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相続人の全員が相続放棄すると遺産は誰のものになるのか

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投稿者:中尾 哲也
孤独死して相続人全員が相続放棄

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

いきなりすみませんが次の網掛けを読んでください。

相続放棄
相続放棄(そうぞくほうき)とは、民法上の概念、用語の一つであり、相続人が遺産の相続を放棄すること。被相続人の負債が多いなど相続に魅力が感じられないケースや、家業の経営を安定させるために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退するときなどに使われる。なお、3か月以内に限定承認又は相続放棄のどちらかを選択しなかった相続人は(家庭裁判所に期間の伸長を申し出なければ)単純承認とみなされる(民法915条1項、921条2号)。
民法について以下では、条数のみ記載する。

相続放棄の方法
相続の放棄をしようとする者は、その旨を被相続人の最後の住所を受け持つ家庭裁判所に申述しなければならない(938条、家事審判法、非訟事件手続法)。限定承認と違い、それ以上の手続は必要ない。
相続の開始前には、強要のおそれがあるので放棄はできない。

相続放棄の効果
民法
相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされ、遺産分割と異なり、第三者の権利を害することはできないという制限はない(939条)。 放棄者の直系卑属について代襲相続も発生しない(887条2項参照)。父母の相続を放棄後、祖父母の相続が発生した場合、放棄した事実には影響されずなお祖父母の代襲相続人である。
相続財産の管理義務として、自己の財産におけるのと同一の注意義務(940条)があり、単純承認、相続放棄と共通する効果として撤回の禁止(919条)がある。
同順位者全員の相続放棄により、後順位の者が相続人となる。たとえば子全員が相続放棄をすると、直近の直系尊属(父母等)が相続人となる。直系尊属が不存在か相続放棄するなら、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる。 したがって、相続財産が債務超過の場合、債務を免れるためには、配偶者を含めこれらの者すべてが順次、または同時に相続放棄をする必要がある。すべての相続人が相続を放棄した場合の取扱いは、「相続人の不存在#相続財産法人の成立」を参照。

Wikipediaより

 

相続放棄の司法統計

平成26年の司法統計によれば相続放棄は15万件弱か,,


いきなり引用にて大変失礼つかまつりました。読まれたあなたはもう理解されましたね。相続放棄とはウィキペディアさんに書いてあるとおり,相続から完全に逃げること。相続放棄とは,相続人ではなくなって,相続関係から離脱(オサラバ)すること。財産だけ相続しないとか,負債だけ相続したくないとか,そういうことではない(※)。

「人として」

最初から相続関係に無関係な人間になること。いやいや,別に「人として」問題ある!人として~人として~!とか非難しているわけじゃないですよww相続関係に限って関係者ではなくなるだけです。相続放棄をしたら絶縁になって親族関係が消滅するなんてことではないのででご安心を。相続限定の話です。

※そういうのを別途遺産分割(いさんぶんかつ)といいます。相続人であることを前提として,遺産分けつまり具体的な遺産の割り振りをすることです。人として追い出された者wには参加できない手続です。

話を進めます。

相続放棄は,相続関係から完全に離脱したい人がする手続。よって相続財産が無いかマイナスのことが多いでしょう。親父が借金まみれとか,事業が傾いていたとかで,要は遺産が債務超過になっている。亡くなった人が持っていた資産より負債のほうが多いケースですね。

ただ,すべてのケースで,遺産がまったくない(すっからかん)とは限らない。住宅はあるけど借入れも多くてオーバーローン状態。売却しても借金が残るので放棄したいってことはあります。預貯金だっていくらかあるかもしれない。だけど差し引き負債が多いと相続したくないですよね。あと,遺産として預貯金と住宅があるが,事業資金の借金がいくらあるか不明っていう場合。判明している分だけだったら遺産から払えるが,もし今後たくさん借入れが判明したら困るのでいっそのこと放棄したいと。そいうこともあります。

さて,ここで疑問。

相続放棄したら,そこにあった財産ってどうなるんじゃい。どこへいくんじゃい。誰のものになるんじゃい。この三つの「じゃい」が問題になるわけです。いわゆる三じゃい問題です(そんな括りないか。別に「じゃい」じゃなくても可w)。全員放棄したら財産の所有者(持ち主)がいなくなるわけで,その行き先が気になりますね。

具体的な事案でイメージしましょう。

象の家族

お父さんがいて,お母さんがいて,僕がいる(じゃあーりまんせんかw)。お父さんには兄が1人いる。祖父母はとうにいない。この親族関係において,いまお父さんが亡くなった。

第1順位の相続人は,お母さんと僕(僕目線で考えましょう)。お母さんと僕は相続放棄をした。
第2順位の相続人は,直系尊属たる祖父母などですが,もはやこの世にはいない。
第3順位の相続人は,兄で,兄も僕らにならって相続放棄をした。

法定相続人はここまでで終わりなので,さっきから話しているとおり父の相続には相続人がなく,遺産は宙ぶらりんになった。遺産の所有者がいなくなってしまったのです。相続人がいない=遺産を引き継ぐ人がいない=遺産の所有者がいない。遺産の所有者がいないとは,,,遺産に含まれるいろんな財産の所有者がいないということ。

 

所有者(持ち主)がいない財産は誰のものになるかという問題

所有者のいない財産のことを「無主物」という。無主の物,つまり主(あるじ)が無い財産のことです。主のない財産が世の中にふーわふーわ漂っていると困るので(取り合いになったり),法律は,無主物が誰の所有になるのかを決めています。

(無主物先占)
民法239条
所有者のない動産は,所有の意思をもって占有することによって,その所有権を取得する。
2 所有者のない不動産は,国庫に帰属する。

えっ,相続財産のうち,動産(不動産以外の物)は早い者勝ちの取り合い?放棄してももらえる??
不動産は国に召し上げ?
あれ,債権は?例えば貸付金などの請求権はどうなる?書いてないけど,,

ほかに次のような条文もあるけど,ここに書いてあるような物は無主物ではないんだ。じゃあ,これ以外の財産が無主物ってことか。

(遺失物の拾得)
同240条
遺失物は,遺失物法(略)の定めるところに従い公告をした後3か月以内にその所有者が判明しないときは,これを拾得した者がその所有権を取得する。

(埋蔵物の発見)
同241条
埋蔵物は,遺失物法の定めるところに従い公告をした後6か月以内にその所有者が判明しないときは,これを発見した者がその所有権を取得する。ただし,他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については,これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。

えっと,,埋まってなかった物で,誰かが落とした物でもなくて,かつ所有者がいない物って何やろ。野生動物とか魚くらいしか思いつかん。それと,今回の,相続人全員が放棄した後の相続財産かな。債権どうすんのかな,,って

いいですか,いま大事なこと言いますよ。怒らないでくださいね。

相続人がいなくなった相続財産は「無主物」ではありません。

つまり,民法239条で考えるのは間違いです。そもそもがですね,,相続の制度ってもんは,人が死んだときに,財産が宙ぶらりんになって無主物にならないように考えられた法制度なんですよぉお。なので,いくら相続人全員相続放棄をしたかって,相続財産が無主物になるわけないんですよぉお。

って,お前が言うたんやろ!!

つっこみ

 

相続の場合の例外

気を取り直して繰り返します。そもそも相続の制度は,相続財産でもって遺族の生活を保障するという目的のほか,相続財産が宙ぶらりんになって混乱するのを防止するためにある。財産の取り合いを防ぎ,国が一度管理して相続財産を再分配する手間を防ぐためにある。だから,相続財産は何があろうと無主物にはならないんです。

ではどうするか。とはいっても相続人全員が相続放棄をしたら無主物「みたい」になるじゃないか。無主物「風」にはなるじゃないか。同じことでしょ。と,考えたあなたは鋭い。鋭利な刃物です。はい,そういうときのために,民法は,特別の法律の規定を用意してこの問題の解決をはかってるんですね。

もっぺん言います。相続で主がいなくなった財産は,無主物じゃない。まったく別ルートで処理されます。

 

相続人がいない相続財産は当然に○○になる!

全員相続放棄して相続人がいなくなった相続財産は,,

「法人」になります。名前は「相続財産法人」

法人

(相続財産法人の成立)
民法951条
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

は?何を言うとんねん。意味わからんしwって,私も昔は思ってましたね。でも法律にそう書いてあるのでそうなんです。相続財産は法人になります。相続財産法人。

相続制度は主のいない財産が出てこないようにする制度。でも主がいない感じになっちゃった。仕方がないので,相続財産自体を人つまり主にした。財産=人。俺=俺。俺のものは俺のもの,お前のものは俺のもの。よっしゃこれで相続財産は無主物ではないぞ,うんそうだ決して無主物なんかじゃないぞ(だって財産自体が主だから。それでええやんええやん)と強がってしまったわけです。法律が。

相続財産は人であるとともに物になる。相続財産ぜーんたいをまとめて一つの法人ができる。しかも法律上当然にできたことにするんです。会社法人のように法務局で登記の手続をしなくてもある瞬間当然に。

 

相続人がいない相続財産はどうやって処理されるか

法人になるのは分かったと。無主物にはならんで良かったねと。仕方ないもうそれでええやん,と。でもそれだけでは問題は解決しません。財産の行く先を決めていかないと実質的な解決にならない。それこそ本番。

さて,,,相続財産は人である,と強がっていてもあくまで法人。法律によって人だと擬制された存在。リアルな人じゃない。リアルな人じゃないから勝手に動けない。財産が,自分で自分を処分して行く先を決めることは出来ません。なので,財産を管理するリアルな人を家庭裁判所に選んでもらいます。このリアルな人のことを相続財産管理人と呼びます。考えてみてください。会社という法人も同じく法律によって作られた人ですが,あくまでヴァーチャルなので,じっさいに経営するリアルな人が必要ですよね。取締役とか代表取締役という人。ソフトバンクは法人ですがこれを管理して経営するのは孫正義だ。それの相続財産バージョンが相続財産管理人です(弁護士とか司法書士がなることも多い)。

 

さて話を前進させましょう。

この手続。ごくごく簡単にいうと,相続財産管理人が,相続財産の清算をする。清算とは,財産を整理して,借金などの負債を支払い,残った財産を最終的な行き先に引き継ぐこと。

  1. 財産を把握する
  2. 「債権者はいないかえー」と世間に呼びかける
  3. 債権者が出てくれば弁済する。弁済するために必要な売却などもする。
  4. その結果財産がプラスなら,国に渡す(特に縁故があった人(特別縁故者)に全部又は一部分与することもあり。裁判所の判断)
  5. 対して財産がマイナスなら,破産して支払い義務の免除を受ける(きっちり破産までしないで終わらすこともあり)

 

相続人のいない相続財産は結局誰のものになるのか

結局どーなのか!相続人のいない財産は誰のものになるのか。以下のとおりその答えを整理して今日は終わりにします。

相続人の全員が相続放棄をして,相続人がいない感じの相続財産については,,

  • プラスの財産があって,相続債権者とか受遺者(遺言を受けた人)が出てくれば,債権者や受遺者の持っている権利の範囲内で財産がそっちに行きます。つまり「債権者など」に行く。
  • プラスの財産があって,相続債権者や受遺者がいないか,これらの人に支払いをしてもなおプラスの財産が残る場合は二つに分かれます。
    ①特別縁のあると家庭裁判所が認める人があれば,その「特別縁故者」に行く。
    ②特別縁故者が無いか,特別縁故者が一部だけ分与されたら,残りは「国庫」に帰属する。つまり国が召し上げる。
  • なおプラスの財産がない場合,負債は,破産免責を受けるか放置されるかwのどっちかです(これはどーでもいいですね)。

つまり

相続債権者や受遺者>特別縁故者(いれば)>国

財産の行く先は,このようになります。

 

※債権者と受遺者の優先順位はいろいろ細かいので省略

※ちなみに,こういう相続人がいない感じの状態のことを,法律上,「相続人不存在」と呼んでます。

※相続人不存在になったら,利害関係人から家庭裁判所に対して,「相続財産管理人選任の申立て」をするのが原則です。あなたが相続債権者や受遺者なら,これをしないと,残った財産から債権や遺言された物を受け取ることができないので,あなたが利害関係人として家庭裁判所に申立てをしてください。

※申立書はこんなんですが,前後の法律関係などもあるので,司法書士や弁護士に相談するべきだと思います。思い込みで進めるとややこしくなりますよ。一応裁判所サイトへのリンクを張っておきます。以下の申立書と記入例もこの中にあります。

相続財産管理人選任

相続財産管理人選任申立書

相続財産管理人選任申立書②

※関係する民法の条文です(読まないでしょうがw)。

第六章 相続人の不存在

(相続財産法人の成立)
第九百五十一条  相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

(相続財産の管理人の選任)
第九百五十二条  前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2  前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。

(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
第九百五十三条  第二十七条から第二十九条までの規定は、前条第一項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。

(相続財産の管理人の報告)
第九百五十四条  相続財産の管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。

(相続財産法人の不成立)
第九百五十五条  相続人のあることが明らかになったときは、第九百五十一条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。

(相続財産の管理人の代理権の消滅)
第九百五十六条  相続財産の管理人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。
2  前項の場合には、相続財産の管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条  第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
2  第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

(相続人の捜索の公告)
第九百五十八条  前条第一項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。

(権利を主張する者がない場合)
第九百五十八条の二  前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の三  前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2  前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。

(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条  前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。

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