相続大全集

住宅しか財産がないからこそ親に遺言書を書いてもらったほうがいい理由

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親の立場から考える場合,,

私もそろそろ年を取ってきたし将来子どもたちに財産を譲ることを考え始めました。といっても私には自宅のほかに財産がありません。だから,自宅をどうするかを考えているのです。私としては同居してくれている長男にこの自宅を相続して引き続き住んでほしいんですが,そうすると次男に譲る財産がなくなってしまいます。それもどうかと,,なお,妻は3年前に亡くなっています。

長男の立場から考える場合

私は長男です。結婚したときに一度家を出ましたが,親がこの家を新築したときに同居することを決め,依頼ずっと親と同居しています。私の妻にはいろいろと気苦労をかけたと思いますが,我慢すべきは我慢してこれまでやってきました。親はこの自宅はお前に譲ると言っています。財産はこの家だけということです。ところで私には弟がいます。弟は新卒で入った会社を辞めてから,仕事には恵まれておらず,経済的にはかなり大変だと聞いています。将来の遺産相続で揉めないかいささかの不安があります。

次男の立場から考える場合

私は次男です。兄弟として兄が一人います。兄弟仲は良くもなく悪くもなくといったところです。私も兄も結婚して家を出ましたが,親が家を建て替えまして,その際私が家に戻ってもよかったんですが,兄が戻って親と同居しています。兄は親と同居したので生活がかなり楽になったのではないかと思います。いろいろと生活に必要なものを親が買ったり,孫の教育費を出したりしていたはずです。私は仕事がうまくいかず,経済的には苦しいです。親が無くなったら,少なくとも自宅が相続財産になるので,半分は私の権利があると思っています。少しは楽になるでしょうか,,

さて,以上は,「自宅しか財産がない人」を取り巻く状況の一例です。将来亡くなって被相続人になる親には自宅しか財産がない。子供が2名いる。うち1名と同居している。このようなケースは多いです。そして,そのようなケースにおいて,将来遺産相続が開始したらどうなるのか。このことを考えた場合は,私は以下のように言いたいと思います。

自宅しか財産がない人は必ず遺言書をかくべき(又は親に遺言書を書いてもらうべき)

そうです。私には大した財産はない,自宅しか財産がない,なので遺言書など書く必要はないよ,というあなたにこそ遺言書を書くことをおすすめします。またそのような親を持つ子であるあなたこそ,親に遺言書を書くことをお願いすべきであると考えるのです。今日はその理由を説明します。といっても,以上の呼んでいただければ,およそ想像がつくところですが。

 

原則として法定相続分どおりに相続しないといけないから

法定相続分について

遺言書がない場合の遺産相続のことを「法定相続」といいます。法定相続になると,法律つまり民法に書いてある人が,書いてあるとおりの相続分を当然に相続し,書いてあるとおりの相続分にしたがって遺産の割付けをする遺産分割を行います。つまり,誰が相続人になるか,各人の取り分はどれだけになるかは法律に書いてあり,すべての相続人には,そのとおりの相続をする権利があるのです。

もっとも,相続人が被相続人である親から生前に多額の生前贈与を受けていたり,逆に被相続人の財産が相続人の特別の経済的寄与によって維持形成されているような場合は,特別受益寄与分という制度によって法定相続分が修正されますが,今回そういう事情はないはず。

そうすると,今般の相続の法定相続人は,被相続人の子として第一順位の法定相続人となる長男と次男であり,その法定相続分は,各人について,1/2です。長男と次男は,きちんと主張すれば,それぞれが必ず1/2の法定相続分に相当する財産を相続する権利があります。

自宅は相続財産か

自宅の土地と建物は当然相続財産です。というより,土地や建物といった不動産は,むしろ代表的な相続財産です。自宅であろうが事業用の土地であろうが,不動産は相続財産になります。なので,今般の自宅も例外なく相続財産です。

自宅しか相続財産がなかったらどうなる?

遺言書がない場合の遺産相続は,共同相続人の話合いによって決まります。もし話合いがつかなかったら,家庭裁判所遺産分割調停を申立て,裁判所の中で改めて話合いをするか,遺産分割審判によって裁判官に遺産分割を決めてもらう必要があります。大変なので,できれば話合いで済ませたいところです。

では,今回の事例で遺産分割をするには,どんなやり方があるでしょうか。

自宅不動産を長男が全部相続する代わりに次男に現金を渡すやり方(代償分割)

もし長男がどうしても自宅不動産を相続したいなら,次男に法定相続分に相当する財産を渡さないといけません。そうしないと次男の法定相続分を無視したことになるからです。それはできません。

しかし相続財産は自宅だけ。預貯金等はない。この場合,不動産を相続する長男の,自分の預貯金等からこのお金を用意しないといけません。長男の固有財産からこの代償金を用意して支払うのです。どうでしょう?それは物理的に可能でしょうか?また心情的に可能でしょうか?

自宅不動産を売却処分してその代金を兄弟で分けるやり方(換価分割)

自宅不動産を第三者に売却して(換価して)その売却代金を兄弟で半分ずつ受け取る方法もあります。そうすれば,兄弟がそれぞれ法定相続分に相当する相続をしたことになります。しかし,,,親は自宅を長男に譲りたかったはずで,長男もこの自宅に引き続き住みたかったはずです。売却してしまっては元も子もありませんよね?

自宅不動産を法定相続分で相続するやり方(現物分割・共有とする分割)

自宅不動産を残したければ,自宅不動産を法定相続分どおりに相続し,共有の形で所有するやり方があります。つまり,長男1/2,次男1/2の法定相続分どおりの共有名義で自宅不動産の相続登記(相続による所有権移転の名義変更登記)を行うやり方です。

こうすると不動産は兄弟で所有していることになります。といっても不動産は一つしかないので,長男が引き続き住み続けることになるでしょう(長男家族と次男家族が同居する方法もないではないが通常無理なので)。もし長男が引き続き住み続けるなら,次男の権利を害さないために,家賃相当額(家賃相当額から長男の持ち分相当額を控除した金額)を,長男から次男に支払う必要があるはずです。

こういうやり方はおすすめできません。長男は家賃を払いたくないでしょうし,次男だって毎月少額の家賃しか遺産が入ってこないのですからあまり嬉しくないはずです。また,将来に渡り不動産の使い方や処分方法で揉めることになりますし(長男次男全員の同意がないとできないことが生じる),先々には再び遺産相続で,長男の子息と次男の子息が揉めることになるでしょう。

 

揉めないようにする対応策

さて,,,以上どれにするにも一長一短ではありませんか?あんまりすっきり満足でいるやり方ではなさそうです。もっと気持ちのいい相続の仕方はないものか。親,長男,次男の全員が満足できるやり方はないものでしょうか。あります。可能なら以下のようにしてください。

まず,自筆証書遺言や公正証書遺言で長男に自宅を単独相続させる

まずもって自宅を長男に相続させるのが親の意思であり長男の希望であるはずです。なので,これを実現しましょう。次のような遺言書を作成してください。


遺言書

自宅不動産を長男に相続させる
遺言執行者として長男を指定する
年月日
遺言者 ○○ 印


 

次に,長男を受取人とする生命保険(死亡保険)に加入する

いや,自宅を全部長男に相続させたら遺留分を侵害することになるのでは?それだと意味ないよね?たしかに法定相続分より渡す金額は少なくなるけど,いまの場合,遺留分は法定相続分の1/2でしょう?そんなお金ない(又は渡したくない)ので,結局遺言書がない場合と多かれ少なかれ同じ問題が生じるじゃないですか!

そうです。なので,生命保険を活用するんです。父親を被保険者とし,受取人を長男とする生命保険に加入しておくんです。親が死亡して相続が開始した後,長男が次男から遺留分減殺請求を受けたら,長男はこの生命保険金で遺留分相当額のキャッシュを次男に支払って,問題を解決することができます。

契約で受取人を指定された生命保険金は相続財産になりません。また,保険金の額が相続財産に対して過大でない場合は,長男の特別受益にはあたらないと考えていいでしょう(保険金額は遺留分請求に応じられる程度に押さえておくのがポイント)。ここで注意すべきは,次男がかわいそうだからといって,次男を生命保険の受取人に指定しないことです。次男が受け取った生命保険金も同じく相続財産や特別受益を構成しないので,法的には,次男が相続で何も受け取っていないこになり,次男の意向次第では,さらに不動産の権利を主張できてしまうからです。

よろしいでしょうか。今回のようなケースで親と長男と弟の三者を満足させるにはどうしたらいか。ポイントは次のとおりです。

  1. 遺言書で長男に不動産を相続させる
  2. 生命保険を活用して長男が受け取ったお金を次男にお金を渡せるようにしておく

自宅しか財産がないから遺言書はいらないだろう,,,って,本当にそれでよいですか?。共同相続人となった兄弟間で相続紛争にならないと言い切れるでしょうか?

ご心配があるようなら,上記を是非ご検討ください。

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