相続大全集

生前贈与でもらうなら賃料・地代・家賃の入る収益物件から優先して!

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収益不動産(マンション,アパート)の生前贈与を優先して先に

私の親は先祖からついた不動産をいくつか所有しています。また,長年地方公務員をしていたので金融資産(預貯金と証券口座の投資信託等)もある程度持っています。親も一線を退き,いまは他人に貸している収益不動産の管理をして生活しています。気が付けば親も高齢になり,体も弱ってきています。最近忘れっぽくもあります。ところで,私が見たところだと,親の資産は相続税が課税されるラインを超えていると思います(基礎控除額を超える)。なので,生前贈与等の相続対策?節税対策?をしてもらいたいと親に相談する予定です。当面親が元気なら,とにかく生前贈与ははずせないと聞いたのですが,何から手をつけていいかわかりません。

 

節税対策の基本は生前贈与

相続税の節税を考えられておられるなら,その対策の基本は生前贈与になります。しかもなるべく早い時期に対策をスタートされるのをおすすめします。親が亡くなるまで時間があればあるだけ,つまり対策の時間が流れければ長いほど有効な対策ができます。ところで,生前贈与が相続税の節税対策の基本になるのは簡単な理由からです。相続税は遺産の額によって税金がかかったりかからなかったり,また安くなったり高くなったりするからです。遺産が多ければ多いほど税率が上がり,相続税の支払額が増えます。なので,生前贈与によって親が亡くなったときの遺産額をできるだけ少なくすれば,必然として相続税の節約につながるのです。

 

節税対策のための生前贈与には順序・順番・優先順位がある

しかし,何でも,いっぺんに生前贈与していいわけではありません。生前贈与には贈与税がかかり,基本的には贈与税は相続税より高いので,むやみにやると逆効果になります。よって,贈与税の基礎控除内におさまる少額の贈与を継続して行ったり,特例によって贈与税がかからないタイプの生前贈与(住宅取得資金や教育資金等)を選択するなど,贈与税負担によって相続税の節税対策の効果を減じないよう注意(損得計算)する必要があります。また,贈与する対象となる財産を選ぶことも重要です。先に贈与したほうがよい財産とそうでない財産があるのです。つまり,優先的に生前贈与したほうが相続税の節税対策に効果的になるものと,そうでないものがあるということです。分かりやすい例を挙げると以下のような財産です。

  • 将来値上がりが見込まれる財産
  • そのもの自体から継続的に収益が入ってくる財産

今日のお題は後者,収益を生む財産のほうです。

 

収益不動産(賃料・地代・家賃の入ってくる物件)の生前贈与を優先する理由

そのもの自体が継続的に収入を生む財産は優先的に生前贈与の対象とすべきです。いまの事例でいうと,賃料収入が継続的に入ってくる収益不動産(貸土地,賃貸マンションやアパート)は,先に生前すると有利です。なぜかというと,この物件を今後もずっと親の所有にしておくと毎年親に賃料収入が入り,それが蓄積して,親の財産を増やしてしまうからです。財産が将来に渡って蓄積して,相続税の課税財産が増えてしまうのです。相続税の課税財産を減らすのが節税対策の肝だとすれば,相続税の課税財産が増えてしまうのは最も避けるべき事態です。単純化して考えてみます。

仮定する事実関係

基本的な事実関係

  • 親が所有している収益マンションの価値が仮に3000万円とします。
  • 賃料(家賃)が毎年300万円入ってくるとします。
  • 親は10年後に亡くなると仮定します。

注意事項

  • 所得税等の税金や管理等の経費は考慮しない。
  • 不動産の評価に変動はないものとする。
  • 生前贈与の登記費用等の諸経費は考慮しない。

当該収益物件を生前贈与しなかった場合の遺産(この物件に関係する遺産に限る)

不動産の評価=3000万円
賃料収入の蓄積分=3000万円
合計=6000万円

当該収益物件を生前贈与した場合の遺産(同上)

不動産の評価=0円
賃料収入の蓄積分=0円
合計=0円

いかがでしょうか。この収益物件を生前贈与しなければ親が亡くなったときの遺産は6000万円に膨らんでいます。対して生前贈与すれば遺産は0円です。

もっとも,この収益物件を一括で生前贈与すると高い税率の贈与税がかかります(贈与は金額が大きければ大きいほど税率が上昇する)。なので,物件をそのまま親が所有していた場合にかかる相続税の税率や税額と比較検討しながら,何回かに分けて贈与する必要があるかもしれません。しかし,そうした場合でも贈与税等の負担は避けられず,相続税の節税効果が減殺されてしまいます。

よって以下の方法で生前するのも一つの方法です。よく検討して実行すれば極めて大きな節税効果が得られるはずです。

 

相続時精算課税制度を併用するとよい

その方法とは,「相続時精算課税制度」を利用しつつ収益物件を生前贈与することです。

相続時精算課税制度とは何か

相続時精算課税制度とは,相続税法上の仕組みです。

この制度を利用して生前贈与をすると,贈与税と相続税は次のとおり取り扱います。

  • 贈与税=贈与時に,贈与税を課税しない。
  • 相続税=将来の相続時に,当該生前贈与がなかったものとして,あくまで計算上当該財産の価値を遺産に組み込み(計算上遺産としてあったものと仮定して),相続税として課税計算をする。

つまり,贈与時に贈与税をペンディングし,相続時に相続税として計算しなおすということです。贈与税は相続税の前受け的なもの(補完税)であり,贈与税は相続税法に書いてある税金なのでこういうことができます(死後に税金を取るか生前に取るかの違いに過ぎない)

この制度,よく考えてみると,贈与税を支払わずに生前贈与しても,将来相続税で税金をとられるなら意味がない,やってもやらなくても同じではないかとの疑問が生じます。しかしそうではありません。この制度を利用して生前贈与をすることには大いに意味があります。分かりやすいところでは,次のようなことです。

そもそも相続税がかからない人は贈与税なしで生前贈与ができる

本題とは少しずれますが説明しておきます。そもそも親の資産が相続税の基礎控除内の人は将来の相続税がかかりません。しかし,普通に(相続時精算課税制度を利用しないで)贈与すると贈与税がかかります。相続税の基礎控除額は結構大きいですが,贈与税の基礎控除は小さいからです。

  • 相続税の基礎控除=3000万円+(法定相続人の数*600万円)
  • 贈与税の基礎控除=受贈者ごとに年間110万円

こういう人は,必要であれば,相続時精算課税制度を使って生前贈与するとよいです。そうすると,ある程度の金額まで大きい財産を贈与税の課税なしで贈与できるし,将来相続時に戻し計算しても相続税がかからないことに変わりないからです。つまり,この制度を選択して生前贈与すると,贈与税も相続税も課税されることなしに,いますぐ財産を次世代に移転できます。相続税ではなく,贈与税を節税できます。

収益不動産の収益が被相続人に蓄積するのを防止できる

こちらが本題です。相続時精算課税制度を利用して収益物件を生前贈与しても,物件自体の財産価値は,相続時に戻し計算して相続税の対象になるとお話したとおりです。この部分について言えば,生前贈与をしてもしなくてもおよそ同じことだと言えます。

しかし,収益物件から生じる収益はどうでしょうか。収益の部分は取扱いが違います。収益は戻し計算の対象になりません。

先の例で,生前贈与しないで相続が生じると,親のもとに,3000万円分のキャッシュ等が貯まっている計算になりました。この蓄積した財産は当然相続税の課税対象財産になります。

対して,収益物件の生前贈与を済ましているとどうか。生前贈与をした後に生じる収益物件の収益は物件の所有者の収入です。つまり物件の贈与を受けた,物件の名義人の収入になります。この場合において相続が開始すると,生前贈与しないでおいた場合に遺産となったはずの3000万円の遺産の蓄積はありません。その財産は生前贈与を受けた人のもとに蓄積しており,相続とは何の関係もなくなっているのです。

要するに,3000万円分の相続税の課税対象財産を減らすことができた訳です。節税対策の肝は相続税の課税財産を減らすことだと言いました。相続時精算課税制度を併用して収益物件を優先的に生前贈与することは,大きな節税対策になると言えそうです。

1 制度の概要
相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、「暦年課税(注)」へ変更することはできません。
また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。具体的な贈与税及び相続税の計算については「4 税額の計算」をご覧ください。
このように、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度です。

2 適用対象者
贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母、受贈者は贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫とされています。

3 適用対象財産等
贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。

4 税額の計算
(1)贈与税額の計算
相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年以後、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。
その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。
なお、相続時精算課税を選択した受贈者が、相続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税の税率を適用し贈与税額を計算します。
(注)相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできませんので、贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。

(2)相続税額の計算
相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
その際、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。
なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。
国税庁WEBより

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