第二節 民間団体による個人情報の保護の推進(第三十七条―第四十九条)
第五章 個人情報保護委員会(第五十条―第六十五条)
第六章 雑則(第六十六条―第七十二条)
第七章 罰則(第七十三条―第七十八条)
附則

そして実務で大事なのは第四章のところですね。個人情報取扱事業者の義務等。ここに民間業者が個人情報をどのように取り扱うべきかが規定されてます。条文のタイトルはこんな感じで並ぶ。訂正とか,利用停止とか,使えるのがありそうですね,,

  • 利用目的の特定
  • 利用目的による制限
  • 適正な取得
  • 取得に際しての利用目的の通知等
  • データ内容の正確性の確保等
  • 安全管理措置
  • 従業者の監督
  • 委託先の監督
  • 第三者提供の制限
  • 保有個人データに関する事項の公表等
  • 開示
  • 訂正等
  • 利用停止等
  • 理由の説明
  • 開示等の求めに応じる手続
  • 手数料
  • 個人情報取扱事業者による苦情の処理
  • 報告の徴収
  • 助言
  • 勧告及び命令
  • 主務大事の権限の行使の制限
  • 主務大臣

使えるか

しかしダメです。使えません。

検索業者に検索結果の削除を請求する場合にはまったく使えません。なぜなら検索業者の検索サービスには個人情報保護法が適用にならないからです。

個人情報保護法2条
1項略
2  この法律において「個人情報データベース等」とは、個人情報を含む情報の集合物であって、次に掲げるものをいう。
一  特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの
二  前号に掲げるもののほか、特定の個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものとして政令で定めるもの
3  この法律において「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。ただし、次に掲げる者を除く。
一  国の機関
二  地方公共団体
三  独立行政法人等(独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律 (平成十五年法律第五十九号)第二条第一項 に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)
四  地方独立行政法人(地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第二条第一項 に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)
五  その取り扱う個人情報の量及び利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定める者
4項以下略

個人情報保護法が適用になる個人情報取扱事業者とは,個人情報データベース等を事業の用に供している者のことです。グーグルさん(の検索サービスに限っては)はこれに当たりません。検索サービスは自前で個人情報等のデータベースを構築しているわけじゃないくて,プログラムが他人のWEBサイトの情報を自動的に拾ってきて内容を一部表示したりリンクしたりしているだけだから,個人情報データベース等を事業の用に供している者じゃないんですって。そりゃないよですよね,,

「検索エンジンは,個人情報であるかどうかとは無関係に,利用者が検索しようとする様々なキーワードを手掛かりとして,キーワードと同一の文字列を含むホームページに関する情報を提供するもの」

「サイト内に個人情報としての索引がが付された情報を蓄積しているわけではなく,「特定の個人情報を検索することができるように体系的に構築したもの」とはいえないことから「個人情報データベース等」には該当しない」

立法担当者はそう言っています。それが立法者の法解釈らしいので,最高裁判決でもないと覆りそうにありません。よって検索結果に表示された個人情報が「プライバシーを侵害して不法」であろうと「忘れられる権利の対象」であろうと関係ありません。個人情報保護法にもとづいてこれをどうこうすることはできません。

疲れたもうあかん,,どないもならん,,

 

民法(一般不法行為)によって差止請求する

そう。現状オーソドックな方法で攻めるしかないよう。民法上の不法行為請求で。プライバシー侵害名誉棄損ですね。

プライバシー侵害

(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)
第七百十条  他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

プライバシーは人格的利益として法律上保護されます。プライバシー侵害があったというためには,不法行為の一般要件のほかに,以下のプライバシーを情報を流布された事実を主張立証しないといけない。しんどいですね,,

  1. 私生活上の事実又はそれらしい事実
  2. 一般人なら公開されたくない
  3. まだ広く知られてない

ただし,以下のような場合には違法性が阻却され不法行為請求できません。

  1. 表現の自由とのバランスで「受忍限度」を超えない侵害の場合
  2. 本人の承諾があった場合

不法行為の効果として請求できるのは原則として損賠賠償ですが,差止請求も認められてます。差止請求とは,要は権利侵害の状態を排除するために必要な行為をさせること。今回であれば,検索結果から個人情報の部分を削除させることです。

そのような判決が確定すればさすがにグーグルは削除するはずですが,,なかなか裁判所は判決を出さないし,グーグルさんが簡単に確定させるとも思えないし,,当面は難しいと思われます。

名誉棄損

(名誉毀損における原状回復)
第七百二十三条  他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

刑法の名誉棄損じゃなくて民法の名誉棄損。名誉棄損による権利侵害は民法によっても救済されます。名誉棄損をいうためには,以下よう要件を満たさないといけません。

  • 社会的評価の低下又はその可能性

ただし個人情報の暴露によって名誉が既存しても,次の三つの事実が揃っていたら不法行為は成立しません。刑法に似てます(まったく同じじゃない)。

  • 公共性(公共の利害に関わること)
  • 公益性(もっぱら公益を図る目的でされたこと)
  • 真実性(内容が真実またはそう信じるについて相当な理由があること)

要求できるのは損害賠償請求又は適当な処分です。この場合,検索結果の抹消です。同じく勝訴確定すればグーグルさんは消してくれるでしょうがね,,難しいのは前述のとおり。

人格権にもとづく差止請求ってのもありますが省略。

このように,検索結果のタイトルやスニペットの記載そのものが不法行為(プライバシー侵害や名誉棄損)を構成することを裁判所に認めさせ,確定させ,それによって検索結果の削除という結果を導くのはとても難しいのが現状だと思います。ただ,最近いくつか重要な裁判所の判断が出てるよう。これとか,,

大阪高等裁判所判決H27.2.18(検索結果自体による権利侵害は認めるも違法性阻却により削除請求は認容されず)

「本件検索結果に係るスニペット部分に記載された本件逮捕事実は,」「控訴人の社会的評価を低下させる事実であるから,本件検索結果に係るスニペット部分にある本件逮捕事実の表示は,原則として,控訴人の名誉を毀損するものであって違法であると評価される。」

IT弁護士カンダのメモより

クローム

まあしかし厳しいわね,,

そこで最後に念押しの

「忘れられる権利」ですよ!!

検索エンジンによって自動的に表示されるタイトルやスニペットであっても影響力は大きいのだ。だってグーグルだもの。掲載当時適法でもあとからプライバシー等を侵害して違法評価されるものだってきっとある。掲載当時適法だからやっかいなんだ,,これだって何か基準を作って自動削除してくれないか。まったく適法な情報だって,本人にとってはとても苦痛であって,かつ社会の需要もないものもあるはず。そんなの消してくれてもいいようが気がする。やっぱり「忘れられる権利」が必要だってなるわけです。権利の呼び方はともかくね。

その意味で,地裁の仮処分命令とはいえ,日本の裁判官が,「犯罪の性質にもよるが、ある程度の期間の経過後は、過去の犯罪を社会から『忘れられる権利』がある」とはっきり言ったことは大変大きな意味があると思います。最初に大したことない的なこと言いましたが,大きなニュースだと思います。

まだまだこれからですけどね。

そうそう

この記事で難しい難しいといってきたのは,あくまでグーグルなど検索結果の表示に個人情報が載ってて,それをグーグルなど検索会社に削除抹消してもらうことが,です。情報発信元のWEBの記載を抹消してもらうのが難しいと言ってのではないです。

  • WEBに掲載されている個人情報から権利侵害が明らかな場合,各社に直接削除依頼を出せば消してくれるはずです(ちゃんとしたネット会社なら)。申請を出せば,ネット会社は,「プロバイダ責任制限法 名誉棄損・プライバシー関係ガイドライン」にもとづいて対処してくれるはず。
  • 申請したのに消してくれなければ訴訟提起しましょう。あなたの請求が確かなら勝訴するのはそんなに難しくない。勝訴すればスムーズに削除までいくでしょう。
  • ちなみにこのネット会社(どのやねんw検索エンジンじゃなくて自分でデータ管理してるほとんどのネット会社のこと)には個人情報保護法が適用される。同法27条による利用停止請求などできるかもですね。簡単ではないけど。

長くなったな,,こんな記事書いてグーグルさんごめんなさいw疲れたので,ここで休みたい,,

ダブリンのグーグルオフィス

グーグルカフェ

やっぱりロンドンがいいな

ロンドンのグーグルオフィス

つづきにどうぞ

「忘れられる権利」とは何か簡単に説明します

 

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