相続大全集

親に遺言書を書き直したり取り消したりしてもらう方法をご紹介します

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遺言書の書き直し,取消し,撤回

数年前に父親に遺言書を書いてもらいました。兄は家をもらい,私は預貯金をもらう内容でした。しかしその後状況がかわりました。兄が出世して東京に転勤になり,もう戻ってくることはないというのです。両親はとてもさみしそうですが仕方ありません。兄は東京でマンションを買うらしいです。そこで,遺言書の内容が問題になってきます。できれば,兄は預貯金をもらい,私が家をもらうように書き換えたいのです。これは前の遺言を取り消してからするんでしょうか?いやそもそも書き換えなんてできるんでしょうか?一度書いてしまったらもうおしまいなんでしょうか?教えてください。

 

結論です。

父親の遺言は取消し(撤回)することができますし,遺言書の内容を書き換えることもできます。安心してください。では,そのやり方を説明します。

前の遺言書の撤回は,遺言書によってだけすることができます。遺言書の体裁をとらない(遺言書としての法的な要件を備えない)遺言の撤回の意思表示は無効です。この点十二分に気を付けてください。このことが,以下のように法律に書いてあります。

(遺言の撤回)
民法1022条  遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

新しい遺言書を作る。前の遺言書を撤回する遺言書を作るのです。こんな感じです。


遺言書

年月日付の自筆証書遺言はこれを撤回する。
年月日
遺言者 中尾哲也 印


なお,撤回する遺言書の方式は問われません。自筆証書でもいいし,公正証書でもいいです。つまり,これらは全部有効な撤回行為になります。

  • 自筆証書遺言を自筆証書遺言で撤回
  • 自筆証書遺言を公正証書遺言で撤回
  • 公正証書遺言を公正証書遺言で撤回
  • 公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回

以上が原則的なやり方ですが,こんな方法もあります。

すなわち,前の遺言書をちゃんと破棄したときは,前の遺言書は撤回したものとみなされるので,前の遺言書を破棄することによっても前の遺言書を撤回することができます。もっとも,遺言書を丸めて捨てたり,黒塗りして見えないようにしただけでは,場合によっては破棄したのかどうか争いになることがありますので,この方法によるときは,細かく裁断機(シュレッダー)にかけるとか,完全に焼却処分するとかしてくださいね。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
民法1024条  遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

さて,まだ問題は解決していませんね。今回は前の遺言書を破棄するだけじゃなくて,あらたな遺言をしないといけません。どうせ破棄してから新たな遺言書を作るなら,前の遺言書の書き換えができると便利ですよね。つまり前の遺言書はそのまま置いておいて,新しい遺言書に内容を書き換えることができればいい。これについては,法律は以下のように言っています。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
民法1023条  前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2  前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

意味はこういうことです。

新しい遺言書を作って,その遺言書の内容に,前の遺言書と齟齬して相容れない部分があったら,その部分については新しい遺言が有効になる。その部分については,前の遺言書を撤回したことになる。ただし,前の遺言書と新しい遺言書と比べて,内容が齟齬しない部分,新しい遺言書で触れられていない部分があれば,その部分については,前の遺言書は依然として有効である。

この場合には,前の遺言書は一部有効,新しい遺言書は全部有効,二つの遺言書を合わせて父親の遺言書だ,ということです。よって遺言書の検認や相続手続には,遺言書を二つとも供することになります。

 

じっさいの(おすすめの)やり方

ご質問のケースに対応するおすすめのやり方を説明して終わりにします。前の遺言書を撤回する遺言書と,新しい遺言書を二つ作りましょう。前の遺言書が自筆証書なら,後の遺言書の自筆証書でいいでしょう。こうです。


遺言書1

年月日付の自筆証書遺言はこれを撤回する。
年月日
遺言者 中尾哲也 印



遺言書2

預貯金は長男に相続させる。
家は次男に相続させる。
遺言執行者として○○を指定する。
年月日
遺言者 中尾哲也 印


※1とか2という番号は便宜振ったものです。
※じっさいには「家」などと記載しません。分かりやすくしているのでご注意を。

 

おまけ

遺言書の撤回に関しては,次のような法律の規定もあります。撤回の撤回をしても前の遺言書は復活しないよとか,割合大事なことが書いてありますのでご一読くださいね。

(撤回された遺言の効力)
民法1025条  前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。

(遺言の撤回権の放棄の禁止)
同1026条  遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。

(負担付遺贈に係る遺言の取消し)
同1027条  負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

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