相続大全集

戸籍謄本や除籍や原戸籍を取り寄せて相続人の全員を確定し相続関係説明図を作成する

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相続で戸籍謄本を取り寄せる

戸籍謄本や除籍を集めないといけない理由

「相続の手続きをするために戸籍やら除籍やらたくさん集めないといけないって」

こういう話を聞いたことがあるはずです。そうです。遺産相続の手続きをするには,戸籍謄本除籍謄本原戸籍謄本といった戸籍類をたくさん集めないといけないのが普通です。なぜなのでしょうか。それは以下のような理由からです。

  • 相続手続きを申請した人が本当に被相続人の法定相続人だと証明するため
  • 相続手続きの書類にハンコを押した相続人のほかに法定相続人が一人も存在しないことを証明するため
    など

 

相続人の自己申告では通用しない

「いや何言ってるの,あの人の相続人は私と子供しかいないに決まってるじゃないですか」

いや,あなたはそう信じているかもしれませんが(真実そうなのかもしれませんが),それを書面で証明してもらわないといけないのです。相続手続きの申請を受け付けた役所や銀行は,被相続人やあなたのことを知らないのです。知っていたとしても,それは顔を知っていたり,ご本人がご本人であることを知っているのみであって,生い立ちや家族のことを全部知っているわけじゃないのです。仮に生い立ちを知っていたとしても,公的な書面で確実に証明しないと,相続手続きに応じることはできない。

これは仕方のないことです。例えば銀行預金の相続申請があって,銀行が申請してきた相続人に支払ったとします。配偶者と同居の子供2名が相続人になっていて,配偶者が全部相続するという書類が揃っていたとする。しかしその後,被相続人の子供を名乗る人が銀行に来てこう言ったらどうでしょう。「俺もあの人の子供なんだが。預金はどうした?俺も相続分があるんだが,まさか全額支払ってしまったんじゃないだろうな!」実は,被相続人には昔々に他に子供を作った歴史があって,その子が銀行に言い寄ったらどうなるでしょう。銀行は,合理的な理由なく,その子の相続権を侵害したことになります。

こういうことが,可能性としてはあり得ます。被相続人の昔の戸籍をたどっていくと,最新の戸籍には表れていない子供の存在が分かることがある。日本の戸籍は,そういう仕組みになっているんです。つまり,最新の戸籍だけ見れば,その人の相続人が全部明らかになるわけじゃない。昔の戸籍を集めてみないと,他に子供がいないことすら,確実には証明することができない。

  • なので,昔の戸籍も全部集めて,相続の相手方に「相続人はこれだけだよ」と証明しないといけない。
  • 面識のあるお客さんだからと言って,自己申告では通らないのです。私が責任を取ると言ってもダメ。
  • だって,その人は文句を言わなくても,万一存在するやもしれない他の相続人が文句を言うかもしれないですから。

と,このような実質的理由から,「戸籍等が全部必要だよ」という具体に,例えば不動産の名義変更に必要な書類は法律等で決まっているし,銀行等とて同じような取扱いをします。重要財産の相続手続きをする場合はすべからく同様の書類を求められます。「真実の相続人」の法定相続分を相続する権利を万が一にも奪ってしまってはまずいからです。

 

相続手続で戸籍が必要になる場面

重要財産の相続手続きのほか,以下のような手続きで,「たくさんの戸籍謄本等」が必要になります。

家庭裁判所への自筆証書遺言の検認手続き

家事事件手続規則37条
家事審判の申立書には、申立ての趣旨及び申立ての理由(申立てを特定する
のに必要な事実をいう。次項において同じ。)を記載するほか、事件の実情を記載しなけ
ればならない。
2 申立ての理由及び事件の実情についての証拠書類があるときは、その写しを家事審判
の申立書に添付しなければならない。
3 家庭裁判所は、家事審判の申立てをした者又はしようとする者に対し、家事審判の申
立書及び前項の証拠書類の写しのほか、当該申立てに係る身分関係についての資料その他
家事審判の手続の円滑な進行を図るために必要な資料の提出を求めることができる。

 

裁判所WEB>裁判手続の案内>家事事件>遺言書の検認>5.申立てに必要な書類>(2)標準的な添付書類

【共通】
1. 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
2. 相続人全員の戸籍謄本
3. 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【相続人が遺言者の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合】
4. 遺言者の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母と祖父))で死亡している方がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【相続人が不存在の場合,遺言者の配偶者のみの場合,又は遺言者の(配偶者と)の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合】
4. 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
5. 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
6. 遺言者の兄弟姉妹に死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
7. 代襲者としてのおいめいに死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

家庭裁判所への相続放棄等の申述

家事事件手続規則37条
本文は前記のとおり。

 

裁判所WEB>裁判手続の案内>家事事件>相続の放棄の申述>6.申述に必要な書類>(2)標準的な申立添付書類

【共通】
1. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
2. 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
【申述人が,被相続人の配偶者の場合】
3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合】
3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
4. 申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【申述人が,被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】
3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
5. 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【申述人が,被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】
3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
5. 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
6. 申述人が代襲相続人(おい,めい)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

法務局での不動産の相続登記手続き(名義変更)

不動産登記法61条
権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。

 

不動産登記令7条1項5号
権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる情報
イ 法第六十二条 の規定により登記を申請するときは、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)
ロ 登記原因を証する情報。ただし、次の(1)又は(2)に掲げる場合にあっては当該(1)又は(2)に定めるものに限るものとし、別表の登記欄に掲げる登記を申請する場合(次の(1)又は(2)に掲げる場合を除く。)にあっては同表の添付情報欄に規定するところによる。
(1) 法第六十三条第一項 に規定する確定判決による登記を申請するとき 執行力のある確定判決の判決書の正本(執行力のある確定判決と同一の効力を有するものの正本を含む。以下同じ。)
(2) 法第百八条 に規定する仮登記を命ずる処分があり、法第百七条第一項 の規定による仮登記を申請するとき 当該仮登記を命ずる処分の決定書の正本
ハは略

銀行等での預貯金の相続による解約と払出し

例えば三井住友銀行(SMBC)の相続手続を例にあげます。

お困りの際は > 相続に関するご質問 > 相続の手続を行う際に必要となる書類は何ですか?

「相続に関する依頼書」(当行所定の書類)にすべての相続人さまが署名・捺印(実印)いただき、ご相続の対象となる預金取引の通帳・証書・キャッシュカード、貸金庫取引の鍵・利用カード等とともにご提出いただきます。
ご提出の際には、以下の戸籍謄本等をご準備ください。
●お亡くなりになったお客さまの戸籍謄本(原本)
発行より1年以内のもので、お生まれになった時から亡くなられた時までの連続した戸籍謄本をご準備ください。
●すべての相続人さまの戸籍抄本または戸籍謄本(原本)
発行より1年以内のもので、お亡くなりになった方との関係がわかる戸籍抄本または戸籍謄本をご準備ください。
(お亡くなりになった方の戸籍謄本で確認できる場合は不要です。)
●すべての相続人さまの印鑑登録証明書(原本)
発行より6ヵ月以内のものをご準備ください。
なお、ご提出いただいた戸籍謄本で相続人さまの範囲が確認できないなどの理由により、追加で書類の用意をお願いする場合があります。あらかじめご承知おきください。
遺産分割協議書がある場合は、あわせてご提出ください。また、遺言書がある場合は、事前にご相談ください
くわしくはお手続を依頼される窓口までお問い合わせください。

証券会社等での証券口座の相続処理

野村証券の相続手続を例にひきます。

野村証券>お客様サポート>お手続き>その他>相続発生後の手続き>必要な書類>遺産分割協議書がありますか?>はい

1.お客様(被相続人)のお亡くなりが確認できる戸籍謄本(除籍謄本(注1))
2.相続人全員を確認できる戸籍謄本
3.遺産分割協議書の写し
4.相続人全員の印鑑登録証明書
5.野村證券所定の相続手続き書類

税務署への相続税の申告

相続税法27条4項
前三項の規定により申告書を提出する場合には、当該申告書に被相続人の死亡の時における財産及び債務、当該被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者がこれらの事由により取得した財産又は承継した債務の各人ごとの明細その他財務省令で定める事項を記載した明細書その他財務省令で定める書類を添付しなければならない。

 

相続税法施行規則16条3項
法第二十七条第四項 に規定する財務省令で定める書類は、次に掲げる書類(第二十九条第五項の規定により第一号に掲げる書類を提出している場合には、同号に掲げる書類を除く。)とする。
一  相続の開始の日から十日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本で被相続人の全ての相続人を明らかにするもの
二  被相続人に係る相続時精算課税適用者がある場合には、相続の開始の日以後に作成された当該被相続人の戸籍の附票の写し

など

 

相続手続きで必要となる戸籍とはどんな戸籍か?

では,その相続手続きに必要な戸籍等とはどんなものでしょうか。簡単にいうと次のような戸籍等です。

  • 亡くなった被相続人が生まれてから死亡するまですべての経歴が間断なくつながって記載されている全部の戸籍謄本等(と,住所証明書)
  • 相続する権利のある法定相続人の全員分の現在の戸籍謄本(と,住所証明書)

要は,

  • 被相続人は,生まれてから死ぬまで全部の,
  • 相続人についてはいま最新の,

戸籍謄本等が必要です。これが相続手続きで必要になる戸籍等です。

 

戸籍にはいろんな種類がある?

謄本と抄本

「戸籍謄本?抄本?」「それって何?」という疑問を持っている方もいらしゃるので説明します。

まず,戸籍の原本(戸籍簿,コンピュター化されているときは戸籍記録)自体は,当然ですが市町村役場にあります。その内容をプリントして,写しとしてもらえるのが謄本や抄本です。謄本と抄本はどちらも市町村役場にある戸籍の原本の写しです。

謄本とはその内容の全部の写しのこと。抄本とはその内容の一部の写しのこと。具体的には,戸籍に記載された人のうち特定の人の記載された部分のみ切り出して写したのが抄本です。コンピュータ化されている戸籍の場合は,戸籍謄本は戸籍の「全部事項証明書」といい,戸籍抄本は戸籍の「個人事項証明書」といいます。相続手続きで使う場合は,すべての戸籍について「謄本」を取得します。

戸籍(謄本)

現に効力があって,生きている現役の戸籍のことをいいます。一般的に,戸籍謄本が必要と言われて取得するのはこの現に効力を有する戸籍謄本のことです。戸籍の中に人が残っている限りその戸籍は消えません。

除籍(謄本)

本籍地を移して転籍したり,戸籍の中の人が全員いなくなったら,その戸籍は除籍と呼ばれます。除かれた戸籍です。転籍をしたら新しい戸籍が作られて,前のものは除籍になります。全員がいなくなったら新しいものは作られずに,戸籍が除籍に変わります。除籍は除かれた戸籍です。除かれたといっても,すぐに破棄されるわけではありません。法律で決まっている期間役場に保管されます。しかしその戸籍は現役の戸籍ではありませんので,これを除籍と呼んで,戸籍とは区別しているのです。

改製原戸籍(謄本)

法律の改正によって戸籍が作り変えられることがあります。戸籍に記載する人や戸籍に記載する内容が法改正によって変更になると,前の戸籍を新しい法律に適応させるために,戸籍が一新されることがあるのです。戸籍のモデルチェンジ,模様替え,書式・様式の作り変えが,戸籍の改製です。戸籍が改製されて新しい戸籍ができると,古い戸籍の記載事項のうち必要なものだけが新しい戸籍に転記されます。古い戸籍は現行戸籍ではなくなるので,原戸籍(げんこせき・はらこせき)として別途保管されます。これが改製原戸籍です。直近では,戸籍のコンピュータ化によるB5縦書きからA4横書きへの改製がありました。

 

いまの戸籍はどんな仕組みで出来上がっているか(書式やフォーマット)

さて,これから戸籍謄本等を収集するには,そもそも戸籍がどういう仕組みでできあがっているのかということ,戸籍そのもののことを知る必要があります。戸籍の編製の基本です。また,戸籍を集める途中にびっくりしないように,戸籍の仕組みが過去に何回も変わっているという事実を知っておきましょう。すぐ前に原戸籍のところで説明しました。法改正があると戸籍は一新されるのです。戸籍に記載される事柄や,戸籍の書式・様式が変わることがある,という事実を知っておくことが大事です。

戸籍の編製(どういう単位で作られているか)

現行法において戸籍は,氏(姓)が同じの核家族ごとに作られます。親子の単位の核家族です。祖父母は同じ戸籍に入りません。孫は同じ戸籍に入りません。また,結婚している兄弟姉妹は同じ戸籍に入りません。子供であっても氏が違えば同じ戸籍には居られません。氏が同じの親子を一つの単位として戸籍は作られます。

戸籍法6条
戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。ただし、日本人でない者(以下「外国人」という。)と婚姻をした者又は配偶者がない者について新たに戸籍を編製するときは、その者及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。

戸籍の記載事項(何が書いてあるか)

氏が同じの親子単位で作られる戸籍には,次のようなことが書いてあります。逆に言うと,これらのこと以外は書いてありません。いまそこにある戸籍を見て分かるのはこれらのことだけです。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 入籍年月日と理由
  • 入籍前の戸籍の表示
  • 父母(養父母含む)の氏名と関係性(続柄)
  • 夫婦の関係性
    その他

戸籍法13条
戸籍には、本籍の外、戸籍内の各人について、左の事項を記載しなければならない。
一  氏名
二  出生の年月日
三  戸籍に入つた原因及び年月日
四  実父母の氏名及び実父母との続柄
五  養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
六  夫婦については、夫又は妻である旨
七  他の戸籍から入つた者については、その戸籍の表示
八  その他法務省令で定める事項

戸籍法施行規則30条
戸籍法第十三条第八号 の事項は、次に掲げるものとする。
一  戸籍法第十三条第一号 から第七号 までに掲げる事項のほか、身分に関する事項
二  届出又は申請の受附の年月日並びに事件の本人でない者が届出又は申請をした場合には、届出人又は申請人の資格及び氏名(父又は母が届出人又は申請人であるときは、氏名を除く。)
三  報告の受附の年月日及び報告者の職名
四  請求、嘱託又は証書若しくは航海日誌の謄本の受附の年月日
五  他の市町村長又は官庁からその受理した届書、申請書その他の書類の送付を受けた場合には、その受附の年月日及びその書類を受理した者の職名
六  戸籍の記載を命ずる裁判確定の年月日

新しい戸籍が作られるケース

次に,「戸籍が新しく作られるケース」について確認しておきます。相続手続をするには,亡くなった被相続人が死亡した記載のある戸籍からさかのぼって,その出生に至るまで,間断なくつながったすべての戸籍が必要です。一つの戸籍にそのすべてが記載されていればこのような話をする必要はありません。つまり,被相続人の人生が記載された戸籍がいくつもの戸籍にまたがっているから戸籍の収集が大変になるのです。ということであれば,戸籍が新しく作られるケースついて知っておかねばなりません。もちろん戸籍が新しく作られなくても戸籍をまたがることはあります。ある戸籍から出て,ある戸籍に入籍するケースです(それはそれで全部必要)。しかし,高齢の方が亡くなる一般的な相続では,通常,その人が生まれてから亡くなるまでにいくつかの戸籍が新しく作られています。これを全部追っかけて集めていく際,どういう理由で新しい戸籍が作られるかについて知識があると分かりやすいです。

いまの法律では,,,

「転籍」すると新しい戸籍が作られる

後で説明しますが,戸籍は本籍地の市町村役場で管理されるので,他の市町村の管内に本籍地を移転(転籍)すると,転籍前の戸籍は除籍になり,転籍後の本籍地の市町村役場に新しい戸籍が作られます。

「婚姻」すると新しい戸籍が作られる

戸籍は氏を同じくする核家族単位で作られると説明しました。子供が婚姻をすると新しい核家族ができるから,同じ戸籍にいることはできず,婚姻した夫婦で新しい戸籍を作ります。

「離婚」すると新しい戸籍が作られる場合がある

離婚をすると原則として復氏します。復氏したら親の戸籍に戻るので新しい戸籍は作られません。しかし婚姻の際に使っていた氏を使い続ける届出をすることもできます。その場合親とは氏が異なりますから,親の戸籍には戻れません。なので新しい戸籍が作られます。

「分籍」すると新しい戸籍が作られる

自分で意思で戸籍を分けて別の戸籍を作る分籍という手続きが認められています。分籍をすると当然ながら前の戸籍から除籍され,新しい戸籍が作られます。
「改製」があると新しい戸籍が作られる
先に説明したとおり,法改正によって戸籍の様式や書式が一新されると前の戸籍は改製原戸籍になります。そして法改正後の様式を適用した新しい戸籍が作られます。

「国籍取得」すると新しい戸籍が作られる

外国人が帰化をして日本国籍を取得したら市町村役場に届出をします。そうすると,その市町村役場にて,新しく日本人としての戸籍が作られます。

「就籍」すると新しい戸籍が作られる

日本人にもかかわらず戸籍に記載がない人がいます。そのような人が家庭裁判所の許可や判決を得て戸籍に就くことを就籍といいます。就籍をする際,入籍すべき戸籍がないときは,新しい戸籍を作ります。なので,就籍によっても新しい戸籍が作られることがあります。

そして昔の法律では,,,

「分家」すると新しい戸籍が作られた

戦前の日本には家制度があって家と戸籍は一体化していました。戸主(家長)に一家の権利と義務が集中していたのですが,その戸主の同意があれば,家から離脱して,新しい一家を創立することができました。もとの家を本家と呼び,新しい家を分家と呼びます。分家によって新しい家が作られ,新しい戸籍が作られました。

「家督相続」すると新しい戸籍が作られた

戦前,家の権利義務はほとんど戸主に集中していました。戸主・家長の権利義務をまとめて次世代に承継する制度が家督相続です。戦前の相続といえば,一般的には家督相続を指します。家督相続があると,新しい戸主のもと,連綿とつづくその家の新しい戸籍が作られました。

「一家創立」すると新しい戸籍が作られた

分家以外の理由によって新たに戸籍が作られる場合,これを一家創立と呼びました。家に属さない人がいる場合,その人を戸主として新しい家を作り出したのです。一家創立は新しい戸籍が作られる原因となります。

「廃絶家再興」すると新しい戸籍が作られた

廃家とか絶家により家が途絶えると戸籍にいた人は本家に戻ったり一家創立をして新しい戸籍を作ったりしました。が,一定の要件を満たした場合その廃絶家を復活させて再興することが許されました。これを廃絶家再興といいます。廃絶家再興があると新しい戸籍が作られました。

戸籍の変遷(改製)について

ちなみに,日本の戸籍制度(明治維新以降の「法律」にもとづく戸籍)の変遷を列挙しておきます。もうお分かりだと思いますが,戸籍の変遷は,戸籍の書式・様式の変遷です。つまり,以下のとおり戸籍が改製されて,都度,改製原戸籍が生じ,新しい戸籍が作られているんです。被相続人の出生までの戸籍が,改製前と改製後にまたがっているときは,両方の戸籍を揃える必要があります(戸籍保存期間経過のものを除く)。例えば不動産の所有名義が,何代も前の先祖の名義のまま放ってある場合,すべての戸籍を集めるのが大変そうだと想像できるでしょう。

コンピュータ化による現行戸籍(最新様式の戸籍)

現在の戸籍法による最新の戸籍です。先述のとおり,夫婦と,これを氏を同じくする子供の核家族単位で作られている戸籍です。コンピュータ化されている戸籍の戸籍謄本はA4の横書きで交付されます。市町村によって,コンピュータ化されているところとされていないところがあり,コンピュータ化されている市町村の,コンピュータ化前の紙の戸籍は原戸籍になります。なお,コンピュータ化されている戸籍もされていない戸籍も現行の戸籍法による戸籍なので,基本的に記載内容は同じですが,コンピュータ化による紙の戸籍からのデータ移記に際し,すでに除籍されている者(筆頭者以外の)を省略することができるので,例えば紙の戸籍の時代に婚姻をして出て行った子供の記載はコンピュータ化された戸籍謄本には出てきません。
(平成6年法律第67号「戸籍法及び住民基本台帳法の一部を改正する法律」)

改製に関する戸籍の記載例
  • 新戸籍
    【改製日】平成○年○月○日
    【改製事由】平成6年法務省令第51号附則第2条第1項による改製
  • 旧戸籍(原戸籍)
    平成6年法務省令第51号附則第2条第1項による改製につき平成○年○月○日削除㊞

コンピュータ化された戸籍謄本・全部事項証明書

コンピュータ化していない現行戸籍(戦後の戸籍)

上記のとおり,戸籍がコンピュータ化されているときは原戸籍となりますが,コンピュータ化されていないときは,この紙の戸籍が最新の戸籍となります。いわゆる戦後の,新憲法,新民法下における戸籍であって,戦前のものとはその内容が一変しています。戦前の家制度は廃止され,あらゆるものが新しくなりました。戸籍に記載される人は,家の概念にもとづくのではなくて,より戦後の国民の日常生活の実態に近い,親子の核家族単位に改められました。この戸籍は,昭和22年の新民法,新戸籍法にもとづいてすぐに実施されるべきものでしたが,戦後の混乱により全国の市町村で直ちに実施することができず,しばらく旧戸籍はそのままで,これを新戸籍とみなして運用されていました。最終的には,昭和32年の法務省令にもとづいて,昭和41年までにこの新戸籍(戦後の戸籍)への転換が完了しています。
(昭和22年法律第222号「民法」,同224号「戸籍法」,同年司法省令第94号「戸籍法施行細則」)

戸籍記載例
  • 新戸籍
    昭和32年法務省令第27号により昭和○年○月○日改製につき○年○月○日本戸籍編製㊞
  • 旧戸籍(原戸籍)
    昭和32年法務省令第27号により昭和○年○月○日新たに戸籍を編製したため本戸籍削除㊞

 

  • 新戸籍
    昭和32年法務省令27号により改製昭和○年○月○日同所同番地○戸籍から本戸籍編製㊞
  • 旧戸籍(原戸籍)
    昭和32年法務省令27号により昭和○年○月○日本戸籍改製㊞

紙の戸籍謄本

大正4年式戸籍(住民登録との分離)

明治中期以降の産業構造の変化と都市部への人口流入に対応するためにできた戸籍です。その前の世代の戸籍は,「身分」に関することと,「住所」に関することを両方戸籍で管理しようとしていましたが,無理が生じたのでこれを改め,以下のようにして対応しました。

  • 住所に関すること=寄留法にもとづく寄留簿で管理することにし,戸籍から分離
  • 身分に関すること=より詳しくするように,内容を充実

なお,この大正4年式戸籍も実務上すぐには全国適用できず,その前の明治31年戸籍もそのまま有効とされたので,結局この大正4年式戸籍を経ずに(適用しないまま),明治31年式戸籍から直接戦後の戸籍に改製されたものもままあります。
(大正3年法律第26号「戸籍法」,同年司法省令第7号「戸籍法施行細則」)

戸籍記載例
  • 新戸籍
    司法大臣ノ命二依リ昭和○年○月○日本戸籍ヲ改製ス㊞
  • 旧戸籍(原戸籍)
    昭和○年○月○日改製二付本戸籍ヲ抹消ス㊞

明治31年式戸籍(民法制定による戸籍)

日本の民法は,紆余曲折を経て,明治維新から30年経過した明治31年にようやく成立しました。同年にこれによる戸籍法も制定され,戸籍が新しくなりました。それが明治31年式戸籍です。その日本最初の民法には身分関係について詳細な規定がおかれ,身分関係の変動が,戸籍と強く結び付けられることになりました。つまり国が管理する戸籍簿への登録記載が身分関係の発生変更消滅と直接リンクしたわけです。家制度が法制度として法律に書き込まれたのもこのときです。明治31年式戸籍によって,戸籍は,人の身分関係を公証する国家制度としての地位を確立します。
(明治31年法律第9号「民法」,同12号「戸籍法」)

戸籍記載例
  • 新戸籍
    明治○年○月○日司法大臣ノ許可ヲ得テ改製㊞
  • 旧戸籍(原戸籍)
    明治○年○月○日許可を得テ改製㊞
    明治○年○月○日司法大臣ノ訓令二因ル○月○日改製戸籍二付除籍㊞

明治19年式戸籍(明治5年式戸籍をヴァージョンアップ)

その前の明治5年式戸籍を充実させるための戸籍です。6年に1回国民に届出をさせて戸籍を編製する仕組みから,随時国民に届出義務を課して戸籍を現実に合わせる仕組みに変更されました。戸籍は,ある時期の国勢調査的な位置づけから,より動的に,現状に即して国民を把握できる制度になりました。一遍に適用できなかったのはこれも同じで,この戸籍への改製を中抜きして一気に明治31年式に改製された戸籍もあります。
(明治19年内務省令第22号「戸籍取扱手続」,同年内務省訓令第20号「戸籍登記書式等」)

戸籍記載例
  • 新戸籍
    明治○年○月○日許可ヲ得て改製㊞
  • 旧戸籍(原戸籍)
    明治○年○月○日許可を得テ改製㊞
    明治○年○月○日司法大臣ノ訓令二因ル○月○日改製戸籍二付除籍㊞

明治5年式戸籍(壬申(じんしん)戸籍。日本最初の近代的戸籍)

明治維新以降,日本で最初に作られた全国統一の身分登録制度が明治5年式戸籍です。明治5年の干支から,別名を壬申戸籍とも呼びます。それまで藩や県などで独自に人民を登録して管理していたものを,中央集権を目指す明治政府が全国統一の制度に改めました。なお,この明治5年式の壬申戸籍には人権侵害になるような記載が残っている場合があるため非公開になっています。もっとも,歴史的資料,学術資料,文化的資料としての価値が高いという理由で原本は各地の法務局に厳重に保管されています。
(明治4年太政官布告第170号「戸籍法三三則」)

戸籍記載例
  • 旧戸籍(原戸籍)
    明治○年○月○日許可ヲ得テ改製㊞

市役所で戸籍謄本を取り寄せ

 

戸籍を取り寄せる具体的な手順(戸籍謄本の取り方・集め方・収集方法)

前置きというか,戸籍制度の説明がかなり長くなってしまいましたが,ここからは現実的な話です。遺産相続の手続をするために,じっさいに戸籍謄本等を収集するためのポイントをお知らせします。もちろん細かいところまで全部説明することはできませんのでポイントだけです。しかし単純な相続であればこれだけで戸籍を全部そろえられると思います。

戸籍は市町村役場の単位で管理している

まずもって押さえておくのは,戸籍は本籍地の市町村役場が管理しているということです。政令指定都市の場合は区です。市町村役場以外のところに行って戸籍謄本等を請求しても出てきませんので注意してください。戸籍謄本は市町村役場の戸籍担当に請求すること。

戸籍は筆頭者(戸主)の本籍地と氏名で特定する

戸籍は,筆頭者のところに記載された人の本籍地と氏名で特定します。市町村役場でも,筆頭者の本籍と氏名で寄せられ管理されています。なので,戸籍謄本を請求する際は,本籍地と筆頭者の氏名を記載して請求することになり,またそうしないとその戸籍謄本を取得することができません。戸籍謄本は重要書類なので,だいたいの場所を本籍地として役場に伝えても出してくれません。ちゃんと番地まで特定して本籍地を伝え(請求書に記載し)ないと戸籍謄本は出てきません。間違って別の人のを出しては大変だからです。

戸籍法9条
戸籍は、その筆頭に記載した者の氏名及び本籍でこれを表示する。その者が戸籍から除かれた後も、同様である。

最後の本籍地を知る

ということで,亡くなった被相続人の最後の本籍地が分からないと戸籍謄本等を請求することができません。では,本籍地はどうやったら分かるでしょうか。配偶者が請求する場合は,最後の戸籍は同じ戸籍なので,相手方は自分の本籍地と同じ本籍地を請求書に記載して戸籍謄本等をとることができます。しかし,子供などが請求する場合で,親などが引越しによって転籍をして本籍地を変更している可能性がある等の場合,本籍地がはっきりしないケースもあります。兄弟や叔父叔母の相続なら,本籍地が分からないことはよくあるでしょう。

そういうときは,被相続人の住民票を取ります。本籍地入りの住民票です。最後の住所なら分かることが多いはずです。なので,最後の住所地の市町村役場で,被相続人の本籍地入りの住民票を取得するのです。そうすると本籍地が分かります。本籍地が分かれば,これによって戸籍謄本を請求することができます。

もっとも,法定相続人が相続手続をする場合,自分の戸籍からたどっていけば必ず被相続人の戸籍にたどりつきます(一定の身分関係にあるからこそ法定相続人となるから)。時間がかかってもいいなら,その方法で戸籍を揃えていっても大丈夫です。

住民基本台帳法7条
住民票には、次に掲げる事項について記載(前条第三項の規定により磁気ディスクをもつて調製する住民票にあつては、記録。以下同じ。)をする。
一  氏名
二  出生の年月日
三  男女の別
四  世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄
五  戸籍の表示。ただし、本籍のない者及び本籍の明らかでない者については、その旨
六  住民となつた年月日
七  住所及び一の市町村の区域内において新たに住所を変更した者については、その住所を定めた年月日
八  新たに市町村の区域内に住所を定めた者については、その住所を定めた旨の届出の年月日(職権で住民票の記載をした者については、その年月日)及び従前の住所
以降略

最後の戸籍からさかのぼって集めていく

被相続人の戸籍謄本等は,出生から死亡までつながった全部が必要なのですが,集めていくのは死亡の事実の記載された最後の戸籍からです。最後の戸籍を取得して,本籍と氏名に続く戸籍の最初の欄(戸籍事項)のところを確認します。そこに,当該戸籍がどのように作られたかが書いてあります。

「転籍」と書いてある場合

このような場合は,他の市町村から本籍地を移して,当該市町村で戸籍が作られたことを表しています。なので,次にするべきは,以下のことです。

  1. 転籍前の本籍地の市町村役場で
  2. 転籍前の本籍地を記載して
  3. 「除籍謄本」を取る

「改製」と書いてある場合

法改正によって,前と同じ本籍地で,当該戸籍が作られたことを表しています。なので,次にするのは次のことです。

  1. 同じ市町村役場で
  2. 同じ本籍地を記載して
  3. 「改製原戸籍」を取る

「編製」と書いてある場合

婚姻や離婚等によって,当該戸籍が作られたことを表しています。このような場合,新しい戸籍を作る際に,本籍地を移していたり,いなかったりします。戸籍の記載をよく読めばその別が書いてあります。

本籍地を移している場合
  1. 元の本籍地の市町村役場で
  2. 元の本籍地と筆頭者を記載して
  3. 「戸籍謄本等」を取る
本籍地を移していない場合
  1. 同じ市町村役場で
  2. 同じ本籍地と,元の筆頭者を記載して
  3. 「戸籍謄本等」を取る

「転籍」「改製」「編製」の年月日が,「被相続人の出生の年月日」の前の日付になるまで続ける

以上を繰り返して,被相続人が生まれたときまでの戸籍を間断なく揃えます。戸籍が作られた日付が,被相続人の生年月日の前の日になるということは,その戸籍が作られてから被相続人が生まれ,その戸籍に被相続人が出生により入籍したことを意味します。つまり,被相続人の出生時の戸籍は当該戸籍であり,生まれた時点まで戸籍が集まったことになるのです。

「全部出してくれ」とお願いする

しかしまあ,戸籍謄本等の請求方法がよく分からなければ,市町村役場の担当者に一度このように伝えてみてください。

「○○が死んだから相続の手続きをしている。この役場でとれる○○の戸籍を全部ください」

戸籍は,市町村役場が管理しています。本籍地がその市町村役場の管内にあるかぎり,その人の戸籍は全部その役場にあります。1件ずつ請求するのは大変面倒であり,請求書にどのように記載したらいいのか分からない人も多いはず。で,あれば,一度役場の戸籍担当職員に,そのようにお願いしてみてください。請求書の書き方を簡略化したり,書き方を分かりやすく教えてくれたり,またいっぺんに戸籍謄本等を出してきてくれたりするかもしれません。

 

戸籍だけでは足りない!住所の証明書も必要!!

さらに書類が必要

そうやって被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めるわけですが,実は相続の手続きをするには,戸籍謄本等(除籍,原戸籍)だけ集めたのでは足りません。まだ不足です。その他に,最低でも,以下のような書類が必要になります。

  • 亡くなった被相続人の住所証明書
  • 相続人全員の住所証明書
  • 相続人全員の印鑑証明書

住所証明書や印鑑証明書が必要になる理由

亡くなった被相続人の住所証明書

なぜこれが必要か。それは簡単です。一般的に社会で通用しているのは本籍地ではなくて住所です。住所と氏名で人を特定します。そして,相続財産の持ち主だって,住所と氏名で管理されているのです。例えば不動産の所有名義。不動産の所有名義を確認するには不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を取ります。登記簿の甲区所有者欄を見ると,不動産の所有者(被相続人)の住所氏名が登記されています。そうです,不動産の所有者については住所氏名が登記されるのであって,本籍地が登記されるわけではありません(現行法)。だとすると,せっせと集めた戸籍謄本等と不動産の登記名義人の照合ができません。戸籍謄本等に書いてあるのは本籍地と氏名なので,これに住所は出てこないからです。

これがどのように困るか。それは要するに,不動産の相続手続きをしようにも,戸籍謄本等を見ただけでは,亡くなった被相続人が本当にその不動産の所有者かどうか分からないので,相続申請をして名義変更をしようにも受け付けられない理屈になるのです。当然です。被相続人が不動産の所有者かどうか分からないと,相続人もその登記された不動産に相続権を持っている相続人かどうか分からず,分からない人からの申請を受け付けてその人名義に名義変更することなどできないからです。

なので,被相続人の本籍地入りの住所を証する書面が別途必要になります。そしてその住所を証する書面に記載された住所が,財産の所有者として登録された住所と合致していることが必要です。本籍地が入っていれば,この点をもって戸籍との関係性がつけられます。

相続人全員の住所証明書

相続人についても同じことです。今度相続手続をして,財産の所有者として登録されたり,相続人として財産の解約払戻しを受けるには,相続人の住所氏名がはっきりしないとできません。なので,相続人についても住所を証する書面が必要です。これには当然本籍地の記載が必要です。それがないと,現行の戸籍謄本との照合ができないので,同一人物かどうか分からないからです。

相続人全員の印鑑証明書

財産の遺産相続の申請書には相続人全員の印鑑証明書を添付する必要があります。その理由は,確かに相続人全員が手続き(書類への押印)に関与したことを証明するためです。戸籍謄本等及び住所証明書を集めてこれを提出しても,その書類に書き込んだ人が本当に相続人かどうか分かりません。少なくとも財産の管理をしている手続きの相手方機関としては誰が書いたか分からないでしょう。そこで,確実に相続人全員が手続きに関与したことを証するため,手続書類に押印した実印の印影と合致する市町村発行の印鑑証明書を提出するのです。

印鑑登録制度は自治体が管轄しており,印鑑証明書も地方自治体が発行します。なので,細かいことは,地方自治体の条例で決まっています。とはいえ,総務省(旧自治省)の指導のもと,ほとんど同じ条例が運用されています。まず,印鑑証明書は,本人しか請求することができず,本人しか集められない書類です(委任したりカードを預かれば取れるが)。で,印鑑証明書には,住所氏名が記載されているんです。そうすると,印鑑証明書の住所と,住所証明書の住所がまず合致するので同一人物が関与したと分かる。そして,住所証明書の本籍と,戸籍謄本の本籍地が合致するので,相続人が関与したと分かる。これによって,当該相続人関する法定相続人の全員が,確実に相続の手続きに関与し,申請書類の内容を合意(に同意)していると判断できるわけです。そのような理由で,相続人全員の印鑑証明書は相続手続に必須の書類となっています。

王寺町印鑑条例5条
町長は、印鑑の登録の申請があったときは、規則の定めるところにより、その申請が本人の行為であること及び本人の意思に基づくものであることを確認したのち印鑑登録票により登録する。
2 前項の印鑑登録票には、印影のほか当該登録申請者に係る次に掲げる事項を登録する。
(1) 登録番号
(2) 登録年月日
(3) 氏名(外国人住民(法第30条の45に規定する外国人住民をいう。以下同じ。)に係る住民票に通称(住民基本台帳法施行令(昭和42年政令第292号)第30条の26第1項に規定する通称をいう。以下同じ。)が記録されている場合にあっては、氏名及び通称)
(4) 出生年月日
(5) 男女の別
(6) 住所
(7) 外国人住民のうち非漢字圏の外国人住民が住民票の備考欄に記録されている氏名の片仮名表記又はその一部を組み合わせたもので表されている印鑑により登録を受ける場合にあっては、当該氏名の片仮名表記
3 前項各号に掲げる事項を登録した印鑑登録票については、磁気テープをもって調整することができる。

同13条
町長は、前条による申請を受理したときは、印鑑登録票に登録されている印影の写し(印鑑登録票に登録されている印影を光学画像読取装置により読み取って磁気テープに記録したものに係るプリンターからの打出しを含む。)に当該印影の写しに相違ない旨及び第5条第2項第3号から第7号までに掲げる事項を記載し、電子計算機からの出力により作成する。

住所証明書とは?

先ほどから住所証明書と呼んでいるものはさて何でしょう。住民票とは言わずに住所証明書と言っているのには理由があります。というのは,住所証明書は住民票だけではないからです。ほかに,「戸籍の附票」という書類があります。住民票と戸籍附票,それぞれ制度の概要を確認しておきます。

住民票

  • 根拠となる法律は住民基本台帳法です。住所の証明等のために必要な制度です。
  • 市町村が管理し,市町村は役場に住民基本台帳を作ります。
  • 住民基本台帳にもとづいて住民票を作ります。住民票は個人を単位として世帯ごとに作ります。
  • 本人等や,法律で認められている一定の範囲の人は,住民票の写しの交付を請求できます。いわゆる住民票を取ることができます。

戸籍の附票

  • 根拠となる法律は,同じく住民基本台帳法です。
  • 同じく市町村が管理します。
  • 市町村内に本籍地がある人につき,その戸籍を単位として戸籍の附票を作ります。
  • 本人等ほか,法で認められた権限ある他人が,戸籍の附票の写しの交付を請求できるのも住民票と同じです。

住民票と戸籍の附票の違いは何か

住民票は基本的に現在の住所を証明する書類なので,他の市町村から住所移転があった場合,従前住所は一つしか記載されません。対して戸籍附票は,戸籍のおまけのような存在として本籍地の市町村役場で管理され,住所移転がある都度,住民登録を受け付けた市町村役場から本籍地の市町村役場に通知があって,住所移転の経緯をすべて戸籍附票に書き連ねていきます。本籍地がかわらない限り,一つの役場で管理し続ける一つの戸籍附票に住所移転の経緯が書き込まれます。

つまりこの性質の違いによって,住民票と戸籍附票では,住所の変遷をどこまでたどれるかという点に大きな違いがあります。以下のような事例を考えてみます。

  • 住所移転の経緯
    A市からB市は住所移転した後,さらにC市に移転した。A→B→C→Dと,市町村役場をまたいで住所移転した。
  • 本籍地
    甲さんの本籍地は,古くからX市のまま変わっていない。
  • 相続する不動産の名義人として登記された住所氏名
    A市に住所があるときに購入したのでA市の甲さんで登記されている。その後住所移転の登記はしていない。

この物件の相続登記をする際必要となる住所証明

住民票でもって,この不動産が甲さんの所有だと証明するには,D市の住民票,C市の住民票及びB市の住民票を取る必要があります。他の市町村から住所移転があった場合,住民票には,前住所しか載ってきません。従前の住所として,他の市町村から移る直前の住所しか載ってこないのです。不動産はA市の住所で登記されているので,ここにたどり着くにはD市から追いかけて,C市の住民票をとり,そこに記載されたB市でのの住所を確認する。そしてB市で取得した住民票に記載されているA市の住所までたどって住所の変遷をつなげる。そういうことが必要になります。

しかし注意すべきは,住民票は,削除されてから5年しか保存期間(義務)がありません。仮にA市からB市への住所移転が10年前だとすると,B市で住民票除票を請求しても,役場に保存がないかもしれません(保存があればラッキー)。そうするとA市の住所までたどり着けないので,甲さんが不動産の所有者であることを証明することができず困ります(ただし対処法はあります)。

この点戸籍附票は違います。X市で一発戸籍附票を取れば,A市からD市までの住所の変遷が全部記載された戸籍附票1枚が出てきます。住所の証明書はこれ1枚でOKです。本籍地が変わっていなければ,戸籍附票は現役の戸籍附票なので,保存期間の心配をする必要もありません。最初からX市に戸籍附票を請求するだけでいいのです。こういう点で戸籍附票はとても便利で貴重な住所証明書です。

 

戸籍が揃ったら「相続関係説明図」を作成する

相続関係説明図とは?

いよいよ戸籍謄本等や住所証明書の収集が完了したらそれら一式をセットして,その表紙を飾る「相続関係説明図」を作成します。相続関係説明図とは,文字どおり,今回の相続に関する被相続人と相続人との身分関係,親族関係等を分かりやすく図示したものです。相続関係図,親族関係(説明)図,家系図,系譜など呼称はいろいろありますが,不動産登記では相続関係説明図と呼ぶのでそうします。不動産の相続登記をするには相続関係説明図を戸籍謄本等といっしょに法務局に提出します。家庭裁判所に各種の申立てをする際にも同様の書類の作成提出を求められます。相続関係説明図を作成する理由は次ようなものです。

  1. 先ほども述べたとおり,被相続人と相続人との関係を視覚的に明らかにするため
  2. 法務局,裁判所,銀行等,何らかの相続手続を申請する相手方が,提出された戸籍謄本等の写しを(それのみを)保管するには種々のコスト(コピーを取るのが大変だし,保管場所がいるし,戸籍謄本等の写しをそのまま保管すると何かあったときにパッと見て分からない)がかかるため,戸籍謄本一式と相続関係説明図を一緒に提出させ,内容を照合したのち,以降相続関係説明図のみを保管したり,相続関係説明図を一義的な確認資料として利用できるようにするため

相続関係説明図とはどんなものか,その具体例・見本

例えば不動産の相続登記をするときに法務局に提出する相続関係説明図の見本をお見せします。ここに表示された相続関係は,とても単純なのですっきりして分かりやすいです(相続関係が複雑になると説明図もややこしくなります)。相続関係説明図の書き方について,不動産登記法という法律に規定はありません。しかし法務省からいくつか手本が示されているので,実務においてはこれにしたがって作成し,適宜内容を充実させています(法務省の手本は必要最小限の内容であるため)。

昭和39年11月21日民事甲3749号通達による

相続登記の相続関係説明図

平成16年9月27日民二2649号依命通知による

相続登記の申請書に添付する相続関係説明図

相続関係説明図の作成方法・作り方

作り方についても絶対の決まりはありませんので,これを提出する相手方が求める内容を盛り込む(指定された書式で作成する)ことになります。なので,実務に詳しくない方が自分で作成する場合,何か見本を見てとりあえず作成し,不足があれば指示どおりに記載事項を追加することになるでしょう。なお,一般的には,次のようなことを書き込んで,関係を線でつないで体裁を整えてください。

タイトルを書く

タイトルは何でもいいんですが,このように書くと間違いはないです。

「被相続人 ○○○○ 相続関係説明図」

被相続人(死んだ人)について書くこと

被相続人に関する情報として,次のようなことを書いてください。

  • 最後の本籍地
  • 最後の住所地
  • 出生年月日
  • 死亡年月日
  • (被相続人)である旨
  • 氏名

法定相続人について書くこと

  • 住所地
  • 出生年月日
  • 被相続人との続柄
  • 当該財産の(相続人)である旨
  • 当該財産の相続人とならない人についてはその法的な理由
    相続人廃除によって相続人にならない場合=(廃除)
    相続放棄によって相続人にならない場合=(放棄)
    遺産分割によって相続人とならない場合=(分割)
    特別受益によって相続人とならない場合=(特別受益)
    など
  • 氏名

人と人とを線でつなぐ

  • 夫婦関係は,二重線でつなぐ
  • 離婚した夫婦は,二重線を引いてうえから×印(バッテン)をし,近くに離婚日を付記する
  • 親子関係は,両親をつないだ二重線の中心を起点として直角に単線(1本線)を引く
  • 兄弟関係は,親から引っ張った線を先ほどの見本のように分岐のツリー図で表現する

その他

ちなみに,不動産の相続登記(名義変更)のために法務局に提出する相続関係説明図には次のようなことも付加します。

  • 作成者の氏名と押印
    これは,相続関係説明図を作成した申請人(代理人司法書士)の名前です。
  • 末尾に,「相続を証する書面は還付した」と書く
    これは,法務局の登記官が書くべき文言を申請人(代理人司法書士)が代わりに書いてあげている文言です。法務局の登記官は,「還付した」の次に登記官の印鑑を押して,相続関係説明図だけを法務局に保管し,戸籍謄本等一式は申請人(代理人司法書士)に返却します。「このとおりの相続関係を証する戸籍謄本等が確かに提出され,登記官としても内容を確認したので,その内容を要約図示した相続関係説明図だけ法務局に保管しますよ」という文言です。

 

法務省の「相続情報証明制度」とはどんな制度か?「法定相続情報一覧図」とは何か?

戸籍謄本等の一式と住所証明書を収集し,相続関係説明図作成して,ワンセットにし,これで被相続人の相続関係書類は出来上がりました。これさえあれば,法務局への相続登記のほか,銀行等預貯金の解約と払戻しの手続きや,証券口座の相続申請も全部いけます。使えます。

さてそれはそうと,,仮に不動産がたくさんあって,複数の管轄の法務局に相続登記の申請をしなければいけないとします。また都市銀行から地方銀行にゆうちょまで,預貯金口座がたくさんあるとか,証券口座も複数運用している場合,それぞれの機関に提出する戸籍謄本等の相続関係書類は,何セットいるのか,,,

  • すべての機関や口座ごとに戸籍謄本等一式の原本を揃えたら手続きは早いかもしれませんが,費用がかかります。戸籍謄本や除籍謄本は結構高いので,複数揃えると相当な行政手数料がかかりおます。
  • 逆に,各機関が書類の完備をチェックしたら原本は還付されるはずなのだから,ワンセットだけ取得して使い回しでいいや,ということになると,今度は手続きを全部完了するのにかなりの長期間を要します。提出して見てもらって返してもらうまで,その他の機関に書類を提出することができないからです。

つまり,相続財産が多くて複数の宛先に相続関係書類を提出する必要があるケースにおいて,書類収集にコストがかかるか,相続手続に時間がかかるか,いずれにしても不都合な点が生じてしまう問題がありました。

このような問題を解決するために法務省が準備した制度が「相続情報証明制度」です。この制度,要は,1回だけ戸籍謄本等を全部揃えて法務局に提出して相続関係の証明書(「法定相続情報一覧図の写し」のこと)を出してもらうと,今度からその一覧図1枚で相続関係を証明できるので(一覧図は何枚でも発行できる),市町村役場で何通も同じ戸籍謄本等を取得することにより相続関係書類を何セットも用意しなくて済む,というものです。複数の機関を相手にして相続手続をする際,この法定相続情報一覧図を必要な数だけ発行してもらってそれぞれに提出すればいいのです。

これ,相続人が楽になるだけではなく,戸籍謄本等をチェックして審査する銀行や証券会社の負担減にもなります。なぜなら,戸籍謄本等をチェックしなくても,証明書1枚だけ確認すれば,法律のプロである法務省が相続関係はこのとおり間違いないと太鼓判を押してくれているのが分かるからです。これなら相続業務を担当する部署に法律知識が備わった従業員を多数配置しなくて済み,金融機関等はコスト減でかなり助かります。

法定相続情報一覧図を請求するには次のようにします。

◆戸籍謄本等一式を通常どおり1度集める

◆次の書類を法務局に提出して申請する

  1. 申出書(法定相続情報一覧図を発行してもらうための申請書のこと)
  2. 法定相続情報一覧図
  3. 取得した戸籍謄本等

簡単にいうと,いままでどおり作っていた「相続関係説明図」のタイトルを「法定相続情報一覧図」にかえて,申出書(一覧図の写しの請求書)と一緒にまとめて法務局に出すだけです。詳しいことは以下をご覧ください。

法定相続証明情報制度・法定相続情報一覧図の取り寄せ方

 

戸籍の収集や取得を司法書士等の専門家士業に依頼することも可能

以上,長々と説明してきましたが,やはりややこしいなと思われた方も多いのでは?そうです。戸籍謄本等の記載内容にはいろんなパターンがあり,全部を説明することは難しいので,やはり一般の方が完璧に理解してスムーズに手配を進められるケースばかりではありません。

難しかったり,面倒だったりする場合は,司法書士に戸籍謄本等の収集一式を任せてしまえばよいです。いや,もし相続財産に不動産があって,その名義変更の相続登記を司法書士に依頼する場合は,戸籍類の収集と相続関係説明図の作成,物件調査,遺産分割協議書の作成,登記申請書その他必要書類の作成と法務局への提出代理まで,全部司法書士が代わりにやってくれるので,あなたが戸籍謄本等を頑張って集める必要は,実はないのです。

そして,相続登記をする際に司法書士が収集したり作成したりした相続関係書類は,相続登記が終わると司法書士からもらえます。もし預貯金や株式等の相続手続をご自分でされるなら,この書類を使って別の手続きをすすめることができるはずです。ですから,遺産相続の手続き全部をご自分でされる相続人の方以外の方については,このややこしい戸籍謄本等の収集に頭を悩ませる必要はない。心配する必要はないのですね。

司法書士を含め,他人の戸籍謄本や住民票等を請求取得できる場合について,別の記事にまとめておきましたので,よろしければそちらもご覧ください(くだけた内容ですが,,)。不明点は,何なりと司法書士まで問い合わせていただければ結構です。

今日は以上です。

戸籍や住民票を他人が取れるケースについてレクチャーするよ!

 

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