相続大全集

遺言執行者が指定されてないと困ってしまう理由

« »

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

遺言執行者がいないと困ること

遺言執行者とは遺言書の内容を現実化する人。遺言書のとおりに遺言者の意思を実現するひと。遺言書に書いてるとおり手続きする人のことです。遺言を執行するから遺言執行者といいます。遺言書で財産をもらうなら遺言執行者を必ず指定してもらってください。受遺者であるあなたを指定してもらうか,司法書士等法律の専門家を指定してもらうといいです。

(遺言執行者の権利義務)
民法1012条  遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2  第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。

では,遺言執行者がいないと何か困ることがあるのか?遺言執行者がいなことによる具体的な不都合は何かについて簡単に説明します。「遺言執行者がいなくて困る」困るは困るでも,困り方?にいろいろあるんですね。分類して説明してみます。

 

遺言執行者がいないと遺言執行できないから困る(絶対無理)


遺言書

1.長男は非行著しく私に重大な侮辱をはたらいたので相続人から廃除する
2.愛人A子さんの男子は私の子供なので認知する
遺言執行者として司法書士中尾哲也を指定する
年月日
遺言者 父 印


このような遺言,つまり遺言書の1.と2.の遺言事項推定相続人の廃除等と認知は,遺言によってもすることができますが,遺言でこれらをするには,必ず遺言執行者の関与が必要です。相続人全員が協力してこの執行行為をすることはできません。なので,父がこのような遺言をしているのに遺言執行者を指定していないと非常に困ります。執行が不可能です。

こういうときは,仕方がないので,家庭裁判所に遺言執行者を選んでもらう申立てをします。司法書士などを候補者として裁判所にこの人を選んでくれと申請してもいいし,裁判所にお任せしてもかまいません。

(遺言による推定相続人の廃除)
民法893条  被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

 

(認知の方式)
民法781条  認知は、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによってする。
2  認知は、遺言によっても、することができる。

戸籍法64条  遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から十日以内に、認知に関する遺言の謄本を添附して、第六十条又は第六十一条の規定に従つて、その届出をしなければならない。

 

相続人が協力しないとできないから困る(無理なこともある)


遺言書1

別荘は愛人A子に遺贈する。
年月日
遺言者 父 印


このような遺言があったとき,父から愛人に不動産の名義変更をする必要があります。不動産登記というものです。こういうときは遺贈の登記という登記申請をします。この遺贈の登記は,共同申請といって,不動産をもらって登記についての権利者になる愛人と,不動産を渡す義務を負うこちらサイドの双方が協力してしなければいけません。

愛人は不動産をもらうので手続きする気まんまんでしょう。しかしこちらサイドはどうか。やる気のある人は誰もいないでしょう。なのに共同申請の所有権移転登記に登記義務者として関与しないといけないのか?書類に実印を押して,見たことも話したこともなかった人に大事な印鑑証明書を渡さないといけないのか?考えただけで厳しそうです。

この遺贈の手続き。

  • 遺言執行者がいれば遺言執行者が登記義務者となって手続きに関与します。逆に遺言執行者がいるときは,相続人はしゃしゃり出て手続きに関与することはできないとされています。遺言執行者だけが遺言執行する権限をもっているわけです。
  • 一方,遺言執行者がいなければ,相続人の全員が登記義務者になって登記に関与する必要があります。

(遺言の執行の妨害行為の禁止)
同1013条  遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

さてちょっと視点を変えて,もしあなたが愛人の立場だったら?愛人とは言わずとも,遺言で不動産をもらう人の立場だったどうでしょう?遺言執行者がいないと,まずは遺言者の相続人全員を探し出し,その人にアクセスします。そして遺言書のとおりに登記したいので協力してくださいとお願いします。しんどいですよね。簡単に協力が得られると思いますか?難しいことが多いでしょう。

こういう遺言書,つまり遺贈をするような場合は,相続人が協力しにくい,協力が得られにくいので困る。やはり遺言執行者がいないと困りますね。

« »

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事

財産以外のことがいろいろ書いてあった遺言書の効力について説明します

父親が亡くなって自筆証書遺言が出てきたんです。遺言書にはこんなことがいっぱい書いてあったんです。ちょっと抜粋してみます。 結婚するなら公務員としなさい。金貸しとだけはするな。 孫はあんまり勉強しろと言わないで伸び伸び育て …続きを読む

遺言事項以外の遺言

信託銀行の遺言信託(とか遺産整理業務)を頼んではいけない理由を知っていますか?

最近テレビやインターネットでよくよく信託銀行の遺言信託や遺産整理,そして相続業務のコマーシャルが流れています。銀行さん,とりわけ信託銀行はお金持ちが大好きなので,次々と富裕層や準富裕層にターゲットした商品を開発してきます …続きを読む

信託銀行の遺言信託や遺産整理業務はどう?

親に生命保険に入ってもらうと相続税の節税になる理由を説明します(非課税財産)

親が相続税の基礎控除額を超える資産を所有していて,将来の遺産相続において相続税が課税されそうなら,相続の節税対策をするよう検討してください。その節税対策の方法として,親に生命保険に入ってもらうのは有効です。以下,その理由 …続きを読む

生命保険(死亡保険)金は相続税の非課税財産

ゴルフ会員権の値段はどうやって計算するのか,相続税の評価方法をお教えします

仕事をやめて最近体も弱ってきた父親の財産を整理しています。祖父も認知症で大変だったので,父親については,今後遺言書や任意後見契約などを締結して私が財産管理をしていこうと思います。先日自宅を整理していると,机の引き出しから …続きを読む

ゴルフ会員権の相続税評価

遺産に不動産が多い人は遺言書が必須であるこれだけの理由

不動産を多数所有していて,かつ推定相続人が複数人いる人は,自分の将来の相続に備えて必ず遺言書を作成するべきです。また親が不動産をたくさん持っていて,兄弟とともに相続する予定の相続人の方も,なるべく早く親に遺言書を作成して …続きを読む

地主や不動産を多数所有している人は遺言書が必要