相続大全集

あなたが内縁の妻なら夫の相続に絶対遺言書が必要である理由を説明します

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内縁の妻・事実婚の遺産相続

私はもうかれこれ20年来うちの人と二人で暮らしています。うちの人が奥さんと離婚してからずっとです。正式に結婚はしていませんが(婚姻届は出してない),夫婦当然にやってきました。夫よ呼ぶことにします。夫は正妻と離婚後,住んでいた家を正妻に譲り,私と暮らし始めました。その後主人は仕事に成功して一戸建ての住宅を購入し,そこで私と暮らしています。主人には先妻との間に女の子がおり,私との間に子はありません。なお,いろいろと話せば複雑になる離婚に至る経緯から,主人は離婚後,先妻や子供と連絡をとっていませんが,よく思われてはいないはずです。さて,主人も高齢になり,私としても,今後のことが心配になってきました。私はここのところずっと仕事をしていなかったので,我が家の財産は,この住宅に,預貯金に,,全部主人名義になっています。主人は,自分が亡くなったらこの財産で暮らしていけといいますが,そんな簡単にいくのでしょうか。先妻や子供が財産を奪いに来やしないか心配です。私はどうしたらいいでしょうか。

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

はい,では今日は,内縁の妻が,内縁の夫の遺産相続についてやってくべきことをお話します。

 

内縁の妻とは何か

「内縁の妻」とは,法律婚によらない事実上の妻のことです。内縁のことを,事実婚と呼んだりします。つまり,民法や戸籍法による婚姻届を市町村に提出してないため,法律上の婚姻関係は生じていないが,長年同居し,互いに協力扶助して生活を営んできており,事実上は,法律上の婚姻関係と同様の生活実態のある夫婦関係にある妻のことです。

法律婚,法律上の正規の夫婦でも,人間関係や信頼関係が破たんして事実上離婚しているのと同様の夫婦もありますが,まるでその逆に相当するのが事実婚であり内縁関係だということができます。

なお,日本の現行法とは異なる当事者の家族観から,積極的意図をもって自発的に内縁関係を形成する場合を「事実婚」といい,何等かの障害があってやむなく法律婚ではなく内縁関係を形成している場合をまさに「内縁」といって区別する議論などがありますが,一般には,内縁と事実婚は同じものを指します。

 

内縁の妻には何の法的権利も認められないのが原則

日本国は,原則的には,「法律婚主義」という考え方ととっています。民法や戸籍法による手続きをしてはじめて婚姻関係が生じる。法律上の正規手続をとる婚姻関係を推奨する。どのように推奨するかと言えば,正規の婚姻関係又は正規の婚姻関係にある男女間にのみ各種の法的効果を認め,事実婚関係には婚姻関係から生じる法的効果,法的権利を認めないというやり方においてです。

このことの良し悪しや議論は常に行われていますが,現状は法律婚主義であるという事実をまずは押さえておきます。

 

例外的に,内縁の妻に認められている法的権利

とはいえ,国としてもこれを貫き通すことはできません。いくら正規の婚姻を推奨しても,いろんな理由で,世の中には事実婚関係が生じてきます。じっさいの生活状態はまったく婚姻関係に近い,いやそれ以上の生活関係を作っているのに婚姻届を出していない,出せていない内縁夫婦は多くいます。このような当事者に何らの法的効果や法的権利を認めないとすれば,やはりいろんな不具合が出てくるからです。そこで,内縁関係にある当事者間にも,いくつかの法的権利が認められるようになっています。以下のとおりです。

内縁関係のはじまりに関して

  • 婚姻費用の分担をする必要があります。内縁関係における費用の分担については民法760条に準じます。
  • 日常家事債務の連帯責任を負います。民法761条に準じます。
  • 帰属不明財産の共有推定がはたらきます。内縁関係においても民法762条2項に準じて財産の共有推定をします。
  • その他特別法における取扱いは次のとおり(Wikipediaより)

事実上婚姻と同様の関係にある者につき社会保険・社会保障の受給資格を認める例

厚生年金保険法3条2項
健康保険法3条7項1号・3号
労働基準法79条・労働基準法施行規則42条1項
労働者災害補償保険法16条の2第1項
国家公務員災害補償法16条1項

事実上婚姻関係と同様の事情に入った場合につき再婚と同視して受給資格が停止される例

恩給法80条2項
戦傷病者戦没者遺族等援護法31条1項5号

その他

公営住宅の入居者資格(公営住宅法23条)

内縁関係の終わりに関して

  • 財産分与請求権が認めれます。内縁の解消においては民法768条が類推適用されますが,死亡による解消の場合には類推適用されません(最判平成12.3.10)。
  • 内縁関係を不当破棄すると損害賠償請求権が発生します。内縁関係を不当に破綻させた第三者も不法行為責任を負います(最判昭和38.2.1)。

 

内縁の妻に遺産相続の権利は認められていない

はい。もうお分かりだと思います。上記の,内縁関係の終わりに関してのところに,「相続権」のことは書いていません。日本は法律婚主義で,原則的に事実婚に法律効果を認めないが,例外的に法律や判例で事実婚にも法的効果や法的権利を認めている。しかし遺産相続に関する権利については,例外的にも認めていないということです。

内縁の妻に,内縁の夫の遺産相続に関する「相続権」はありません。

内縁の妻は,内縁の夫の「相続人」にはなれず,したがって「相続分」がなく,「遺産分割」に参加することもできません。すなわち,夫の遺産相続に関する分け前はありません。

なお住居が借家だった場合に法律上次のような配慮がされていますが「相続」とは違います。

  • 借家人になっている内縁の夫が死亡して相続人がいない場合,内縁の妻は,内縁の夫の借家権(建物の賃借権)を「承継」することができます(借地借家法36条)。
  • 借家人になっている内縁の夫が死亡して相続人がいる場合,内縁の妻は,相続人が相続した借家権(建物の賃借権)を「援用」して,引き続き借家の使用を継続することができます。ただし,相続人がその物件に住む場合は借家権の援用はできないと思いますし,今後の賃料の支払いを誰がするかなど,難しい問題が出てきます。

 

内縁の妻は,内縁の夫の遺産相続に備えて何をすべきか

内縁の妻には相続権がない。例外的にそれを認める判例もない。

ひどいじゃないか!と,思われるかもしれませんが,そうなっている大きな理由は

「遺言をすればいいから」

です。

内縁の夫が遺言をすれば,内縁の妻は,内縁の夫の全財産を相続することができます。内縁の夫の法定相続人が遺留分を主張しても,少なくとも財産の半分はもらうことができます。そう,内縁の夫があなたに財産を相続させたいのであれば,あなたに全財産を遺贈する遺言書を作成すればいいんです。

内縁の妻が内縁の夫の遺産相続に備えてすべきことは,「内縁の夫に遺言書を作成してもらうこと」,これに尽きます。

内縁の妻であるあなたは,早速,パートナーに対して,遺言書を作成するようお願いしてください。よく分からなければ司法書士に相談してください。


遺言書

私の全財産を内縁の妻○○に遺贈する。
年月日
遺言者 ○○ 印


※なるべく公正証書で作成してください。公正証書遺言です。
※文案は簡素化しているのでじっさいには司法書士に相談してから書いてください。

営業エリア・業務地域を教えてください。

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

無料メール相談はこちら。司法書士が2時間以内にお答えします!

 

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