相続大全集

節税のために生前贈与には順序があると知っていますか?

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節税のための生前贈与の順位,順番,優先順位

両親の相続税対策を考えています。節税対策は何からやっていったらいいのか分からないんですが,やっていく優先順位というか,順番みたいなものはあるんでしょうか?

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

 

節税対策として相続税の課税財産を減らすための生前贈与

相続対策のうちの一つ,相続税の節税対策には,以下の二つのやり方があります。

  • 相続税の課税財産を減らす
  • 相続税の基礎控除額を増やす

このうちやり方がいろいろあるのは,相続税の課税財産を減らすほうです。

  • 法定相続人や孫に生前贈与する
  • 生命保険契約をして保険料を支払う(生命保険金の非課税枠を活用)
  • キャッシュを不動産にかえて計算上の財産的価値(相続税評価)を下げる
  • 生前にお墓を買う(祭祀財産は相続税の非課税財産)
    などなど

相続税の課税財産を減らす,といってまず思いつくのは,何と言っても生前贈与です。法定相続人や孫に生前贈与して相続税の課税財産を減らす節税対策は基本中の基本としてよく行われています。

 

生前贈与に優先順位はあるか?

さて,この相続税の課税財産を減らすための生前贈与をするにつき,どこから手を付けていったらいいか分からない,とのことでした。また実行する優先順位みたいなものはあるのか,ということでした。今日は,そのこと考えるためのヒントになるポイントをお教えします。なお,節税対策のための贈与に大まかな優先順位はありますが,必ず,誰しもに,一律に適用できるルールはありません。専門の税理士と協議し,諸条件を加味して決めていきます。

それでは行きます。

 

生前贈与の優先順位を決めるためのポイント

ポイント1 控除や非課税制度をちゃんと使う

条件が合えば,法律上特別に設けられている控除や非課税制度を使って贈与しましょう。こういう制度を使って生前贈与すると大きな金額を一括贈与できるの有利です。ただし,贈与した後に贈与者が亡くなった場合の取扱いなど,各制度には細かい違いがありますので,税理士に相談して実行することが大事です。

夫婦間贈与(夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除)

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
国税庁WEBより 以下同じ

住宅取得資金贈与(直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税)

平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります(以下、「非課税の特例」といいます。)。

教育資金贈与(直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税)

平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、個人(租税特別措置法第70条の2の2第2項第2号に規定する教育資金管理契約(以下「教育資金管理契約」といいます。)を締結する日において30歳未満の者に限ります。)が、教育資金に充てるため、1その直系尊属と信託会社との間の教育資金管理契約に基づき信託の受益権を取得した場合、2その直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を教育資金管理契約に基づき銀行等の営業所等において預金若しくは貯金として預入をした場合又は3教育資金管理契約に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭等で証券会社の営業所等において有価証券を購入した場合には、その信託受益権、金銭又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額(既にこの「教育資金の非課税の特例」の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には、その算入しなかった金額を控除した残額)に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入されません。

結婚・子育資金贈与(直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税)

平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に、個人(租税特別措置法第70条の2の3第2項第2号に規定する結婚・子育て資金管理契約(以下「結婚・子育て資金管理契約」といいます。)を締結する日において20歳以上50歳未満の者に限ります。)が、結婚・子育て資金に充てるため、1その直系尊属と信託会社との間の結婚・子育て資金管理契約に基づき信託の受益権を取得した場合、2その直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を結婚・子育て資金管理契約に基づき銀行等の営業所等において預金若しくは貯金として預入をした場合又は3結婚・子育て資金管理契約に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭等で証券会社の営業所等において有価証券を購入した場合には、その信託受益権、金銭又は金銭等の価額のうち1,000万円までの金額(既にこの「結婚・子育て資金の非課税の特例」の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には、その算入しなかった金額を控除した残額)に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入されません。

ポイント2 少しずつ生前贈与する

両親がまだ元気で,まだまだこの先10年は元気そうであり,さらにご両親の財産を預貯金やキャッシュが多く占めている場合には,贈与税の基礎控除を使って,法定相続人や孫等に対して,毎年少しずつ贈与をしてください。贈与税の基礎控除額は1年間に110万円です。贈与者(あげる人,つまり両親)と受贈者(もらう人)との関係や,1年間にあげられる人数に制限はありません。なので,もしもらう人を多く準備できて,一族仲が良く,これを長年続けることができるのであれば,相当大きな金額を生前贈与することも可能です。

ポイント3 課税財産が「増える」のを防止する

ここからは少しだけ技術的でテクニカルな話になります。上記を除く財産の生前贈与をするには,次のようなルールに則って実行すると得をします。

将来値上がりする可能性がある財産から贈与する

財産というのは時間が経つとその価値が変わっていきます。株式や不動産を想像してみれば分かりやすいですね。今日の価値と,明日の価値,1年後,数年後の価値は違います。およその財産は,値上がりや,値下がりをするものです。

さて,こんな教科書事例を考えてみてください(細かいことは捨象します)。父親がいて,母親はもういない。父親が,相続税の基礎控除額にぴったり相当する不動産を持っていたとします。あとは,1000万円の上場株式と,1000万円の普通預金を持っていた。その父親が,節税対策として,毎年普通預金を崩してあなたに生前贈与し,ちょうど1000万円を贈与し終わったところで亡くなったとする。あなたが相続税の申告準備のために遺産評価をしてみると,なんと株式がここ半年で急に値上がりをして,2000万円になっていたら?

この事例において,もし株式の値上がりが分かっていたら,あなたは株式から先に生前贈与をしてもらうとよかったのです。株式を,値上がりする前の価値で,少しずつ贈与してもらっていたら,相続税の課税財産は,この事例よりもかなり少なくなったはずです。

つまり,節税対策のための生前贈与は,単純に相続税の課税財産を減らす目的のほか,課税財産の値上がりを防止することも考え併せするべきなんです。将来値上がりが見込まる財産から先に生前贈与をしてもらう。もっとも,株式の値上がり値下がりを読むことは容易ではありません。ただ,財産の中には,大きく値下がりすることはほぼ考えられず,大きく値上がりする可能性だけが考えられるものもあります。例えば以下のような不動産です。

  • 市街地の宅地であって,現在は倍率方式で低く評価されているが,将来路線価方式で評価され,相続税評価額が高くなることが見込まれる土地
  • 現在は都市計画法の市街化調整区域に指定されているが,将来規制がはずれて市街化区域になり,評価額が高くなることが見込まれる土地等
  • 近隣に開発計画があり,将来利便性が向上して,地下が向上することが見込まれる土地等

まとめます。

節税対策のために財産の贈与を受けるときは,将来値上がりする可能性の高いものから贈与してもらってください。これにより,相続税の課税財産の増加を予防することができます。

収益不動産(高収益の)から贈与する

あなたの父親が土地に収益用の賃貸マンションを建てて所有しており,毎年相当額の賃料収入があるようなら,あなたは,この収益不動産(建物)の贈与を受けることを検討してください。

父親がまだ60歳で,仮に80歳まで生きるとして,家賃が毎年平均300万円あるとしたらどうでしょう。60歳から80歳になるまでの間に,単純計算で,300万円*20年=6000万円分,父親の財産,つまり将来の相続税の課税財産が増える計算になります。賃料収入が毎年蓄積されていくからです。相続税の課税財産がそれだけ増えると,あなたの相続税負担は,かなり増えることになります。

この事例において,賃貸マンションの建物を子のあなたに生前贈与したとします。そうすると,以降,賃貸マンションからあがってくる収益つまり家賃収入は,建物の所有者であるあなたに帰属し,父親には帰属しません。ですので,今後賃貸マンションから継続的に入ってくる家賃収入が父親の財産を増やしていくことはありません。相続税の課税財産の増加を止めることができるのです。

このように,節税対策のために財産の贈与を受けるときは,収益不動産のように当該財産から高収益があがるものを優先して贈与してもらってください。これにより,財産の蓄積を止め,相続税の課税財産の増加を予防することができます。

相続時精算課税制度を併用

なお,収益不動産の贈与には,相続時精算課税制度を利用して,贈与税負担を軽減するのも一つの方法です。相続時精算課税制度とは,60歳以上の直系尊属から,20歳以上の子や孫への贈与については,2500万円まで贈与税が非課税になるという制度です。この制度を選択すると,2500万円を超える部分には,一律20%の贈与税がかかります。

この相続時精算課税制度を使うと,贈与時には上記のような贈与税の非課税枠等を使えますが,文字どおり相続時に,贈与した財産を計算上戻して相続税の課税財産として計算し,相続税として納めるべきは納めるという制度です。つまり,もともと相続税がかかる人にとっては,この制度を使って財産を贈与することは,直接には,何ら相続税の節税にはなりません。贈与税は軽減(払わない?)できても,後で相続税として支払わないといけないからです(相続税の計算上は贈与がなかったものとして扱う)。

ただし,先ほど説明した収益不動産などを,この制度を選択して贈与すれば,贈与税の負担なくして即時に財産を移転することができ,贈与時以降の収益を,相続人に帰属させることができます。すでに説明したとおり,相続税の課税財産が摘み上がって増えていくのを止めることができるわけです。贈与税の負担が大きければ,節税効果がその分減りますが,贈与税の負担が無いか軽ければ,節税効果もより大きくなるのであり,その意味で,相続時精算課税制度を使って収益不動産を生前贈与することには大きなメリットがあります。

注意)

  • 相続時精算課税制度を使って生前贈与することが常に正しい選択とは限りません。
  • 賃貸アパートやマンションを生前贈与するときは,その敷地の取扱いに注意が必要です。
  • 収益不動産の贈与には専門知識を要します。相続税に詳しい税理士と相談しながら手続きすることが肝要です。

 

まとめ

節税対策のための生前贈与のポイントや優先順位は次のとおりです。ご参考にしてください。

  1. 使える特例や非課税制度はきっちり利用すること
  2. 預貯金やキャッシュは基礎控除を使って少しずつ贈与すること
  3. 課税財産の増加を防止すること
  • 値上がりしそうな財産から贈与する
  • 高収益を生む財産から贈与する

奈良県北葛城郡王寺町の司法書中尾哲也の写真楕円形

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