相続に関するAtoZ 遺産をもらう側

家庭裁判所で手続した相続放棄を取り消すことができるケースをご紹介します

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もしかしてあなたは,司法書士に頼んで家庭裁判所相続放棄の手続をしたけど,それを取消ししてなかったことにしたいと考えていますか?

もしそうなら,あなたが相続放棄をなかったことにしたい理由は次の事例のどちらに近いですか?

ケース1)
お父さんが個人で事業をしていて急病で死んでしまった。ばたばたして財産の調査もはっきりできてなかったのだけれど,生前からお父さんは「お金がかかって仕方がないわ」「お金がない」「経費を支払うだけで精一杯だ」というようなことを言っていた。だから,親族一同,お父さんの事業は儲かっていないと思い込んでいた。案の定お父さんが死んでから,取引先から請求書が送られてきた。また銀行へ事業資金の返済をしていることも分かった。面倒なことに巻き込まれるのはいやだし,事業も廃止することだし,司法書士に頼んで相続放棄の手続をすることに決めた。しかし,お父さんの事務所を片付けにいったところ,証券口座があることが分かった。投資信託をしているようで,1000万円くらいの評価になるようだ。また取引先に対する売掛金があるようで,2か月もすると1000万円程度入金されるらしい。借金は合計で600万円くらいなので,差し引きすると,何のことはない1400万円のプラスになっていた。

ケース2)
小さいときに養子に出されて大阪の養父母のもとで育ってきた。養父母からは実の子のように育てられ,実家のことは何も聞かされていなかった。実の父は東京で暮らしていて,弟が1人いると風の噂で聞いたことがある。ところで少し前,郵便で,実の父が亡くなったと連絡があった。差出人は弟だった。文面によると,実の父は長いこと仕事をしておらず,めぼしい財産は無いとのこと。仕事をしていないのは本当らしかった。詳しく読んでいくと,財産がないばかりか,いくらか借金があって,今分かっている借金だけでも債務超過になっているのは明らかだと書いてある。まだ借金がありそうだと。しかし大事に育てられた弟としてはそれを引き継いで支払っていきたい,養子に出されたあなたに迷惑をかけたくない。したがって,家庭裁判所で相続放棄をするようにと強く指示されていた。相続放棄の用紙も同封されていた。私は,そういうことならとこれを信じて,家庭裁判所で放棄の手続をした。ところが,あとから親類に聞いてみると,実の父は代々の地主の家系の長男で,先祖から東京の土地をたくさん相続していたとのこと。それからいろいろと聞きまわって調べてみたところ,実の父はやはり土地や貸しビルなど複数の不動産を祖父から相続していて,さらに最近実の父から弟に相続登記がされていることが分かった。なお,不動産の登記簿に抵当権などはついていなかった。

 

ケース1とケース2の違い

ケース1とケース2の違いはどのあたりにあるでしょうか。どちらも,借金ばかりで遺産がないと思っていたら実はあったというケースですが,少し違うところがあります。

ケース1は,相続人であるあなたが,自分の判断で,遺産がないと考え,相続放棄しています。簡単にいうと「勘違い」していただけです。

対してケース2は,弟が積極的にあなたを欺いて勘違いさせ,その結果としてあなたに相続放棄をさせています。言い換えると,弟が「詐欺」をして,あなたを相続放棄の手続に導いているのです。

この違いが,相続放棄を取消しできるかに大きくかかわってきます。

 

相続放棄を取消しできるか

結論の前に,相続放棄の取消しについて書いてある法律の条文を見てみます。

民法919条1項及び2項
相続の承認及び放棄は,第915条第1項の期間内でも,撤回することができない。
2 前項の規定は,第1編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。

ここで「撤回」とは,理由に関係なく,将来に向かって,「やっぱり,やーめた」と言うことです。これに対して「取消し」とは,法律で決まっている特別の理由がある場合に,「最初から無かったこと」にすることです。

さてあなたは,相続放棄を取り消すことができるか。その結論に入ります。

ケース1の相続放棄の取消しは,「撤回」に当たります。民法919条1項では,相続放棄の撤回を認めていません。だから,この場合相続放棄を取り消しすることはできません。

ケース2の相続放棄の取消しは,文字通り「取消し」にあたります。ケース2の場合は,弟が詐欺行為をしていますが,民法には詐欺又は脅迫による取消しの規定がありますので,これを使って取り消すことができます。ケース2の場合,あなたは,相続放棄を詐欺取消しすることができるのです。

※ケース2のような場合も,内容によっては,民法上,相続放棄の「錯誤無効」が認められる可能性があります。

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