相続大全集

最終チェック!遺言書を作成する(書く・書いてもらう)ときチェックすべき五つのポイント

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遺言書作成の注意点・チェックポイント

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

いざ遺言書を作成したり書いてもらったりするときの最終チェックポイントをお教えします。遺言書は何度でも撤回や書き直しができますが,できることなら1回でバシッと決めたいところです。以下に該当するようなことがないかチェックしてみてください。

 

1 遺言の方式を守っているかチェック

作成するとき

自筆証書遺言は,全文,日付,氏名を自署(自分で書く)し,これに印を押さないと,法的効力がありません。無効です。公正証書遺言は公証人が作成するので方式が問題になることはないでしょう。全部自分で書く。日付はちゃんと特定できるように書く。名前は戸籍名でちゃんと書く。押印は認印でもいいですが,できれば実印で。

間違ったとき

間違ったら民法の決まり通りに修正します。訂正方法に自信がなけれれば全部書き直してください。

民法968条2項 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

撤回(書き換え)するとき

前の遺言書を撤回するときは,新たな遺言書でします。前の遺言書を撤回する旨の遺言書を作るか,書き換えの場合は前の遺言書と内容が齟齬する新しい遺言書を作ります。前の遺言書と齟齬する部分のみ撤回したことになります。

 

2 財産をちゃんと特定しているかチェック

特定できているか

財産にはそれを特定する要素がありますので,しっかりそれを記載します。土地なら所在地番,建物なら所在地と家屋番号,銀行預金なら銀行名,支店名,口座種別,口座番号及び口座名義です。財産が特定できないと,法的な効力を及ぼすことができないからです。

漏れはないか

「これは書かないでおこう」「これは内緒にしておこう」はよくありません。漏れている財産には遺言書の効力が及ばないので,法定相続になります。せっかく遺言書を作って紛争予防をしているのに,この部分が原因で紛争になっては元も子もありません。所有財産は全部記載してください。これから消費して減っていくであろう預貯金も,気にせず記載してください。残った分に遺言の効力が及びますし,無くなってしまえばそれはそれで結構です。遺言書が無効になったりしません。

最後の手段

財産の特定方法が分からない場合は,「すべての財産を」と記載してください。全部は全部だ,という意味で特定していることになります。また1名の相続人受遺者に財産の全部を相続させたり遺贈するときも,このやり方で特に問題ないことが多いです(財産の内容によって100%問題がないとは言い切れません)。もっとも,本来は財産をちゃんと特定して列挙するのが望ましいですし,司法書士等法律の専門家に依頼する場合は,基本的に財産を特定して記載します。

 

3 その遺言書でちゃんと遺産分割できるかチェック

包括遺贈になってないか

「長男が2/3,長女が1/3の割合で相続させる」というような遺言書を書いていませんか?こういうのを「相続分の指定」又は「包括遺贈」といいます(受取人が法定相続人の場合は相続分の指定,法定相続人ではない場合は包括遺贈)。これはこれでいいんですが,これをすると,財産の一つ一つについて当該割合で相続することになるので,結局共同相続人の間で遺産分割協議をして個別財産の割振りをしないといけなくなります。物ごとに単独の所有にする作業です。これは相続人が揉める原因になります。なので,具体的な財産ごとに,どれを誰に相続させるか決めたほうがいいです。こういうやり方を「遺産分割の方法の指定」又は「特定遺贈」といいます(受取人が相続人なら遺産分割の方法の指定,そうでないなら特定遺贈)。特別事情がない限り,包括遺贈ではなく遺産分割の方法の指定をしましょう。

不動産を共有にしていないか

「○○の土地は長男と次男に各1/2の割合で相続させる」というような遺言があります。これは,具体的に財産の所有を決めているので,相続分の指定(包括遺贈)ではなく遺産分割の方法の指定(特定遺贈)です。受遺者が相続人なら,遺産分割の態様として「現物分割又は共有とする分割」になるよう,遺言者が遺言で遺産分割の方法の指定をしたと解釈されます。よって相続開始と同時に不動産はこのとおり所有が確定します。しかし不動産の共有は避けるべきです。今後の管理方針や処分方法に相続人の同意が必要となり困りますし,次世代の相続時にも権利が複雑になって困ります。特段の事情がない限り,不動産を共有にするような遺産分割の方法の指定をする遺言書は書くべきでないでしょう。

 

4 相続人の遺留分に配慮しているかチェック

法定相続人には遺留分があります。相続に対する期待権です。遺言がなければ法定相続できていたのだから,その期待を保護するために,法定相続人には一定額の財産(遺留分)を取り戻す遺留分減殺請求権が認められています。「全財産を長男に相続させる」とした場合に,次男の遺留分はどうなるでしょう?遺留分は,直系尊属のみが法定相続人なる場合は法定相続分の1/3,その他の場合は法定相続分の1/2とされます。ですので,次男の遺留分は,法定相続分の1/2です。この遺言書のように全財産を長男に相続させるとした場合,次男は納得しますか?納得しないことが明らかなら将来に紛争の種を残すことになります。もし長男がキャッシュを持っていなかったら大変です。なので,遺言書において次男にも少しの財産(遺留分相当額に可能な限り近づける)を与えるか,生命保険金の受取人を長男にしておき長男がこの死亡保険金(受取人が指定された生命保険金は相続財産ではないから)で次男からの遺留分減殺請求権に対応する(支払う)か,何等か対策が必要でしょう。

 

5 遺言執行者を指定しているかチェック

遺言書で遺言執行者を指定していますか?「○○を遺言執行者に指定する」この一文を必ず入れるようにしてください。財産の大方を相続したり,1番信頼している人を遺言執行者に指定しましょう。また遺言書の作成を司法書士に相談依頼するときは,司法書士を遺言執行者に指定することをおすすめします。

遺言執行者とは文字どおり遺言を執行する人です。遺言書は書いただけでは意味がなく,遺言書に書いてあるとおりに財産の相続手続等ができて意味があるものです。あなたの遺言書に書いてある遺言内容は,誰が,どうやって,責任を持って執行(実現)してくれるのでしょう?これを決めておかないといけません。

なお,遺言書の内容には,その性質によって,遺言執行者による執行が必要なものと,遺言執行者がいなくても処理ができるもの,手続きができるものがあります。遺言執行者が遺言書で指定されていない場合に,家庭裁判所に遺言執行者の選任を申請する必要がある事項ほか,そうでなければ共同相続人の全員が手続きに協力しないと処理できない事柄もあります。ややこしいので詳しくは述べませんが,とにかく遺言執行者がいると手続きがスムーズになることに間違いがありません。よって遺言書を作成するときは必ず遺言執行者を指定してください。

 

番外編

 

付言事項を有効活用していますか?

遺言書は,遺言能力(判断能力のほか満15歳であること)ある人が,遺言の方式を守り(自筆証書や公正証書等の法律の規定に則り),遺言事項(遺言できると法律に限定列挙されていること)についてしたものだけに法的効力があります。しかし法的効力がないこと(以下,「付言事項」といいます。)を書いてはいけない決まりはありません。遺言書としての効力はなくても,信書としての効用はあります。また付言事項に直接的な法的効力はなくても,その記載内容が相続人等に伝わり,それが相続人等の法律行為に影響を及ぼせば,間接的な,事実上の法的効力があるのと同様の効果をもたらすのです。

遺言書は紛争予防を目的に作るものです。法的効力がない付言事項が相続人に一定の効果を及ぼして事実として紛争の予防に資するなら,付言事項は遺言書にとって大きな意味があるというべきでしょう。

ではどんな付言事項を書くか。これは何でもいい。ただし,遺言書の本編に書いたことについて相続人の納得がいくよう作用する記載じゃないと意味がありません。相続人が読んで「それは仕方ないな。よく考えてくれたんだな」と思うような内容。「ことを荒立てるのははばかられるな,はずかしいな,,」と思ってもらえるような内容。これを目指して書くようにしてください。

例えばこんな書き方が考えられます。もっともこればかりは家族の人間関係や家柄,経済状態等による。千差万別に書き方を変えて結構です。だって法律上の「遺言書」ではないのですから,自由に書いてよいです。

例1)

私も頑張って働いてきました。子供は全員等しく可愛く大事に思っています。よってできるだけ遺産も平等に相続してほしいと考えていますが,いかんせん住宅と少しの預貯金しか残せそうにありません。家は我が家の跡取りとして長男に継いでもらいたいと思います。仏壇やお寺のことも長男に任せています。そうするとあとは少しの預貯金しか残りません。500万円ほどです。これを次男に譲渡しますが,長男には家の管理や墓守もしてもらわないといけないので,このうち200万円は長男に相続させることを了承してください。遺言書に書いた遺産の分け方の理由は以上のとおりです。私の親兄弟の相続もみな同じようにしてきました。先祖の土地や仏様を守っていくのも大変なものです。長男には面倒をかけるので次男はこらえて協力してやってください。兄弟揉めることなく一族仲良くしてくれることが私の何よりの願いです。最後は身内しか頼るものはありませんのでくれぐれも力を合わせてやっていってください。

例2)

次男に全財産を相続させることにしていますが,長男はどうぞ分かってください。長男が出て行った後次男が同居してずっと私をみてくれています。次男夫婦には本当にお世話になっており,次男の嫁にも大変感謝しています。経済的にも大変な負担をかけています。せめて私の遺産を次男夫婦に相続させてお礼にかえたいと思っています。そうでなければ申し訳なくて死んでも死にきれないのです。長男のことはずっと心配していますよ。このように連絡を取れなくなってしまったのはとても残念ですが,お互い大人だから仕方ありませんね。また帰ってきて次男夫婦と仲良くしてくれるのを願っています。たった一人の兄弟だから喧嘩などしないでくださいね。宜しくお願いします。

例3)

遺言書に書いたとおり遺産は全部長男に相続させるからちゃんと守っていってほしい。先祖の土地は売らないようにしてくれ。墓はいつも綺麗にしておくように。財産は長男が相続するのだから,長女や次女に何かあったときは長男としての自覚をもって必ず助けてやってくれ。長女や次女には財産を遺してやれず申し訳ない。今の時代にはそぐわないかもしれないが,これが我が家のやり方なので理解してほしい。そのかわり長男には厳しく言っておいたので何かあれば遠慮なく頼りなさい。とにかく助け合って生活してくれ。世間様に一族の恥ずかしい姿を晒すことがないようくれぐれも宜しく頼む。

遺産相続が専門で得意分野とのことですが、どんな相談や依頼ができますか?

営業エリア・業務地域を教えてください。

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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つづきにどうぞ

遺言書の作成を司法書士など専門家に頼むメリットとデメリットをお教えします

 

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