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市販の賃貸借契約書をチェックして気をつけることを書いてみた

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投稿者:中尾 哲也
市販の賃貸借契約書

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

司法書士の中尾です。前回以下の記事を書きましたがその続きです。

その賃貸借契約書って無効じゃない?借地借家の法律編

今日は,市販されている賃貸借契約書のチェックをやってみたいと思います。契約書の内容が借地借家法や民法に照らしてどうなのか。有効なのか無効なのか。そのあたりを添削してみます(偉そうですみませんw)。今日の目次です。

目次

  • 前回のおさらい
  • 市販の賃貸借契約書をチェックしてみた
  • じっさいに賃貸借契約をするときに気をつけること

 

本文

 

前回のおさらい

前回のエントリーでは,以下のようなことを書きました。

賃貸借契約のことを決めているのは民法だけじゃないよ。たくさんの特別法がある。その中でも重要なのが,不動産の賃貸借契約をするときに適用される借地借家法なのだ。

借地借家法。借地や借家をするときに使う法律か。1個の法律だけど,借地と借家には別ルールが適用されるよ。法律も,借地と借家,分けて書いてあるぞ。ちなみに法律の適用関係は大まかこんな感じだ。

  • 不動産以外の賃貸借 民法
  • 建物の所有を目的とする土地の賃貸借(地上権) 借地借家法
  • 建物の所有を目的としない土地の賃貸借 民法
  • 建物の賃貸借 借地借家法

借地借家法は民法の特別法なので民法に優先する。借主保護のために,結構自由な民法を,借地借家法が修正する,というイメージでいい。借主に厳しいことを契約で決めても,借地借家法によって無効になったりするのだ。

借地借家法>民法 ※ただし借地借家法に書いてないことは全部民法

 

市販の賃貸借契約書をチェックしてみた

では本題に参ります。今日お借りしてチェックするのはこんな契約書。建物の賃貸借契約書です。建物なら,一戸建てでもマンションでも,アパートでも長屋でも,六本木ヒルズでも同じことです。賃貸マンションを中心に建物賃貸借契約はとても多いです。

市販の賃貸借契約書1

市販の賃貸借契約書2

市販の賃貸借契約書3

市販の賃貸借契約書4

市販の賃貸借契約書5

 

さて1ページずつ行きますよっ

市販の賃貸契約書1

(目的貸室の表示)
1条 問題ない。

(賃貸借期間)
2条 2年間の契約か(伏せてるけど)。建物なので問題ない。これでいい。

(賃料)
3条 賃料は自由だからまあいい。家賃は大家んちに持参か。持参債務(債務の弁済は債権者の住所で)が原則だからこれを確認しただけ,,

民法
(賃貸借の存続期間)
第六百四条  賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。
2  賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。

(建物賃貸借の期間)
第二十九条  期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
2  民法第六百四条 の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。

(弁済の場所)
第四百八十四条  弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。

,,相場変動があったら賃貸人は増額請求できるとのことだが,どっちからも増減請求できるのが法律。大家の分だけ書いて特権であるように見せてる。

借地借家法
(借賃増減請求権)
第三十二条  建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2  建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3  建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

市販の賃貸契約書2

(敷金)
4条 問題ない。

(使用目的)
5条 問題ない制限でしょう。っていうか隠してるしw居住用とか,事務所用とそんなのですよ。契約自由。

(転貸等の禁止)
6条 無断譲渡・転貸ができないのは民法の原則どおりなので確認しただけ。無断の造作,改造,模様替え等も禁止してますが,まあまあいいか。模様替え等というのが微妙wwだが工事するようなものは承諾とればいいでしょう。カーテンかえるのとかそんなのは自由にすりゃよろし。

民法
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条  賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

(当然消滅)
7条 物件がなくなったら大家は貸す債務を履行できないし借主は使えないので契約関係は将来に向かって消滅する。これを確認しただけ。なお,契約が消滅したら賃料も払わなくていい(たまっている分は別w)。以下条文。物件がなくなったことによって履行できなくなる債務とは,物件を借主に使用収益させる債務。物件を貸す債務。つまり物件を貸すことについて債務者である大家は,その反対給付である家賃請求ができないという意味。

民法
(債務者の危険負担等)
第五百三十六条  前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
2  債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

ややこしいですが,不可抗力で債務履行ができなくなったときに誰がリスクを負うかという問題を民法上「危険負担」の問題という。たとえば中古住宅を売買契約したら引渡し前に火事で燃えたらどうする?この場合は,危険負担の債権者主義で,買主は代金支払い義務を免れない(民法534条)。実務では,それじゃ怖いので,付保したり特約で契約を変えたりしている(参考まで)。

民法
(債権者の危険負担)
第五百三十四条  特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2  不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。

(契約解除)
8条 解除はややこしいので先に理屈を見てみます。法律上,賃貸借契約を「解除できるケース」は以下のとおり。ちょっとややこしいですね,,

  • 借主に債務不履行があったとき(民法541条,履行遅滞による法定解除)
  • 借主が無断譲渡・転貸したとき(民法612条による法定解除)
  • 双方が解除で合意したとき(解除契約・約定解除。契約だから自由)

民法
(履行遅滞等による解除権)
第五百四十一条  当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

◎法律上,解除するときに「催告」が必要かどうかという問題がある

  • 一般的な債務不履行の場合は必要→541条のとおり
  • 無断譲渡・転貸の場合は不要→612条は債務不履行の特別規定であって,この場合催告が必要と条文に書いてないから
  • 合意解除の場合は不要→終わりにしましょう,そうしましょう,なので催告など不要

民法
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条  賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

◎しかし以上の理屈にかかわらず,判例上,そもそも「解除できるかどうかのレベル」で修正が入っている

法律は以上のとおりだが,判例はこれを修正してます。賃貸借契約は契約当事者の信頼関係にもとづく継続的な契約なので,その信頼関係が破綻したと言える状況になるまで,大家に解除権の行使を認めていません。要は社会的弱者である借主を守って社会の安定を守りたいってことです(いわゆる信頼関係破綻の理論又は背信的行為論)。

家賃滞納の代表例
「賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用収益を為さしめた場合においても,賃借人の当該行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは,解除権は発生しない」と判示(最判S39.7.28)

無断譲渡・転貸の場合の代表例
「いまだ本件賃貸借の基調である相互の信頼関係を破壊するに至る程度の不誠意があると断定することはできない」として,解除権の行使を信義則に反し許されないとの判断を正当として是認(最判S28.9.25)

なお,合意解除は契約なので以降省略。

◎また判例上,「催告が必要かどうか」についても修正されている

解除できるかについて,のみならず,催告が必要かどうかについても判例が修正しています。これも信頼関係破綻の理論との関係で考えることができそうです。

賃貸借契約継続中当事者の一方が信頼関係を裏切り,賃貸借の継続を著しく困難にしたときは,催告を要せず,将来へ向かって賃貸借を解除しうる旨判示(最判S27.4.25)

借家契約で1か月分の賃料遅滞を理由に無催告解除を許容した特約条項も,「催告なくとも不合理とは認められない事情」があるときには有効であると判示(最判S43.11.21)

◎ふぅう,,ややこしいからもっと簡単にまとめてくれ

解除自体できるかどうかと,催告せずに解除できるかどうかの判例を組み合わせると,いろんな考え方ができそうで混乱します。なので,普通の人はこう考えておけばいいんじゃないかと。

  • 信頼関係が「決定的に」破綻しているときは,解除できるのは無論,無催告(催告しないで)解除もできる。
  • ただし,念のため催告はしといたほうがいいよw催告してください。

さて8条

長いのでもっぺん契約書見ときましょう。

市販の賃貸契約書2

はい,いいですか。

8条本文に,無催告解除の特約がついている。これが有効かどうかは,この文言だけで判断できない。じっさい解除するときの理由は何か,借主との信頼関係がどうなっているかによる。

一につき

  • 家賃滞納による解除は,最低3か月,余裕をみて6か月程度の継続した賃料滞納が必要か。そのくらいで信頼関係の破綻が認定される。なので2か月だと原則として特約無効。
  • ただし,とんでもない借主(催告なくとも不合理とは認められない事情あり)の場合は,特約が有効となり,2か月で無催告解除が認めらる可能性もある。

二につき

しばしばがあんまり長期間続くと信頼関係破綻もありうる。事情次第。

三につき

無断譲渡・転貸しただけでは解除できない。借主に背信行為があれば解除できる。

四につき

こりゃむずかしい,,事前にどのくらいの期間か詰めておいたほうがいい。しかし,,他人に迷惑かけてなくて,家賃も払っていれば,なかなかいないだけで解除は難しいのでは?

五につき

これも,契約違反だけでは無理。信頼関係の破綻の程度で解除できるかを判断するしかない。

要するに,8条に書いたからといってそのとおり解除できない。解除するにはこれにプラスして「信頼関係の破綻」した事実が求められる。

次。

(賃借人の解約申入れ)
9条 この条文は次のとおり考えることができます。

  1. まず,契約書2条で契約期間が決まっているの(2年と仮定)で,期間内は解約の申入れができないのが原則。
  2. ただし,契約期間が決まっていても,当事者契約で「解約権を留保」していれば,解約申入れができる。
  3. ところで,解約申入れができる場合,民法617条によって処理される。建物の賃貸借であれば,解約申入れ後3か月の期間経過で契約が終了する。つまり,3か月前に予告すれば解約できるってこと。
  4. もっともこの契約書9条で,賃借人(借主)から解約する場合は,1か月前でいいよと特約している。
  5. この特約による緩和は,民法にも借地借家法にも違反しないのでそのまま有効といえる。

(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第六百十八条  当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。

(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第六百十七条  当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一  土地の賃貸借 一年
二  建物の賃貸借 三箇月
三  動産及び貸席の賃貸借 一日
2  収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。

ページ変わります。

市販の賃貸契約書3

(使用上の注意)
10条 解釈の余地あるもまあ有効。

(損害賠償等)
11条 借主の責任で壊したら直したり賠償するのが当然。なので有効。借主が壊した場合は二つの法的責任を負います。

不法行為責任

民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

債務不履行責任(善管注意義務違反)

民法
(使用貸借の規定の準用)
第六百十六条  第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規定は、賃貸借について準用する。

(借主による使用及び収益)
第五百九十四条  借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
2項以下略

(借主による収去)
第五百九十八条  借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。

(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第四百条  債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

(電気の使用料等)
12条 上乗せとかされてなければこれで有効。

(延滞賃料等への充当等)
13条 敷金は借主の損害賠償の担保として入れるもの。当然のことを確認したまでで有効。

(敷金の返還)
14条 上に同じ。

(移転料等の不請求)
15条 移転料等とは立退き料のことか。請求するかしないかは,以下のとおり決まる。

法律上,立退き料を請求できる場合は,この特約は無効。

っていうか,借地借家法は,土地であろうが建物であろうが,借主が希望したら契約更新が原則です。で,借主はまだ借り続けたいと思っているのに,賃貸人,大家,オーナーのほうから出て行ってくれという場合には正当事由がいることになっている。正当事由にはいろいろあるが,通常立ち退き料も支払われる。支払わないと出て行ってもらえないから。この立ち退き料の請求は借地借家法に根拠があって,これに反する当事者の特約は無効。なので,「移転料は請求しないこと」なんて契約書に書いてあっても無視してよい!!

借地借家法
(建物賃貸借契約の更新等)
第二十六条  建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2  前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
3  建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
(解約による建物賃貸借の終了)
第二十七条  建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
2  前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条  建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

(強行規定)
第三十条  この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

法律上,立退き料を請求できない場合は,この特約があろうとなかろうとできない。なので特約に意味なし。この契約書の文言は,法的には無意味だが,借主をけん制し萎縮させる効果はある。法律を知らないと,立ち退き料は請求できないんだな,,と泣き寝入りする人もいるから。

(連帯保証)
16条 有効。

民法
(保証人の責任等)
第四百四十六条  保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2  保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3  保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

(保証債務の範囲)
第四百四十七条  保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
2  保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。

次ページです。最後のページ。

市販の賃貸契約書4

(合意管轄)
17条 もし揉めたときどこの裁判所で裁判するかという取り決め。こういうこともできるので有効。

民事訴訟法
(管轄の合意)
第十一条  当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。
2  前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。
3  第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

(特約事項)
18条 特約か,,ここちょっと長いよ。

一について

いわゆる敷引特約。弁償金となっているが敷引と解釈できる。2年内に退去した場合に限り,資金の30パーセント。この契約,敷金10万くらいしか入ってなくて,家賃3万まで。敷引の額は家賃1か月分程度か。しかも,2年以上住むと当然には引かれない。ほかに礼金もない,,有効ですね。

敷引については,貸主が事業者,借主が消費者の場合,消費者契約法10条が問題になる。あまりに敷引の条件がひどいと,特約が無効ってことは十分ありうる。今回は有効だけど,,

消費者契約法
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条  民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

判例1
「本件契約における賃料は月額9万6000円であって、本件敷引きの額は上記経過年数に応じて上記金額の2倍弱ないし3.5倍強にとどまっていることに加えて、上告人は本件契約が更新される場合に1ヶ月分の賃料相当の更新料の支払義務を負うほかには、礼金等他の一時金を支払う義務を負っていない」「本件敷引きの額が高過ぎると評価することはできず、本件契約が消費者契約法10条により無効であるということはできない」などと判示(最判H23.3.24)

判例2
「消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約は,保証金から控除されるいわゆる敷引金の額が賃料月額の3.5倍程度にとどまっており,上記敷引金の額が近傍同種の建物に係る賃貸借契約に付された敷引特約における敷引金の相場に比して大幅に高額であることはうかがわれないなど判示の事実関係の下では,消費者契約法10条により無効であるということはできない」(最判H23.7.12)

二について

本来修繕義務は大家が負担するが,修繕義務を借主が負担する特約も有効。借地借家法には修繕義務云々の規定はなく,民法による。民法で修繕は大家の仕事だが,契約自由だから特約で担当を変えることができる。有効。

民法
(賃貸物の修繕等)
第六百六条  賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
2  賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

三について

「解約」か,,

9条のところでも書いたが,この契約には2条に期間の定めがある。期間の定めがあると一方的に中途解約はできないのが原則。ただし,期間内でも解約できる特約(解約権の留保)があればそれは有効。

9条で賃借人(借主)から解約申入れができる。しかも1か月前に通知でいい。こういう解約権の留保条項があった。これはあくまで借主からの解約申入れを許した特約。

じゃあ,賃貸人(大家・物件オーナー)からはどうなのか。期間途中に解約申入れができるのか。この特約の解約という文言でもって,賃貸人からの期間途中の解約権も留保したと解釈できるのか。難しいですね,,私には読めないな。ただ一応読めると仮定して話を進めましょう。※賃貸人からから期間途中で追い出されそうになったら解約権の留保はないと争うべき

整理して進める。

「解約又は期間満了により」契約が終了するのは次のケースが考えられる。

・解約申入れ(契約期間中でも解約できる解約権留保特約があるとして)
・合意解除・解除契約
・期間満了

それぞれについて説明します。

◎解約申入れの場合

「~により賃貸人より物件の返還の要求を受けたる時は直ちに元状(原状の間違い?)回復の上明け渡すものとする。」という部分は借地借家法により無効。

もし大家つまり賃貸人から解約申入れがあって明け渡すときは,6か月以内に出ればいい。また,借主から解約申入れをして明け渡すときは,3か月以内に出ればいい。しかしこれはすんなり出る場合の話。

そもそも大家から解約申入れをするには借地借家法によって「正当事由」が必要です。条文にも書いてあるとおり事情にもよりますが,期間中の解約申入れが認められるための正当事由の判断はかなり厳しく判断されるはず。出るとしても,比較的多めに立退き料をもらえるはずです。

民法
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第六百十七条  当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一  土地の賃貸借 一年
二  建物の賃貸借 三箇月
三  動産及び貸席の賃貸借 一日
2  収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。

(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第六百十八条  当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。

借地借家法
(解約による建物賃貸借の終了)
第二十七条  建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
2  前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条  建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

(強行規定)
第三十条  この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

◎合意解除・解除契約の場合

お互い合意して出て行く場合は,そのとき取り決めをすればいいから,この特約に縛られなくていい。いやなら出て行く合意自体を拒否すりゃいい。

◎期間満了の場合

期間満了しても当然に出て行く必要はない。更新したい(住み続けたい)と伝え,大家が拒絶したら,立退き料などを求めればいい。なのでこの部分は無効。

ややこしいのでちょっと整理。

  • まず,期間満了で契約を終了させるには,1年前から半年前までの間に相手に連絡しないといけない。
  • 期間内に連絡をしてないと,同一条件で自動更新される。ただ同一条件といっても契約期間を除いてだ。「期間の定めのないもの」として自動更新される。
  • 期間の定めのない賃貸借契約は,当事者がいつでも解約申入れできる。
  • なので,自動更新されたとしても,「期間満了後に解約申入れ」があれば,一定期間経過により当然に契約が終了するのが民法。
  • これでは困るので,借地借家法は,期間満了時の契約更新の場合,期間中の解約申入れの場合,いずれの場合であっても,大家から出て行ってくれと連絡するには「正当事由」が必要だとしている。
  • 正当事由とは立退き料の額などを含んだ諸事情のこと。

以上のとおり期間満了だといってそそくさと出る必要はない。更新したい又は住み続けたいと伝えて,立退き料の交渉などする。

借地借家法
(建物賃貸借契約の更新等)
第二十六条  建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2  前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
3  建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条  建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

(強行規定)
第三十条  この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

契約書チェック終わり。

 

じっさいに賃貸借契約をするとき借主が注意すべきこと

市販の契約書の添削とかチェックはいいんだけど,いまから賃貸契約をする場合にどういうことに気をつけたらいいか,そのことが知りたいですよね。うん,チェックすべきことをちんたら説明できなくはない。確かにできなくはないんですが,あまり意味はないと思っています。

というのもですね。マンションを借りようとしたら普通不動産会社に行くでしょう。そうすると,そこが用意した契約書で話が進むでしょう。「いや,ここおかしいからこうしてよ」ってなこと言うたら,「それはできません」とか「そんなら借りなくて結構」ってなるでしょう。そう,不動産会社から賃貸マンションなどを借りるときに,あなたが契約書に云々できる機会ってあんまりないと思うんですね。なので意味がない。物件オーナーや不動産会社が契約書を作るんだから。そして物件を持っている相手のほうがだいたい立場が強いから。

いいんです。そういうときのために借地借家法があるんですよ。大方のことは,借地借家法でなんとかなります。そのための借地借家法だから。契約書の条文とか細かいことを気にしている時間があったら,気持ちよく住める相性のいい物件を探すことに時間を使うこと。そっちのほうがいいです。契約書は,家賃,敷金・保証金,設備,修繕義務の分担など基本的なところを見ておけば十分では?

意味ないからどーでもいいよ!つまんないこと気にすんなよ!なんて司法書士がアドバイスしたら怒られるかもしれませんけど事実だからしょーがない。

ただ,どーでもいいではまとまりがつかないので少しばかり。

大手の不動産仲介業者などで契約する場合

  • 契約書はあっちが作る。基本的には任せておけばいい。いろいろ言っても多分変えてくれない。
  • 契約書が大家に有利な内容でも細かいことは気にしない。借地借家法がある。そんなにおかしなことにはならないはずなので大船に乗ってしまう。
  • ただし,家賃,敷金保証金,修繕義務の分担など,直ちに又はリアルに負担が発生するものは納得してすること。「直ちに影響がある」ものは枝野さんだって注意するはずw

地主,家主と直接契約する場合

  • 契約書はあっちが準備するはず。
  • めちゃくちゃ古い市販の契約書や,自分がワープロで作った契約書を出してくることがあるので,一応目を通す。疑問点があれば本人に聞く。できれば司法書士や弁護士にも相談してみる。
  • 個人地主や家主の場合,契約書を修正してくれることもある。いい人も多いw。なのでざっくばらんに話してみる。
  • 万一おかしな契約をしても借地借家法があるので法的には何とかなるはず。
  • ただし!!地主には地域の名士も。そういうお方と契約するなら法的な正しさは二の次かも。これからもお付合いをしていきたいなら揉めないことが大事。お互いどういうつもりで貸し借りするのか,事前にちゃんと折り合っておくことですね。

慣れない人同士が契約する場合(転勤で地方に行くことになったから家を貸すとか,親が死んだので家を貸すとか)

  • 司法書士又は弁護士のところに相談に行って,家を貸し借りしたらどうなるか相談しておく。ちゃんと不動産賃貸借の知識を入れておく。
  • 不動産の貸し借りを安易に考えないこと(お前がどーでもいいとかいうからw)。いや,揉めると絶縁とかなりかねないですよ。
  • なので,賃貸借契約書を作ってもらって,きっちり押印の儀式をしておくとよい。

 

おまけ

ここに国土交通省が作っている標準契約書があります。標準なんでそんな偏りはないはず。書き方も書いてあるけど,,難しいわなあ,,もっと簡単でいいんだけど。

素人向けではないようですが,ご参考まで(あ,そもそも所管業者向けか)。

国土交通省>政策・仕事>住宅・建築>住宅>「賃貸住宅標準契約書」(改訂版)のダウンロード

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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つづきにどうぞ

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