相続に関するAtoZ 遺産をもらう側

なぜ親を介護したら相続分が増えるのか知っていますか?

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あなたは長年親と同居して面倒を見てきました。あなたが50歳を超えて仕事が一番大変なときに,父親が大病をしてほとんど家で寝込むようになってから,配偶者といっしょに父親の生活を支え,高額の医療費や日用品の購入費など,ほとんどあなたが立て替えて支払ってきたとします。また父親は貸家業を営んでいて,物件の管理(清掃点検,家賃の管理,その他法務,会計と税務申告など)を不動産会社等に頼まずに自分で行っていたのですが,到底本人にはできなくなったので,あなたが変わりにすべてやりました。事業の経費もあなたが全部立て替えました。父親には預貯金があったのですが,代わりに出金をするのが面倒だったり,ややこしくなるので,自分のお金でそれを支払ってきました。ある時期から父親は認知症になり,日ごとに症状が進みました。あなたは決意して仕事を早期退職して父親を見ることにしました。正直とてもしんどいと思いましたが,親に世話になった恩返しとして,途中で放り出すことはできないと思い,頑張ってずっと面倒を見ました。あなたは,老後の生活を父親の介護に捧げることに決めて,少し前に父親が亡くなるまで,本当に一所懸命父親を支えてきたのです。


父親が亡くなって,東京に出ている弟と遺産相続の問題の話合いを始めたところ,弟からこんなふうに言われました。

「自宅と借家と預貯金と株式を全部足したら,8000万円ほどの評価になるから,半分に分けたら4000万円ずつだね,僕が売却とか相続の手続を全部やろうか?」「面倒を見てもらったのは有難いけど,遺産のことは,ちゃんと法律どおり半分ずつにしたいんだ」

これを聞いてあなたはやりきれない気持ちになりました。なにか府に落ちない,何かが間違っているような気がしました。とてもすぐに相続手続をして,書類にはんこを押す気になれませんでした。あなたは弟の言うとおりにしないといけないのでしょうか。

さて,これと似たような境遇にいらっしゃる方は,少なくないのではないでしょうか。このような場合にも,法定相続分のとおり,あなたと弟の相続分は,1/2ずつになるんでしょうか。

 

財産を維持又は増加に特別に貢献すると相続分は増える

結論からいうと,あなたの相続分は,法定相続分より増える可能性があります。あなたはやりきれない気持ちになったその理由は,やはり何かが「不公平」だと思ったからではないでしょうか。その感覚は,法律的にもやはり正しいのです。

そもそも,父親が亡くなった時に残された遺産は,父親だけの力で築かれたものではありません。いろんな人の協力や援助があって,始めて,今そこに,その金額で存在しているものです。

今回のケースでは,あなたは,父親の面倒を見るために合計すると相当な金額の金銭的支出をしているはずです。借家の管理も誰にも頼まずあなたが1人でしてきたのです。また,父親の認知症が進んでからは,ほぼつきっきりで自宅介護しており,これにかかった労力は言葉で簡単に言い表せないほどのものです。

ここで考えてみます。あなたがもし父親の高額医療費を立て替えて支払ってこなければ,現実問題として,父親の預貯金の金額は,今残されている金額とは違ってきます。これは当然のことです。借家の管理などを専門の業者に頼んだら,当然お金がかかったはずです。また,あなたがもしつきっきりで介護しないで,業者の介護サービスを積極的に利用していたらどうなるでしょうか。あなたが介護しなかったら当然そうしたはずです。介護サービスを利用するために費用がかかるので,父親の財産の状態は今とは大きく違ってきます。つまり,あなたがお金を支払ったり,大変な労力を費やして面倒を見たからこそ,父親の財産は維持されたわけです。

これを相続の時に清算しないで,今残されている遺産を法定相続分で分けるとすると,とても不公平です。だから,こういう場合に,法律には,法定相続分を修正して,公平にするための仕組みが用意されています。あなた父親の財産の維持又は増加に貢献した金額のことを「寄与分」といいます。あなたのことと「寄与者」といいます。この「寄与分」を考慮して,法定相続分を修正し,じっさいの相続分を決めていくのです。

今回のような場合,寄与分を考慮して相続分を決めていくことこそ,実は法律のとおりに相続の手続をすることにつながるのです。

 

寄与分の計算方法

では今回の場合,じっさいの相続分はどうやって計算するんでしょうか。この点について説明します。寄与分があるときの相続分は,次のように計算します。

  • 遺産の額から,寄与分の額を引いて,仮の遺産額を出します。
  • 仮の遺産額に法定相続分をかけて,仮の相続分を出します。
  • 寄与者の仮の相続分に,寄与分の額を足して,じっさいの相続分(寄与者の相続分)を出します

 

寄与分に当たるか当たらないか

さて,寄与分とは,亡くなった人の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人がいるときは,それを考慮して相続分を調整する制度だと説明しました。

ところで,被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をする場合とは,ほかにどんな場合があるでしょうか。いろんなケースがありそうです。いくつかの種類に分類できると思いますので,簡単に整理しておきます。

寄与分が認められる可能性があるケース

  • 給料などをもらわずに,長期間,自分の仕事のように,家業を助けた場合
  • じっさいに現金を贈与したり,不動産を贈与したり,代わりに借金を返したりした場合
  • 療養看護して,付き添い看護の費用などを免れさせた場合
  • 扶養義務の程度を超えて扶養し,生活費などの費用を免れさせた場合
  • 財産を代わりに管理して,いろんな費用の支払いを免れさせた場合

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