相続大全集

限定承認(限定相続)を家庭裁判所に申請して相続財産の範囲で債務を支払う

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相続の限定承認の相談

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

親が死んだ。親は相続財産として住宅を残してくれたが,借金もいっぱい残していった。正直自分たち相続人が支払っていけるような借金の額じゃない。なので相続放棄するしかない。ところで親と同居していた自分には住む家がない。住む家がないので放棄したら家を用意する必要がある。買うか借りるか。この家には愛着があるから,どうせ買うならこの家がいい。でもこの家だけ買い取るとかできないだろうな,,,放棄したら家は取られるし,家をもらうなら借金も全額相続しないといけないだろうし,,,やはり家はあきらめるしかないか,,,

ちょっと待ってください。なんとかなるかもしれません。家庭裁判所に対して

「相続限定承認」

の申述をすれば。

 

相続の限定承認とは何か

「限定承認」とか「限定相続」とかいう言葉を聞いたことがありますか?相続の限定承認とはこういうことです。

「相続人が,相続した積極財産の額を限度として相続債務等を支払う,という責任を限定した形で行う相続の承認のこと」

(限定承認)
民法922条  相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

ややこしいですね。要は,プラス財産の範囲で負債を支払う約束でもって相続を承認することです。相続は,原則として3か月内にこれを承認するか放棄するか決めないといけません。相続を承認するとは全部が全部引き受けて資産も負債も引き継ぐこと。対して相続を放棄するとはすべてを投げ出して相続関係から脱退すること。つまり相続人にならないようにすること。この二つの中間が限定承認です。限定承認は,その名前のとおり,相続の承認の一態様です。責任限定付の相続承認のことです。

相続の承認及び放棄のパターン)

  1. 相続の承認
    単純承認→全部引き受けるいわゆる相続の承認のこと
    限定承認→相続した積極財産の範囲で相続債務等を引き受ける責任限定付相続承認!
  2. 相続の放棄

なんとなく分かりますでしょうか。

 

どういう場合に相続の限定承認をするのか

ん?ここで疑問が出てきます。財産の範囲で負債を返済したらトントンということだよね?プラスマイナスがゼロ,つまりいわゆるプラマイゼロなんだから,結局手元に財産は残らない訳で,それって相続放棄と変わらないんじゃないの?という疑問が。

しかしそうではありません。限定承認は相続放棄とは違います。なぜそうではないかと説明するために,こういう場合に限定承認をするんだという典型ケースをご紹介して,その違いをご理解いただく助けとします。

特定の相続財産にこだわりがあるケース

冒頭紹介したケースがまさにそれです。相続財産というのは現金や金銭債務だけではありません。無色透明のプラスマイナスという数字ばかりが相続財産ではない。不動産も動産も,その他のいろんな財産が相続財産になります。故人が建てて,相続人も一緒に暮らした住宅はどうか?これも当然相続財産です。この家は,お金を出せば同じ物が手に入るわけではありません。この家はどうしても相続したいが,相続債務の全部はとても支払えないという場合。この家の財産評価の範囲内に相続債務が限定圧縮されるならば,なんとか支払える。それくらいならどこかで借り入れしてでもなんとか支払って,この大事な思い出の家を相続したいという場合。そのような場合に限定承認の制度を利用する意味があります。家の財産評価額と弁済する相続債務額が等しく,財産評価上はプラマイゼロになったとしても,「この家」を相続することに意味があります。相続放棄とは違います。

ある程度プラス財産はあるけど負債がいくらあるかわからないケース

次に,ある程度の価値の相続財産があるのは分かっているけど,負債がどれくらいあるのか分からないというケースがあります。例えば故人が商売をしていて,金融機関等々から借入れをしているケースです。できれば財産を相続したいが,後から莫大な債務が見つかったらかないません。なので一か八か相続を単純承認するというのはリスクが大きい。かといって,ある程度財産があるのを知っているので,相続放棄するのももったいない。もし相続する負債が現時点で請求を受けているものだけなら,かなり資産超過になるような場合です。もちろん相続が開始したら相続財産の調査をして早期に債務や負債の額を知るよう努力するのですが,友人知人からの借入れや保証債務などすぐには分からないものもあり,後々思わぬ債務の支払いを請求される可能性もゼロではありません。こういうときに限定承認をしておけば,あとから債務の支払いを請求されてもマイナスにはなりません。最悪トントンで済ませることができるわけです。やはり相続放棄とは全然違いますね。

まったくプラス財産はないけど次順位相続人に迷惑をかけたくないケース

さらにこんなケースはどうでしょう。被相続人が商売をしていて,生前,何かと親族に迷惑をかけていた。借財をしたりお願いごととしたりです。なので故人の配偶者や子供であるあなたは,親族には頭が上がらない状態。親族からは,「もうこれ以上迷惑をかけないでくれよ」と重々言われている。さて,そうこうしているうちに相続が開始したが,やはり故人の商売は厳しい状態が続いていて,死亡時には多額の債務超過になっていた。とても返せる額じゃない。そこであなた方は相続放棄をしたいのだが,相続放棄をすると,直系尊属や兄弟姉妹が次に法定相続人になるので,そちらへ請求が回ってしまう。もちろん親兄弟も相続放棄をすれば法的責任を負わないで済むが,そもそもそちらに請求が行ったり,相続放棄の手続きをしてもらうこと自体気が引ける。これ以上故人のことで手を煩わせる訳にはいかない。もう故人のことで親族と話をするのも嫌だ。こういう場合です。このとき限定承認をすれば,次順位相続人である直系尊属や兄弟姉妹に連絡がいくのを防げます。限定承認はあくまで相続の承認なので,相続人がこれ以上増えるのを防げるからです。また,どうせ故人に資産はないので,弁済する相続債務等もありません。資産の限度でしか返済する義務がないからです。以上,民法上想定されている限定承認の使い方ではありませんが,場合によっては大変意味のあるやり方です。

 

限定承認をする場合の注意点やポイント

このように大変意味のある限定承認の手続きですが,その利用については,いくつかの注意すべきポイントがあります。

相続債務等の支払いは一括弁済になる

最初にお話ししたとおり,限定承認は相続放棄ではありません。相続債務等の支払いは免除されません。その支払い額に,「相続によって得た財産の限度において」という上限がかかるだけです。最大で,相続した財産の評価額いっぱいっぱい等しくなる額まで相続債務等を弁済しなければいけません。

例えば仮に1000万円の住宅を守りたくで限定承認をしたら,マックス1000万円の相続債務の支払い義務があります。相続債権者等に対し,1000万円を一括払いするのです。分割にはできません。もし仮に1000万円を一括で支払えない場合は,どこか限定承認とは別のところで,銀行等別債権者から分割払いでお金を借りるほかありません。ほかで分割で借りてきたお金を一括で相続債権者等に支払いっていただきます。とにかく相続債権者に対しては一括払いなのでこの点気をつける必要があります。

共同相続人の全員で同じ申立てをする必要がある

法定相続人が複数いるときは共同申立てをしなければなりません。例えば3人の法定相続人がいれば,3人とも限定承認をしないといけません。もし一人が単純承認をしてしまうともう限定承認はできません。残りの人も単純承認するか相続放棄するかしかありません。相続債務を全額支払うという単純承認と,財産の限度で支払うという限定承認の仕組みは両立できないからです。

もっとも,相続人に相続放棄をする人がいてもかまいません。相続放棄をした人は最初から相続人ではなかったものとみなされるので,この場合の共同相続人とならないからです。じっさい問題相続放棄する人がいても債務の弁済額等に仕組みの不整合は生じません。

(共同相続人の限定承認)
第九百二十三条  相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

手続きをするのに手間と時間がかかる

限定承認は民法に規定された厳格な手続きにしたがって処理しないといけませんので手間と時間がかかります。弁済金額を1円まで計算するための財産の評価,弁済すべき相続債権者を漏らさないための公告手続き,財産を換価するための競売や鑑定評価の手続きなど,いろんな手続きをしなければいけないからです。ちゃんと財産の評価がされているかどうか,弁済額や取り分の割合は正しいか,こういったことは,相続債権者の利害や法的権利の実現にとってとても大事なことなので,ちゃんと手続きを踏んで適正に処理されなければならないからです。限定承認の制度は相続人の権利や利益と,相続債権者の権利や利益を正しく調整するためにありますから,必然手続きは厳格になり,手間と時間がかかるのです。

手続きをするのに費用がかかる

限定承認の手続きはそのように手間と時間がかかり厳格なので,相続人が自分独りで処理するのは難しいはずです。通常は司法書士等に書類作成や手続きの支援を求めます。専門家に依頼すれば手数料や報酬がかかりますので,その負担もみておかないといけません。

限定承認に詳しい専門家が少ない

限定承認の手続きをする相続人の方はそれほど多くありません。手続きが面倒で時間も費用もかかるからです。また債務等を一括で支払わないといけないので,相続人に金銭的余裕があるか,よほど特定の相続財産に思い入れがあって他から借入れをしてでもその財産を相続したい,という強い気持ちがないとできません。そうじゃないと,相続放棄をしたほうが楽だ,となりがちだからです。

ということで,限定承認の申述件数自体がかなり少ないので,これを処理する経験を積んだ専門家も非常に少ないです。譲渡所得税(みなし資産譲渡)など税金の取扱いもグレーゾーンが多いです。なので,限定承認の手続きを依頼するなら,少なくとも遺産相続を専門に扱っている事務所にあたるべきだと思います。

 

家庭裁判所で限定承認の手続きをする具体的な方法とやり方

「相続した財産を限度として相続債務等を支払う」という限定承認の手続きは,具体的にどうやって進めればいいのかを説明します。

おおまかな流れはこうです。

  1. だいたいの相続財産を調査する
  2. 共同相続人で方針を合意する
  3. 家裁に出す書類を準備する
  4. 家裁に申立て(限定承認の申述)をする
  5. 受理審判が出される
  6. 官報公告をする
  7. 財産の管理と弁済のための換価競売をする
  8. 場合によっては財産の鑑定手続を進める
  9. 債権者等への弁済をする
  10. 余ったら相続する

ステップごとにもう少しだけ詳しく説明しておきます。

相続財産の調査

限定承認というのは「相続した財産を限度に負債を支払う」手続きなので,相続財産がどうなっているのかをまずもって調査します。そもそも極めて少額しか相続債務がないのであれば,わざわざお金をかけて限定承認の手続きをしなくても,単純承認をすればよいです。また,是非とも処分せずに相続したい財産があって限定承認を希望しているとしても,その財産があまりに高額なら,支払わないといけない債務もその分増えますから,現実的に相続債務の支払いが可能なのかどうか検討しておく必要もあります。つまり,そもそも限定承認をするのが妥当かつ可能なのかどうか見通しをつけるために,あらかじめある程度の相続財産調査をしておくべきです。

共同相続人間で合意

財産調査の結果限定承認をしたいと希望されたら,そのことを共同相続人の全員に伝えて,共同で申立てしてもらえるよう協力を依頼しないといけません。先述のとおり相続放棄をする人がいても構いませんが,単純承認を希望する人がいると限定承認はできません。特に気をつけないといけないのは,他の共同相続人のうちの一人に,法定単純承認に該当する事実がないか,また今後該当するおそれはないかということです。もしあなたが限定承認を主導している場合,他の相続人が相続財産にいっさいタッチしないよう伝えておく(お願いする)必要があります。

(法定単純承認)
民法921条  次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二  相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三  相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

申述書と財産目録の作成と準備

財産をある程度調査し,共同相続人で共同申立てする合意ができたら,具体的な準備に入ります。限定承認の申請,申立て,申述は,家庭裁判所に申述書という書類を提出して行わないといけません。家庭裁判所の場所は,被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法915条  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2  相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

(限定承認の方式)
同924条  相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。

家事事件手続法201条5項
限定承認及びその取消し並びに相続の放棄及びその取消しの申述は、次に掲げる事項を記載した申述書を家庭裁判所に提出してしなければならない。
一  当事者及び法定代理人
二  限定承認若しくはその取消し又は相続の放棄若しくはその取消しをする旨

家庭裁判所へ限定承認の申述

申述書等の書類ができたら前述の家裁に書類を提出します。提出自体は窓口に持参しても郵送してもどちらでもよいです。必要な書類等はだいたい次のとおりです。

  • 限定承認申述書
  • 財産目録
  • その他の添付書類
  • 収入印紙800円分
  • 予納郵券(郵便切手)

申述書と財産目録の見本は以下のとおりです。必要に応じて別途書式を作成して裁判所に提出します。

限定承認のやり方1

限定承認のやり方2

限定承認のやり方3

添付書類として次のような戸籍謄本等を収集して提出します。戸籍謄本等のほかに,追って裁判所から指示のあった文書を提出します。

【共通】
1. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
2. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
3. 申述人全員の戸籍謄本
4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【申述人が,被相続人の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合】
5. 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人祖母の場合,父母と祖父))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【申述人が,被相続人の配偶者のみの場合,又は被相続人の(配偶者と)兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合】
5. 被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
6. 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
7. 被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
8. 代襲者としてのおいめいで死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

収入印紙800円は裁判所の手数料です。本日現在法律で800円と決まっています。その他,裁判所が,裁判手続に関する書類を当事者等に郵送する切手をこちらで前もって納めておきます。これを予納郵券といいます。予納郵券の金額と組み合わせは裁判所によって違うので今回申立てをする管轄裁判所に事前確認します。

家裁による申述受理審判と相続財産管理人の選任

書類が裁判所に着いたら,家庭裁判所の裁判所書記官等が書類をチェックして,不足があれば申述人に追完を依頼します。通常,裁判所が書類に不備がないことを確認した後,申述人に,確認書や照会書の類を送ってきます。大事な手続きなので,本当に限定承認の手続きをやっていく意思はあるのかということや,手続きに理解があるのかということを改めて確認するためです。確認書や紹介書といった書類を家庭裁判所に返送し,問題がなければ,裁判所が限定承認の申述を受理する審判をします。受理審判とは,裁判所による,「限定承認の手続きを開始していいですよ」という決定です。

なお,申述人である相続人が1名しかいないときは,その相続人が単独で責任をもって手続きを進めていきますが,相続人が複数いる共同相続のケースにおいては,裁判所は,そのうち1名の代表者を選びます。この手続きを進行する代表者のことを「相続財産管理人」といいます。この相続財産管理人選任の審判は,限定承認の申述受理審判と同時に行われます。相続財産管理人に誰を選ぶかということは最終的には家庭裁判所の専権ですが,申述人である共同相続人は,申述書類の中で,「この人を選んでほしい」という候補者の上申をすることができます。

(相続人が数人ある場合の相続財産の管理人)
民法936条  相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2  前項の相続財産の管理人は、相続人のために、これに代わって、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をする。
3  第九百二十六条から前条までの規定は、第一項の相続財産の管理人について準用する。この場合において、第九百二十七条第一項中「限定承認をした後五日以内」とあるのは、「その相続財産の管理人の選任があった後十日以内」と読み替えるものとする。

債権者等に対する官報公告

限定承認の申述が受理されたら,まず最初にすべきは,相続債権者等への官報公告による債権申出催告です。要は,「相続財産に対して債権をもっている人がいれば私に申し出てくださいね」というお知らせです。これから相続債務等を支払っていくので,権利がある人は言ってきてくださいね,という訳です。この公告は,5日以内にしなければなりません。ただし,相続財産管理人が選任されているときは10日以内にすればOKです。官報とは国の広報誌です。官報に公告を掲載する申込みは代理店を通じて行います。

例えば全国官報販売協同組合への依頼はこちら

例文)


限定承認公告

奈良県北葛城郡王寺町王寺●丁目●番●号、最後の住所奈良県北葛城郡王寺町王寺●丁目●番●号
被相続人 亡 司法 太郎
右被相続人は平成●年●月●日死亡し、その相続人は平成●年●月●日奈良家庭裁判所葛城支部にて限定承認をしたから、一切の相続債権者及び受遺者は、本公告掲載の翌日から二箇月以内に請求の申し出をして下さい。右期間内にお申し出がないときは弁済から除斥します。
奈良県北葛城郡王寺町王寺●丁目●番●号
相続財産管理人 司法 一郎
(又は 限定承認者 司法 一郎)


なお,相続人において把握している債権者には,これとは別に,個別に文書を送って催告しなければいけません。すべての債権者が官報を毎号チェックしているはずもなく,官報による催告はあくまで手続保障的な意味でするものなので,分かっている債権者には個別に催告するのが早く,確実で,親切だからです。この知れたる債権者への個別催告は通常内容証明郵便でします。

(相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告)
民法927条  限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
2  前項の規定による公告には、相続債権者及び受遺者がその期間内に申出をしないときは弁済から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者を除斥することができない。
3  限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者には、各別にその申出の催告をしなければならない。
4  第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。

相続財産の管理と換価手続き

申述人,限定承認者,相続財産管理人は,自分の財産と同じように相続財産を把握して管理します。そして,相続財産を売却処分しないと債権者へ弁済するキャッシュがないときは,裁判所の競売という公的な手続きを利用して適正価格で財産を換価しなければなりません。任意売却で不当に廉価に知人に売却する等の不正を回避し,相続債権者の利益を守るための措置です。

(限定承認者による管理)
民法926条  限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない。
2  第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項及び第二項並びに第九百十八条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。

(弁済のための相続財産の換価)
同932条  前三条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付さなければならない。ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。

相続財産の鑑定人の選任申立て

もっとも,今回冒頭で紹介する事例のように,特定の財産を手放さずに直接相続するために限定承認を利用するケースがあります。そのような場合は,売却せずに財産評価額を債権者に弁済して,換価競売を避けることができます。ただし,これまた申述の当事者が自分で値段を付けたり,私的に依頼して評価額を計算することはできません。あくまで裁判所に鑑定人を選んでもらって,裁判所の選んだ鑑定人が客観的な財産評価をし,その額を相続債権者に弁済していきます。これも相続債権者の利益を守るための法律上の決まりです。この仕組みのことを,相続人の先買権,優先権といいます。

なお,不動産等の鑑定評価額が当初考えていたより高くて,予定どおり弁済できないときは,やむなく競売により売却処分して代金の限りで弁済することになります。

(弁済のための相続財産の換価)
民法932条  前三条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付さなければならない。ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。

(相続債権者及び受遺者の換価手続への参加)
同933条  相続債権者及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売又は鑑定に参加することができる。この場合においては、第二百六十条第二項の規定を準用する。

相続債権者等への弁済

次のことが全部おわったら,いよいよ相続債権者等に債務の弁済をしていきます。

  • 官報公告による債権申出催告期間の満了
  • 弁済のための財産の換価競売手続
  • 財産の鑑定評価手続

まずは,官報公告による催告期間内に申出をした債権者等に弁済する

  1. 弁済金の計算の対象になる財産の額を合計します。
  2. 申出をしてきている債権者等の債権額を合計します。
  3. 財産>債権額であれば,債権者に全額弁済できます。
  4. 財産<債権額であれば,全額弁済はできないので,債権者の債権額の割合に応じて按分弁済します。大きな債権者には大きな金額を,小さな債権者には小さな金額を,金額に比例して弁済するということです。

(公告期間満了後の弁済)
民法929条  第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。

(期限前の債務等の弁済)
同930条  限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、前条の規定に従って弁済をしなければならない。
2  条件付きの債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済をしなければならない。

(受遺者に対する弁済)
同931条  限定承認者は、前二条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

以上の弁済をしても余ったお金はどうするか。残余財産,資産超過分の財産,プラスの財産はどう処理するか。

その他の債権者に弁済をする

以下のような条件を満たす債権者がいれば残余財産から弁済をする必要があります。

  1. 期間内に申出をしなかった
  2. 限定承認者も知らなかった
  3. 後から請求を受ける等で判明した

(公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者)
第九百三十五条  第九百二十七条第一項の期間内に同項の申出をしなかった相続債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかったものは、残余財産についてのみその権利を行使することができる。ただし、相続財産について特別担保を有する者は、この限りでない。

さらに余ったら相続人で分ける

最後に残った相続財産は,当然ですが,限定承認者である相続人が相続によって取得します。共同申立てをしているときは,共同相続人で遺産分割をして取得します。

 

お気軽に司法書士にご相談ください

以上,限定承認の手続きは複雑で,相手方債権者等もあることから失敗は許されません。以下のような方は,遺産相続を専門的に取り扱っている事務所に早めに相談してください。相続人において生前に準備しておくこもできます。

  • 親から相続した住宅を何としても守りたい。住み続けたい
  • 先祖の土地を手放したくない。自分の代で放り出したくない
  • 故人が生前商売をしていて後から借金が出てきたら怖い
  • 親族にこれ以上迷惑を掛けたくない。連絡や請求書が行ったり,相続放棄のお願いをするのがつらい
  • 限定相続,限定承認という言葉を聞いたことがあるか何のことか分からない
  • 限定相続,限定承認をしたいと司法書士や弁護士に相談したが断られた
  • 司法書士や弁護士に相談したが「ややこしくてお金がかかるのでやめておけ」と言われた
  • 法律相談で「あなたには限定承認はおすすめできない」「当てはまらない」「向かない」と言われた

なお,当事務所は限定承認の手続きに実績があります。ご相談は随時受け付けていますのでお気軽にどうぞ。

遺産相続が専門で得意分野とのことですが、どんな相談や依頼ができますか?

訴訟や裁判所関係の業務はやっていますか?相続放棄や成年後見の申立てはできますか?簡裁代理権の認定司法書士ですか?また,無料法律相談はやっていますか?

営業エリア・業務地域を教えてください。

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

無料メール相談はこちら。司法書士が2時間以内にお答えします!

 

相続放棄をする方はこちら

相続放棄を家庭裁判所に申述する場合とその方法

 

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