相続大全集

公正証書遺言を作成する(書いてもらう)スケジュールを具体的にお教えします

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公正証書遺言の作成方法,依頼方法

公証人役場に行って公証人に作成してもらう遺言書,すなわち公正証書遺言を作成するときのスケジュールを具体的に説明いたします。公正証書遺言は以下のようなスケジュールで作成します。司法書士に相談・依頼して作成する場合を想定しています。

 

遺言書に書く内容を考える

遺言書の内容はどうしますか?相続人に財産を譲渡しますか?それとも第三者に譲渡しますか?相続させる割合だけ決めておきますか?それとも具体的な財産の割振り(遺産分割)の方法を指定しますか?財産以外のことは書きますか?だいたいのことで結構ですので,遺言書に書く内容を構想してください。遺言書を書こうと考えられた動機があるはずです。この際そのお考えをご自身で改めて整理してみてください。

 

遺言する財産に関する資料を用意する

遺言書で死後の行き先を決めたい財産の基礎資料を準備してください。遺言書は,死後の相続争いを避けるためにするので,財産を隠したり,一部財産を記載しないで置いておくようなことはおすすめできません。基本的には,あなたが所有しているすべての財産の資料を準備してください。

  • 不動産なら,権利書や登記簿謄本,固定資産税の通知書,資産明細(名寄せ帳)など
  • 預貯金なら,通帳や証券
  • 株式等なら,証券会社から送られてきた証券口座の取引報告書等

 

遺言書の文案を箇条書きにする

まずはメモ書き程度で結構ですので,あなたの考える遺言書の案を箇条書きにしてみましょう。文章のこと,体裁のことは気にする必要はありません。本番ではないからです。メモでも箇条書きでも,文書化することによって,あなたの考えを整理できる場合があります。

  • 家は同居の長男に
  • 預貯金は長男と次男に半分ずつ?
  • 株式は長女に
  • お墓の面倒は長男にやってほしいな
  • 死後のことは長男が代表して全部してほしい

 

司法書士事務所に電話して相談の予約をする

ここまできたら,司法書士事務所に電話やメールをして,相談の予約をしてください。もっとも,考えがまとまっていなくて,その考えを整理したり,基本方針そのものを司法書士に相談いただいても結構です。司法書士事務所は通常完全予約制なので,お電話等にて事前に相談日時を伝える必要があります。

 

司法書士に遺言の趣旨等を伝えて相談する

司法書士事務所には,次の資料を持って行ってください。手元にないものについては,初回は持っていかなくてもいいでしょう。資料を揃えていなくても相談に行ってかまいません。

  • 財産に関する資料(可能な限り)
  • 遺言書の文案(メモ程度)

この資料をもとに,あなたのお考えを司法書士に伝えてください。「こんな内容で遺言書を作成したいがどうか?何か問題はあるか?書き方はどうか?漏れはないか?」などなど。司法書士は常日頃から遺言書作成の相談等を受けているので,必要かつ適切なアドバイスを受けられるはずです。相談にいくのに身構える必要はありません。ただ考えていることを話に行けば足ります。

 

司法書士に公正証書遺言の作成援助を依頼する

相談の内容に納得がいったら,司法書士に公正証書遺言の作成手続を進めてもらうよう依頼します。次の書類を準備して司法書士に交付してください。なお,公正証書遺言を作成するには,証人が2名必要です。財産をもらう受遺者等は証人になれません。通常は,司法書士と司法書士事務所職員が証人になって差し上げます。これについても重ねて依頼してください。

相談時に持って行った資料

  • 財産に関する資料
  • 遺言書の文案

新たに準備する資料

  • 遺言者の印鑑証明書
  • 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本
  • 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票(法人の場合には資格証明書)

 

司法書士が文案を整理して公証人役場と協議する

ここからは司法書士が公証人役場とやりとりをします。遺言書の文案を法的に整理し,必要書類をまとめ,場合によっては司法書士が不足する必要書類を収集したうえで,公証人役場に持ち込みます。その後,公証人と司法書士が遺言の趣旨等を協議し,公正証書遺言の文案を作ってもらいます。

 

公正証書遺言の文案を確認する

司法書士が公証人から預かった遺言書の文案を示しますので,内容を確認してください。もし修正点等があれば,司法書士に伝えてください。再び司法書士が公証人にその内容を伝え,遺言書文案への反映方法を協議します。こうして最終文案ができますので,最終のチェックを済ませてください。

 

公証人役場に行く(出頭する)日時を調整する

遺言書の文案が確定したら,公証人役場に行って公正証書遺言を作成する本番の日を決めます。公証人と,証人である司法書士及び同職員,遺言者である依頼人と,三者の日程調整が必要です。あなたの都合のよろしい日時を司法書士に伝えていただれば,司法書士が仲介して日程調整をして作成日を確定します。

 

遺言書作成の費用を準備する

概算金額は,司法書士に手続きを依頼する際にご案内します。しかし正確な金額は,司法書士が公証人に手数料額を確認して確定します。およそこの時点で正確な金額が判明しますので,司法書士が遺言者に金額をお伝えします。遺言書作成の費用は,本番作成日の前日までに司法書士にお預けいただくか,本番作成日にご持参いただくか,どちらかになります。遺言書作成費用をお忘れになると公正証書遺言の作成ができず,日程調整からやり直しになりますので,前日までに司法書士にお預けいただくのが望ましいです。

 

作成日に公証人役場に行く

予定の日時に公証人役場に出頭します。一旦司法書士事務所に来ていただいて,司法書士とともに公証人役場に行ってもよいし,公証人役場で待ち合わせをしても結構です。通常公証人は忙しく,この遺言書以外にもスケジュールが詰まっているので,遅れることがないよう,15分前には現地に到着してください。なお,奈良県下の公証役場は次のとおりです。

  • 奈良合同公証役場
    630-8253 奈良市内侍原町6 奈良県林業会館3階 電話 0742-22-2966
  • 高田公証役場
    635-0095 大和高田市大字大中98 小川ビル2階 電話 0745-22-7166

ちなみに,公正証書遺言の作成をしてもらう公証人役場に場所的な管轄はありません。つまり,例えば奈良県の方が大阪の公証役場で遺言をしてもいいし,大阪の方が奈良県の公証役場で遺言をしても大丈夫です。お仕事の都合,その他の都合を勘案して,遺言書を作成する公証役場をお選びください。当司法書士事務所は奈良県北葛城郡王寺町にあるので,特にご指定がない場合,奈良市の奈良合同公証役場又は奈良県大和高田市の高田公証役場に持ち込みます。

明徳司法書士事務所 司法書士中尾哲也(奈良県司法書士会311号)
636-0002 奈良県北葛城郡王寺町王寺二丁目7番14号 喜泉ビル3階 電話 0745-72-8700

 

公正証書遺言を作成する

公証人役場に行ったら次のように遺言書の作成が進みます。

席について公証人にあいさつし,本人確認等をする

公証人から,住所氏名,生活状況,遺言書作成の経緯等いくつか質問がありますので,聞かれたことにお答えください。心配は不要です。

公証人に遺言の趣旨を話す

公証人から遺言の内容を聞かれますので,遺言の趣旨をお話しください。どういう財産を誰に相続等させるか,およその内容をお伝えいただければ結構です。聞かれていることの意味が分からなければ公証人に自由に質問してください。

公証人が遺言書を読む

遺言の趣旨が確認できたら,公証人が,遺言者と証人司法書士などに遺言書の全文を読み聞かせます。既に遺言書文案のとおり遺言書が準備してありますので,その遺言書の全文を公証人が読んでいきます。こちらはただ聞いていれば結構です。

遺言者と証人が遺言書に署名押印する

公証人の読み上げが終わったら,遺言者と証人2名が,順番に遺言書に署名押印します。これで遺言書の作成は終了です。

遺言書の正本と謄本の2通をもらう

署名が済んだら,遺言書をもらいます。遺言書は,原本と正本と謄本の合計3通作成されますが,そのうち正本は公証人役場に保管されます。奈良の公証役場では,現在,遺言者が120歳になるまで保管されるようです。遺言者がもらって帰るのは正本と謄本の2通です。合計3通ありますが,法的効力はどれも同じです。なお,正本や謄本を紛失した場合,公証人役場に申請して,謄本の再発行を受けることができます。

公証人に費用を支払う

最後に公証人に遺言書作成費用を支払います。事前に司法書士が費用をお預かりしている場合は,司法書士が代行して公証人に費用を支払います。費用の支払いが終われば,公証人役場での作業はすべて終いです。

 

遺言書をしかるべき方法で保管する

遺言書ができたら,その保管方法を考えましょう。遺言書は正本と謄本の2通あるので,これをどのように保管するか考えます。

  1. 2通とも遺言者が保管する
  2. 1通を遺言者が,1通を受遺者が保管する
  3. 1通を司法書士に預け,1通を遺言者が保管する

など,いろんなパターンが考えられます。状況に応じて保管方法を選択してください。なお,遺言書の執行を司法書士に依頼する場合,つまり遺言書で司法書士が遺言執行者に指定されているときは,1通を司法書士に預けるのが望ましいでしょう。いざというときに,どのみち司法書士が遺言書を預かることになるからです。

ちなみに,遺言者が保管する場合,遺言者が借りている貸金庫に入れるやり方がありますが,あまりおすすめしません。遺言者の死後貸金庫を開けるには,相続人全員の協力(書面への実印の押印等)が必要になるので,相続人が揉めていると遺言書の確認すらできず,当然に遺言書の執行ができません。せっかく相続争いを避けるために遺言書で特定の相続人に相続させるとしているのに,遺言書を取り出すのに相続人全員の協力が必要になるようでは困るらです。遺言者が保管する場合,貸金庫には入れないで保管してください(司法書士や受遺者が自分の貸金庫に入れるのは問題なくおすすめできます)。

 

遺言書の内容を変更したい

公正証書によって作成した遺言書も,自筆証書で作成した場合と同じく,遺言書の撤回や書き換えができます。方法は次の二通り。

  1. 「年月日に作成した前の自筆証書遺言を撤回する」という内容の遺言書を新たに作成する。
  2. 前の遺言書と内容が抵触齟齬する内容の遺言書を新たに作成する

撤回して法定相続の状態に戻したい場合は1を,遺言書の内容を変更し書き換えたい場合は2を選択します。なお,遺言書で誰かに相続させたり遺贈するとした財産を,生前に遺言者が処分してしまった場合(例えば不動産や株式を売却したり,ある口座の預貯金を使い果たしたり),遺言書のその財産に係る部分は遺言書を撤回したものとみなされます。

いずれにしろ新しい遺言書を作ることによって手続きするということ。作成済みの公正証書遺言を撤回するための新たな遺言書は,公正証書でなく,自筆証書でもかまいません。公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回できます。しかし遺言書の撤回に関しトラブルになることがありますので,前に書いた遺言書を一部でも変更したい場合は,改めて司法書士に相談することをおすすめします。

(遺言の撤回)
民法1022条  遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
同1023条  前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2  前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
同1024条  遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

(撤回された遺言の効力)
同1025条  前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。

 

つづきにどうぞ

遺言書の作成を司法書士など専門家に頼むメリットとデメリットをお教えします

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