相続大全集

遺産分割協議のやり方と遺産分割協議書の作り方

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奈良王寺で遺産分割協議書の作成の依頼や相談

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

今日は遺産分割協議遺産分割協議書についてお話します。

遺産分割とは要するに,共同相続人が,相続分にしたがって,誰が何を具体的に相続して取得するかを話し合って,遺産を振り分け,所有を確定することです。

では遺産分割協議の進め方は具体的にどうしたらいいのでしょうか。また,遺産分割協議書の書き方はどうすればいいんしょうか。

 

遺産分割協議の位置づけ

具体的な話に入る前に,相続の法律関係における遺産分割や遺産分割協議の位置づけを再確認しておきます。遺産分割や遺産分割協議は以下の太線で強調したところに位置します。

  1. 人の死亡(相続の開始)
  2. 遺言の有無の確認
  3. 相続財産の調査
  4. 相続財産の遺産評価
  5. 相続人の確定
  6. 相続分の確定
  7. 遺産分割
  8. 各財産の相続手続き(承継手続き)
  9. 相続税の申告

以上見てもらえば分かるように,「遺産分割」のうえにはいくつかステップがあります。原則論でいえば,このステップを踏んで,やっとそのあとに遺産分割や遺産分割協議ができます。これらを飛ばして遺産分割をすることはできません。

遺言の有無の確認

遺言があれば相続人や相続分が変わることがあります。相続人や相続分が変われば,遺産分割の当事者が変わったり,各相続人に振り分ける財産の額が変わってきます。また,遺言で遺産分割の方法の指定がされていると,原則として遺産分割は終了しているので相続人の遺産分割は不要です。

相続財産の調査と評価

財産が分からないと遺産分割の話合いはできません。あとから財産が出てきたらやっかいなことになるので,遺産分割の前にしっかりと財産調査をしておきます。また,それぞれの相続財産の経済的な価値をある程度把握しておかないといけません。遺産分割とは,相続分にしたがって,具体的に財産の割り付けをすることなので,個別財産の価値が分からないと振り分けできないからです。

相続人の確定と相続分の確定

遺言や相続人廃除などで相続人でない人がいるなら,この人は遺産分割協議のメンバーになれません。また,遺言で相続分が指定されていたり,生前贈与等の特別受益があったりして相続分を修正する場合,修正後の相続分で遺産の振り分けをする必要があります。なので,相続人の確定や相続分の確定は,遺産分割協議の前提として確認,確定,合意しておきます。

 

遺産分割の方法の優先順位

ここまで確認できたら,じっさいに遺産分割を始めていきます。遺産分割は,話合いで決着するのがベターです。遺産分割の話合いのことを遺産分割協議と呼び,また話合いで遺産分割を決着することを協議分割と呼びます。遺産分割は,協議分割で終わるよう,つまり遺産分割で揉めないようにするのがベターです。

なお,どうしても話合いが着かないときは,次の順番で法的手続きをとります。

  1. 家庭裁判所遺産分割調停を申し立てて,調停で決着する。こうしてする遺産分割を調停分割と呼びます。
  2. 調停をしても合意できないときは,自動的に家庭裁判所の裁判官が遺産分割審判をします。要は,相続人に任せていても決着しないしどうしようもないので裁判所が結論を決めるのです。このような遺産分割を審判分割と呼びます。

つまり

遺産分割協議(協議分割)=相続人だけで話合い

↓できなければ

遺産分割調停(調停分割)=裁判所を交えて話し合い

↓できなければ

遺産分割審判(審判分割)=裁判所が決める

という流れです。

できれば遺産分割調停ましてや遺産分割審判になるのは避けたいものです。労力もコストもかかりますし,親族の人間関係も破綻してしまうからです。今日は調停分割や審判分割にはこれ以上触れません。話合いで決着をつけるための遺産分割協議に話を進めます。

 

遺産分割協議の進め方,心構え,注意点

遺産分割協議は,通常は親族間で遺産の分け方を取り決めます。なので,一口に遺産分割といっても,親族の人間関係や経済状態,また遺産の種類,数及び内容において,千差万別のパターンがあります。遺産部活のやり方も究極的には人それぞれと言えるでしょう。

しかしそれでは話が終わってしまうので,一応二つほどのケースに分類して,遺産分割協議をどうやって進めていったらいいかを考えてみます。

相続人同士仲が良く揉める要素がない場合(あなたが全財産を相続することに異議がないようなケース)

昔ながらの古風な家柄で長男が全部相続するのが当たり前とか,あなたが親と同居して面倒をずっとみてきたので他の相続人は皆あなたの家族が親の遺産を相続するのが常識と思っているとか,相続で揉める可能性がゼロに等しい場合。このような場合は難しく考える必要はありません。

例えば仏式なら,四十九日の法要や一周忌の集まりの際に,以下のようなことを親族にお話ししてください。なお,所得税の準確定申告や相続税の申告が必要であったり,早期に相続不動産や株式を売却する予定の方は,一周忌では間に合いません。四十九日の日など,なるべく親族にお話しする機会を設けてください。

  • 故人(被相続人)の遺産の手続きをしないといけないこと
  • ついては,書類を準備するので,実印を押してもらうなど協力をしてほしいこと

その後の別の日に,あなたが準備した(司法書士に準備してもらった)遺産分割協議書ほか相続関係の書類一式を各相続人に持って回るか,郵送するかして,書類に印鑑を押してもらってください。相続人全員の印鑑証明書も必要なので,事前に何通いるかお知らせしてください。証明書は押印書類と一緒に返してもらってもいいし,後日に送ってもらってもかまいません。

相続人の仲が良く,信頼関係があるからといって,あまり性急にするのはよくないです。親しき仲にも礼儀ありで,やはりお金の絡むことなので慎重にしましょう。繰り返しますが,以下のステップを踏んでください。

  1. 死後すぐに財産のことを言わない
  2. 四十九日の法要など親族が集う節目の日に,手続きへの協力をお願いする
  3. 後日,遺産分割協議書等を準備して相続人に実印の押印と印鑑証明書の取得をお願いする

相続人同士仲が悪いか,相続人中にお金にうるさい人がいる場合

この場合は上記に比べて格段に慎重に話を進める必要があります。もとから互いに信頼関係がない。お金に執着心が強く,生活に困っていて,少しでも相続の取り分が欲しい人がいる。こういうときに,上記同様安易(シンプル)に話を進めてうまくいくとは思えません。

また,このような場合は,あなたが全財産を相続するというような遺産分割協議が成立する可能性は低いでしょう。どのように慎重に進めてもきっと納得は得られないはずです。現在の日本の法律では,相続人には法定相続分が認められているので,他の相続人がそれを主張すれば原則として拒否できません。また仮に,法律上,あなたが全遺産を相続する理由となる「特別受益」や「寄与分」という法律関係・事実関係が確かに存在しても,これを裁判所外で相続人に認めさせるのは至難の業です。

遺産分割の裁判手続きの説明は他に譲ります。今日は遺産分割協議の説明をします。なので,このようなケースで遺産分割協議が成立する可能性がある「法定相続分による遺産分割」を前提として以降話を進めます。

さて,今一度冒頭の,相続関係の流れを思い出してください。

  1. 人の死亡(相続の開始)
  2. 遺言の有無の確認
  3. 相続財産の調査
  4. 相続財産の遺産評価
  5. 相続人の確定
  6. 相続分の確定
  7. 遺産分割
  8. 各財産の相続手続き(承継手続き)
  9. 相続税の申告

今回相続人と仲が宜しくなく,また共同相続人は金銭にうるさいわけですから,おのずとやらなければいけないことは決まってきます。すなわち,遺産分割の前提問題である遺産調査遺産評価をしっかりしておくということです。他の相続人はあなたに対する信頼がありませんから,財産がはっきりしない,あやふやな情報をもとに遺産の分け方を提案しても,きっと疑われてしまいます。「もっとほかに財産があるんじゃないか」と。「この財産の評価はもっと高いはずだ」というふうに。疑われると当然書類への押印もしてもらえず,手続きが長引くばかりか,場合によってはこう着状態になって,相手から遺産分割調停を起こされるかもしれません。信頼関係がない以上,ないからこそ,逆に資料はきっちり揃える。こういう取組みが必要です。

では,どうしたらいいのか。

財産調査について

信頼関係がある場合ならこれでいいが,,
不動産

家にある権利書や固定資産税の決定通知書(請求書)に書いてあるものを確認する。

預貯金

家にある預貯金通帳や証書で確認する。

株式等金融商品

証券会社から送られてくる取引報告書などで確認する。

信頼関係がない今回はここまでやりましょう!
不動産
  • 法務局で「登記簿謄本(登記事項証明書)」を取得する。
  • 市町村役場で「資産明細・名寄帳」を取得する。
預貯金

銀行等で「残高証明書」「取引明細書・取引履歴」を取得する。

株式等金融商品

証券会社で「残高証明書」を取得する。

遺産評価(財産評価)について

信頼関係がある場合はこれでいいが,,
不動産

固定資産税の評価額を参考にする。

預貯金

最終の通帳残高を参考にする。

株式等金融商品

証券会社の取引報告書の預かり残高を参考にする。

信頼関係がなくお金にうるさい今回は最低でもここまでやりましょう!
不動産
  • 土地については国税庁のWEBサイトで「路線価」を調べて評価する。
  • 不動産会社で「査定書」をもらう。
預貯金

銀行等でもらった「残高証明書」の残高で評価するが,「取引明細書・取引履歴」を見て,生前に大きな出金や解約等があれば,どういう事情かを説明できるようにしておく。

株式等金融商品

「残高証明書」に書いてある銘柄の市場価格が大きく変わってないかチェックしておく。値幅に変動が大きければ,どの時点の価格で評価するか他の相続人と話し合う準備をする。

以上,遺産調査と遺産評価が終わったら,これを簡単な財産目録にまとめておきます。この相続財産目録を相続人の皆さんに事前に送付するなりして,何も隠していないことを明らかにしてから協議をはじめるとよいでしょう。

財産目録の作り方

こちらの記事は親の生前に作る場合の記事ですが,同じことですので参考にしてください。

親の財産目録(財産のリスト)をどうやって作るか具体的な方法を説明します

宜しいでしょうか。

相続財産がほかにないことを信用してもらい,その評価額を客観的な基準をもとに算定しておくことが大事です。遺産分割(協議)とは,各相続人にしたがって,具体的な財産の割り付けをする作業なので,きっちり法定相続分で割り付けをしようとするなら,各財産の評価額について相続人間で合意ができないといけないからです。

くれぐれも,あなたの意見を押し付けたり,財産の存否や評価をあやふやにしてごまかしたりしないよう注意しください。こじれると大変です。

最後に,このように共同相続人の間に信頼関係がなく,又は共同相続人がちゃんと法定相続分を主張することが予想されるケースにおいて,「法定相続分にしたがった遺産分割」を成立させるためのステップを提案しておきます。あなたが故人と同居していたり,現に遺産の管理をしいてる代表相続人であると仮定してのお話です。

どうしていいか分からなければ,以下のように協議を進めてみてはいかがでしょうか。項目の順序や話しぶりはあくまで一例です。各親族各相続の事情に合わせて微修正ください。

◎信頼関係がなく,法定相続分を主張する法定相続人に遺産分割協議を提案する方法

  1. まずもって,四十九日や相続開始後のなるべく早い時期に,共同相続人に対して,「私のほうで遺産を管理している(権利書や通帳を預かっている)ので,なるべく早い時期にこれを整理して,皆さんにご相談します」と伝える。これによって,共同相続人が,「遺産相続はどうなってんだ?もしかして独り占めしようとしてるんじゃ?」と疑心暗鬼になるのを予防します。
  2. 次に前述の相続財産調査と相続財産評価(遺産評価),要はどんな財産があって,どれだけの経済的な価値があるのかをきっちり調べます。
  3. これにもとづいて簡単でもいいので財産目録を作成して,相続財産をガラス張りにします。
  4. 次に,次回相続人が集う機会や特定の相続人と会える機会を捕まえて,書面化した財産目録を渡したうえで,遺産分割の内容について相手方の意見をうかがいます。こんな感じ。「故人の遺産はこれで全部です。これから法律どおりに法定相続分で分けたいと思うんですが,ご希望などありますでしょうか?ご希望やご要望があったらあらかじめお申し付けください。みなさんのご意見をできるだけ尊重して,私のほうで遺産の分け方の案をお作りしようと思います。」
  5. そして,次に,あなたの希望を伝えながら,軽いニュアンスで,次の6.7.8.のように提案してみます。絶対こうするんだ!という気持ちが伝わらないようにやさしく。
  6. 住宅が欲しい場合は,「故人と同居して長年住んできた家ですから住宅は私のほうで引き継ぎさせていただければ幸いです。その代わり,預貯金などは他の方で分けていただこうと思います。」
  7. 預貯金が欲しい場合は,「どなたが不動産をご希望される方はいらっしゃいませんか?もしご希望があったら不動産を相続していただいて,他の相続人で預貯金などを分けたく存じます。」
  8. 不動産や株を売却してお金を分けたいときは,「不動産や株を引き継がれるご希望がないようですので,私のほうで不動産と株を売却させていただいて,その代金を分配させていたければと思います。不動産のほうはちゃんと信頼できる不動産業者や司法書士に依頼して手続きを進めます。売却の条件などは事前にご相談させていただくのでできればお任せください。」
  9. このように話を進めて,相続人の全員が,「それじゃ任せるから進めてくれ」と明言したり,暗にその雰囲気を伝えてくれば,あなたの方でその内容にしたがった遺産分割協議書の案を作成してください。
  10. そして,もうワンステップ置く。くどいですが慎重にしてください。具体的には,できあがった遺産分割協議書に「案」と明記して,ドラフトを渡します。「こんな感じで進めていこうと思いますがいかがでしょうか。問題なければ正式な文書を作成してお渡ししますので,お返事をお待ちしています」と相手の反応を待ちます。
  11. 改めて「進めてくれ」と言われれば,あとはそのまま進めてください。

遺産分割協議書の具体的な書き方

 

遺産分割協議の内容,中身,つまり遺産の具体的な分け方

遺産分割協議の進め方は以上のとおりですが,その中身についても少し触れておきます。結論から言ってしまうと,どのように決めても基本的に自由です。遺産をどういうふうに割り振りするかは共同相続人だけが決定権を持っています。どうぞ自由に決めてください。法律的には,遺産の分け方について,以下のように分類されています。こういう分類を「遺産分割の態様」と呼んでいます。分類の名前はどうでもいいので,とにかく皆さん納得いくように決めればよいです。

想定する事案)

  • 遺産として不動産,預貯金,株式があった。
  • 遺産の評価は等しく各500万円相当であった。
  • 相続人は,長男,次男,三男の3名であった。

現物分割(げんぶつぶんかつ)

遺産の現物を共同相続人に割り振ることです。例えば,長男が不動産,次男が預貯金,三男が株式を相続するという分割協議です。

換価分割(かんかぶんかつ)

遺産を現物で相続せず,これを売却処分して,その代金を相続するような遺産分割です。例えばすべての遺産を売却し,1500万円の代金を手に入れ,これを長男,次男,三男が,各500万円ずつ相続します。

代償分割(だいしょうぶんかつ)

誰かが現物を相続する代わりに,現物を相続した人が,現物を相続しない人に対して,代償金(代金)を支払うやり方です。例えば,長男が現物遺産を全部相続する代わりに,長男が,次男と三男に対して,それぞれ500万円を,相続とは関係がない自分の預貯金から支払うことによって成立する遺産分割です。

  1. 本来遺産分割とは相続人の相続分にしたがって現物の遺産を割り付けることですが,誰かが単独で遺産相続したり,相続分とは異なる割合で遺産相続するような遺産分割も可能です。むしろ厳密に相続分によってなされる遺産分割のほうが稀でしょう。
  2. 遺産を複数の相続人で共有(共同所有)とする遺産分割もできます。ただし,あまりおすすめはしません。
  3. 以上のように遺産を全部売ったり,全部お金で解決したり,統一してする必要はありません。一部の遺産を売却して代金を分ける等,これらを組み合わせるバリエーションも自由です。
  4. どのように遺産分割をしても,遺産(分割)の範囲内で行う限り,所得税や贈与税の問題は生じません(相続税に与える影響は別)。
  5. 遺産のうち,不動産の分け方で揉めたときは,最終的に(遺産分割審判で)次のような優先順位と態様で分割されます。揉めたら最終こうなるよ,という事実を踏まえて協議(話合い)にのぞんでください。
    【現物分割】
    土地を分筆して複数の土地にして分ける。又はA土地,B土地,C建物を,甲乙丙の相続人に,それぞれ単独所有にて振り分けるような分割。↓

    【代償分割】
    次の要件を満たす場合,誰かが不動産を相続して,代わりに代償金をもらう。
    ①不動産の現物分割が物理的に難しい(間口が狭い土地,不整形土地,遺産が建物のみ,など)
    ②代償分割によることに誰からも異議がない
    ③不動産の評価額について合意できる
    ④当該不動産を相続したい相続人がいる
    ⑤当該相続人に代償金の支払い能力がある

    【換価分割】
    不動産を欲しい人がいないか,その人にお金がないときは,不動産を売却してお金を分割する。任意売却の条件に全員合意できれば任意売却で,合意できなければ家庭裁判所に審判で競売を指示してもらい,売却換金のうえ,分配する。

    【共有とする分割】
    現物分割が物理的にできない不動産であって,代償分割もできず,かといって簡単に買い手も見つからないと考えられる場合(農地など),最後は共有にして遺産分割は一旦終了する。各不動産は,それぞれ,共同相続人の共有となる(持分○分の○)。

 

「遺産分割協議書」という書面の作り方や書き方

共同相続人の話合いがまとまったら(およその内諾が得られたら),これを書面化します。この書面を遺産分割協議書といいます。遺産分割協議の結果を証するために作成する書面だから遺産分割協議書です。

書面にする必要性

遺産分割協議が終わったら必ず書面化が必要です。つまり遺産分割協議書の作成は必須です。この書面がないと,不動産の相続登記,預貯金の解約払戻し,その他の財産の名義変更ができないからです。関係機関にこの協議書を提出して,確かにそこに書いてある人が遺産を相続したことを証するのです。遺産分割協議書の必要性について以下にまとめておきましたのでご参考に。

遺産分け(遺産分割)したら絶対に書面化しなければならない理由

遺産分割協議書に書くこと,必要な記載事項

遺産分割協議とは,①被相続人が,②死亡して相続が開始し,③残された相続財産・遺産について,④相続人の全員が,⑤どのように割振りするか合意することです。なので,その結果を証する遺産分割協議書に書くべき内容もおのずと決まってきます。

①被相続人の表示

相続の当事者である故人を特定できるように以下のようなことを書きます。

  • 最後の本籍
  • 最後の住所
  • 氏名

②相続開始日

相続は被相続人の死亡により効力が生じますから相続の開始日である死亡日を記載します。

例)

相続開始の日 平成●年●月●日

③相続財産・遺産・物件の特定

遺産分割協議書において割振りをする遺産はちゃんと特定できる程度に書く必要があります。遺産が特定できていなければ,関係機関もどういう遺産分割が成立したのか判断できません。

例)

  • 南都銀行 王寺南支店 普通預金 1933723
  • 以下の土地
    所在 奈良県北葛城郡王寺町王寺二丁目
    地番 7番
    地目 宅地
    地積 ●㎡

④相続人全員の署名押印(記名押印)

協議の当事者である共同相続人全員の住所氏名を書いて実印を押します。住所は,普段書いているように「-(ハイフン)」などで省略せず,住民票又は印鑑証明書を見ながら,そのとおりに書いてください。

⑤協議内容

誰がどの財産をどのように相続するのか具体的に書いてください。「任せる」とか「一任する」とかでは駄目です。

例)

  • 以下の不動産は,●●が相続する。
  • 以下の預貯金は,●●が取得する。
  • 以下の現金は,●●と●●が,各2分の1の割合で相続する。

なお,遺産分割協議後に財産が見つかった場合に備えて,予備的な文言も必ず記載してください。次のような感じです。

例)

協議後,その他相続財産が発見されたときは,法定相続人の全員が法定相続分の割合で相続する。

遺産分割協議書の書式サンプル・記載例(あくまでサンプルです。簡略化してます)


遺産分割協議書

共同相続人である私達は,次の相続について,下記のとおり遺産分割の協議をした。

【相続の表示】
被相続人の最後の本籍 ●●●
最後の住所 ●●●
氏名 ●
相続開始の日 平成●年●月●日

1.●は,次の不動産を相続する。
所在
地番
地目
地積

所在
家屋番号
種類
構造
床面積

2.●は,次の預金を相続する。
南都銀行 王寺南支店 普通預金 ●●●
三井住友銀行 大和王寺支店 定期預金 ●●●
ゆうちょ銀行 通常貯金 記号● 番号●●●

3.その他の遺産があったときは,法定相続で相続する。

以上の協議を証するため,この協議書を作成し,各自署名押印のうえ,各1通を保有するものとする。

平成●年●月●日
住所
氏名 印

住所
氏名 印

住所
氏名 印


実印を押す必要性

遺産分割協議書に押す印鑑は実印(市町村役場に登録して印鑑証明書が発行される印鑑)に限ります。文書の証明力を確保するのはもちろんですが,何より財産の相続処理をするのに実印を押した遺産分割協議書と印鑑証明書が必要だからです。これが揃わないと各遺産の相続申請ができません。遺産分割協議書に相続人が押す印鑑は実印に限ります。しかも相続人全員分についてです。1名でも認印を押すと通用しません。

印鑑はどこに押したらいいか

通常は文書の最後に相続人全員の署名欄を作ります。その署名欄(記名欄)の自分の名前の後ろに押してください。通常契約書などに押すのと同じ押し方です。また次の点にも注意してください。

  • 協議書の文章が多くて書類が2枚以上に渡るときは,各ページのつなぎ目に「契印」をしてください。これも,相続人の全員がします。
  • 協議書の内容に間違いがあったり,住所氏名を書き間違ったときは,該当箇所に線を引いて,上から訂正印を押してください。
  • 協議書を複数部数作るときは,各協議書を重ねて少しずらし,「割印」をすることがあります。割印は2部以上ある書類が同じ内容で同じ時に作成されたことを証するものです。割印は必須ではありません。ちなみに私は押してもらっていません。

何通作るのか,どこに提出するのか

通数

  • 法的には,最低限で1通です。
  • ただし,相続人の全員が手元に控えをおくため,人数分作ってもよいです(1通なら控えはコピーでOK)
  • なお,遺産が多くて,いろんなところに遺産分割協議書を提出しないといけない場合において,素早く遺産の相続手続きを終えたければ,協議書を関係機関に提出する分だけ作成してもよいです。

提出先

  • 法務局(法務省民事局関係の国家機関・役所です。不動産の所有権移転登記申請等の相続登記をするのに使います)
  • 銀行(預貯金の相続による解約や払戻しに使います)
  • 証券会社(株式や投資信託を預けている証券口座の相続申請や口座移管の手続きに使います)
  • 裁判所(詳細割愛しますが,財産管理人の選任の分割案等として提出します)
  • 司法書士事務所(以上の個別の手続きを依頼したり,遺産相続の一括処理をする遺産整理業務(いさんせいりぎょうむ)を委任している司法書士に印鑑を押したものを渡します。そもそも司法書士が協議書を起案していることも多いでしょう)

など

いつまでに作るのか(作成期限)

いつまでという明確な期限はありません。法律上いつまでに遺産分割協議をしなければならないという決まりはないからです。もっとも,以下の理由から,なるべく早く遺産分割協議書を作成するようにします。

  • そもそも遺産分割協議をして協議書作成しないと遺産の相続処理が進まない。要は,いつまでも相続財産を自分のものにできない。
  • 相続税の申告が必要なら,相続税の申告期限内に作成せざるを得ない。相続税の申告準備には時間がかかるので,通常は,さらに余裕をもって早めに遺産分割協議の内容を固め,遺産分割協議書を作成することが行われる。

みんなで集まって書類に署名押印するのか

本来法律が想定している姿はそういうほのぼの?とした形なのかもしれません。遺産の分け方を書いた書類を1通作って,みんなで寄り合いをし,その場で順番に実印を押す。「協議成立!よかったよかった」と。しかし現実にそんな感じで遺産分割協議をし遺産分割協議書が作られることはマレです。

じっさい多いのは次のような形ではないでしょうか。

  • 代表相続人が司法書士などに遺産分割協議書を作ってもらい,あらかじめもらっておく。その代表相続人が,他の相続人の家を回って実印を押してもらうか,他の相続人が順番に代表相続人のところに訪ねてきて実印を押して帰る。
  • 代表相続人が司法書士に遺産分割協議書の作成を依頼し司法書士がこれを作成する。司法書士が各相続人に連絡のうえ司法書士が相続人のもとに出張して署名押印いただいたり,郵送返送で処理したりする。又は,相続人が司法書士事務所に行って,事務所で遺産分割協議書に署名押印する。
  • 相続人が多いとか,住所地がバラバラで遠方や外国に住んでいる人がいる場合。こういうときは,内容がまったく同じ遺産分割協議書を人数分作って各人に郵送する。各相続人は自分のところにだけ署名押印して送り返す。返送された複数の書類をひっつけて(合綴して)1枚の協議書として取り扱う。法律的には,こういう処理も認められています。不細工ではありますが,こうして集められた書類も,1枚の遺産分割協議書として通用します。
  • このバリエーションで,例えば5名いる相続人のうち3名のみ1枚の同一書面に連署押印し,その他2名については,それぞれに書類を郵送して各自押印してもらい,合計3部の遺産分割協議書を合綴する,などということも行われます。

などなど(いろんなやり方ができます)

どのように,いつまで,保管すればいいのか

保管の仕方はお任せします(笑)

なお,保管期限。明確にいつまでと言うことはできませんが,「当面」保管しておいてください。特に邪魔でなければ,無理に処分しないでずっと置いておいてください。

もししばらくたって遺産が見つかったら,遺産分割協議書に書いておいた予備的文言で相続の処理ができます。遺産分割協議書に有効期限はありませんし,過去に協議書に添付した古い印鑑証明書も通常そのまま使用できます。

そのとき協議書に押印した相続人の中にすでに亡くなっている者がいても,協議書は有効で,新たに作り直す必要はありません。その当時合意した事実に変わりはなく,合意した内容は,死亡した人の相続人が引き継ぐからです。

ということで,もし手元に遺産分割協議書原本やその控え(その他戸籍謄本や財産の明細書などがあればそれも含む)をもらったら,当面は保管しておくのをおすすめします。

 

遺産分割協議書の作成は司法書士に相談・依頼してください。

当事務所は遺産相続関連の業務を専門的に取り扱っています。遺産分割協議書の作成に関することは何でもお聞きください。適正迅速に対応させていただきます。

なお,不動産の相続登記や預貯金等の相続手続き,遺産整理業務(いさんせいりぎょうむ)等の業務を依頼した場合,それら手続きの中で司法書士が遺産分割協議書を作成します。よって個別に遺産分割協議書の作成を依頼いただく必要はありません。

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