相続大全集

兄弟仲が悪い場合は親に絶対遺言書を書いてもらうべき理由

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兄弟仲が悪いと相続で揉めるので遺言書を作る

ここでのお題は,「兄弟仲が悪い場合は親に絶対遺言書を書いてもらうべき理由」です。兄弟仲が悪いときは親に絶対遺言書を書いてもらったほうがいいと,そいうことです。

親がいて,子供が複数人いて,その兄弟仲が悪いということですから,こういう相続関係を想定しています。

  • 被相続人=親
  • 相続人=法定相続人の第一順位である子(複数の子による共同相続)

では,なぜ兄弟仲が悪い場合遺言書を書いてもらったほうがいいのか。これは何となくイメージができますよね?というか,最も遺産相続で揉めるようなケースですから,遺言書の必要性は言わずもがなという感じがします。しかしなぜそうなのかということについてもう少しだけ突っ込んで考えてみたいのです。もう少し具体的に。なんとなくそうなんだろうが,じっさいにどのように困ってしまうのかというあたりを少しだけ説明してみます。

 

想定するケース(再確認)

  • 被相続人=親
  • 相続人=子供2名(長男と次男)
  • 遺産=長男が親と同居している住宅(評価2000万円)と,預貯金が1000万円

 

遺産相続手続ができずに前に進まないから困る

仲が悪かったり疎遠だったりするとそもそも話ができない

そもそも昔から兄弟仲が悪かったり,疎遠だったりすると,遺産相続の話合いになりません。親の死亡に際して兄弟が結束するようなことはまれで,普段の仲の悪さが,遺産相続という経済問題をきっかけにより悪化するのが通例です。こういうことだと,そもそも話合いすらできないわけですから,親の遺産相続が前に進まずに困ります。

遺産相続手続きに関する書類に実印を押してくれない

遺言書がない場合の遺産相続の手続きは,基本的に,遺産についての遺産分割(具体的個別的遺産を共同相続人の間で割り振ること)が済まないとできません。

もちろんすべての財産について法定相続分で取得するなら遺産分割は必要ありませんが,不動産を兄弟で共有にするのは普通ないことで,不動産の利用や将来のことを考えるとおすすめできるものではありません。やはり兄弟のどちらかが単独で相続すべきでしょう。

さて遺産分割のやり方は,共同相続人で話合いでもってする協議分割が基本です。遺産分割協議が済んだら,遺産分割協議書という書類を作って,そこに共同相続人の全員が実印を押します。そして,相続人全員の市町村発行の印鑑証明書を揃える必要があります。兄弟仲が悪いと,この遺産分割協議(遺産の具体的な割振りを決めるための相続人間の話合いのこと)がうまくいきません。なんとかかんとか話がまとまりそうになっても,現実に最終決定した案を遺産分割協議書にして提示されると,実印の押印に二の足を踏むこともあります。また市町村役場に印鑑証明書を取りに行って,これを手続きを代表してやっている兄弟に渡すなどの行為が必要なところ,兄弟間に不信感があると,大事な印鑑証明書を渡し渋ることもあります。大事な書類をあいつに渡して大丈夫なのか?なんて不安になったりするのです。

もっとも,兄弟仲がいい場合でも,欲しい財産が異なると揉める

ちなみに,兄弟仲がよければ遺言書がなくても揉めないかというとそうは言い切れません。この事例において,次男が不動産を欲しがったらどうでしょう。長男が親と同居している自宅不動産がなかなかの好立地でよい不動産だが,いままで次男はやむなく近くに賃貸マンションを借りてやってきたが,遺産相続になるなら,自分だってその権利を主張したいと考えるかもしれません。長男は当然家と土地を相続したい,次男もやはり家と土地を相続したいとなると,遺産分割の話合いがつきそうにありません。こうなると大変です。協議ができないので,家庭裁判所遺産分割調停の申立てをして裁判所で話合いしなければいけませんし,それでもまとまらなければ,裁判官に審判で分割を決めてもらうことになります。調停分割審判分割という遺産分割の方法です。しかしここまでいくと,良好な親族関係というのは望めそうにありません。遺産相続をきっかけに,兄弟が絶縁,なんてことにもなりかねません。

 

平等に遺産分割(遺産分け・遺産の割振り)できないから困る

少し視点を変えてみます。

  • 兄弟仲はよろしくないが,なんとかかんとか話合いはできるよ
  • 長男は不動産がほしいし,次男は預貯金がほしいしで,大筋では合意できるよ

というようなケースです。こういうケースなら問題なく遺産相続の手続きが済むでしょうか。いやしかし,こういうケースにおいても紛争の種は潜んでいます。つまり揉めることがあるんです。

いま,不動産の評価を仮に2000万とすると言いました。そして預貯金が1000万あったと。葬儀費用等細かい問題をこの際捨象して考えます。

長男は自宅不動産を相続したいし兄弟間でそこに異議はない。次男は預貯金を相続したいし長男もそれを認めている。もしそのとおりに遺産分割をすると,兄弟間に不平等はないでしょうか。いや,次男がまったく問題なしとするならよいのです。しかし今回のように兄弟仲がそれほど芳しくない場合,次男は不平等を主張するかもしれません。だって,長男は2000万円分の財産を相続したのに,次男は1000万円分の財産しか相続してないのですから。

さて,次男が,親の生前,親から,多額の生前贈与を受けているなど特別な理由(特別受益者の相続分)がない場合,兄弟の法定相続分は各1/2ですから,以上の分割では法律上不合理です。しかし長男としては,俺が長年親と同居してきたんだから,それくらいはいいだろう。そんなぴったり遺産を分けることなんてできないし,むしろ親と同居していた俺が遺産全部を相続したいくらいだ,というかもしれません。しかしいまの法律では,長男が特別に親の財産の維持増加に寄与した事実がない限り,長男の言い分は通りません。つまり長男の言い分は不合理であって,法律上は,兄弟各1/2の法定相続分を持ちますから,1500万円ずつ相続するのが正しいわけです。

そうすると,もし長男が自宅の所有権の全部を相続したいなら,長男の固有財産(自分の財産,長男の預貯金等)から500万円を次男に渡してあげないといけません。そうすると長男の取り分は2000万円から500万円をマイナスした1500万円となり,次男はの取り分は預貯金の1000万円に長男からもらった500万円を加算した1500万円となります。これで法定相続分にしたがった遺産分割となります。こういう遺産分割の態様を,「代償分割」といいます。遺産の物件を取得する代わりに代償金を支払う遺産分割なので,代償分割と呼ぶのです。

長男さんは,個人財産から500万円もの代償金を支払いたいですか?必ずしも兄弟仲のよくない次男に,自分の大切に貯めた個人資産から500万円を支払えますか?仮に家を出て自由に暮らしており,親の面倒や祭祀など,いっさいを長男に任せきりの次男だったとしたらいかがでしょう。

 

遺言書による問題の解決・遺産分割紛争の予防

以上,兄弟仲が悪い場合には,そもそも遺産相続の話合いができないし,書類に実印を押してもらったりするのが困難になるほか,欲しい財産が異なったり,遺産をきっちり相続分どおりに割り振るのが難しいが故のトラブルが生じがちであることを説明しました。

つまり,冒頭記載のとおり,兄弟仲が悪い場合には親に絶対遺言書を書いてもらうべし,と相成るのです。こういう遺言書を書いておけば,遺産相続,遺産分割に関するトラブルや,遺産相続の手続きを誰が責任をもって行うのかという紛争,そして手続きがなかなか進まないことからくるストレスから解放されるでしょう。

 


遺言書

不動産は長男に相続させる。
預貯金は次男に相続させる。
遺言執行者を長男と指定する。

年月日
遺言者 ○○ 印


※文言は単純化していますのでご注意を。じっさいに遺言書を作成するには司法書士に相談してください。なお,遺言書は,司法書士に依頼して,公正証書で作成することをおすすめします(公正証書で作成する遺言書を公正証書遺言といいます)。

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