相続大全集

遺言書を書いてもらうかどうか迷ったら絶対書いてもらうべき理由

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両親に遺言書を書いてもらう 書かせる

両親もいい歳になってきて,最近ちょっと体の調子も悪いみたいなんで,私もそろそろ両親にお願いして遺言書を書いてもらおうかと思うんです。離れて暮らしている兄弟との仲もそんなに良くないし,このまま両親が亡くなったらきっと遺産相続で揉めると思うんです。でも遺言書書いてくれなんて大層な感じがしてなかなか切り出せなくて困っています。「そんな財産ないよ」と言われそうな気もしますし,,,手続きも面倒な感じがして,ずるずる時間だけが過ぎています。どうしたらいいでしょうか?

両親に遺言書を書いてもらいたいけど言い出せずにいる。「また今度ね」と言われてそのままになっている。そのことが長い間気になっている。というような方は結構いらっしゃると思います。よく相談のあるケースです。

両親に「そんなの書かない」と断られたならともかく,「そのうちね」と言っているのなら,遺言書はなるだけ早い時期に書いてもらうことをおすすめします。今日はその理由をいくつか挙げてみましょう。

 

財産がすくなかろうが実印と印鑑証明がいる

ご両親が,「遺言書なんて書くのはたくさん財産のある人だ」とか,「家と預貯金少ししかないのに揉めることもないだろう」とか,遺産相続について安易に考えている場合があります。遺産相続が大変かどうかはいろいろご意見もあるところですが,一つ間違いのないことがあります。それは,法定相続人の話合いがまとまって,書面に実印を押し,印鑑証明書を出し合わなければ,スムーズに相続手続はできないってことです。

いくら家の価値が低くても,土地や建物の名義変更(不動産登記)をするには遺産分割協議書に実印を押して印鑑証明書をひっつけないとできません。そう法律で決まっているからです(法定相続分で共有の登記をするなら別)。預貯金だってそう。遺言書がない相続で,とりあえず私が全額を引き出して分けようと思っても,法定相続人全員の印鑑がないとできません。

このように,財産が多かろうが少なかろうが,財産とという財産の名義変更,解約払戻し等をするには,法定相続人全員の実印と印鑑証明書がいるんです。兄弟仲が悪かったり,欲しい財産が重なっていたり,生活に困っている相続人がいればどうなるか分かりますよね?

 

何度でも書き直せる

「いやあ私(例えば母親)の考えがまだまとまってないのよね,長女にあげるか,次女にあげるか」「これから考えが変わるかもしれないし,あの子達次第だけどね」「そういうことなんでまだ遺言書を書く決心がつかないでいます」

こうおっしゃるご両親もいるでしょう。しかし心配はいりません。遺言書は一度書いたら書き直せないものではありません。一回書いたらそれが最終の遺言書になって取り返しがつかないものではないんです。そう,遺言書は,何回でも書き直したり,一部修正したりすることができる書類なのです。

どうするかというと,もう一度新しい遺言書を書けばいいんです。内容が齟齬している部分は新しい遺言書が有効になります。まったく白紙に戻したければ,こういう遺言書を書くこともできます。遺言書は遺言書で自由に撤回することができます。なので,そうそう大層に考える必要はないのです。考えが変わったらまた書き直せば済むわけですから。


遺言書

年月日の遺言書は撤回します。
年月日
遺言者 母 印


ちなみに公正証書遺言自筆証書遺言で撤回することもできます。これ全部できます。

  • 自筆証書遺言を自筆証書遺言で撤回する
  • 自筆証書遺言を公正証書遺言で撤回する
  • 公正証書遺言を公正証書遺言で撤回する
  • 公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回する

(遺言の撤回)
民法1022条  遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
同1023条  前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2  前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

 

遺言書を書くのは簡単

遺言書を書くのは簡単です。作業としては簡単。よく使われる普通の遺言書には,自分で書く自筆証書遺言と,公証人役場で公証人に作ってもらう公正証書遺言があります。自分で書く遺言書は簡単ですよね?文字どおり自分で書けばいいんですから。公正証書遺言は手続きが面倒なので,司法書士に依頼すればいいんです。そうすると,遺言者ご本人は,最後に公証人役場に行くだけで手続きができます。

自筆証書遺言が簡単だと言いました。ただし,法律で決まっている方式だけはきっちり守ってください。要件をちゃんと満たして書いてもらうということ。要件は以下のとおりです。

  • 遺言者が,全文を自分で書くこと
  • 遺言者が,日付を自分で書くこと
  • 遺言者が,氏名を自分で書くこと
  • 遺言者が,遺言書に印鑑を押すこと

民法968条
自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自署し,これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は,遺言者が,その場所を指示し,これを変更した旨を付記して特にこれに署名し,かつ,その変更の場所に印を押さなければ,その効力を生じない。

簡単でしょう?要件さえ満たしていれば,こういうのでもいいんですよ。


遺言書

全財産を長男に相続させる。
年月日
遺言者 母 印


ただ間違ったときは注意です。さっき見た法律に書いてあるように,その訂正方法も法律で決まっています。司法書士などの立ち会ってもらうのでないかぎり,間違ったら一から書き直したほうがいいでしょう。

 

ボケたら書けない,死んだら書けない

「またそのうち」「まだまだ元気だから遺言書なんて」「もうちょっと弱ってから書くわ」なんていうのはよく聞かれるコメントです。無理もないですね。

しかしこれはとても重要なところです。大事なことを言いましょう。

  • 元気なときしか遺言書は書けない
  • ボケたら二度と遺言書は書けない
  • もちろん死んだら書けない

そうなんです。遺言書はもちろん「死んだとき」に効力を発揮するものですが,遺言書を書く作業は,「元気なとき」しかできないんです。この矛盾というか,なんというか,あべこべの構造をよくよく考えてみる必要があるんですね。

遺言書も意思表示をともなう法律行為である以上,遺言者に判断能力がないとできません。判断能力が完全に亡くなってしまったら遺言書を作成できません。ボケた両親に自筆証書遺言を書いてもらっても無効だし,公正証書の遺言書は公証人の事前チェックが入って作成まで進みません。

  • 遺言書は「元気なときこそ」書くものだよ!
  • 遺言書は「元気なときにしか」書けないものだよ!

そのようにご両親にお話ししてみてください。

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