相続大全集

家(住宅)の相続登記をいつまでもやらないで放置した場合のデメリット

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家の相続登記をいつまでもしてないデメリット

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

うちの家っておじいちゃん名義?それともお父さん名義になってたっけ?税金はちゃんとうちが払ってるからうちのものに違いないと思うけど大丈夫かな,,,近所の人に聞いたら,亡くなったら家や土地の名義変更しないといけないらしいけど,うちはバタバタしててしてないかも,,,面倒だし,お金がかかるし,期限とかもないみたいなので,,まあいいかななんて放ってあったけど何か気になるな。本当に大丈夫なのかな。そうこうしてる間にうちの親も高齢になってきたし,この家ちゃんと私が相続できるんだろうか。

人が死んだら相続が開始します。相続が開始したらその人の持っているいっさいの財産が次世代等に相続されます。名義変更や相続手続きをしてなくても,目に見えない権利が勝手に相続で承継されています。誰が相続するか相続人で話が着く(遺産分割)までは相続人全員で共有してます。相続の話合いがついたら最初からその人が相続したことになります。いずれにしろ自動的に相続はしているので,相続人全員の共有名義で相続登記することもできるし,早く遺産分割して誰かの単独名義等に相続登記することもできます。

  1. この相続登記。つまり遺産相続による不動産の名義変更・名義書換の登記をすることは,法律上の義務ではありません。
  2. また,法律上の義務ではないからして,当然期限もありません。いつまでにやらないといけないという決まりもないです。

しかし,それは,「相続登記単体」「相続登記のみ」「相続登記自体」について問われた場合の話。相続登記だけとってみれば,確かにそれをする法的義務はないし,いつまでにという期限もありません。ただ,

  • 相続登記をしなくてもまったく問題がないか?
    とか
  • 相続登記をしなくてもその不動産を処分できるか?
    とか
  • 相続登記をしなくても他人に迷惑をかけないか?
    とか

このように問われたら話が違ってきます。今度の答えはこうなります。

  • それは問題があります!
  • 相続登記をしないと不動産を処分できません!
  • 相続登記をしないと困ったことになる可能性があります!他人にも迷惑をかけるかもしれません。

ということで,やはり相続登記は早くしたほうがいいんです。いま直ちに問題がなくても,将来取り返しのつかない困難を生じることがあります。なので,そうならないように,相続登記はなるべく早くしておいたほうがよい手続きになります。

すなわち,

  1. 相続登記は法的義務ではないが,事実上の義務です。
  2. 相続登記は「できるだけ早期に」してください。

と言い換えて差し支えないでしょう。

ところで,「困ったことになる」などと抽象的な話をしていても仕方がありません。何が困るのかよく分からないからです。そこで今日は,相続登記をしないとどういう問題が生じる可能性があるのか,具体的に列挙して簡単に説明します。「家(住宅)等の相続登記をいつまでもやらないで放置した場合のデメリット」とはいったいどんなことでしょうか。

事例)

  • 父親が数年前に死亡し,父親名義の住宅その他が相続財産になった
  • 法定相続人は高齢の母と兄弟3名だ
  • あなたは長男で同居していた
  • なので家は当然自分のものだと思っており,弟二人も異議を唱えていない
  • 相続登記は誰に依頼していいか分からなくて面倒だし,お金もかかるので,放置していた

こんな事例をもとに話を進めます。

 

やろうと思っていた遺産分割ができなくなる

新たな相続が発生してしまった

そうこうしているうちに弟が急病になって死んでしまったらどうなるでしょう。父親の相続はまだ遺産分割協議が済んでいません。なので弟は父親の法定相続人として法定相続分があったはずです。この父親の相続に関する弟の権利や地位は,そのままの形で,弟の妻子に相続されます。つまり,これから父親の遺産について遺産分割協議の話をする相手は,亡くなった弟ではなく,その妻子の全員となります。弟とは仲が良かったが,その妻と折合いが悪かったらどうなるでしょう。あなたの妻と弟の妻との相性が悪く頭を下げたくない場合もあるかもしれません。また,弟の子,つまりは甥や姪との人間関係はありますか?甥や姪と交流がなければ,この者に遺産相続の話を持っていくのは結構気を使います。少なくとも,弟が死んで落ち込んでいる早々にそのような話をするのははばかられるでしょう。とにかく,父親の家をあなた名義にするには,弟の妻子と話をつけないといけません。もし父親の家をあなた名義にすることに応じてくれなかったらどうなるでしょう?家をあなた名義にする代わりに法定相続分に相当する金員を請求されたら?あなたには,拒否する権利はありません。弟が生きている間に早く相続登記をしていれば,そんなことにはならなかったのです。

相続登記をするためにいますぐ遺産分割協議を進めてください。

遺産分割協議のやり方と遺産分割協議書の作り方

法定相続人が認知症になってしまった

亡くならないまでも,例えば高齢の母が認知症になったらどうでしょうか。遺産分割協議も法律行為である以上,確かな判断能力があって,これをもとに自分の意思を表示できる人とでないと,成立させるのは無理です。つまり,母がボケてしまったら,ボケてしまった母を相手に遺産分割協議をすることはできません。形式的にやったとしても法律上無効です。そうなると,この認知症の母のために,法定代理人をつけて遺産分割をするほかありません。法定代理人とは,この場合,成年後見人を指します。書類を準備して,家庭裁判所に申立てをし,母のために成年後見人を選んでもらいます。成年後見人が選ばれたら,成年後見人が母の代わりに遺産分割協議に参加します。ただし,成年後見人は母のために選任される代理人であり,母の財産を守るのが仕事です。なので,父親の相続にかかる母の相続分をみすみす放棄することは許されません。たとえ従前母が,家はあなたの名義にしないさいと,そのように言っていたとしても,正式な契約が残っていない以上,そのとおりにはできません。成年後見人は母の相続分を主張して,家の持分をとるか,代わりに金銭請求を行います。つまり,前々から考えていたように,単純に家をあなたの名義にすることはもはやできなくなります。早く相続登記をしておけばよかったのです。ボケる前なら,簡単に判子を押してもらえたのに,,,

もしそうなってしまったら以下のとおり後見人の選任申立てをしてください。

成年後見人をつけて親が認知症で遺産分割できない問題を解決する方法

兄弟が行方不明になってしまった

弟の妻から連絡があり,弟が行方不明なってしまいました。弟は脱サラして小さいお店をしていたんですが,どうも最近経営が宜しくなく,そのことで妻とも揉めていたようです。生活費にも困っていたらしい。ともかく急に家を出て行って,かれこれ半年ほど戻ってないらしいのです。そろそろ家を自分名義にしようと考えていた矢先困ったことになりました。このままでは遺産分割協議ができません。弟がいないと書類に実印を押せないし,印鑑カードがないから印鑑証明書もとれません。このようなケースでは,やはり弟の代わりに法定代理人を選んでもらって遺産分割する必要があります。今度は不在者財産管理人という法定代理人です。同じく家庭裁判所に選任請求をして,家庭裁判所が選任を決定します。この不在者財産管理人も,成年後見人と同じで,弟の財産を守ることを使命とする弟の財産管理人です。なので,先の父親の相続にかかる弟の相続権を放棄することは許されません。つまり法定相続分を主張します。ということで,もはや単純に父親名義の家をあなた名義に相続登記することは許されなくなりました。家を相続したければ,お金を払うほかありません。相続財産はとっくに分けたので,家の相続分に相当する金員の支払いは,あなたの個人財産から出す必要があります。早く相続登記しておくべきでした。

不在者財産管理人についてはこちらをどうぞ。

遺産分割ができないので不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申請する

相続人の心変わりや経済状態の変化

父親が亡くなってすぐ家のことを話したことがあった。相続人全員,それは当然そうだなと私の考えに同意してくれた。四十九日や一周忌,三回忌の折にもそのように言っていた。「早く名義変更したら?」とまで言ってくれていた。あれから約2年,ようやく相続登記をしようと弟に切り出したところ,話が変わっていた。弟は,「その件なんだが少し考えさせてくれ」と言うではないか。どういことだろう。もう一人の弟にこの件を相談したところ,次のような話が聞かれた。実は,弟はこの間に会社をリストラされ,職探しをしているが思うようにいかないらしい。住宅ローンもたくさん残っており,大学生の子供の学費の支払いにも窮していると。少しお金を貸してくれないかと相談されたこともあるとのこと,,,なるほど。しかし,あなたとしては,家の話は別問題にしてほしいと考えている。いや,前に何度も確認した際私の思うとおりにしてくれと言っていたじゃないか。口頭ではあるが遺産分割協議ができていると合点していたのに。弟から相続分を主張されたらどうするか。無理強いしたって,意志が固ければやはり法定相続分があることに相違ない。困ったな,,あのとき相続登記をやっておけばなあ,,,

仕方がありません。揉めたくはありませんが遺産分割調停をしてください。

遺産分割調停の話合いを家庭裁判所に申請(申立て)する方法

 

不動産が使い物にならなくなる(管理処分不能)

売りたくても先に相続登記しないと売れない

近くに新築の物件が安く出たので買い換えたい,家を売って子供の近くに住み替えたいと思い,あなたは不動産業者の門をたたきます。そこで自宅を売いたいと相談する。詳しく話をするうち,相続登記が未了であることが判明。不動産業者はこう言います。「先に相続登記を処理してあなたの名義にしてください。そしたら契約を進めます」これに対し,「いやいや,間違いなく私が相続することになってるから早く進めてくれ,時間がないんだよ」と伝えても,やはり先に相続登記をしてくれと言われる。「なんだよ,融通が効かないな」とあなたは思う。しかし不動産業者の言い分はもっともです。そもそも相続登記をしないと,家があなたの所有になる保証はどこにもありません。母にそれから兄弟がいれば各人法定相続分があるんですから,全員が遺産分割協議に実印を押して,全員から印鑑証明をもらうその瞬間まで,家は確定的にあなたの所有にはならないのです。そして,家があなたの単独所有にならければ,どのみち家の売買契約を完了できません。家を処分できるのは不動産の所有者のみです。百歩譲って遺産分割が済んでいない状態で契約するなら,相続人全員が売主になって契約しないと無理です。繰り返しますが,あなたが単独で不動産の売買契約をして家を売るには,遺産分割が済んで,あなたの単独所有名義に相続登記を完了していることが必要になります。家を売るにはその前提として相続登記が必要です。

相続登記しないと生前贈与もできない

あなたがもし今後のことを考えて,夫婦間贈与をしたり,相続時精算課税制度を利用して子供に家を贈与しようと企画しても,先に相続登記をしないと無理です。生前贈与による家の所有権移転登記をするには,その前提として,父親の相続によるあなたへの所有権移転登記を完了している必要があります。父親の相続による所有権移転登記をすっとばして,父親名義から直接にあなたの子,すなわち父親から見て孫名義に所有権移転登記をすることはできません。日本の法律では,所有権という権利が移った順番にすべてそれを登記しなければいけない仕組みになっています(動的公示主義,中間省略登記の禁止)。父親の相続はしばらく前に開始しており,このとき目には見えず登記もしてなくとも自動的に相続人に所有権は移っています。なので,この所有権の移転を先にしてから贈与の登記をします。相続登記をとばせないのです。

相続登記しないと他人に貸すにも問題がある?

すでに貸している不動産の相続

住宅以外に他人に貸している貸家があって,これもあなたが相続する予定だったとします。少ないながら,毎月家賃収入があるものとします。父親の死後,あなたが借主に家賃の取り立てに行ったら,借主が家賃を払ってくれませんでした。「父親が亡くなったと聞いたので,早く遺産分割協議をして,相続登記をしてくれないと誰に支払ったらいいのか分からない」とのことでした。「問題ないから私に全額払ってくれ」とお願いしたのですが断られました。今後は法務局に家賃を供託するとのこと。そんなことをされたら面倒なので私に払ってほしいのですが無理でしょうか?

これは無理です。借主のいうとおり,いまの状態だと借主に請求できる家賃はあなたの法定相続分に相当する金額だけです。賃料債権は可分なので,法定相続人が法定相続分だけ相続します。これを全額請求しようとするなら,物件の所有権をあなたが単独で相続するほかありません。なので,早く相続登記をしてください。

相続登記未了の不動産をこれから貸す

相続した当時この貸家や貸宅地がたまたま空き家等になっていたのが,その後近くの人が借りたいと言ってきて,これから賃貸借契約を締結して貸し出したいとします。もちろん家賃は全額受け取りたいと。

しかしまずもって,このままでは借主と賃貸借契約ができません。少なくとも,あなたが単独で借主と契約をすることはできません。なぜなら,この物件は相続人の共同所有になっているからです。父親名義のこの物件は,父親の死亡と同時に,共同相続人が相続し,共有状態になっています。そしてその共有状態は,遺産分割が成立して,確定的に物件の所有者が決まるまで続きます。

さて,共有状態の物件をどう管理したらいいか,誰が処分できるのか,といったことは,民法という法律で決まっています。今回,貸家が貸土地について,どういう賃貸借契約を結ぶのかにもよりますが,少なくとも共有者の持分価格の過半数の同意,もしかすると共有者全員の同意を得なければ,借主との間で物件の賃貸借契約を締結することはできません。父親の相続に関し,母親が配偶者相続人として2分の1の法定相続分を持って相続しています。なので,少なくとも母親の同意を得なければ,共有者の持分の過半数の同意は得られず,賃貸契約は締結できません。

もっとも,過半数の同意を得て賃貸借契約を締結しても,単独名義に相続登記をしていないのであれば,家賃の取り分は相続分で按分せねばなりません。あなたが全部取得できはしません。賃貸借契約を単独で結び,家賃を全額収受したいなら,先に相続登記を済ませることです。

相続登記しないとお金が借りられない?

理由はともかく,相続した自宅を担保にお金を借りようとしても,相続登記が未了だと不可能です。というのは,不動産担保融資を受けるには,自宅不動産を文字どおり担保に差し出さないといけないからです。担保に差し出すとは,通常,不動産に抵当権という担保物件の設定登記をすることです。抵当権を設定すれば,万一債務者が債務の支払いができないとき,債権者は裁判所に申請して不動産を競売して代金から債権回収をすることができます。抵当権をつけずに不動産融資をすることはほぼありえません。

さて,相続登記をしていないと,この抵当権設定登記ができません。抵当権設定登記は債権者と不動産の所有者との抵当権設定契約が必要ですが,登記簿上の所有者である父親はもういないので契約ができず,そのままの状態で抵当権設定登記などできないからです。不動産にはすでに相続が生じているので物件を相続した現在の所有者と債権者との間で抵当権設定契約をする必要があるのです。そして何より,あなたが不動産の所有権を単独で取得して,その不動産の所有権全部を担保として差し出す前提(持分だけ担保にとっても仕方ない)で融資の話が進んでいるはずです。そもそも単独所有名義にする遺産分割が成立しないなら借入れはできないでしょう。なので,早く遺産分割協議を済まして,その足で速やかに相続登記を完了してしまいましょう。そうでないと不動産融資は受けられません。

 

不動産が他人に取られてしまう?

兄弟が勝手に相続登記して持分を売却したら?

ある日あなたが,そろそろ家の相続登記をしようと登記簿謄本(登記事項証明書)を取得したところ,所有者の欄に知らない人が載っていたらどうでしょう?あなたが知らない間に,弟が勝手に法定相続で相続登記を完了し,自分の共有持分だけを知らない第三者に売却していたら?そういう可能性がない訳ではありません。

まず,法定相続人は,他の相続人の協力を求めないで,単独で,法定相続による不動産の所有権移転登記,すなわち相続登記をすることができます。え?遺産分割協議書を作って全員が実印を押さないと登記できないんじゃないの?と思われるかもしれませんが,否です。法定相続分で登記する分には単独でできます。というのも,遺産分割が成立するまでの間は,法定相続の状態で相続人の全員が不動産を相続しており,これと異なる遺産分割を認めなければ,そのとおり相続すべきものだからです。もう一度言います。遺産分割協議が成立するまでの間,法定相続人の各人は,単独で,法定相続の相続分の割合による相続登記を勝手にすることができます。

で,法定相続による相続登記を終えたら,各相続人はそれぞれ相続分について所有権を取得したと同じですから(実際しているんですが),自分が相続した持分だけなら自由に処分できます。当然売ることもできます。第三者にだって売ってしまえるのです(買う人がいるかどうかは別問題)。もし何等かの事情で,弟の共有持分が第三者に売られてしまったら,この法律行為や登記は有効ですから,弟に文句を言っても無駄です。もしあなたが当該不動産の全部の所有権を取得したいなら,この第三者と交渉して,持分を買い戻すほかないでしょう。早く相続登記をしないとこういうリスクもないではありません。

兄弟の債権者が不動産を差し押さえてしまうリスク

似たようなケースをもう一つ紹介します。同じく登記簿謄本を見てみたら,物件がとある金融機関に差し押さえられていた,なんてこともあります。弟が金融機関から融資を受けていて,お金がないので返済が滞ったとします。ずっと支払いをしないので金融機関は債権の回収を試みます。弟には父親から相続した不動産の相続分があることを債権者である金融機関は察知します。そうしたとき,金融機関は,弟に代わって先ほどのように法定相続による不動産の相続登記を申請し,それが終わったところで,弟の持分に差押えや仮差押えをかけてロックすることができます。債権者が弟に代わって,勝手に,父親の相続登記をする登記のことを代位登記といいます。民法には債権者代位権という制度があって,債務者が無資力で債務の弁済ができないとき,債務者がほかに持っている債権を,債権者において代位行使する権利が認められています。弟が相続権を行使して相続登記をする権利にもこの制度が転用できます。細かい話は割愛しますが,このようになると,先ほどの事例で弟が自己の持分を第三者に売却したときと同じ事態になります。持分買受人が債権者に変わっただけです。あなたが不動産の差押え解いて,相続不動産の完全な所有権を守るには,債権者に対して弟の債務の代位弁済をする等により,弟持分相当額の金銭支出をして不動産を買い戻すしかなくなります。

 

その他の困ること

ほかにもいろいろと困ることがあります。ざっといま思いついたことを書きますが,,

住宅ローンを完済したのに抵当権抹消登記ができない

住宅ローンを完済したら金融機関から担保を外してもらえます。というか,金融機関から抵当権抹消登記に関する金融機関差出分の登記書類がもらえるので,これを登記申請書と一緒に法務局に持って行って抵当権設定登記をこちらでやらないといけないのですが(司法書士に依頼はできます)。さて,団信特約付の住宅ローンを借りていて,債務者である父親が亡くなったなら,死亡と同時に保険でローンが完済されるので,ローン完済にともない抵当権が消え,抵当権抹消登記ができます。

このケース,厳密に時系列を追ってみると,父親の死亡し,その後保険でローンが完済され,ローン完済により抵当権が消滅する,という流れになります。で,今度は担保を設定していた不動産の所有権のほうの権利の流れを追ってみるとこうなります。父親が死亡した瞬間に,不動産の所有権が相続人に相続される,と。その後しばらくして遺産分割協議によりあなたが単独相続した場合には,遺産分割の遡及効によって相続開始と同時に単独相続したと法律上みなされるので,やはり同じ理屈になります。つまり父の死亡の瞬間に不動産の所有権はあなたに移転します。

ではここで,ローン完済と,不動産の所有権の移転を混在させて,時系列を見てみます。そうするとこうなります。父親の死亡→不動産の所有権移転→保険によるローン完済→抵当権消滅。

さて,不動産の登記は,動的公示主義といって,不動産に関する権利変動が起こった順にすべて登記しないといけません。それが不動産登記法という法律の考え方です。その考え方からいくと,いま,この事例で抵当権抹消登記をするには,先に所有権の相続登記をしないといけません。というのも,抵当権が消滅して抹消登記ができる状態になったとき,すでに不動産の所有権は相続人にであるあなたに移っているからです。つまり,抵当権が消滅するという抵当権に関する物権変動は,金融機関と不動産所有者であるあなたのもとで生じた事実となります。ならば,先に相続登記をして所有権をあなたに移し,次にあなと金融機関との共同申請(の構造)にて,抵当権抹消登記を申請する必要があります。

以上,相続登記をせずに抵当権抹消登記はできません。抵当権を抹消したければ,相続登記を済ましてください(又は連件申請(相続登記と抵当権抹消登記を連番申請にする)にて同時期に登記する)。父親が保険のないローンを組んでいて,ローンを相続した相続人が,その後にローンを完済した場合も同じです。

火災保険の契約などに差し支えが?

住宅について火災保険に入っていて,契約者=被保険者(受取人)である父親が死んだ場合,火災保険について保険契約の内容の変更をしなければいけません。契約者はあなたが継ぐとして,被保険者も不動産を相続した(する予定の?)あなたとすべきところですが,相続登記をしていないと,所有者が確定していないので,「相続手続き中」などとして処理されます。相続登記をするまで(遺産分割ができるまで)その状態は続くはずです。そして万一,この状態で保険事故が起きたら,保険金を受け取るのは法定相続人の全員となります。遺産分割を終え,あなたが単独で物件の所有権を取得して相続登記をしておけば,万が一のときに,あなたが単独で,速やかに保険金を受け取ることができます。

老朽化した建物を取り壊せない?

住宅を相続したけどその後に新しい家に住み替えて,家は荒れるがままになっている,そんなことがあります。あまり風を通さないので,古い家が傷んで,危険な状態になることも少なくありません。庭の手入れも面倒なので,とりあえず家を解体して更地にし,その後どうするか考えようと決めました。

さて,このとき,あなたこの家を解体できるでしょうか。厳密にいうと,それは難しいし,危険です。というのも,いままでさんざん述べてきたように,家は父親から相続した相続財産で,これについて遺産分割が済んでいません。いくら事実上あなたが相続したと思っていても,どうなるかは分かりませんし,現状遺産分割が済んでないんですから,あくまでこの家は法定相続人の共同所有状態です。つまり共同相続人がそれぞれ家の所有権を持っている,それぞれが少しずつ所有者である,そんな状態が続いています。となると,これを解体して処分する権利があるのは,相続人の全員となります。あなたは他人の所有持分を勝手に処分する権利を持ちません。早く相続登記をしておけば,他の親族に気を遣わなくて済みます。壊したいときに所有者であるあなたが一人で決めればいいのです。

大規模なリフォームも同様に考えてください。

公共事業の際に迷惑をかけてしまう

国,県,市町村が事業を行うためにあなたの家が用地買収の対象になったら?可能性の程度は分かりませんが,少なくともこれがまったくないとは言えません。そうしたとき,家土地の相続登記が終わっておらず,その所有者が確定していないと,用地買収等の手続きがスムーズに進まないことも考えられます。もしこのまま使わなくなった土地を遊ばせておいて,数世代に渡って名義変更をせずにおいたらどうでしょう。いま相続登記をしなければ,時の経過とともに,自然とそうなるのは必然です。そのときには,もはや親族の交流は途絶えて,誰が相続する権利をもっているのかすら分からないかもしれません。もしかすると,公共事業が入るのは,そんな将来のことかもしれないのです。あなたの子や孫や親族が,お国に迷惑をかけることがないよう,私的な不動産の所有権は,速やかに確定しておきたいです。すなわち,早期に相続登記を済ませてください。

公共事業等に迷惑をかけてしまう例)

  • 地域の再開発が進まない又は遅れる
  • 空き家問題を引き起こしてしまう
  • 防災や減災に関する政策の障害となる
  • 災害時の復旧作業の障害となる
  • 農地や山林が荒れて放置される又は集約化が進まない

住んではいるが権利書がない

相続時をしないと当然新しい権利書は作られません。「親の権利書があるよ」とおっしゃるかもしれませんが,その権利書はもはや意味ある権利書ではありません。父が死亡したら,瞬時に所有権は次に移っています。父はもうこの世にいないので,父がいまから不動産を売却等することはできず,いま手元にある権利書を権利書として使用する局面はありません。次に権利書として使えるのは,父の相続によって,相続人に権利移転した相続登記の権利書です。相続登記,つまり父から相続人への相続を原因とする所有権移転登記をすると,その際に新しく権利書が作られます。この権利書のみが,今後使用できる正真正銘の権利書となります。相続登記をしないと,いくらあなたが不動産の所有者だ,権利書がここにある,と言っても空しいです。遺産分割をしてないから100%あなたが不動産を相続できると決まったわけではないし,権利書だって持ってないからです。早く遺産分割を終えて,相続登記を完了し,あなたの権利書を手に入れてください。

権利書(権利証・登記済権利証)は現在制度変更により「登記識別情報」というものに変わっています。今後相続登記をして発行されるのは,この登記識別情報です。形式は違うが法的効力は等しいので,登記識別情報は,いわゆる権利書と呼んで差し支えありません。

営業エリア・業務地域を教えてください。

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

無料メール相談はこちら。司法書士が2時間以内にお答えします!

 

相続登記手続きを自分でする方・したい方はこちら

相続登記(名義変更・名義書換)の手続きを自分で法務局に申請する方法

 

遺産の相続登記の手続きをする法務局

物件の場所の法務局でします。例えば当事務所,明徳司法書士事務所の所在する奈良県内の土地建物の相続登記申請をする管轄法務局は,物件の所在地ごとに,以下表のように決まっています。物件が他府県や他管轄にまたがって存在するときは,法務局ごとに手続きしないといけません。

例)

  • 北葛城郡王寺町や河合町や上牧町にある不動産の相続登記は,奈良県大和高田市にある奈良地方法務局葛城支局に申請します。
  • また,その周辺や近隣の市町村であっても,生駒郡三郷町や斑鳩町や平群町の土地家屋の相続登記の申請は,奈良市高畑町にある奈良地方法務局本局にすることになります。
法務局庁名 法務局所在地と電話番号 管轄地域・区域(不動産物件の所在地)
奈良地方法務局本局 〒630-8301
奈良市高畑町552
TEL:0742-23-5534 (代表) 
奈良市,大和郡山市,天理市,生駒市,山辺郡山添村,

生駒郡斑鳩町,平群町,三郷町,安堵町

葛城支局

(葛城法務局)

〒635-0096
大和高田市西町1-63
TEL:0745-52-4941
大和高田市,御所市,香芝市,葛城市,

北葛城郡上牧町,王寺町,広陵町,河合町

桜井支局

(桜井法務局)

〒633-0062
桜井市大字粟殿461-2
TEL:0744-42-2896
桜井市,宇陀市,宇陀郡曽爾村,御杖村,

吉野郡東吉野村

五條支局

(五條法務局)

〒637-0043
五條市新町三丁目3-2
TEL:0747-22-2484
五條市,吉野郡吉野町,大淀町,下市町,黒滝村,天川村,

野迫川村,十津川村,下北山村,上北山村,川上村

橿原出張所

(橿原法務局)

〒634-0078
橿原市八木町一丁目6-12
TEL:0744-22-3045
橿原市,高市郡高取町,明日香村,

磯城郡田原本町,川西町,三宅町

 

不動産の登記のことは奈良王寺の明徳司法書士事務所まで!

 

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