相続大全集

遺言書で財産をもらった人が遺言書(遺贈)を放棄する方法を説明します

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包括遺贈の放棄 特定遺贈の放棄

奈良県北葛城郡王寺町の司法書士中尾哲也

日本の相続制度は遺言相続が優先することになっています。つまり被相続人が遺言書で遺した遺志が一番大事で,遺言がない場合にはじめて法定相続の法律の規定によって遺産相続が処理されます。また,遺留分など,遺言書によっても奪うことができない相続人の権利を一部認める制度もあります。しかしとにかく一番大事なのは,財産の所有者である遺言者の意思・遺志です。

ということで,財産の所有者は,生前の処分はもちろんのこと,死後,遺言で自分の財産の行き先を決めることができます。ところでこの遺言というのは法律上「単独行為」といわれ,家族や親族,そして財産をもらう受遺者に相談したり合意を取り付けたりすることなしに,遺言者が単独で有効にすることができます。遺言者が一人で完結することができるのが遺言という単独行為です。

ここで疑問が出てきます。

 

受遺者の意思の尊重

遺言者の意思はいいけど,財産をもらう受遺者の意思はどうなるの?という具合に。財産をもらうんだから問答無用で押し付けられるというものでもないでしょう。生活に困っていないから管理するのが面倒とか,あんな人の財産なんか引き継ぎたくないとか,そのように考える人だっています。また,単なる財産の譲渡ではなくて,負担付遺贈や条件付遺贈の場合はなお複雑です。つまり,「財産をあげる代わりに○○してくれ」とかいう遺言の場合です。○○のところにはいろんな行為等が入ります。例えば母親と同居して面倒を見てくれとか,葬式をしてくれとか,先祖の土地を守ってくれとか,,,財産をもらうのはいいけど,○○はいやだ,○○をするくらいなら財産はいらない。いっそのこと,遺贈を拒否したい,ということも場合によってはあることですね。

整理します。遺言者の意思が大事だといっても,受遺者の意思も大事でしょう?もらい手,受遺者の意思は尊重してくれないんですか?というのがここのテーマです。

さて結論から申し上げると,当然のことですが,受遺者の意思も同じように尊重されます。つまり,受遺者は,自分の意思で,遺言者の遺言を受けるか拒否するかを決めることができます。これを遺贈の承認とか,遺贈の放棄とか呼んでいます。遺贈を受ける場合,承認する場合はちょっと置いて,ここでは遺贈を拒否する場合,遺贈を放棄する場合どうしたらいいのかについて簡単に説明します。

 

遺贈の種類

この問題を考えるには,遺贈を二つの種類に分類して,それぞれ別個に考えていく必要があります。遺贈は,その内容によって,以下の二つの種類に分類することができます。

包括遺贈

包括遺贈とは,「財産の全部」又は「財産の割合的一部」を遺贈することです。財産の割合的一部とは,半分とか,○分の1とか,割合で財産を遺贈することです。

特定遺贈

特定遺贈とは,「具体的に特定された財産」を遺贈することです。家は長男に遺贈するとか,株式は次男に遺贈するとか,個別に財産を特定して遺贈することです。

 

包括遺贈を放棄するには?

包括遺贈については,法律に以下のような規定があります。

(包括受遺者の権利義務)
民法990条  包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

包括遺贈は遺産全部とか割合的一部を遺贈するものなので,受遺者の立場は法定相続人に似ています。なので,同人は,法定相続に関する法律の規定によって権利義務を持つことにしたんです。

さて,包括受遺者が遺贈を放棄する場合どうしたらいいのかについても,法定相続の場合と同様に考えることになります。つまり,以下の法定相続の規定が適用になります。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法915条  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2  相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

(相続の放棄の方式)
同938条  相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

つまり,相続が開始して,自己のために包括遺贈があったことを知ったときから3か月以内に,家庭裁判所に申立書と添付書類を提出して,相続放棄の申述の手続きをしなければいけません。家庭裁判所に書類を出さずに,他の相続人に「俺は放棄するからいい」と言ったり,自分の中で放棄したと思っているだけでは足りませんので注意してください。期限があること,家庭裁判所で手続きしないといけないこと,この2点を忘れないようにしてください。

 

特定遺贈を放棄するには?

一方特定遺贈については,以下の条文によって処理します。

(遺贈の放棄)
民法986条  受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
2  遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

このように,遺贈を放棄するのに時間的な制約はありません。また方式も特に決まっていないので,相続人又は遺言執行者に対して,自分は遺贈を放棄する旨の意思表示をすれば足ります。

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